データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7ルッカ外相会合共同コミュニケ

[場所] ルッカ,イタリア
[年月日] 2017年4月11日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の外務大臣及びEU上級代表は、国際の平和及び安全に影響を与える数々の主要な世界的課題について議論するために、4月10日から11日、イタリアのルッカに集まった。我々は、民主主義、人権の保護・促進、及び法の支配という共通の原則を共有するとともに、それらに固くコミットしている。我々は、国々のグループとして、急速に展開する国際環境の中で、我々の利益及び安全に対して、多面的なレベルで影響を与えている最も喫緊の諸課題に共に向き合うべく連帯する。我々は、そのような変化する環境に柔軟性をもって適応する必要性を認識し、また、ルールに基づく国際秩序の推進、テロ及び暴力的過激主義への対処についての我々の努力を調整し、安定、包摂性及び繁栄を推進し、並びに我々自身の目的を共有する第三国の取組を支援する決意である。

 以下に掲げる意見交換及び連携的行動に加えて、我々は、「サイバー空間における責任ある国家の行動に関するG7宣言」を採択し、及び「不拡散・軍縮に関するG7声明」を是認した。

テロ・暴力的過激主義対策

 我々は、あらゆる形態のテロ行為に対する強い非難を改めて表明する。我々は、被害者の家族及びそれらの者の政府に対し、最も深い同情と哀悼の意を表明する。

 テロ及び暴力的過激主義に対抗すること、並びに犯罪者に裁きをもたらすことは、引き続き国際社会にとっての最優先事項である。犯罪者に自身の行動の責任を負わせることは、被害者にとって極めて重要であるだけでなく、テロ防止にも役立ち、暴力は政治的及びイデオロギー的な不満に対する許容できない反応であるという強いメッセージを送るものでもある。テロ及び暴力的過激主義に対抗する取組において連帯しつつ、我々の対応は、我々が共有する価値及び規範に関するシステムを基礎とし続ける。我々の社会が依って立つそれらの原則は、引き続きこの共通の脅威に対する第一にして最良の防衛である。テロ及び暴力的過激主義に対抗する中で、我々は、我々の協調的行動の礎石として、人権の尊重を堅持すること、基本的自由を推進すること、包摂的な文化及びジェンダー間の平等を促進することを継続する。我々は、あらゆる形態の暴力的過激主義の出現及び拡散を防ぐための基礎として、平和的共存、多様性の尊重、女性及び女児の尊厳の尊重、寛容及び包摂的な対話の促進に対する我々のコミットメントを再確認する。

 国際協力は、テロとの闘いにおいて引き続き最も重要である。我々は、テロとテロに対して資金を供与し、我々の安全や経済成長を損なう国際組織犯罪との間の関連性に対処することを目的とした最近の取組のみならず、関連する全ての国連安全保障理事会決議及び国際文書の完全な履行を支持し続ける。また、我々は、各国がこの課題に対処することに必要な、戦略、専門性及び手段を備えることを確保するために、「暴力的過激主義の防止(PVE)のための国連事務総長行動計画」を支持し続ける。

 我々は、国連のテロ対策に関する組織再編に向け進行中の取組を注視し、国連の新テロ対策担当部署を所掌する新事務次長職の設置を視野に入れた国連事務総長の提案を歓迎する。我々は、この新しい部署が、国際及び地域機関との協力を促進し、より良い一貫性、調整、及び現在の取組の重複の回避を確保しつつ、国連システム内において暴力的過激主義の防止を組織化することを含む国連のグローバル・テロ対策戦略の4つの全ての柱の完全な履行のために主導的な役割を果たすことを期待する。我々は、このプロセスに対する透明性のあるアプローチを支持する。創設メンバーとして、我々は、テロ及び暴力的過激主義対策の活動において、コミュニティの働きかけ及び強靱性に関するグローバル基金(GCERF)、ヘダヤ・センター、並びに司法・法の支配に関する国際研修施設(IIJ)のみならず、グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)への支持を継続する。

 第三国とのパートナーシップは引き続き優先事項である。我々は、母国に帰還し、その他の統治の及ばない場所に移動し、又は既存の社会的・政治的不満につけこむこと、及び犯罪ネットワークと連動することにより、国々を不安定化することを試みる、外国人テロ戦闘員による脅威を引き続き警戒する。我々は、テロ攻撃計画を阻止するため、及びプロパガンダとしてテロリストが拡散する暴力的なメッセージに対抗するため、帰還する外国人テロ戦闘員の国境を越えた移動の監視、情報及び証拠の交換、並びに中東、中央アジア、北アフリカ、サヘル地域、アフリカの角、アラビア半島、南東ヨーロッパ、東・東南・南アジアの国々との提携に関する協力を促進する。我々は、犯した罪につき個人を訴追することをあらゆる可能な場所において追求するが、また、適切な場合には、更正及び社会復帰に関する取組を含む、紛争地域から帰還する外国人テロ戦闘員及び家族による脅威を低減することを目的とする活動、並びに暴力的過激主義に対するコミュニティーの強靱性を強化する活動を支援していくことにコミットする。

 我々は、暴力の過激化及び暴力的過激主義の防止には、我々の社会の内外において、それらの拡散を助長する状況への対処に向けた取組が必要であると信じる。我々の目標を達成するためには、社会全体的なアプローチが極めて重要である。我々は、したがって、暴力的過激主義に対抗する効果的なコミュニティーレベルでの対応を構築するために、市民社会の代表、地域コミュニティー、若手・宗教指導者、女性、収容施設、教育機関及び民間セクターとの最も幅広い関与を引き続き追求する。

 我々は、テロ及び暴力的過激主義を支持する言説に対抗し、並びにISIL/Da’esh及びその他のグループのプロパガンダの詭弁をあばくだけでなく、我々の共通の価値、並びに多様性及び平等な市民権を尊重する、開放的かつ包摂的な社会への積極的、建設的及び統合的な参画に基づく世界観を増進する、代替的かつ前向きな言説を確立することを目指す。

 我々は、身代金目的の誘拐及び組織犯罪に起因する資金を含むテロ資金への対策において主要な役割を果たすこと、関連する国連安全保障理事会決議や国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(UNTOC)を含む関連する国際文書の完全な履行を支援すること、及びこれらの問題に関する主要な会議や国際的な構想に積極的に参加することに引き続きコミットする。この関連で、我々は、UNTOCの締約国となるために日本が現在行っている努力を歓迎する。我々は、テロと関係する、又は何らかの形の支援をテロに供与する個人、集団、企業及び団体が生み出す資金の流れの源泉を崩壊させる上での調整及び有効性を促進するために、国際的な多国間の取組を国内的実行に引き続き統合していく。

 民間セクター、市民社会、学術界及びその他の集団との継続的な関与もまた鍵となる要素である。我々は、市民社会、ソーシャル・メディア・カンパニー及びコミュニケーション・サービス・プロバイダーの、テロ及び暴力的過激主義のためのプロパガンダを拡散することを目的とした内容を自発的に特定し、及び削除することに資する重要な役割を認識する。我々は、一般的な利用条件を更新及び改善すること、並びにオンライン上の暴力的過激主義に対処するための技術的な解決策を策定することによるアプローチの強化を続けることにより、正当な削除要請の実施を容易にすることをそれらの者に引き続き奨励する。

 端末間の暗号化されたコミュニケーション・サービスの利用の増加は、内容を法執行、治安、情報機関の手の届かないところに置くものである。我々は、権限のある当局の要請により政府が合法的かつ体系的な形で、クリティカル・データ及びコンテンツを得ることを許容するための解決策を見出すために、産業界及びより広範なパートナーと関与する。これは、犯罪捜査を容易にし、テロリストがオンライン上でコミュニケーションをとることができる安全な場所が存在しないことも確保しつつ、プライバシーの権利及び脆弱な利用者の人権を保護する形で行われる。

 我々は、テロ目的のためのインターネット利用に対する闘いにつきコミットするのと同様に、言論の自由及び自由で平等なインターネットへのアクセスを保護するための努力を惜しまない。

 我々はまた、移民の違法な密入国、並びに人身、薬物、野生動植物、銃器その他の武器の取引を含む、特に直接的又は間接的にテロを支援又は容易にする国際組織犯罪と闘う上での民間セクター及び市民社会とのパートナーシップのみならず、法執行及び刑事司法当局間の協力を促進することを引き続き追求する。我々はまた、特にテロ活動の資金調達及び紛争地帯における文化的多様性を根絶する手段としてテロ集団によって行われる、古文化財や文化遺産の密輸に対抗する上での法執行及び刑事司法当局、民間セクター並びに市民社会の重要な役割を強調する。

 我々は、捜査、テロリスト及び組織犯罪集団による文化財の不法取引への対処における協力及び情報交換、並びに美術館、関連するビジネス団体、及び古文化財市場参加者との関与の重要性を強調する、国連安全保障理事会決議第2347号が全会一致で採択されたことを歓迎する。

