データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 不拡散及び軍縮に関するG7声明

[場所] ルッカ、イタリア
[年月日] 2017年4月11日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 国際社会は,不拡散及び軍縮の分野において,地域的に又は世界的に多くの深刻な困難に継続して直面している。北朝鮮の核計画及びミサイル計画は,新たな段階の脅威であり,G7及び国際社会による強力で断固とした対応を求めるものである。シリアにおいて,シリア軍及びISIL/ダーイシュによる化学兵器及び毒性化学物質の兵器としての使用が確認されたことは,非常に憂慮すべきであり,長年に及ぶタブーを破るものである。通常兵器のテロリストへの不正な拡散も,より適切な輸出管理及び国境警備措置によって対処すべき深刻な脅威を示す。

 我々は,国際の平和と安全を保障し,より不安がなく,より安定して,より安全な世界に導くための条件を作り出すことへのコミットメントを改めて表明する。我々は,核兵器を削減し,最終的に廃絶するためのあらゆる努力の有効性は全ての国の安全保障環境の改善に依拠していることを認識しつつ,国際社会の安定を促進する形で,また,核兵器不拡散条約(NPT)に従って,この目標を達成することを目的とした核兵器に関する軍備管理・軍縮・不拡散分野での更なる実践的かつ具体的な措置を支持する。

 我々,G7メンバーは,国連安全保障理事会決議第2231号(2015)によって支持された包括的共同作業計画(JCPOA)の完全な履行と共に,引き続き核不拡散体制の礎石であり,核軍縮と原子力の平和的利用の基礎であるNPTの,2017年-2020年の運用検討サイクルに積極的に貢献することに引き続きコミットする。

地域における不拡散の課題

1.我々は,複数の地域における継続的な大量破壊兵器の拡散及び最近当該兵器が民間人に使用されたことを深刻に懸念する。

2.北朝鮮の核計画及び弾道ミサイル計画は,地域及び国際の平和と安全に対する深刻かつ増大する脅威であり,不拡散体制への明白な違反である。我々は,国連安全保障理事会決議第1718号,第2270号及び第2321号の下での国際的な義務に明白に違反して北朝鮮により行われた全ての核実験及び弾道ミサイル発射を最も強い表現で非難する。国際社会が更なる挑発活動を行わないよう繰り返し求めてきたにもかかわらず,北朝鮮が4回目及び5回目の核実験を実施し,2016年初頭から,劇的に弾道ミサイルの発射を増加させてきたことは大変遺憾である。

3.我々は,北朝鮮の指導部が,全ての関連する国連安全保障理事会決議を即時かつ完全に履行し,不安定化させる,又は挑発的ないかなる行動も自制すべきであるとの要求を改めて表明する。我々は,北朝鮮に対して,2005年9月19日の六者会合共同声明の下のコミットメントを遵守し,NPT及び国際原子力機関(IAEA)保障措置に早期に復帰するよう要求する。

4.我々は,北朝鮮の核兵器及びその運搬手段の開発に対する国際社会の強固な反対を想起し,朝鮮半島の完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な非核化という目標に対する我々の支持を改めて表明する。

5.我々は,北朝鮮の大量破壊兵器による脅威を外交的手段によって解決するという共通の目的を再確認する一方で,この問題には強力かつ一体となった対応が必要であると確信する。我々は,2016年11月30日の国連安全保障理事会決議第2321号の全会一致での採択を歓迎し,全ての国に対して,過去の関連する国連安全保障理事会決議と同様に同決議を完全に履行するための努力を倍加するよう求める。我々は,北朝鮮が軍事的な核及び運搬手段の能力向上を進めることを阻止するための措置を早急に強化することを決意する。

6.我々は,北朝鮮に対して,化学兵器のいかなる使用の自制及び化学兵器禁止条約(CWC)への加入を要請する。北朝鮮は,CWCの締約国でない僅か4つの国連加盟国の内の一つである。

