データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 女性の能力開花のためのG7行動指針: 持続可能,包摂的,並びに,公平な成長及び平和のために

[場所] 
[年月日] 2016年5月27日
[出典] G7伊勢志摩サミット公式ホームページ
[備考] 仮訳
[全文]

 持続可能な開発のための2030アジェンダと全ての持続可能な開発目標(SDGs)の実施に貢献するとの観点から,我々は国際的に,また自国においても適当な場合には,本行動指針に則っとり具体的な行動をとることにコミットする。

 これにより,ジェンダー間の平等,女性及び女児の人権を実現すること,また,女性及び女児が(i)積極的に社会参画し,自ら運命を切り開くため,(ii)家庭,コミュニティ,及びすべての社会的領域における持続的,包摂的かつ,公平な経済成長と質の高い生活に貢献し,恩恵を享受するため,(iii)紛争予防から解決,更に最終的な和解に至るまでの一連の平和構築の全ての段階に,完全かつ効果的に参画するために,完全な潜在力を実現することを可能にすることを決意する。

 我々はまた,女性及び女児に対するジェンダーに基づくあらゆる形態の暴力及び差別が,彼女らの完全な潜在能力を実現するにあたっての蔓延する障壁であることから,それらを防止し,対処することに引き続きコミットする。

1. 持続可能な,包摂的で,かつ,公平な経済成長に向けた女性及び女児の能力開花

1)教育及び職業におけるジェンダー格差と固定観念の撤廃

(i) 我々は,教育の全ての段階において,ジェンダー格差をなくし,性別に基づく固定観念と偏見を縮小するための政策を促進することにコミットする。

(ii) 我々は,教育行政担当者及び教員のジェンダー間の平等に対する理解を深め,性別に基づく固定観念に対処する教育を提供し,並びにジェンダーに配慮した方策や指導技術を実施する能力の強化のため,能力の開花を支持する。

(iii) 科学,技術,工学,数学(STEM)分野のキャリアにおける女性の積極的な役割を促進するため,我々は,機構的な変化を促進し,並びにこれらの職種におけるジェンダー間の平等を促進する法的及び政策的な環境を創ることを通じ,キャリアにおける性別に基づく偏見を除去する努力をし,これにより,STEM分野における女子児童生徒の数を増やし,研究,工学,起業分野への女性の参加を拡大する。これらの努力は,G7の「女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ(WINDS)」を含む我々の集団的,及び個別的な努力を通じて促進される。

(iv) 我々は,STEM分野及び女性の割合が少ない他のキャリアを目指す女性及び女児を含む児童生徒に対する奨学金の拡大を支持する。

2)女性の労働参加,起業,リーダーシップのための就業に関する教育及び職業訓練の充実

(i) 我々は,全ての女性及び男性が質の高い技術・職業・高等教育へ平等にアクセスするための障壁に対処することにコミットする。我々は,女性の教育及び訓練へのアクセスを促進するため,女性の多様なニーズを考慮し,無償の介護や家事労働における男女間のより平等な分担を推奨し,これにより,女性の労働参加率を高めることにコミットする。

(ii) 我々は,ロールモデルやメンターの関与等を含め,低年齢から教育の全段階において起業のための学習を行うことにより,女児が後の段階において起業を実現可能な選択肢として考えることの一助となり得ることを特に強調する。

(iii) 我々は,女性が官民問わず将来指導的地位に就くことを支援するための教育,訓練,プログラムを拡充すること,及び,政治,経済,学術及び公的な分野における意思決定の全ての段階に女性のリーダーの数を増やすことにコミットする。

3)女性及び女児の健康のための教育及び啓発プログラムの改善

(i) ジェンダー間の平等に関するSDGsの達成に向けた努力の一環として,我々は女性及び女児の健康問題に関する意識を高めるための教育,研究,啓発プログラムの改善を計画する。

(ii) これらのプログラムには,女性及び女児のための性と生殖に関する健康と権利,HIV/AIDSや性感染症,非感染性疾患(NCDs),栄養に関する事項を含む。

(iii) 我々は,引き続き,家族計画サービスを含む,女性及び女児のための健康サービスの提供を優先させること,また,女性及び女児が教育,訓練,経済的機会に参加する能力を促進することを視野に入れ,保健や生殖に関して十分な情報を得た上で意思決定ができる権利を強化する取組を支援することにコミットする。

4)学習環境の改善と女児への質の高い教育に対する障壁への対処

(i) 我々は,これまでの女児の初等教育へのアクセスを向上させる取組を基礎として,女子生徒・学生が質の高い中等教育,高等教育又は職業教育を受けることを阻害する課題や障害に対処していくことを模索することを約束する。

(ii) とりわけ,我々は,暴力のない,適切かつ男女別の衛生施設を有し,国の事情に応じ,適切にジェンダーに配慮した指導技術の訓練を受けた教員又は女性教員を,配置することを追求することにより,学習環境を改善することに取り組む。

(iii) 我々は,また,女性や女児に対する教育を低く評価する差別的な社会規範や,早期妊娠,HIV/AIDS,ジェンダーに基づく暴力,強制的な早期・強制結婚や女性器切除等の有害な慣行等,女児の質の高い教育に対するその他の根深い障壁への対処に取り組む。

2.国際平和及び安全保障に向けた取組に対する女性の能力開花と参画の促進

1) 国連PKO要員及び国内治安機関に対する訓練の強化

 我々は,女性及び女児に対する性的及びジェンダーに基づく暴力等を含むジェンダーに関連した課題に対処するため,国連PKO要員や国内治安機関に対する訓練を強化するため国連と協力することにコミットする。また,我々は,女性,男性,男児,女児のニーズに等しく応えるための軍事・文民の活動におけるジェンダー・アドバイザーの取組の効果と効率が確実に高められるよう,ジェンダー・アドバイザーの能力を積極的に向上することにコミットし,他国にも同様の行動を推奨する。

2)司法及び安全保障分野における女性のリーダーシップ醸成と女性の代表性の向上

(i) 平和と安定促進の観点から,我々は,調停,交渉,技術の専門家の国際的ロスターに登録し得る女性を特定し,訓練することを含め,採用,メンタリング,訓練,積極的なキャリア・マネジメントを通じ,調停,平和構築,紛争予防及び,安全で平和な社会の創出における女性のリーダーシップ,割合,主体性の育成にコミットする。

(ii) 我々は,また,専門的なキャリア開発と管理職における女性のリーダーシップや昇進に対する特別の関心をもって,裁判官,検察官,法執行官,第一応答者,軍等の司法及び安全保障分野における女性の代表性を向上させることにコミットする。

3)緊急事態対応への女性の関与を強化

(i) 我々は,難民及び国内避難民の女性及び女児や,紛争や災害の影響を受けた人々を,エンパワーし,強靱性を強化し,性的及びジェンダーに基づく暴力を防止するための援助を提供することにより支援することにコミットする。

(ii) 我々の支援は,性的及びジェンダーに基づく暴力の被害者の保護及び司法へのアクセスの向上,医療,法律,心理社会的,及び生活に関する幅広いサービスの拡充,教育及び訓練を通じた彼女らの能力と経済的自立の強化を含む。

4)防災における女性の代表の醸成

「仙台防災枠組2015-2030」に基づき,我々は防災における女性の貢献を認識し,防災,救援,災害復旧,復興の全ての局面における女性の意思決定への関与とリーダーシップを奨励する。