 我々は、G7伊勢志摩サミットで採択された「テロ及び暴力的過激主義対策に関するG7行動計画」を完全に履行する決意を改めて表明する。

 我々は、我々の国民の安全を守るために、国際民間航空機関(ICAO)及び必要に応じ他国との直接的な行動の双方を通じて、個別的及び集団的に、効果的な航空安全措置のより良い実施を促進するための取組を増進する。

 最後に、我々は、G7ローマ・リヨン・グループが、国境及び航空の安全、優先国の国際刑事警察機構(INTERPOL)データベースとの連結性の強化、及びテロ対策に関連するその他の全ての協力分野に関する課題に対する取組を継続することを奨励する。

ISIL/Da’esh、シリア、イラク

 我々は、ISIL/Da’eshに対抗するグローバル連合の枠組みの中で、また国際及び地域機関内において、並びに国内及び二国間による取組を通じて、ISIL/Da’eshのシリア及びイラクでの存在の縮小、イラクにおけるISIL/Da’eshの支配下から解放された地域の安定化、紛争地帯への外国人テロ戦闘員の流入の抑制、ISIL/Da’eshの資金源のアクセスの低下、及び野蛮なプロパガンダへの対抗という点で、大きな進展を成し遂げた。我々は、グローバル連合の団結及び成果を称賛し、ISIL/Da’eshを撲滅するという最終的な目的を達成するため、その全てのメンバーからの更なるコミットメントを求める。我々は、ISIL/Da’eshの最終的撲滅を追求する中で、特にラッカ及びモースルといったISIL/Da’eshにより支配された地域の解放を完了するため、また、ISIL/Da’eshにより犯される暴力、広範かつ野蛮な人権違反・侵害及び人道法違反に終わりをもたらすため、これらの取組を継続することにコミットする。

 我々は、宗教及び民族上の少数派に属する人々に対するものを含む、これらの犯罪及び侵害に対する最も強い非難を改めて表明する。国際的な懸念である最も深刻な犯罪を含むイラク、シリア及びそれ以外の地域におけるISIL/Da’eshによる全ての犯罪の責任はとられなければならず、そのようなものとして、我々は犯罪者に対し責任を課すための取組を支援する用意がある。

 我々は、イラク及びシリアにおいて、ISIL/Da’eshを打倒することを決意する。我々は、ISIL/Da’esh及びその他のテロ組織が、その地域において再出現しないことを確保するために、地域のパートナーと協働する。この目的のため、我々は、イラクにおける包摂的な改革及び国民融和、並びにシリアにおける2012年ジュネーブ・コミュニケ及び国連安全保障理事会決議第2254号に基づく真摯な政治的移行、そして、ISIL/Da’eshから解放された地域の即時の安定化を呼びかけ、シリアの反対派により支配される地域におけるガバナンスを支援し、公共サービスの復旧、法の支配、難民や国内避難民の安全、自発的かつ持続可能な帰還を確保する。我々は、シリア及びイラク社会の多様な民族、多様な宗教、多様な信仰という特徴を維持することの重要性を改めて表明する。

 我々はまた、地域の安定及び安全に対するISIL/Da’eshの分派、並びにイラク及びシリアの国外における秘密ネットワークによる脅威を認識する。我々は、ISIL/Da’eshが、統治されていない若しくは不安定な地域につけ込むこと、又はそれらの地域において拡大することができないことを確保するため、世界中でオンライン上のメッセージ送付も含めISIL/Da’eshに対処するためにより多くのことが行われる必要があることを認識する。

シリア

 6年に及ぶシリア内戦の中で、シリアの人々は最も著しい苦痛に耐えてきており、この紛争を終結させるためのあらゆる努力を惜しむべきではない。

 我々は、継続する暴力及び人道アクセスの欠如につき、深刻な懸念を表明する。我々は、全ての当事者、特に、シリア政権、並びにロシア及びイランを含むその支援者に対して、支援を必要とする全ての人々に対し持続可能で、制限のない、十分な人道支援を認めることを求める。

 我々は、2016年12月29日に発表されたロシア及びトルコにより仲介された停戦を含む、シリア全土における停戦を成立させることを目的とした、国際的な努力を歓迎した。

 我々は、1月23日から24日にアスタナで開催されたシリアに関する国際会議において発出された、イラン、ロシア及びトルコによる共同声明、並びにカザフスタンの首都におけるそれに続く会議に留意しつつ、それらの国々が自らのコミットメントに従い行動し、また、当事者に対し、停戦を守り、かつ停戦の完全な遵守を確保し、暴力を低減し、信頼を構築し、制限のない人道アクセスを確保し、民間人の保護及び自由な移動を確保するよう、自国の影響力を行使することを促す。

 この関連で、我々は、主にシリア政権及びその同盟者による、休みない停戦違反につき、深刻な懸念を表明する。シリア政権の主張にもかかわらず、この活動は、国連により指定されたテロリスト集団を主に標的とするものではない。

 我々は、全ての当事者に対し、シリア全土において、支援を必要とする全ての人々に対し、迅速、安全、かつ制限のない人道アクセスを要求する、関連の国連安全保障理事会決議を早急かつ完全に履行することを緊急に求める。我々は、全ての当事者、特にシリア政権による、シリア全土における包囲の永続的継続、民間人の飢餓や民間人に対する爆撃、医療施設や医療関係者に対する数々の攻撃、及び国際人道法違反を非難する。

 我々は、国連安全保障理事会決議第2254号及びジュネーブ・コミュニケに従い、政治的移行を交渉するための、包摂的で信頼のおける政治プロセスをジュネーブにおいて開催するための国連特使の取組を称賛し、支持する。我々は、政治問題に関する「シリア人対話」は、国連の庇護の下にあり、そして国連安全保障理事会決議第2254号により示されたロードマップ及び目的に沿うべきであることを強調する。

 我々は、シリアにおける有意義で、実行可能な政治的解決の基礎となる、信頼のおける、包摂的な移行ガバナンスを前進させることを目的とした、ジュネーブにおける国連により仲介された政治対話に対する、国際シリア支援グループ(ISSG)のメンバーの強固かつ継続的な支援の重要性を改めて表明する。この関連で、我々は、シリアの人々の正当な願望を満たし、自由かつ民主的に自身の未来を決めることを可能とする、信頼のおける政治的移行を目的とした、高級交渉委員会(HNC)による関与を歓迎し、同委員会への確固たる支持を再確認する。我々は、全ての当事者が有意義な形で国連主導の政治交渉に関与することを求める。特にシリア政権は、この恐ろしい紛争の平和的及び永続的解決を達成するために、国連主導プロセスに対する真摯な関与を最終的に示さなければならない。

 我々は、シリア国家の統一性、主権、領土の一体性及び独立へのコミットメントを改めて表明する。

 我々は、特にISIL/Da’eshやアルカイダといった、シリアにおけるあらゆる形態のテロとの闘いに対する我々のコミットメントを改めて表明しつつ、暴力の過激化、過激主義及びテロの終結のための取組には、平和的な政治的移行及び和解プロセスに向けた真剣かつ真摯な取組が含まれる必要があることを強調する。

 我々は、シリアにおける兵器としての有毒化学物質を含む化学兵器の大量の使用に関する継続的かつ警鐘を鳴らす報告につき、深刻な懸念を表明し、シリア軍が3例において、兵器としての有毒化学物質の使用に責任を有する旨、また、ISIL/Da’eshが1例において、化学兵器の使用に責任を有する旨を結論付けた化学兵器禁止機関(OPCW)及び国連により委任された共同調査メカニズムの絶対的に必要な作業に関する強い支持を改めて表明する。我々は、化学兵器の使用がタブーであり続けることを確保する決意を表明する。この関連で、我々は、OPCW及び国連により委任された共同調査メカニズムの報告書において言及されたおぞましい行為に責任を有する者を非難し、責任を課すことを目的とした国連安全保障理事会決議案に反対した拒否権につき、遺憾に思う。

 我々は、4月4日のイドリブ南部のハーンシェイフーン地域における空爆において化学兵器を使用したとの報告により、驚がくするとともに、戦慄する。シリアによる化学兵器及びそれらの運搬手段の保有は、国連安全保障理事会決議第2118号及び化学兵器禁止条約の下、違法である。その後のシャイラート空軍基地に対する米国の軍事行動は、シリアにおける致死的な化学兵器の拡散及び使用を防止及び抑止するための、この戦争犯罪に対する、注意深く計算された、対象が限定された対応であり、4月4日の化学兵器による攻撃と直接関連するシリア軍の標的に向けたものであった。

 我々は、OPCWの事実調査団の調査に対する完全な支持を表明し、事実調査団が化学兵器が使用された、又は相当程度の確率で使用された旨結論付ける場合には、OPCW及び国連の共同調査メカニズムは、迅速に犯罪者を特定するとの権限に従い、直ちに調査を行うべきである。我々は、シリア・アラブ共和国及びシリアにおける全ての当事者に対し、この極悪な事件に関する調査が、早急に結論を出せるよう、OPCWと完全に協力することを求める。我々は、シリア政権の同盟国として、責任を有するロシア及びイランに対し、シリアが化学兵器禁止条約下の全ての義務を遵守することを確保するために、自身の影響力を用いることを求める。