7.我々は,2月13日にクアラルンプール国際空港第2ターミナルで発生した死亡事案において化学兵器が使用されたとの報告に対する深刻な懸念を表明し,マレーシア政府の進める調査に対する全面的な支援を表明する。我々は,本件に関するマレーシア政府の化学兵器禁止機関(OPCW)との協力を歓迎する。

8.OPCW・国連共同調査メカニズム(JIM)が,シリア国軍による3件及びISIL/ダーイシュによる1件の,毒性化学物質の兵器としての使用を含む化学兵器の使用を認定したこと,及び使用疑惑の報告が続いていることは,重大な懸念事項である。

9.4月4日の南イドリブのハーン・シャイフーン地域への空爆において化学兵器が使用されたとの報道に驚きを禁じ得ない。我々は,化学兵器禁止機関(OPCW)の事実関係調査ミッション(FFM)を全面的に支持し,仮にFFMが,化学兵器が使用された又は使用されたと思われるとの結論を出した場合には,OPCW・国連共同調査メカニズム(JIM)が,加害者の特定という自らの任務に関する調査を早急に実施すべきであることを強調する。我々は,今回の極悪非道な事件に関するOPCWの調査の早急な完了を達成するために,シリア・アラブ共和国及びシリアの全ての当事者に対して,OPCWに対して全面的に協力するように呼びかける。

10.我々は,シリアにおける毒性化学物質の兵器としての使用を含む,あらゆる化学兵器の使用を最も強い言葉で非難し,化学兵器の使用により市民が殺害され負傷しているとの報告に関して警告を表明する。我々は,国連安全保障理事会が,JIMの衝撃的な認定への対応として実質的な行動をとるべきであることを引き続き確信しているとともに,2017年2月に,シリアの化学兵器の使用に関する責任者への制裁導入に関する決議案に対して拒否権が行使されたことを遺憾に思う。

11.恐ろしい行為を行った加害者を特定し行為の責任を追及することは今後の化学兵器による攻撃を抑制するために重要である。これは,追加的な残虐行為及び国際規範を破る行為を防ぐための化学兵器使用の加害者の責任を追及する重要性を補強するものである。この理由から,我々は,JIMの活動に対する全面的な支援を再確認し,2016年11月17日に国連安全保障理事会決議第2319号で,JIMの任期を更に一年延長することが全会一致で合意されたことを歓迎するとともに,JIMが早急に任務を完了する準備を確保することを求める。

12.この文脈から,我々は,シリア・アラブ共和国が,2016年11月11日の第83回OPCW執行理事会決定における,毒性化学兵器の更なる使用の早急な停止,要請されるOPCW査察の遅延なき受入れ,シリアの化学兵器プログラムに関する申告とOPCWへ提出された情報の隔たり,矛盾,不一致を含む未解決事案の処理を含むCWC上の義務をこれ以上の遅延なく果たすことを要請する。

13.同時に,我々は,シリアとイラクで化学兵器が使用されたとの報告に照らして,毒性化学物質の兵器としての使用を含むテロリストによる化学兵器の使用という重大な脅威に対抗するために世界中のパートナーと共闘していくというコミットメントを改めて表明する。

14.小型武器による不安定化の影響に対する戦いにおいて,サヘル及び北アフリカ地域におけるG7の関与が引き続き重要である。

NPT運用検討サイクル

15.我々は,NPTの目的や義務に対する我々の完全なコミットメントを再確認し,この条約の全ての側面(不拡散,軍縮及び原子力の平和的利用)の支持と強化に向けた我々の努力を倍加することを約束する。我々は,引き続きNPTの普遍化にコミットし,未締約国に対して遅滞なく無条件でNPTの締約国になることを求める。

16.我々は,2017年5月2日から12日にウィーンで開催される2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会が成功裏に実施されるよう共に取り組むとともに,次の4年間の運用検討サイクルの間に前進することの重要性を強調する。我々は,全ての締約国がバランスのとれた条約の運用検討のために建設的な貢献をすることを求める。

