データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則

[場所] 
[年月日] 2016年5月27日
[出典] G7伊勢志摩サミット公式ホームページ
[備考] 仮訳
[全文]

 我々は,強固で,持続可能な,かつ,均衡ある成長を促進し,我々の社会における強じん性を向上させるとともに,持続可能な開発目標達成のための世界的な取組に貢献するため,ステークホルダーが,質の高いインフラ投資の推進を通じてインフラ投資の現存する世界的な需給ギャップを埋めるために一貫して取り組むことが極めて重要であることを再確認しつつ,我々自身のインフラ投資を,以下の原則に沿ったものとするよう努める。

 我々は,さらに,関連するステークホルダー,具体的には政府,国際開発金融機関(MDBs)を含む国際機関及びPPPプロジェクトに関与するような民間部門に対し,価格に見合った価値(valueformoney)及びインフラの質を完全に考慮した,透明性があり,競争的な調達手続の導入及び推進を含め,インフラ投資及び支援をこれらの原則に沿ったものにすることを奨励する。

原則1:効果的なガバナンス,信頼性のある運行・運転,ライフサイクルコストから見た経済性及び安全性と自然災害,テロ,サイバー攻撃のリスクに対する強じん性の確保

質の高いインフラ投資は,プロジェクトの全期間を通じた効果的なガバナンス,経済性,持続可能性,信頼性のある運行・運転及び安全性と自然災害,テロ,サイバー攻撃のリスクに対する強じん性を確保すべきである。

原則2:現地コミュニティでの雇用創出,能力構築及び技術・ノウハウ移転の確保

質の高いインフラ投資は,現地の労働者の雇用創出,現地コミュニティへの技術・ノウハウの移転に貢献しようと努めるべきである。

原則3:社会・環境面での影響への対応

質の高いインフラ投資は,インフラプロジェクトの社会・環境面での影響について配慮しなければならず,また,既存のMDBsの基準を含む最も重要な基準に反映されている国際的なベストプラクティスに沿った社会・環境面でのセーフガードを適用すること等により,こうした影響に適切に対応しなければならない。

原則4:国家及び地域レベルにおける,気候変動と環境の側面を含んだ経済・開発戦略との整合性の確保

質の高いインフラ投資は,案件準備及び優先順位づけ段階からのステークホルダーとの対話を通じ,国家及び地域レベルにおいて,経済・開発戦略に沿ったものとすべきである。考慮に入れるべき経済・開発戦略の関連要素には,連結性強化を通じたグローバル・サプライチェーンの進展,情報通信技術などの最新技術の活用,民間投資の促進と新しい産業の誘致,長期的・セクター横断的な需要予測等の関連情報に基づく中長期的な計画,債務持続可能性や財政見通しが含まれる。生態系に基づいたアプローチやグリーンインフラの更なる推進なども通じ,気候変動への強じん性,エネルギー安全保障と持続可能性,生物多様性の保全,防災も,考慮に入れられるべきである。

原則5:PPP等を通じた効果的な資金動員の促進

質の高いインフラ投資は,PPPや,MDBs等を通じたその他の形態の革新的な資金調達により,民間部門を含む資金を効果的に動員すべきである。この目的のため,国家・地方政府のレベルにおける適切な投資環境を強化しデュー・プロセス及び透明性を促進するための投資受入国政府を含むステークホルダー間の共同の取組が不可欠である。(了)