 シリアの化学兵器についての申告における、未解決の不一致、非整合性及び矛盾は、引き続き重大な懸念であり、また緊急に対処されなければならない。

 我々は、この悲劇的な危機を終結させる機会があると信じ、また、全ての主要なパートナーが自らの国際的な責任に従って行動し、この機会を捉えることを希望する。ロシアは、この紛争を解決し、安定と統一されたシリアを回復し、並びにISIL/Da’esh及びテロを打倒することに資する潜在力を有している。我々は、ロシアに対して、ジュネーブ・コミュニケ及び国連安全保障理事会決議第2254号に従って、現実かつ真のシリアにおける政治プロセスの促進のために取り組むこと、並びに現実の停戦の執行と人道アクセスの改善、及び国連主導の和平プロセスへの真剣な関与から開始し、紛争を終結させるよう自らのシリア政権に対する影響力を用いることを促す。ロシアが自らの影響力を用いる用意があるのであれば、その場合、我々は、シリアにおける紛争を解決し、政治的解決を追求し、並びに安定化及び復興のコストに最終的に貢献することにつき、ロシアと共に取り組む用意がある。

 シリアにおいて甚だしく、かつ体系的に犯される違反行為に対して責任を課すことは、最重要である。犯罪者の責任追求を確保できないことはいかなるものであれ、更なる残忍行為及び継続的な国際規範の軽視をもたらす。我々は、シリアにおいて実行された甚だしい国際人権法違反及び侵害に責任を有する者に対して責任を課すことを目的とした、国際的で公平な独立した調査メカニズムを設立する決議が国連総会により採択されたことを歓迎する。我々は、アレッポの事案、国連及びシリア・アラブ赤新月社(SARC)の人道支援車列に対する攻撃、ダマスカスの給水をめぐる戦闘に関する調査委員会による直近の報告に大きな懸念を持って留意する。我々は、シリア政権に対し、国際的なオブザーバーのシリアへの安全、自由、かつ制限のないアクセスを許可することを改めて要求する。これらの国際法違反につき責任を有する全ての者には、責任が課される。我々はまた、恣意的に拘束されている全ての人々、特に女性と子供を解放する義務を強調する。

 我々は、ジュネーブにおける「シリア人対話」に対する国際的支援の促進、シリアにおける人道危機の対処を目的とし、また、シリア避難民及びシリア難民を受け入れている諸国に対する支援の維持のため、4月5日にブリュッセルで開催された「シリア及び地域の未来の支援」に関する国際会議の成果を歓迎する。我々は、シリアの復興に対する国際的支援の重要性を再確認する一方で、信頼のおける政治的移行が確固たる形で進行しない限り、そのような方向に向けた行動は可能とはならないことを改めて表明する。

イラク

 我々は、その安定及び良い統治が地域全体の将来にとって引き続き中核を成すイラクの独立、主権、統一性及び領土の一体性に対し、継続的な支持を改めて明言する。

 我々は、グローバル連合の支援を受ける形での、ISIL/Da’eshを打倒し、モースルを解放するための軍事作戦におけるイラク軍の勇敢さ及び犠牲、並びに軍事作戦において民間人犠牲者を最小化し、民間人の保護を中心に置く、アバーディー首相のコミットメントを認識する。テロとの闘いは、宗派間の暴力を防止し、宗派間の緊張を沈静化しつつ、国際人権を完全に尊重する形で、実施されてのみ成功する。我々は、イラク治安部隊及びペシュメルガ部隊がISIL/Da’eshに対し共闘することを可能とした、現場における作業分担に関するイラク政府とクルディスタン地域政府との間の合意を歓迎する。我々は、この軍事協力が、ISIL/Da’esh後のイラクにおける政治協力のモデルとなることを希望する。

 我々は引き続き、モースル作戦により生じ、イラク全土にわたる緊急の必要性に対処する、イラク当局、国連及びグローバル連合による取組を強く支持し続ける。我々は、依然として国内避難民となっている、又は性別に基づく暴力を受けた被害者に対する医療、心理的・社会的サービスを含む、人道的支援を必要としているイラク人の数を深く懸念する。我々は、ドナー国に対し、支援を必要としている全ての人々に対して行き渡るよう人道支援をイラク国内に幅広く提供することにより、当該危機に対処し続けることを求める。我々は、解放された地域の安定化に最も高い優先度を付与しており、イラク社会の多様な文化的、民族的及び信仰的特徴を維持しつつ、国際人権法及び国際人道法と整合的に、人々が安全で、自発的な形で故郷に帰還することができるよう、パートナーに対し、国連及びその他の国際機関と緊密に協力する形で、イラクによる努力を支援することを求める。この関連で、全てのコミュニティーの人々にとっての、安全、公共の秩序及び法の支配の守護者としてのイラク政府及び何よりも警察の役割は、イラクの将来にとって一層戦略的に重要である。

 我々はまた、全ての武装集団が、イラク国家の指揮と命令の下に置かれる必要性を強調する。我々は、地域の全ての国々に対し、建設的役割を果たし、イラク政府によるイラクの長期的・持続的平和及び安定を回復する取組を支援することを求める。

 我々は、アバーディー首相に対する完全な支持を改めて表明するとともに、イラク政府が、国家及び地方レベルでの融和の進展のための取組、並びに政治及び経済改革の実施を継続することを強く奨励する。我々は、出身、民族及び信仰にかかわらず全てのイラク人が参画するイラク主導の政治プロセスは、良い統治を促進し、包摂性を実現し、イラク社会の多元的な特徴を維持するための国民融和に向けた不可欠な一歩であると考える。我々はまた、全体の政治プロセス及び融和に向けた取組への積極的な貢献となる、来る地方及び国政選挙が公正で、透明に行われることの重要性を強調する。我々は、自国の財政的及び経済的な脆弱性に対処するためのイラクの取組のための支援を適切に提供し、促進することへの我々のコミットメントの重要性を再確認する。我々は、ISIL/Da’eshによるイラクにおける化学兵器の製造及び使用に関する主張につき、深刻な懸念を改めて表明する。我々は、イラク政府のこの関連の継続的な取組を歓迎し、テロ組織による化学兵器使用によりもたらされる国際の安全に対する深刻な脅威を緩和するため、OPCW及びその他の関係機関と共に、並びにそれらを通じて取り組んでいくことについての我々のコミットメントを再確認する。

 我々は、イラクにおける文化遺産に対する、ISIL/Da’eshによってもたらされた損害を認識し、2017年2月23日から24日にパリで開催された、ユネスコのイラク解放地域における文化遺産保護に関する国際調整会議の成果を温かく歓迎する。我々は、パリ会議で合意されたユネスコにより起草されることになる行動計画の進展を支持する。

リビア

 リビアにおいては、これまで得られた成果を確固たるものにし、テロと闘い、安定を達成するためには、国際社会からの団結した支援が鍵である。我々は、リビアの主権、一体性及び統一性を維持すること、並びに政治的解決が見出し得る唯一の枠組みであるリビア政治合意(LPA)を支援することへのコミットメントを再確認する。我々は、ローマ、ウィーン及びニューヨークにおける閣僚会合で決定された原則を想起する。

 我々は、国連安全保障理事会決議第2259号に沿って、LPAの下での正統な行政当局として、ファーイズ・アル・シラージュ首相が率いる首脳評議会(PC)及び国民統一政府(GNA)に対し、強い支持を改めて表明し、安定化プロセスを崩壊させるあらゆる試みに対して、強い反対を強調する。我々は、依然としてLPAの外にいる者を含め、果たすべき役割を持つ全ての当事者に対して、完全な政治的和解の達成という目標に向け、妥協の精神をもって関与するとともに、国内的分裂を悪化させ、更なる紛争を助長するような行為をやめることを求める。我々は、国連リビア支援団(UNSMIL)及びその仲介努力に対する完全な支持を再確認する。

 我々は、政治的な相違を埋め、リビアの機構をより責任があり、包摂的で、効率的にするための進行中の取組を称賛する。我々は、国連主導の政治プロセスの枠組みにおけるLPAの支援における近隣国の継続的な取組を称賛する。我々は、リビア及びその民主的な移行に対する地域の支援の重要性を強調する。

 リビアの問題に対する軍事的解決は存在しない。解決は、包摂的な政治対話及び国民和解を通じてのみ、達成し得る。我々は、リビアにおいて国家権力及び法の支配が行き渡り、安全で、民主的な、繁栄する、統一的な国家にリビアを変えたいというリビアの人々の願望を共有する。

 我々は、リビア経済対話によりもたらされた進展を歓迎し、PCによるリビアの経済当局及び資源に対する独占的な管理の必要性を想起する。我々は、全てのリビア人の福祉のため、財政及び金融政策を実施する上で必要な手段をGNAが有することを確保するために、PC、GNA及びリビア中央銀行(CBL)が効果的に協力することを引き続き奨励する。我々は、GNA及びCBLに対して、正当な経済を機能させ続け、政府活動に必要な資金を確保し、予算を管理下に置き、及び流動性危機を終わらせるという両者の合意を完全に実施することを求める。