17.IAEA及びその保障措置制度の役割は,核不拡散体制において最も重要であり続けている。我々は,国際的な検認基準としてのIAEAの包括的保障措置協定及び追加議定書の普遍化を引き続き促進する。我々は,まだ追加議定書を署名又は締結していない全ての国に対し,これを署名又は締結するように,また,関係のある国については,改正少量議定書を採択するよう呼びかける。我々は,必要に応じた技術支援の提供を歓迎する。我々は,核燃料サイクルに対してIAEA保障措置及び追加議定書を適用することの重要性を強調する。

18.我々は,全てのNPT締約国が,NPTに従い,原子力エネルギーを平和的目的に利用する奪い得ない権利を有することを認識する。我々は,引き続き,核不拡散義務を果たし,完全な透明性と,最高水準の原子力安全,核セキュリティ及び核不拡散に従い,かつ環境に配慮した形で平和的な民生用原子力計画を策定することを希望する国々と協力する用意がある。この関連で,我々は,これらの要素が原子力エネルギー・技術の平和的利用の実現にあたっての重要な要素であることを強調する。

19.我々は,NPTに一致する形で,原子力技術を安全かつセキュリティが確保された形で平和的に利用するために,世界中で能力強化を行うために重要な調整役を果たしているIAEAと協働することへのコミットメントを改めて表明する。我々は,IAEAの平和的利用イニシアティブ,及び持続可能な開発のための2030アジェンダの目標達成に効果的に貢献し得る能力構築のための活動を追求するIAEA事務局長を支持する。我々は,これらの取組に対する更なる貢献を歓迎する。我々は,保健・医療,農業,水資源管理,工業適用,エネルギー等の分野で原子力技術から得られる利益を促進するための効果的な手段,かつ開発ニーズを満たすものとしてIAEAの技術協力プログラムにコミットする。

核軍縮及び軍備管理

20.我々は,紛争のリスクを削減し,拡大のリスクを管理し,破壊的な軍備競争を未然に防ぎ,その他国際社会の平和と安全を促進させるための具体的措置に対する強い支持を再確認する。我々は,全ての国に対して,核兵器国と非核兵器国の間の対話を含む,検証可能な核軍縮・不拡散を促進させる,実践的かつ現実的なイニシアティブを我々と共に追求するよう呼びかける。核兵器のない世界を可能にし得る条件を作り出すための方法としては,国際社会の安定と全ての人の安全への必要性を考慮した,包摂的,段階的な進歩的アプローチ以外に選択肢はない。

21.この関係で,我々は,核分裂性物質生産禁止条約の目的である,核兵器又は他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を停止することへの我々の支持を改めて表明し,また,この分野における課題に対処する核分裂性物質生産禁止条約に関するハイレベル専門家準備グループの設立を歓迎する。我々は全ての国々に対し,核兵器又は核爆発装置用の核分裂性物質の生産モラトリアムを宣言し,維持することを求める。

22.我々は,核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)によって明らかとなった,実践的で効果的な,核兵器に関する軍備管理及び軍縮における検証イニシアティブを開発する核兵器国と非核兵器国との協力の価値を強調する。

23.我々は,G7内の核兵器国が取ってきた透明性向上の努力を歓迎するとともに,他国にも同様の取組を行うよう要請する。これに関し,我々は,軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)のメンバーがNPT締約国間の相違の橋渡しをする役割を担ってきたことを歓迎する。

24.既存の不拡散,軍縮及び軍備管理条約の誠実な履行は,具体的な安全保障上の利益と軍備削減を含む安定と安全保障を向上させる更なる措置のために必要な相互の信頼を強化するために引き続き極めて重要である。我々は,米国及びロシア連邦による新戦略兵器削減条約(新START)の継続的な履行を歓迎する。一つの類に該当する全ての兵器を廃絶した画期的な軍備管理合意である中距離核戦力(INF)全廃条約が,欧州の安全保障並びにアジアを含む広範な国際安全保障及び安定を進展させ,引き続き鍵となる上で,遵守が不可欠である。この文脈において,我々は,ロシア連邦に対し,完全かつ検証可能な遵守に関する懸念に対処することにより,INF全廃条約を維持するよう求める。

