データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] サイバーに関するG7の原則と行動(G7伊勢志摩首脳宣言付属文書)

[場所] 
[年月日] 2016年5月27日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

目指すべきサイバー空間

・ 我々は,インターネットの開放性,相互運用性,信頼性及び安全が,その発展と成功の鍵とであり,今後もそうあり続けること,また,インターネットが自由,民主主義及び人権といったG7共通の価値を高めることを確認する。

・ 我々は,情報の自由な流通がグローバルな経済及び開発を促進する基本原則であり,デジタル経済の全ての活動主体によるサイバー空間への公平かつ平等なアクセスを確保するものであることを再確認する。

・ 我々は,プライバシー,データ保護及びサイバーセキュリティを尊重し,及び促進することの重要性を再確認する。

・ 我々は,インターネットガバナンスに関するマルチステークホルダー・アプローチへのコミットメントを強調する。

・ 我々は,オンラインでもオフラインと同様の人権を享受しており,我々はオンラインにおいて人権及び法の支配の原則を促進し,及び保護することに専心する。

・ 我々は,地球規模課題に対処し,持続可能な開発のための2030アジェンダの進展を成し遂げることについての情報通信技術(ICT)の役割を強調する。

サイバー空間における安全及び安定の促進

・ 我々は,国家及びテロリストを含む非国家主体の双方によるサイバー空間の悪意のある利用に対し,密接に協力し,断固とした強固な措置をとることを約束する。

・ サイバー空間における安全と強靱性は,ビジネス,研究及び社会全体を含むサイバーセキュリティ,サイバー防衛及びサイバー犯罪対策に責任を負う様々な活動主体による国内及び国際双方における密接な協力と連携によってのみ十分に達成できる。

・ 我々は,人員の勧誘,資金調達,訓練,作戦実施,暴力の扇動といったテロ目的でのサイバー空間の利用が増加していることを懸念する。

・ 我々は,国際連合憲章を含む国際法がサイバー空間において適用可能であることを確認する。

・ 我々は,一定の場合には,サイバー活動が国際連合憲章及び国際慣習法にいう武力の行使又は武力攻撃となり得ることを確認する。また,我々は,サイバー空間を通じた武力攻撃に対し,国家が,国際人道法を含む国際法に従い,国際連合憲章第51条において認められている個別的又は集団的自衛の固有の権利を行使し得ることを認識する。

・ 我々は,既存の国際法のサイバー空間における国家の行動への適用,平時における国家の責任ある行動に関する自発的な規範の促進並びにサイバーに関する国家間の実務的な信頼醸成措置の発展及び実施から構成される国際的なサイバー空間の安定に関する戦略的枠組みを促進することにコミットする。この文脈において,我々は,2015年の国連政府専門家会合(GGE)の報告書を歓迎するとともに,全ての国に対し,この報告書の評価及び勧告を指針とすることを要請する。我々は,既存の国際法のサイバー空間への適用に関する更なる議論及びサイバー空間における国家の責任ある行動に関す

る自発的な規範の継続的な特定及び促進を含め,新たなGGEの作業に期待する。

・ 我々は,信頼を促進し,ICTの利用から生じる紛争のリスクを軽減するため,国家間

のサイバー空間に関する信頼醸成措置の継続的な発展及び実施を支持する。

デジタル経済の促進

・ 我々は,革新的なビジネスモデルと新たな技術によって加速されたデジタルイノベーションが,社会包摂的な経済成長及び雇用と富の創出のための推進力であることを認識する。

・ 我々は,ICTに関する標準を通じた相互運用性を促進しつつ,世界中の連結性及びアクセス可能性を改善することに重点を置いた透明性のある政策及び法的な枠組みを採用することにより,社会的及び経済的な利益を可能とする環境を促進することにコミットする。

・ 我々は,引き続き,インターネットのグローバルな性質を維持し,国境を越える情報の流通を促進し,また,インターネット利用者が自らの選択したオンラインの情報,知識及びサービスにアクセスすることを可能とするICT政策を引き続き支持する。我々は,適法な公共政策の目的を考慮し,不当なデータ・ローカライゼーション要求に反対する。

・ 我々は,プライバシー及びデータ保護についての高い基準を満たせるよう,管轄を越えた効果的なプライバシー及びデータ保護を一層促進するような政策枠組みを発達させるよう努力する。また,我々は,プライバシー及び個人データの保護を設計段階全体を通じて考慮する「プライバシー・バイ・デザイン」などの積極的なアプローチを歓迎する。

・ 我々は,プライバシーを保護し,サイバーセキュリティを強化することが,ビジネス上の及び消費者の信頼を確保し,我々の経済成長に極めて重要なイノベーションを促進することに役立つことを認識する。

・ 我々は,営業秘密を含む知的財産の開発及び保護の重要性を確認する。我々は,強固な知的財産制度が,開かれた市場,競争,イノベーション及び成長を促進することを認識する。我々は,大量販売用ソフトウェアのセキュリティを評価することに関する政府の正当な関心を認識しつつ,市場へのアクセスの条件として,それらの製品のソースコードへのアクセス又はその移転を求める一般的に適用される政策に反対する。

・ 我々は,いずれの国も,企業又は商業部門に競争上の優位性を与えることを意図して,ICTにより可能となる,営業上の秘密又はその他の企業秘密情報を含む知的財産の窃盗を実行し,又は支援すべきでないことを再確認する。

・ 我々は,デジタル連結世界憲章の採択を歓迎する。

G7の一致した行動

・ 我々は,経済成長のためにデジタル連結世界の潜在力を最大化し,地球規模課題に対処するために連携することにコミットする。

・ 我々は,デジタル・ディバイドを乗り越え,革新的なビジネスモデル及びICTへの低価格でユニバーサルで質の高いアクセスを可能にし,デジタルリテラシーを増進することにより,生活の質の改善のためのデジタル技術の採用を促進する。

・ 我々は,サイバー空間における安全及び安定を促進するため,国家のコンピューターセキュリティ事案対応チーム間の協力,能力構築及び意識啓発の促進を通じることを含め,我々の協力を強化していくことに努める。

・ 我々は,サイバーセキュリティへの脅威情報の共有を強化すること及び金融,エネルギー,運輸,通信といった重要インフラのサイバーセキュリティの改善のために協力することにコミットする。

・ 我々は,サイバー空間における繁栄を加速し,イノベーションを保護し,及び安全を強固にする安全,プライバシー及び強靱性に関する研究及び開発についての連携を促進することにコミットする。

・ 我々は,更に多くの国がサイバー犯罪に関するブダペスト条約に参加することを奨励するとともに,サイバー犯罪の捜査と訴追の有効性を高めるための連携を改善するためにG7ローマ・リヨン・グループのハイテク犯罪サブグループ及びその24/7ネットワークによってなされた重要な取組を支持する。

・ 我々は,G7のいずれかの国で開催されるオリンピック・パラリンピック大会や多国間首脳会議といった大規模な国際的イベントにおけるサイバーセキュリティを促進するため,密接に連携することにコミットする。