 我々は、全ての当事者に対して、石油三日月地帯において緊張を高めることを慎み、全てのリビア人の利益のために、全ての石油インフラ、石油資源及び石油収入を保全する永続的な解決に向け取り組むことを特に促す。我々は、石油インフラ、石油生産及びPCの権限の下で活動するリビア国営石油公社(NOC)による独占的管理下での石油輸出を保つためのLPAのマンデートの完全な実施を支持する。NOCにより生み出される全ての石油収入は、CBLに送金されなければならず、CBLはPCの処分権の下に資金を信託しなければならない。我々はまた、リビアの首都における武装集団による自制を求める。

 我々は、ISIL/Da’eshとの闘いにおいて、リビア軍によりもたらされた成果を称賛する。我々は、シルテにおいてISIL/Da’eshが打倒されたことを歓迎し、ベンガジ及びその他のリビア国内の地域におけるリビアによるISIL/Da’eshとの闘いに関する取組を称賛し、並びにテロとの闘いの取組に参画する上で、継続的な成功のために、文民による監督下の統一的な軍が決定的な重要性を有することを強調する。我々はまた、解放された地域において公共サービス及び民主的な統治を回復するためのガバナンスの必要性を強調する。我々はまた、最後の化学兵器の前駆物質の除去につながった多国間の取組を称賛する。

 同時に、我々は、人身取引及び移民の密入国につき、引き続き深く懸念する。我々は、全てのリビアの当事者に対し、難民及び移民の基本的な権利の尊重を確保し、権利侵害から彼らを守るべく、現場のニーズへの対応を改善するため、人道支援機関への安全なアクセスを確保することを求める。

 我々は、あらゆる形態の犯罪活動との闘いを継続しつつ、LPA及び和解の支持を広げ、治安部隊を含めた効果的な国家機関を強固にし、公共サービスを回復し、人々の苦しみを緩和し、インフラを保全かつ拡大し、経済を多様化し、移民の流れを管理し、及びテロの脅威を根絶するために、PC/GNA及びリビアの人々を支持することへの我々のコミットメントを再確認する。

サヘル・チャド湖地域

 我々は、サヘル地域の情勢を引き続き懸念する。マリの和平プロセスは、同国における和平を確立するのみならず、テロリストの重要な脅威、組織的犯罪の急激な増加及びサヘル地域全体における移民の流れに対処するためにも、引き続き、特に重要である。我々は、マリ和平プロセスの全ての当事者に対し、アルジェ和平合意の完全な履行に向けて、建設的に取り組むことを求める。我々は、G5サヘルプロセス及び対ボコ・ハラム掃討多国籍合同軍(MNJTF)のような更なる地域協力を通じて、テロ及び組織犯罪との闘いに関するサヘル及びチャド湖流域諸国の取組を称賛し、引き続き支持する。国際連合マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)及び欧州共通安全保障・防衛政策(CSDP)の枠組みにおける欧州派遣団は、地域の更なる安定のため、引き続き、等しく重要な主体である。我々は、ドナー、地域機関、及び受益国間の調和された取組を促進することを目的とした、大サヘル地域における小型武器(SALW)規制に関するG7-AUイニシアティブを歓迎する。

 我々は、2017年2月23日から24日に開催されたナイジェリア・チャド湖流域に関するオスロ会合の成果を称賛し、悲惨な人道状況を緩和するための更なる貢献、並びに同地域の予防的行動及び同地域の安定化措置のための協議グループの設置を称賛する。

アフリカ

 我々は、アフリカ大陸における民主的な統治、安全、安定、通商、及び発展を前進させるために、アフリカ諸国との共同の取組及びパートナーシップを支持する。

 アフリカ連合及びアフリカ大陸における地域機関は、我々の対等なパートナーであり、我々は、相互対話及び政策の調和を通じて、包摂的な協調を共に追求する。我々は、平和活動に関するものを含む、国際関係におけるアフリカの声を強化し、長期的な財政健全性及び機関のパートナーシップを促進するための、アフリカ連合主導の構想を歓迎する。

 我々は、アフリカの安定及び発展を支持し、そのオーナーシップを認識し、その結果として、我々は、対等なパートナーシップに基づく、そのエンパワーメントを支持する。我々のアフリカとの協力は、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びアディスアベバ行動目標の普遍的枠組み、並びにアフリカ連合のアジェンダ2063(「我々が求めるアフリカ」)の価値観と整合的である。この関連で、我々は、グテーレス国連事務総長によるアフリカ連合との協力を促進するための最近の取組を歓迎する。

 我々は、平和と安全は、成功裡の、かつ持続可能な開発の成果にとって、基本的な前提条件であること、及び平和と安全は、いくつかのアフリカ諸国において、依然として主要な懸念であることを認識する。複雑な脅威に対処するためには、平和支援活動が財政及びその他の面で持続可能であることを確保しつつ、全体的で統合的なアプローチをとることが必要となる。これはまた、信頼でき、かつ平和的な政治的移行のための重要な手段としての政治対話の奨励及び予防外交の強化を意味する。この観点から、国連及びアフリカ連合の調停努力は平和及び安定を向上させるために極めて重要である。

 テロ、すなわちアル・シャバーブ、ボコ・ハラム、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ、及びISIL/Da’esh等の集団による脅威、並びに暴力的過激主義は引き続き、アフリカの一部における懸念の要因となっている。良い統治の提供及び法の支配の保護は、紛争の要因に対処するために必須である。選挙は、民主主義の重要な側面を象徴し、選挙が、各国の憲法に沿った形で、定期的、自由、公正、透明性のある状況において行われることが重要である。我々は、アフリカのパートナーが、社会的緊張を緩和し、平和を維持し、民族間及び宗教間の対話を奨励し、若年化が進むアフリカの人口動態の変化にうまく対処することにより、政治的な包摂性及び安定のための取組を継続することを奨励する。

 安全及び開発は相互に関連する。経済成長、貿易及び持続可能な開発に焦点を当てることは極めて重要である。我々は、社会全体において開発を促進し、利益をもたらす、公正かつ持続可能な民間投資を奨励するための、強固なビジネス環境に資する国家的及び地域的な規制枠組みの、腐敗防止の取組に結合される形での創設を奨励する。質の高い教育、能力構築及び全ての人々に対する保健アクセス、電力、水、及び公衆衛生へのアクセス、食料安全保障、並びに女性及び若者のエンパワーメントは、永続的、持続可能かつ包摂的な開発、働きがいのある人間らしい仕事の創出及び安定の極めて重要な要素である。

 西アフリカにおける2014年から2016年のエボラ出血熱危機、結核、マラリア、HIVといった現在も続いている疫病並びに薬剤耐性疾患の発生及び拡散のような、何百万もの人命が失われ、何十億という経済的損失を伴った事案を認識しつつ、我々は、保健危機管理をよりよく調整し、これに関する継続的な関与を呼びかけるための世界保健機構(WHO)及びその他により着手されている初期改革を歓迎する。我々はまた、アフリカ疫病予防管理センターの作業を称賛し、WHO及びその他の機関と緊密に連携し、国際保健規則(IHR)の核心的な能力を構築するために、76の国及び地域を支援する我々の伊勢志摩コミットメントを再確認する。この関連で、我々は、WHOの新健康危機プログラム及び新たなWHOのIHRモニタリング・評価枠組みの実施を歓迎及び支持し、自然に、意図的に又は偶然に発生するものであれ、保健に関する緊急事態及び生物学的脅威を予防、発見、通知、及び対応する準備のための世界的な取組を支援することにコミットし続ける。

 我々は、非正規の移住、人身及び違法物資取引、国際テロ並びにサブサハラ地帯に影響を与えている気候変動による目に見える影響に関連する世界的な課題を認識する。我々は、人々の苦しみを緩和することを目的とする、共通の解決策を立案し、履行する必要性を認識し、アフリカにおける現在の危機への対処を強化することに向けた、国連事務総長の国際社会に対する呼びかけに関する我々の支援を強調する。

 我々は、人の移動はアフリカの経済にとって重要であり、多層的アプローチによって対処されなければならない横断的な問題を代表していることを認識する。人の移動が国際法に従って起こる場合、相互的な社会経済的進展を増進することができる。統治及び開発への投資を伴う形での効果的な国境管理は、人身、薬物及び武器の不法取引、移民の密入国、危機に瀕している野生動植物の違法な取引及びその他の犯罪行為と闘うとともに、最も脆弱な難民、移民及び人身取引の被害者の保護を強化する。