25.我々は,全ての国々が,核兵器の実験的爆発又は他の核爆発に関する現行の全ての自発的なモラトリアムを維持し,また,まだこのようなモラトリアムを実施していない国々はそれを実施すべきであると信ずる。

26.包括的核実験禁止条約機関の準備委員会によって設けられた検証体制,特に国際監視制度及び国際データセンターは,北朝鮮が行った核実験に関する重要かつ信頼し得るデータを提供することにより,その実効性を証明している。我々は,関心を有する全ての国が,国際監視制度を優先事項として完成させるよう強く奨励する。2016年の国際連合安全保障理事会決議第2310号を想起しつつ,我々は,包括的核実験禁止条約(CTBT)が核不拡散及び軍縮に貢献する可能性を有していることに留意する。

大量破壊兵器(WMD)の不拡散

27.我々は,地域の安全保障と同時に核軍縮・不拡散を促進することに資するツールとして,地域の関係国の間で自由な意思により妥結された条約に基づいて設置される既存の非核兵器地帯を強く支持する。

28.我々は,地域における包括的で持続的な平和のための措置と並んで,中東における核兵器及びその他の大量破壊兵器・運搬手段のない地帯の設立に引き続きコミットし,このような目標を達成するための新たな包摂的な地域的対話を求める。

29.我々は,核兵器国と非核兵器国との間の信頼醸成を促進することにより,地域的及び国際的な安全保障を強化する,法的拘束力のある非核兵器地帯条約の関連する議定書を発効させることを重視する。

30.我々は、包括的共同作業計画(JCPoA)を不拡散体制に対する重要な貢献として支持する。JCPoAの継続的かつ完全な履行は、イランの核開発が実際は専ら平和的である旨の信頼を醸成する上で不可欠である。我々は、JCPoAの包括的な構造、及び全ての当事者による検証メカニズムへのコミットメントを評価する。我々は、イランのJCPoAへのコミットメントの遵守の確保や義務の保全のための監視及び検証を含む、それにより相互の信頼を増進する主要な役割を担うIAEAによるイランにおける極めて重要な作業を称賛し、引き続き支持する。我々は、全ての当事者が、誠実に、JCPoAの下での全てのコミットメントを完全かつ整合的に履行する必要性を強調する。我々は、イランが自らの全ての核関連のコミットメントを厳格に遵守する必要性を再確認する。

31.国連安全保障理事会決議第2231号は、武器移転を禁止する規定を含め、完全に履行される必要がある。我々は、そのような実験は国連安全保障理事会決議第2231号に背ちするため、イランによる弾道ミサイル実験を深く遺憾に思う。我々は、イランが、シリア、イラク、イエメン及び地域のその他の各地における、政治的解決、和解及び和平を実現する取組に貢献することにより、地域における建設的な役割を担い、またテロ及び暴力的過激主義の拡散への対抗に協力することを求める。

32.化学兵器禁止条約(CWC)が発効し20年周年となり,改めて,CWCへの強力な支持及び化学兵器禁止機関(OPCW)の活動に対して深い謝意を表明する。CWCの普遍化及びCWCの完全かつ効果的な履行は依然として最重要課題である。我々は,依然として未締約国である全ての国に対して,遅滞なく,無条件でCWCに加盟し批准することを要請する。

33.我々は,化学兵器禁止機関(OPCW)が推進し,協力し,国連安全保障理事会が決議第2298号(2016)を通じて支持した作業において,昨夏,リビアから成功裏に全ての化学兵器の前駆物質が運び出されたことを賞賛する。

34.我々は,いかなる場所,時,主体,状況においても化学兵器の使用は認められない旨の非難を改めて表明する。我々は,使用者の責任追及は,今後の化学兵器使用の防止にとって非常に重要であるからこそ,個人,機関,グループ,政府であれ,化学兵器の使用に関するいかなる責任も有することを改めて表明する。

