データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7タオルミーナ首脳コミュニケ

[場所] タオルミーナ
[年月日] 2017年5月27日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

前文

1.我々G7首脳は,我々が今日直面する地球規模の課題に協力の精神をもって対処し,我々の市民の最大の懸念に共同で対応するため,2017年5月26日から

27日にかけてタオルミーナで会合を開催した。我々の共通の努力は,我々の政府に向け,また,我々の諸国の間に,新たな信頼の基礎を築くためのものであ る。

2.我々は,自由と民主主義,平和,安全保障,法の支配及び人権の尊重という共有された価値により,結束する。我々は,ルールに基づく国際秩序と地球規模の持続可能な開発を推進するに当たって我々の取組を調整していく決意である。我々はまた,人々の間の対話を促進するための道具としての文化に特有の役割を確信している。

3.技術の変化とグローバリゼーションは,ここ数十年間,世界中の生活水準を向上させる上で根本的な貢献をしてきた。しかしながら,その利益が十分広く共有されてきたとはいえず,多くの国において格差を生むことになった。ここ数十年間における進歩にもかかわらず,我々は,例えば「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げるように,貧困を過去のものとし,「飢餓ゼロ」の目標に到達し,そして将来世代が正義と平和,そしてよりクリーンで安全な環境を享受することを確保するには,まだほど遠い。

4.我々の市民は,質の高い教育,働きがいのある人間らしい仕事,経済的機会へのより一層のアクセス,ジェンダー間の平等及びよりクリーンな環境を,正に求めている。彼らは我々に,より強化された国際協力により,増加する難民及び移民に対処することを期待している。さらに,彼らはより安全な生活と,特に,そのインターネット上の主張を含め,テロ及び暴力的過激主義の台頭を阻止することを求めている。

5.以上を背景として,我々は,市民のニーズが我々の政策の中核にあることを確保しつつ,将来に向けて信頼のメッセージを発出したい。我々は,G7首脳として,並外れた変化の時代により提供される全ての機会を捉える共同の取組に関与することにより,それを行うつもりである。我々は,政府,市民社会,民間部門及び一般市民を関与させる共同の努力において,文化,ジェンダー間の平等,多様性と包摂性,教育,科学,技術並びにイノベーションの変革の力を強調したい。これを達成するために,我々は,経済成長を促進し,人々の生活の質を改善するという目的を持って,イノベーションと新たな技能の促進並びに教育や訓練及び医療への投資により,我々の国の中の全ての部門及び地域において知識と能力を向上させなければならない。それゆえ我々は,今日のリスクを管理し,挑戦を機会へと変革するため,具体的な行動をとることを誓う。

外交政策に関する問題

6.我々は,国家間の平和を促進し,全ての国家の主権,領土の一体性及び政治的独立を保全し,人権の保護を確保する,ルールに基づく国際秩序を強化することについて同一の利益を共有している。我々の世界は,何百万もの無辜の人々に影響を与え,開発と将来世代の健全な成長を阻害している紛争の解決に向けた真のコミットメントを必要としている。

7.我々は,ルッカでの外務大臣会合の「共同コミュニケ」,「サイバー空間における責任ある国家の行動に関する宣言」並びに「不拡散及び軍縮に関する声明」を支持し,我々の市民の安全保障及び幸福並びに世界の安定に対する最も深刻な脅威となっている問題及び危機について,更に議論した。

8.6年に及ぶシリア内戦において,シリアの人々は最も著しい苦痛に耐えてきている。我々は,この悲劇的な危機を終結させる機会があると信じる。我々は,国連安全保障理事会決議第2254号及びジュネーブ・コミュニケに沿って真に信頼のおける移行を実施するための国連の下での包摂的なシリア人主導の政治プロセスを通じて紛争を終結させるため,あらゆる努力を惜しむべきではない。我々は,シリアにおける国際テロ,とりわけISIS/ISIL/Da'esh及びアル・カーイダを壊滅させるための取組を強化する決意である。テロの壊滅は,政治的解決がなければ不可能である。全ての主要な利害関係者は,自らの国際的な責任に従って行動しなければならない。シリア政権に対し影響力を持つもの,特にロシア及びイランは,現実の停戦の実施,化学兵器の使用の停止,支援を必要とする全ての人々に対する安全,即時かつ妨害されない人道アクセスの確保,恣意的に拘留された人々の解放及び刑務所への自由なアクセスの許可から開始して,この悲劇を食い止めるためにその影響力を最大限行使しなければならない。このために,我々は,アスタナ合意が暴力の沈静化に効果的に貢献することを希望する。ロシアが自らの影響力を前向きに行使する用意があるのであれば,我々は,政治的解決を追求しつつシリアにおける紛争を解決することにつき,ロシアと共に取り組む用意がある。我々は,信頼できる政治的移行が強固に実施されれば,復興のコストに貢献する用意がある。我々は,社会的・人口的構造を変更する企てを支えるような安定化努力には,関与しない。

9.我々は,シリアにおける化学兵器の使用に関する最も深い憂慮を改めて表明し,いかなる場所・時においても,いかなる者によるものであっても,また,いかなる状況の下におけるものであっても,化学兵器の使用に対する我々の強い非難を再確認する。かかる使用に責任を有する個人,団体,集団又は政府の責任が問われなければならない。