アフリカの角

 我々は、アフリカの角諸国及びより広い地域に影響を与える深刻な干ばつ危機を引き続き懸念する。当該干ばつは、政治的及び経済的安定や移住への影響のみならず、破壊的な人道的コストをもたらす。我々は、国際社会に対して、この課題に効果的に対処すること、及びその影響を最小化し、当該被害国におけるより長期的な強靱性を構築することを支援するための強固な努力を行うことを求める。我々は、ソマリアにおける最近の選挙及び進行中の制度構築プロセスにより示された前向きなステップを歓迎する。我々は、5月のロンドン・ソマリア会合が、ソマリアがより安定的で、安全かつ繁栄する国家になるために必要な、極めて重要な政治、安全、経済及び開発のコミットメントの実施を加速化する重要な機会を提供することに留意する。

イエメン

 イエメンにおける進行中の紛争による人道状況の深刻な悪化は、全てのイエメン人の将来の展望及び地域の平和と安定にとって重要な影響を有し、また、特に国内の複数の地域における飢餓の可能性を踏まえれば、引き続き深刻な懸念の要因である。我々は、全ての紛争当事者に対し、民間人に対する危害を回避し、敵対行為の持続的な停止の成立について即時に合意し、国連のリーダーシップの下での政治対話に回帰し、喫緊の飢餓の危険性を伴う更に深刻なレベルの食糧不足や栄養失調に直面する全ての社会集団の利益のために、全ての入国のための港及び国内の全ての地域に対する完全かつ安全な人道アクセスを保障するよう、緊急かつ差し迫った要請を改めて行う。

 イエメンが発展の道筋に回帰することは不可欠である。これは、イエメンの持続可能かつ繁栄する将来並びにイエメン及び地域の安全を確保するための唯一の道である。この危機に対する包摂的かつ平和的な政治的解決が、唯一の実行可能な選択肢である。我々は、全ての勢力に対し、敵対行為の停止を再び成立させるため、国連特使と建設的な関係を築き、包括的解決合意に至ることを目的とした対話を再開することを求め、イエメンのための国連特使による仲介努力を完全に支持する。また、我々は、国連が取組を強化することを奨励する。

 イエメンにおける持続的な和平を達成することは、地域全体の安定を実現し、テロ組織が蔓延する地域を除去するために不可欠である。我々は、イエメンにおけるあらゆる形態のテロに対抗することについてのコミットメントを改めて表明する。

イスラエル・パレスチナ紛争

 中東和平の達成は、引き続き、主要な優先課題であり、地域の安定と安全に資するものである。我々は、両者の平和及び安全を確保するものであり、並びに国連安全保障理事会決議第242号、第338号及び第1515号を考慮した、交渉による解決の達成を目的としたイスラエル・パレスチナ間の実質的な和平協議の遅滞なき再開を支持する。この枠組みにおいて、和平を追求する上で、地域のステークホルダーは中心的な役割を果たすことができる。我々は、双方に対し、状況を悪化させ、最終的地位の問題に関する交渉の結果を予断させ、更なる不信につながりかねない、一方的行為を避けるよう求める。

 同時に、我々は、特に治安、水、公衆衛生、エネルギー資源へのアクセスの分野及びパレスチナ経済の成長のための対話と実務的な連携を強く支持する。この関連で、我々は、紅海・死海プロジェクトのような、全ての当事者にとって有益な構想を称賛する。

 我々は、ガザ地区における深刻な人道状況及び治安情勢に対処する重要性を想起し、全ての勢力が国際法を遵守する必要性を強調する。

ウクライナ

 我々は、ウクライナにおける危機は、外交手段によって、また国際法及び国際的な原則の完全な尊重、並びにウクライナの独立、領土の一体性及び主権の完全な支持によってのみ解決され得るとの確信をもって連帯する。我々は、ロシア連邦によるクリミア半島の違法な併合に対する我々の非難を改めて表明し、同併合の不承認政策及び関係者に対する制裁を再確認する。我々は、クリミアにおける人権状況の悪化に関する信頼のおける報告につき懸念し、ロシア連邦に対して、国際人権監視ミッション及び人権NGOの適切かつ阻害されない、クリミアへのアクセスを確保することを求める。

 我々は、ウクライナ東部における紛争の平和的、持続可能、かつ永続的な解決を達成するために、ミンスク合意の履行に対する、我々のコミットメントを強調する。我々は、全ての当事者に対し、ミンスク合意を遅滞なく完全に履行することを要請する。紛争地域における治安状況は、直ちに安定化されなければならない。我々は、全ての当事者に対し、ミンスク合意の下で求められている完全な停戦につながる具体的な措置をとることを要請する。特に、我々は、ロシアが、自国のコミットメントに従って行動し、及び分離派が自らの義務を果たすことを確保するよう分離派に対し自身の影響力を行使することを期待する。

 我々は、ウクライナ危機の解決に向けた、ノルマンディー・グループの交渉努力及び欧州安全保障協力機構(OSCE)の多角的なコミットメントへの我々の最も強い支持を再確認する。我々は、OSCE特別監視団の活動を称賛し、当事者に対し、監視要員の安全及びセキュリティーを保証し、紛争地域全域への妨害されないアクセスを付与するよう求める。我々は、OSCE特別監視団に対する組織的な形での妨害及び更には威嚇を懸念する。

 コンタクト・ライン付近のウクライナ東部における人道状況及びアクセスは、引き続き懸念事項である。

 我々は、ウクライナにおける紛争についてのロシア連邦の責任について認識し、また、状況の改善のための全ての必要な措置をとることにより、ウクライナにおける平和及び安定を回復するための、今後のロシア連邦の枢要な役割を強調する。ロシアの行動は、我々が守り、堅持することにコミットしている原則が属するルールに基づく国際秩序に背ちしている。我々は、これらの原則の尊重を共有する道筋に回帰することについてロシアを説得するとの目標を持ちつつ、制限的措置及び制裁を含む広範な外交政策手段を用いることにつき、引き続き連帯する。我々は、全ての当事者に対し、外国軍部隊及び装備のウクライナの領土からの撤退、国境線のウクライナ側の地域のウクライナ管理下への復帰、必要としている人々への人道支援への安全なアクセスとその供給を含む、ミンスク合意の下での責任を果たし、コミットメントを履行するよう改めて求める。我々は、制裁の期間は、ロシアのミンスク合意における自身のコミットメントの完全な履行及びウクライナの主権の尊重に明確に関連付けられていることを想起する。

 我々は、野心的で、引き続き必要な改革アジェンダを実施することに関し、ウクライナを支援するという我々のコミットメントを維持する。我々は、制度及び行政改革の実施において、これまで得られた成果につき、ウクライナ政府を称賛するが、残された課題は多い。我々は、ウクライナ政府が、最も重要な分野、特に行政機関及び政治改革、司法改革、地方分権化、腐敗対策、並びに市民の自由、とりわけ表現の自由の促進を対象とすることを奨励する。ウクライナの改革の道筋にとって極めて重要な市民社会に対して、腐敗対策の取組が利用されるべきではない。社会及び経済改革による利益が、全てのウクライナ国民にとって目に見えるものであることが重要である。

 我々は、財政、司法、金融、エネルギー、保健、福祉、及び税関分野、並びに国有企業のコーポレート・ガバナンスにおける必要な改革を達成するための支持及び支援に引き続きコミットする。我々は、現在進行中のG7ウクライナ・サポート・グループによる取組及びウクライナ当局との建設的で生産的な対話への同グループの更なる関与を歓迎する。

 エネルギー安全保障は、ウクライナ及び世界にとって引き続き重要な課題である。我々は、より多様で強靱な国際エネルギー・システムを構築するために、エネルギー安全保障のためのローマG7エネルギーイニシアティブに対し引き続きコミットしている。

ロシア

 我々は、ロシアが重要な国際的なプレーヤーであり、ロシアとの協力なしでは解決できない地域的な危機及び世界的な課題があることを認識する。ロシアがルールに基づく国際安全保障秩序に回帰すること、及び再び協力的なパートナーになることは、我々の共通の関心事項である。我々は、この秩序の原則を堅持しつつ、引き続き、制限措置を含む広範な外交手段を活用する。同時に、我々は、国際法に完全に遵守する形でのテロ及び暴力的過激主義への対抗、移民問題との対峙、拡散との闘い、環境に関する喫緊の課題に対する答えを見いだすことを含む、ロシアとの共通の関心事項を有することを認識する。我々は、地域的な危機及び未解決の地域的課題の解決における、ロシアによる建設的な役割を歓迎する。我々は、これらの分野において個別的及び集団的にロシアと共に関与すること、及びより効果的な解決のために共通の課題に共同で対処する手段を積極的に見いだすことへの我々の関心を強調する。加えて、人と人とのコンタクトの拡大によって、我々の二国間及び多国間関係において信頼を育む基礎を形作ることができる。我々は、このようなコンタクトを強化する用意があり、ロシアに対して、独立した市民社会及びメディアの活動を制限する制限的な措置を破棄することにより、必要な空間を許容することを求める。

 同時に、我々はまた、ロシアに対して、他国の主権的事項の弱体化又は主権的事項に対する干渉を控え、及びそのような行為はいかなる将来的な協力にとっても非常に有害であることを認識することを求める。