35.我々は,テロリストグループや非国家主体の手に化学兵器が渡るという拡大している脅威に対抗すること,非国家主体による化学兵器の保有を根絶すること,化学兵器を使用した国家や非国家主体の責任の追及を確実にすることに,完全にコミットする。

36.我々は,生物兵器を国際的に禁止する根本理念として生物兵器禁止条約を強く支持している。生物兵器禁止条約の普遍化を引き続き支持し,全ての締約国による,より実質的で効果的な履行を主要な優先事項と考える。透明性や信頼醸成措置,自主的な透明性を高める取組,国際協力や生物・化学兵器使用疑惑の国連事務総長調査メカニズムを強化する実践的な手順は,条約強化に欠かせない取組である。

37.第8回運用検討会議で次期会期間活動につき実質的な作業計画の合意が達成出来なかった点を踏まえ,今年の12月4日から8日に開催される締約国会議で,より強化された次期会期間活動についての合意を追求し,達成するために,全締約国に対して一層の努力を求める。

38.生物兵器禁止条約は意図的なバイオセキュリティ脅威に立ち向かう国際社会の重要な要素であるが,単独で存在せず,すべきものではない。我々は大量破壊兵器の拡散に対抗するグローバル・パートナーシップや国際保健機関の国際保健規則の履行支援などを含め,バイオ脅威の予防,検知,対応能力を高めるため様々な関係国際機関や取組と協力する。その点について,我々は,向こう5年で100ヶ国以上への共同支援を提案しており,他国にもこのような共同した努力への参加を求める。

39.我々は,大量破壊兵器及びそれらの運搬手段の拡散並びに非国家主体によるそれらの潜在的な取得と闘うための努力にとって引き続き極めて重要な手段である国連安全保障理事会決議第1540号につき,昨年12月に完了した第2回包括的レビューを評価する。我々は,国連安全保障理事会決議第第2325号の採択を歓迎し,更なる能力構築支援並びに市民社会及び学術界を含む全ての関係者間での更なる緊密な協力を求める。

40.我々は,能力構築支援の権限と,全ての国に対して国連安全保障理事会決議第第1540号の完全な履行に向けて行動するよう奨励するための権限の行使における,1540委員会の重要性を強調する。我々は,第1回報告書を1540委員会に提出していない国々に対し,これを更なる遅滞なく提出するよう求めるとともに,国連安全保障理事会決議第1540号の履行のために,効果的な輸出管理品目リストの作成を早期に開始するよう要請する。

41.我々は,国連安全保障理事会決議第1540号の完全な履行に係る各国の一義的な責任を認識しつつ,同決議の完全な履行のためには,政府間及び全ての関係者間のパートナーシップが重要であることを強調する。この点に関し,我々は,1540委員会と産業界との対話を促進し,輸出管理を含む分野における政府と民間セクターとの間のパートナーシップを強化するための枠組みである「ウィスバーデン・プロセス」を評価する。

42.我々は,国際輸出管理レジーム(原子力供給国グループ,ミサイル技術管理レジーム,オーストラリア・グループ)及びザンガー委員会の大量破壊兵器に関連するガイドラインの確実かつ効果的な履行を通じて世界的な拡散の脅威を削減することへのコミットメントを改めて表明する。我々は前述の三つのレジームの全参加国に対し,それらのガイドラインに沿って行動することを求める。また,当該レジーム外の全ての国に対し,それらのガイドラインを遵守するよう奨励する。更に全ての国に対して,自国の輸出管理の実施強化や,特に各レジームが対象とする品目や技術の供給を通じて拡散懸念のある計画に寄与しないよう警戒を求める。

43.我々は,ミサイル技術の拡散が深刻な懸念であり続ける中,本年で発足30周年を迎えるミサイル技術管理レジームへの確固たる支持を改めて表明する。

44.我々は,国家の能力構築及び国際協力の促進のための積極的かつ自発的な活動を通じて,大量破壊兵器,その輸送手段,関連品目等の,拡散懸念国と拡散懸念のある非国家主体を発着する輸送を阻止するために極めて重要な役割を果たす,拡散に対する安全保障構想(PSI)を引き続き支持する。