イラン

 我々は、包括的共同作業計画(JCPoA)を不拡散体制に対する重要な貢献として支持する。JCPoAの継続的かつ完全な履行は、イランの核開発が実際は専ら平和的である旨の信頼を醸成する上で不可欠である。我々は、JCPoAの包括的な構造、及び全ての当事者による堅実な検証メカニズムへのコミットメントを評価する。我々は、イランのJCPoAへのコミットメントの遵守の確保や義務の保全のための監視及び検証を含む、それにより相互の信頼を増進する主要な役割を担う国際原子力機関(IAEA)によるイランにおける極めて重要な作業を称賛し、引き続き支持する。

 我々は、全ての当事者が、誠実に、JCPoAの下での全てのコミットメントを完全かつ整合的に履行する必要性を強調する。我々は、イランが自らの全ての核関連のコミットメントを厳格に遵守する必要性を再確認する。

 国連安全保障理事会決議第2231号は、武器移転を禁止する規定を含め、完全に履行される必要がある。我々は、そのような実験は国連安全保障理事会決議第2231号に背ちするため、イランによる弾道ミサイル実験を深く遺憾に思う。我々は、イランが、シリア、イラク、イエメン及び地域のその他の各地における、政治的解決、和解及び和平を実現する取組に貢献することにより、地域における建設的な役割を担い、またテロ及び暴力的過激主義の拡散への対抗に協力することを求める。

 我々はまた、イランが国際的な人権に関する義務を遵守し、特に表現の自由を確保し、恣意的な勾留及び処刑を終わらせることを求める。

アフガニスタン

 我々は、平和的、安定的かつ繁栄したアフガニスタンへの我々の長期的なコミットメントを再確認する。我々は、アフガニスタンの安全及び安定を脅かす、テロ及び暴力的過激主義による国内の暴力のレベルにつき、引き続き懸念する。我々は、この厳しい環境においてアフガニスタン治安部隊によりもたらされた進展、及びNATO主導の確固たる支援任務により成された貢献を称賛する。

 我々は、アフガニスタン主導のアフガニスタン自身による和平プロセスを容易にするためのアフガニスタン政府及び国際社会の取組を強く支持する。この目的のために、我々は、安定を強化し、あらゆる形態のテロと闘うために近隣国との良好な関係及び地域国間の建設的な対話及び協力の重要性を強調する。

 我々は、法の支配、全ての分野における腐敗との闘い、特に女性や女児の人権を含む人権の促進、選挙改革、麻薬との闘い及び経済的ガバナンスのような、重要な分野において行われる、アフガニスタン政府による早急な改革の実施の加速化の必要性を強調する。我々はまた、移民の分野におけるアフガニスタン政府との良い協力の重要性を強調する。

 我々は、NATOワルシャワ・サミット及びブリュッセル会合において昨年決定されたとおり、改革についてのコミットメントに関するアフガニスタン政府による継続的かつ目に見える進展は、治安及び開発分野における継続的な国際的支援に釣り合わなければならないことを強調する。

北朝鮮

 我々は、国際的な課題の中で北朝鮮が引き続き最優先事項であり続けるべきであることを改めて表明する。我々は、国際的な義務に明白に違反し、地域及び国際の安全保障、平和、並びに国際的な不拡散体制に対する増大する脅威となっている北朝鮮による核実験及び2016年初頭から劇的に増加した弾道ミサイル発射を最も強い表現で非難する。

 北朝鮮による度重なる国際法違反は、新たな段階の挑戦であり、国際社会による断固とした、効果的な対応を求めている。我々は、北朝鮮の指導部に対し、次のことを要求する。いかなる核実験又は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む弾道ミサイル技術を伴う発射も自制すること。不安定化させる、又は挑発的ないかなる行動にも従事しないこと。関連する国連安全保障理事会決議及び2005年9月19日の六者会合共同声明の下でのコミットメントを遵守すること。核兵器の不拡散に関する条約(NPT)及びIAEAの保障措置に早期に復帰すること。

 北朝鮮による核兵器保有に対する国際社会の強い反対を改めて表明しつつ、我々は、北朝鮮は、全ての核兵器並びに既存の核計画及び弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で、放棄しなければならないことを再確認する。我々は、これらの目的を達成するための措置を強化することを決意している。

 我々は、2016年の国連安全保障理事会決議第2321号が全会一致で採択されたことを歓迎し、国際社会に対し、同決議及びその他全ての関連する国連安全保障理事会決議の持続的、包括的、かつ完全な履行を確保するよう呼びかける。この関連で、我々は、現在の国連の制裁体制が効果的に実施されることを確保するため、国際的な能力構築の取組を強化することが重要であるとの認識を共有する。

 我々は、2014年の国連調査委員会(COI)報告書に記載されたように、人道に対する犯罪になり得るものを含め、北朝鮮において現在進行中の組織的、広範かつ深刻な人権侵害について引き続き懸念を有している。我々は、国連安全保障理事会決議に違反する形で自身の核計画及び弾道ミサイル計画を進めるために、北朝鮮の人々の福祉や生計のような一次的需要から、北朝鮮の極めて重要な資源が引きはがされていることを遺憾に思う。

 我々は、北朝鮮に対し、国連との協力の回復に向けた措置をとり、拉致問題の即時解決を含め、国際社会の人道及び人権上の懸念に、直ちに対処することを求める。我々は、北朝鮮から海外に派遣され、強制労働に相当するとされる条件下で働いている労働者の搾取に関し懸念を表明する。

不拡散・軍縮

 大量破壊兵器とその運搬手段の拡散は、引き続き、主要かつ喫緊の懸念であり、国際の平和と安全に対する脅威である。

 我々は、核兵器不拡散条約(NPT)、化学兵器禁止条約(CWC)、及び生物兵器禁止条約(BWC)といった、大量破壊兵器の拡散を防ぎ、これに立ち向かうことに関連する諸条約の普遍化及び履行に引き続きコミットする。そして、この目的に向け、我々は、テロリストが世界中でそのような兵器及び物質を取得する脅威を低減するためのG7主導による「大量破壊兵器・物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ」の取組への全面的な支援を引き続き提供する。

 核兵器のない世界を可能にし得る条件を作り出すための方法としては、国際社会の安定と全ての人の安全への必要性を考慮した、核軍縮を促進するための包摂的、段階的な進歩的アプローチ以外に選択肢はない。

 この関係で、我々は、核分裂性物質生産禁止条約の目的である、核兵器又は他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を停止することへの我々の支持を改めて表明し、また、この分野における課題に対処する核分裂性物質生産禁止条約に関するハイレベル専門家準備グループの設立を歓迎する。2016年の国連安全保障理事会決議第2310号を想起しつつ、我々は、包括的核実験禁止条約(CTBT)が核不拡散及び軍縮に貢献する可能性を有していることに留意する。我々は、全ての関心国に対して、包括的核実験禁止条約機関の準備委員会によって設けられた国際監視制度を優先事項として完成させることを強く奨励する。我々はまた、来るNPT運用検討サイクルを活用すること、並びに核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び不拡散義務に従った原子力の平和的利用の基礎であるNPTを強化するという根本的な共通の関心に焦点を当てることによって、進展を遂げることへのコミットメントを強調する。

 我々は、引き続き世界の多くの地域における安全と発展に対する主要な挑戦である、小型武器を始めとした通常兵器と関連する弾薬の、とりわけテロリストへの、不法な移転及び不安定化要因となる蓄積を深く懸念する。この観点から、我々は、国連小型武器行動計画をそのあらゆる側面において完全に支持し、2030年までに違法な武器の流入を大幅に低減するとの持続可能な開発目標のターゲット16.4を是認する。我々は、被害国によりこの目的に向けて展開される取組、特にアフリカ大陸における取組への支援を継続する用意がある。我々は、国際的及び地域的な平和、安全及び安定に貢献するため、武器貿易条約で求められているような、通常兵器の輸出入に係る効果的な国家管理制度の促進を継続する。

 我々は、2月13日にクアラルンプール空港第2ターミナルで発生した死亡事案において、化学兵器が使用されたことにつき、深刻な懸念を表明し、マレーシアによる進行中の捜査に対して全面的な支持を表明する。我々は、マレーシアと事案に対処する立場にある機関としてのOPCWとの継続的な協力を奨励する。

宇宙

 宇宙活動は、大きな潜在性を有している。我々は、現代の宇宙環境の急速な発展、並びに市民の日々の生活と全ての国家の社会的、経済的、科学的及び技術的な発展の双方における宇宙活動の重要性を認識する。我々は、宇宙環境の長期的な安全、セキュリティー、持続可能性及び安定性を促進すること、宇宙活動の透明性を向上させること、並びに全ての宇宙活動のための責任ある行動の規範を強化することにコミットしている。