45.我々は,2003年の阻止原則宣言への国際的な支持を拡大することを含めて,増大する大量破壊兵器拡散の挑戦に対抗するためのアウトリーチ活動を支持する。我々は,2018年にパリで行われるハイレベル政治会合に期待し,PSI参加国に対しこれまでの実績を活かしてPSIを更に強化するよう求める。

46.弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCoC)は,大量破壊兵器を運搬可能なものを含むミサイルの拡散に対抗するための,唯一の多国間による透明性確保及び信頼醸成のための措置である。我々はHCoCが軍縮・不拡散の目標と体制を強化することを強調し,引き続きその普遍化を重要な優先課題として推進する。

47.我々は,大量破壊兵器・物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ(GP)と,化学・生物・放射線及び核(CBRN)テロリズムを撲滅するためのGPによる資金供与計画と調整活動への揺るぎないコミットメントを確認する。我々は,アフリカを含む広範な地域へのGPの関与に加え,1540委員会との連携強化,CBRNセキュリティ文化の醸成について関心が高まっていることを歓迎する。

核セキュリティ及び原子力安全

48.国際社会は,特にテロリスト,過激派,非国家主体及びその他の悪意ある主体による核物質及び放射性物質の潜在的な取得を防ぐことにより,継続的に増大する核物質及び放射性物質を使用したテロリズムに対して引き続き警戒しなければならない。我々は,そのような物質の拡散を防ぐことを目的とする措置を含む,国際的な不拡散の努力を強く支持する。

49.2016年12月5日から9日にウィーンで開催された「IAEA核セキュリティ国際会議:約束と行動」で採択された閣僚宣言に留意し,我々は,核セキュリティ・サミットの機運を維持することを含めた核セキュリティ強化のためのIAEAの中心的な役割を支持することを再確認する。したがって,核テロリズムに対抗するために積極的に関与している国際機関及び枠組みを更に支援し及び強化するための各国の行動の調整を含め,核セキュリティ・コンタクトグループの活動に強くコミットする。

50.これに関し,核セキュリティ・サミットの遺産を前進させ,強固で包括的な国際的核セキュリティ体制を支えるに当たって,我々は,国連,IAEA,インターポール,GICNT(核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ)及びGPの役割を完全に支持する。

51.また,我々は,GICNTの活動を賞賛し,2016年6月の10周年記念会合を歓迎し,2017年6月1日及び2日に東京において開催される10回目の全体会合に期待する。

52.我々は,発効から10周年を迎える核テロリズム防止条約,核物資防護条約及び2016年5月8日に発効したことを強く歓迎する核物質防護条約の2005年改正の重要性を強調する。我々は,これらの条約の完全な履行と普遍化に向けた継続的な努力を完全に支持し,全ての未締結国に対してこれらの条約の締結を要請する。

53.我々は,世界中で高水準の原子力安全を達成し維持すること,及びこの目標に取り組むための国際協力の重要性を再確認する。原子力発電計画を有する国は,適切な安全基盤を整備し,十分な人材育成を行う必要がある。我々は,本分野での能力構築に関してIAEAが果たしている中心的な役割への支持を再確認する。我々は,原子力安全関連条約を締結していない国に対して締結を奨励し,これらの条約の締約国に対して条約の効果的かつ持続的な運用に取り組むことを慫慂する。我々は,各国に対して,国際的な原子力損害賠償制度に参加することを呼びかける。

54.我々は,国際的な原子力移転及び原子力協力において最高水準の原子力安全を促進することの重要性を確認する。我々は,最高水準の原子力安全,核セキュリティ及び不拡散に従い,原子力発電を新規に計画する国が必要とする安全基盤の整備を促進することにコミットし続ける。我々は,全ての国に対し,原発を輸出する際,OECDの「環境と公的輸出信用に関するコモンアプローチ」に合致した行動を取ることを要請し,関連するIAEAのピア-・レビュー・ミッションを輸出先国が最初の原子力発電所の稼働開始前に受け入れるよう奨励することを求める。