海洋安全保障

 我々は、海洋安全保障及び海上安全、並びに海洋環境の保護に関する更なる国際協力に対するコミットメントを再確認する。我々は、我々の連合された取組のみが、海洋安全保障及び海洋の状況への脅威に対する包括的対応を許容すると確信する。我々は、世界的利益を達成するために、国際的、地域的及び国内的に行動を調整することにコミットする。

 我々は、海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されたものを含む国際法に強固に基づく、ルールを基礎とした海洋秩序の維持に対する、及び法的手段を通じたものを含み、また、信頼醸成措置により支えられた平和的な紛争解決に対するコミットメントを改めて表明する。

 我々は、航行及び上空飛行の自由、並びにその他の権利、自由及び海洋の国際的に適法な利用に対するコミットメントを改めて表明する。

 我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を引き続き懸念する。我々は、信頼及び安全の構築、並びに仲裁手続を含む国際的に認められた法的な紛争解決メカニズムを通じたものを含む、信義誠実及び国際法に従った海洋に関する紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する。我々は、武力による威嚇又は武力の行使、大規模な埋立て、拠点構築及びその軍事目的での利用といった、緊張を高めるあらゆる一方的な行動に対し、強い反対を改めて表明するとともに、全ての当事者に対し、係争のある地形の非軍事化を追求し、国際法上の義務を遵守するよう要求する。我々は、UNCLOSに基づく仲裁裁判所により下された2016年7月12日付けの判断は、南シナ海における紛争の平和的解決に向けた更なる取組のための有用な基盤であると考える。我々は、実効的な南シナ海に関する行動規範(COC)の早期の最終化に向けた、国際法に基づく対話を奨励するとともに、この方向性に向かって前進する努力を歓迎する。我々は、南シナ海に関する行動宣言(DOC)全体としての完全かつ実効的な履行を求める。

 我々は、海賊行為及び海上武装強盗、海洋空間での国境を越えた組織犯罪及びテロ、人身取引、移民の密輸、武器及び麻薬の取引、違法・無報告・無規制(IUU)漁業、並びにその他の違法な海上活動に対する非難を改めて強く表明する。我々は、海における実行される違法な活動との闘いを追求する中での、国及び地域のオーナーシップの重要性を再確認する。我々は、ソマリア沖海賊対策コンタクト・グループ(CGPCS)、G7++ギニア湾フレンズ・グループ、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)によってなされた取組、並びにEU、NATO及びその他の多国間海上作戦や独自の派遣国によって達成された成果を称賛する。

 我々は、既存の極めて重要な地域における海洋安全保障の改善において、引き続き鍵となる、国及び地域の取組、並びにそれらのオーナーシップを支援するためのより全体的なアプローチを追求することにコミットする。地域協力メカニズムは、海洋安全保障強化のための活動を、それらの設立文書の範囲を最大限活用しつつ、継続させるべきである。

 我々は、海洋空間、特に最も高い注意が求められる海域において、人身取引及び移民の密入国と闘い、また海における人命の更なる喪失を防ぐために、陸海双方において国及び国際レベルでの我々の協力を継続する。

 我々は、海上の管理、沿岸警備当局及び機能、災害救済、海上捜索及び救助、並びに海洋状況把握(MDA)を含む海上に関する情報の共有・統合といった分野における既存の手段の下での包括的な能力構築支援、並びに立法、司法及び訴追能力を向上させる取組を通じ、海上犯罪の影響を受けている地域における地域的海洋安全保障を支援することにコミットする。

 我々は、2016年10月にトーゴにおいて開催されたアフリカの海洋安全保障・海上安全及び開発に関するアフリカ連合(AU)首脳会合並びにその機会に署名されたロメ憲章を歓迎する。その更なる発展と実施はアフリカ連合の全体的な海洋能力を向上させる。我々はまた、地中海、ギニア湾、インド太平洋を含め、自由で開かれた海を確保し、地域の連結性を強化することの重要性を認識する。

 我々は、2016年6月の国連食糧農業機関(FAO)違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の発効を歓迎するとともに、我々は、全ての沿岸国に対し、IUU漁業に対処することを特に目的としたこの重要な国際条約に加入するよう求める。

 我々は、海洋安全保障を強化するための科学的及び技術的支援を提供することを目的とした研究活動を歓迎し、奨励する。我々は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関するUNCLOSの下で将来的な法的拘束力を有する国際文書の作成に関する準備委員会の作業を支持する。

我々は、生物多様性を含む海洋生物資源の保全と持続可能な利用を確保するために、海洋の健全性を守り、気候変動に関する強靱性を向上しつつ、各国が自身の優先事項を実現するための協力、能力構築並びに財政的及び技術的支援への適切なアクセスを支持することにコミットする。

 我々は、今後本年中に、「海洋安全保障に関するG7ハイレベル会合」を主催するというイタリアの構想及び「我々の海」会合を主催するEUの構想を歓迎する。

サイバー

 我々は、アクセス可能で、開かれ、相互運用可能な、信頼できる、かつ、安全なサイバー空間に対する支持を再確認する。我々は、我々及び他の全ての者がサイバー空間から引き出す経済成長及び繁栄のための大きな利益が、経済的、社会的及び政治的な発展のための特別な手段であることを認識する。サイバー空間が広範な機会を提供する一方、我々は、我々のデジタル世界の脆弱性、並びに考えられる全ての方面から生じ、並びに国家及び非国家主体を巻き込む新しく多面的な危険性を認識する。

 我々は、重要インフラに対する情報通信技術(ICTs)の利用による脅威を認識し、民主的プロセスへのサイバーにより可能となる干渉に関する増進された懸念に留意し、また、誤解及び抑制できないエスカレーションの危険に留意しつつ、サイバー空間における紛争の予防、協力及び安定のための戦略的な枠組みを促進するために、G7並びにその他の関連する国際的な及びマルチステークホルダーのフォーラムにおいて取り組むことへのコミットメントを再確認する。これは、サイバー空間における国家の行動への既存の国際法の適用可能性、人権に関する義務の尊重、平時における自発的で非拘束的な責任ある国家の行動に係る規範の促進、国家間の実際的なサイバーに関する信頼醸成措置、並びに能力構築に係る構想の形成及び実施に基づくものである。

 我々は、国際法及び特に国際連合憲章が、国家によるICTsの利用に適用され、並びに平和及び安定を維持し、開かれ、安全で、安定し、アクセス可能で、平和的なICT環境を促進するために不可欠であることが他の国家により幅広く確認されていることを再確認し、承認とともに留意する。我々は、サイバー空間における予測可能性及び安定性を高めるために、国家に対し、サイバー空間における国家の活動に既存の国際法がどのように適用されるかについての見解を最大限可能な範囲で公に説明することを求める。

 我々は、国際安全保障の文脈における情報及び電気通信分野の進歩に関する国際連合政府専門家会合(UN-GGE)のプロセスに対する支持を改めて表明し、2016年から2017年にかけてのUN-GGEが実質的な成果を挙げることを期待する。UN-GGEは、サイバー空間における国際法の適用につき更に明確にし、平時における国家の行動に関する合意された規範を更に精緻なものとし、信頼醸成措置の形成について助言を行い、及び全ての国家がこれらの任務を実施することを支援するに当たっての能力構築が有する極めて重要な役割を強調するべきである。この関連で、我々は、全ての国家に対して、ICTsの利用に際して、UN-GGEの累次の報告書に導かれ、当該報告書に含まれる勧告を運用するための措置をとることを求める。

 このような背景に対して、我々は「サイバー空間における責任ある国家の行動に関するG7宣言」を採択し、平和及び安全への具体的な貢献として、サイバー空間における紛争の予防、協力及び安定のための戦略的な枠組みへのコミットメントを強化し、また、我々は、他の国家からの同様のコミットメントを奨励する。

 我々はまた、全ての国に対して、可能であれば、サイバー犯罪に関する条約(2001年)の締約国となることを含め、効果的にサイバー犯罪と闘う法律、政策及び慣行を発展させることを求める。

 我々は、地域的及び国際的なレベルにおける協力の枠組みについての国際的なコンセンサスが、時間の経過とともに、サイバー空間における安定を守り、紛争の平和的解決を容易にし、既存の国際法に従って違法な行為に対する効果的な措置をとり、及びサイバーに関する能力構築活動を向上させることを目的とした共通の努力に責任ある国家が共に参画するための共通のビジョン及び適切なプラットフォームを提供できると信じる。

ドーヴィル・パートナーシップ

 我々は、複雑な人道危機及びかつてない避難民や人々の国境間の移動を引き起こしている、争いの存在、暴力的過激主義の高まり及び拡散を含む、地域が直面している深刻な課題に対処するための中東・北アフリカ(MENA)諸国の取組に対する支援を再確認する。

 健全な民主的機関、包摂的な経済成長、地域統合及び積極的な市民社会による参画は、アラブ移行諸国(ACTs)の安定及び発展の鍵となる。我々は、G7、ACTs、地域パートナー、関連する国際機関の間での政策対話及び協力の重要なプラットフォームである、ドーヴィル・パートナーシップを通じてこれらの国々を支援することに引き続きコミットする。