小型武器を含む通常兵器

55.我々は,引き続き世界の多くの部分における安全と発展に対する主要な挑戦である,小型武器を始めとした通常兵器と関連する弾薬の不法な移転及び不安定化要因となる蓄積を深く懸念する。この観点から,我々は,2030年までに不正な武器の取引を大幅に減少させるとの持続可能な開発目標のターゲット16.4を完全に支持する。

56.我々は,武器を用いた暴力を激化させる武器の不正な移転に対する,特にアフリカ大陸における被害国による取組を認識し,優先的に支援する用意がある。ドナー,地域機関そして被援助国の間の協調の促進を目的とする,拡大サヘルにおける小型武器管理に係るG7・AUイニシアティブを歓迎する。この点,貯蔵武器の防護及び管理の改善は重要な要素であり,関連する国家機関に対する能力強化を呼びかける。また,犯罪組織とテロ集団の能力を高める可能性のある武器の流用に対抗する取組も増強する。

57.我々は,国連小型武器行動計画と同様に,トレーシング文書及び国連軍備登録制度が引き続き重要であることを認識し,それぞれの措置におけるコミットメントの履行を全ての国へ呼びかける。また,国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する銃器並びにその部品及び構成部分並びに弾薬の不正な製造及び取引の防止に関する議定書の批准に係る検討を全ての国へ呼びかける。

58.我々は,ワッセナー・アレンジメント(WA)が,通常兵器,汎用品及び技術の移転に係る透明性と更なる責任を促進し,これにより不安定化をもたらす蓄積を防ぐことによって,国際的及び地域的な安全保障と安定に貢献することを強調する。我々は,WAに参加していない国々に対し,その基準と輸出管理品目リストを適用するために最大限努力するよう呼びかける。我々は,通常兵器の不法な移転を防ぐためにWAにおける協力を引き続き強化し,この点において,全ての国に対して,機敏な品目と技術に関する輸出管理の厳格な実施を続けるよう要請する。

59.我々は,国際的及び地域的な平和,安全及び安定に貢献するため,武器貿易条約で求められているような,通常兵器の輸出入に係る効果的な国家管理制度の促進を継続する。

宇宙

60.宇宙活動は,国家の社会的、経済的、科学的及び技術的な発展並びに国際的な平和及びセキュリティの維持に重要かつますます増大する役割を果たしている。この文脈で,我々は,平等の基礎に立ち,国際法に沿った宇宙空間の平和的探査及び利用を確保し,安全、セキュアで、持続可能な宇宙環境を保つことへのコミットメントと,迅速かつ実践的な方法により,あらゆる宇宙活動について責任ある行動に関する原則を発展させ,実施することの必要性を改めて表明する。

61.我々は,全ての国に対し,衛星破壊実験によるものを含む,無責任で意図的な宇宙物体の破壊及びその他の直接的又は間接的に宇宙物体の損害又は破壊を引き起こすいかなる行為も自制することを要請する。我々は,全ての国に対し,宇宙活動に対する有害な干渉を回避するために,誠実に協力するための適切な手段をとるとともに,国際法に合致する方法で,長期にわたり軌道上を周回する宇宙ゴミ(デブリ)の発生や拡散を防止するために協力することを強く促す。

62.我々は,宇宙政策や戦略に関する情報交換,時宜にかなった宇宙活動に関する情報交換や通知,及び効果的な協議メカニズムといった,国連政府専門家会合報告書(A/68/189,2013年7月29日)における勧告に含まれる透明性・信頼醸成措置の提案を実行可能な範囲で検証し実施することについて,我々のコミットメントを再確認するとともに,全ての国に対し要請する。

63.我々は,2018年までに国連宇宙空間平和利用委員会による明確で実践的かつ信頼のおける宇宙活動の長期的持続可能性ガイドラインを速やかに完成させるための努力を強く支持する。我々は同委員会の全ての参加国に対し,先に同委員会第59会期及び同委員会科学技術小委員会第54会期の双方において達成された重要な成果に加え,この目的に向けて建設的な役割を果たすことを促す。