 構造改革の計画及び実施を支援するための、経済的ガバナンスに関するコンパクトの実施は、我々のACTsとの対話における中核的な要素である。我々は、周縁化された地域に特段の注意を払い、特に若者、女性及び広範な経済的課題に対処し、持続可能かつ包摂的成長に向けた機会を創出する中での中小企業の役割に焦点を当てつつ、関連する人的資源開発に関する戦略的枠組みに沿った形での、社会経済的発展の推進力としての人的資源開発の重要性を強調する。

 我々は、MENA移行基金の資金目標の達成を歓迎し、ACTsにおける重要な改革分野のための同基金のプロジェクトの重要な影響力を認識する。我々は、国際金融機関(IFIs)の活動の調整の強化及びG7の二国間の活動の間でのより大きな相乗効果の促進の双方による、ACTsへの継続的な国際的支援の重要性を強調する。我々は、MENA地域の発展を受け、同パートナーシップ及びG7のACTsとの関係の更なる進化を検討する用意がある。我々は、ACTsと共に、彼らを支援する最適な方法を探求することにコミットし、地中海地域に焦点を当てた他の構想との可能な協力に引き続き門戸を開いている。

国連、平和と安全

 我々は、現在及び未来の複雑な課題に効果的に対処するために、国連がより効率的で、透明性と説明責任を持ち、分野横断的に調整された機関となることに資する、国連システム内の改革に関する国連事務総長の呼びかけを歓迎する。

 我々はまた、紛争の発生、激化、継続及び再発を防止することを目的とした、全体的及び包括的なアプローチを通じた平和の持続における国連の役割を増進するための国連事務総長による呼びかけを歓迎する。我々は、開発、平和と安全及び人権は相互に関連し、相互に強化するものであることを認識する。持続可能な開発のための2030アジェンダは、統合的なアプローチをとることにより、また、平和で包摂的な社会を達成し、司法へのアクセスを提供し、説明責任のある制度を構築するという目標16を含むことにより、こうした理解を強化するものである。したがって、我々は持続可能な開発目標の実施を優先課題とする国連事務総長のコミットメントを歓迎する。

 我々は、リーダーシップを向上し、説明責任を増大させ、適切な要員の訓練を通じて、有能な予備要員を増強し、並びに国連平和維持ミッションが状況に応じた適切な国際的な対応をとる上でより能力があるものになること及び課された任務を遂行するために適切に組織されることを確保することを主眼に置いて、統合的計画立案を促進することにより、国連平和維持活動及び平和構築活動の影響及び有効性を強化することにコミットしている。我々はまた、平和維持要員の装備面での格差に対処するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、文民を保護する上で国連平和維持活動が果たし得る極めて重要な役割を再確認する。

 我々はまた、国連の紛争予防及び調停能力の向上及び多様化に向けて取り組む。我々は、したがって、進行中の国連の平和及び安全アーキテクチャーの改革を支持する。平和維持活動については、これらは、平和構築アーキテクチャー及び「女性・平和・安全保障」の議題のレビューも考慮に入れつつ、更なるプレッジを奨励し、最高水準の任務遂行を実現しつつ、平和維持活動のより良い計画立案の努力を含む。紛争の予防及びマネージメントの成功はまた、利用可能な人的及び財政的資源にも部分的に依存している。したがって、我々は、全ての国連加盟国がこれらの分野で必要な支援を提供することを奨励する。

 我々は、世界的な紛争の予防及び調停における女性の参画を増加させるための国連におけるイタリア及び英国による共同のイニシアティブを歓迎し、また、この重要なアジェンダを進展させるために国連及び有志国と共に取り組むことにコミットする。

 我々は、訓練を通じたものを含め、国連平和維持部隊要員が最も高い水準の規律及び規範を達成することに関するコミットメントを再確認し、この目的のため、性的虐待及び搾取を防止する取組を含め、訓練を提供する国、部隊及び警察要員派遣国、並びにドナー国による三者間のイニシアティブの促進の重要性を強調する。

 我々は、全ての国家に対し、国連安全保障理事会決議第2272号において要請された措置の履行等を通じ、性的搾取及び虐待に対する国連事務総長の不寛容政策を支持し、完全に遵守することを求める。

 我々は、国連システムの内外において、和平プロセスに女性、若者及び穏健的な宗教指導者を含めることの重要性を改めて表明する。特に、我々は、国連安全保障理事会決議第1325号及び第1820号並びに関連決議に従い、持続可能な平和及び安全を達成するために、政治、統治、治安の全ての機構のあらゆるレベルにおける女性の意味のある参画を増加させるための呼びかけを新たにする。我々は、紛争予防、調停、平和構築、安定化における女性の重要な役割を認識し、政府及びドナーとして、平和の主体としての平等かつ完全な女性の関与を引き続き促進する。我々は引き続き、武力紛争中に、女性、子供、若者を性的及びジェンダーに基づく暴力から防ぎ、保護するための安全面での対応を促進する。我々は、「女性・平和・安全保障」の議題の履行を推進するための行動計画を策定し、及び採択を奨励するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、「女性・平和・安全保障」の議題の効果的な履行は資源及び予測可能な長期的な財政的支援を必要としている事実を認識する。

 歴史的、文化的及び宗教的な遺産に対する攻撃は、紛争及び紛争後の和解に非常に深刻な影響を与える。したがって、我々は、文化的多様性及びアイデンティティーの歴史的形跡を保護及び保全することの重要性を確認し、関連し、かつ適当である場合には、事案ごとに、国連安全保障理事会によって権限が与えられる限りにおいて、国連平和維持活動のマンデートに文化遺産保護に関する規定が含まれることを支持する。我々は、全ての国に対し、古文化財の破壊、略奪及び密輸に対抗するユネスコの取組を支持することを奨励する。

 我々は、ユネスコ遺産緊急基金及び2016年12月3日にアブダビで発表された武力紛争下で危機に瀕している文化遺産の保護のための国際基金に留意し、全ての国に対して、予防及び緊急措置を支援することに貢献し、文化財の不法取引と闘うことを奨励する。

 我々は、武力紛争の際の文化の保護及び文化の多元性の促進に関するユネスコの行動計画に関する第201回ユネスコ執行委員会の会期中の議論を期待する。平和維持活動は、受入国の環境、地域経済及びコミュニティーに悪影響を及ぼしかねないことを認識し、我々は、平和活動の環境面における持続可能性及び任務サイクルの全体を通じ、平和維持活動の事跡を評価し、緩和する上での国連の役割を支持することの必要性を強調する。

 我々は、G7平和維持・平和構築専門家グループの国連、アフリカ連合及びEUとの協議の中での、女性の役割を含むこれらの重要な平和と安全に係る問題の検討及び勧告についての作業を称賛する。

 我々は、G7「気候変動と脆弱性」作業部会及び同作業部会の作業要領の継続的努力を歓迎し、2018年に予定される進捗報告書に期待する。我々はまた、同作業部会が、脆弱な諸国における強靱性を高めるための行動に係る提言を特定することを奨励する。

人権

 我々は、全ての人権と基本的自由の保護及び促進に向けたコミットメントを再確認する。我々は、市民的及び政治的権利、並びに経済的、社会的、文化的権利を含む、全ての人権の普遍性及び相互依存性を想起する。我々は、国際人権法及び国際人道法の下での義務を遵守すること、並びに説明責任は、平和及び安全の基礎であることを想起する。

 我々は、引き続き、世界中のあらゆる形態の差別に反対し、撤廃に向けて取り組む。

我々は、多元性、包摂性、多様性の尊重、異文化間、異なる宗教間及び異なる信仰間の対話、表現の自由、並びに宗教又は信仰の自由を促進することの重要性を再確認する。我々は、世界中の宗教的及び民族的マイノリティに対するあらゆる迫害事案につき、深い懸念を表明する。

 我々は引き続き、ジェンダー平等及び女性の権利を積極的に促進する。我々は、優先事項として、2030アジェンダにも沿った形で女性及び女児をエンパワーし、その人権を促進するために、北京行動綱領、カイロ行動計画、それらの検証会議の成果、及び女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約上の国家による義務の履行の効果的実施に完全にコミットしている。

 我々は、紛争下のジェンダーに基づく暴力及び性的暴力を含む女性及び女児並びに男性及び少年に対するあらゆる形態の暴力との闘い、児童婚・強制結婚及び女性器切除のような有害な慣行を終わらせることに、引き続きコミットする。我々は、児童の権利を積極的に保護・促進することに全力で取り組み、最も脆弱な者に手を差し伸べる努力を増進することにコミットする。

 我々は、強制労働、児童労働、現代の奴隷制、人身取引の撲滅を実現することに向けた我々の努力を強化することにコミットする。

 我々は、活発な市民社会は、民主的な社会、安定及び繁栄に貢献するという共通の信念の下、人権を保護・推進する上での市民社会の重要な役割を認識する。我々は、市民社会の活動に資する環境を形成すること、人権擁護者及びジャーナリストの安全及び権利を確保するための取組を継続する。

(了)