10.リビアにおいては,包摂的な政治対話及び国民和解の道筋を前進させることが急務である。我々は,主要なリビアの関係者の間での最近の会合を歓迎する。全てのリビア人は,妥協の精神を持って関与し,更なる紛争を煽る行動を止めなければならない。事態の軍事的解決への衝動を警戒しながら,我々は,政治的な解決(和解を前進させるようなリビア政治合意のあり得べき修正を含む。)を見出し得る枠組みとしてリビア政治合意に掲げられた制度的枠組みへの完全な支持を改めて表明する。我々は,国連リビア支援ミッション(UNSMIL)の調停努力を支持する。我々はまた,国家機構を強化し,人々の苦難を和らげ,インフラを保護するとともに拡大し,経済を強化・多様化し,移民の流れを管

理し,テロの脅威を根絶するための首脳評議会及び国民統一政府の取組についても支持する。

11.我々は,シリア及びイラクにおけるISIS/ISIL/Da'eshの存在の縮小並びにその主張の縮小に関し,大きな進展を成し遂げた。我々は,ISIS/ISIL/Da'eshの最終的な撲滅並びに関連する暴力,広範囲にわたる人権侵害及び国際人道法違反の終焉を目指し,特にモースル及びラッカといったISIS/ISIL/Da'eshにより支配された地域の解放を完了するための取組を継続することにコミットする。化学兵器の使用を含め,ISIS/ISIL/Da'eshの名において罪を犯した者は,その責任が問われねばならない。我々は,リビアにおけるISIS/ISIL/Da'eshへの対処における進展を歓迎する。我々は,地域の全ての国に対し,包摂的な政治的解決,和解及び平和を達成するための取組に貢献することにより建設的な役割を担うよう求める。それが,イラク,シリア,イエメンその他の地域において長期的にISIS/ISIL/Da'esh,他のテロ集団及び暴力的過激主義を根絶する唯一の方法である。

12.我々は,不拡散及び軍縮に関するコミットメントを改めて表明する。北朝鮮は,国際的な課題における最優先事項であり,度重なる,また,現在進行中の国際法違反を通じて,国際の平和及び安定並びに不拡散体制に対し,なお一層,重大な性質を有する新たな段階の脅威となっている。北朝鮮は,即時かつ完全に全ての関連する国連安全保障理事会決議を遵守するとともに,全ての核及び弾道ミサイル計画を,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で放棄しなければならない。我々は,北朝鮮による核実験及び弾道ミサイルの発射を最も強い言葉で非難し,これらの目的を達成するための措置を強化する用意があり,国際社会に対し,関連する国連安全保障理事会決議の持続的な,包括的な,かつ,完全な履行を確保するための努力を倍加するよう強く呼びかける。我々は,北朝鮮に対し,拉致問題の即時解決を含め,人道及び人権上の懸念に対処するよう求める。

13.ウクライナにおける危機の持続可能な解決は,全ての当事者によるミンスク合意の下でのコミットメントの完全な実施によってのみ達成可能である。我々は,ノルマンディー・グループの努力を支持し,危機の緩和のためのOSCEの多面的なコミットメントを称賛する。我々は,紛争についてのロシア連邦の責任を強調し,平和及び安定の回復のためロシアが果たすべき役割を強調する。我々は,クリミア半島の違法な併合に対する我々の非難を改めて表明し,不承認政策を再確認し,ウクライナの独立,領土の一体性及び主権を完全に支持する。我々は,制裁の期間はミンスク合意におけるロシアのコミットメントの完全な履行及びウクライナの主権の尊重に明確に関連付けられていることを想起する。制裁は,ロシアがこれらのコミットメントを履行したときに後退され得る。しかしながら,我々はまた,ロシアの行動に応じて必要ならば,ロシアのコストを増大させるため,更なる制限的措置をとる用意がある。我々は,野心的で,引き続き必要な改革アジェンダを実施することに関し,ウクライナを支援するとの我々のコミットメントを維持し,今日までの進展に関しキエフを称賛する。我々は,ロシアとの相違に関わらず,地域的な危機及び共通の課題に対処するため,我々の利益となる場合には,ロシアと関与していく用意がある。

14.我々は,海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されたものを含む国際法の諸原則に基づく,ルールを基礎とした海洋における秩序を維持すること,並びに仲裁を含む外交的及び法的手段を通じた海洋に関する紛争の平和的解決に対するコミットメントを再確認する。我々は,東シナ海及び南シナ海における状況を引き続き懸念し,緊張を高め得るあらゆる一方的な行動に対し強く反対する。我々は,全ての当事者に対し,係争のある地形の非軍事化を追求するよう要求する。

15.世界中の重要インフラを狙った最近のサイバー攻撃は,アクセス可能で, 開かれ,相互運用可能な,信頼できる,かつ,安全なサイバー空間並びに経済 成長及び繁栄のための大きな利益を保護するための一層の国際協力への我々の コミットメントを強化する。我々は,サイバー攻撃に対処し,我々の重要イン フラ及び我々の社会の福祉への影響を緩和するため,共に及び他のパートナー と協力する。

世界経済

16.世界経済の回復は勢いを増しているが,成長は依然として緩やかであり,かつ,GDPは多くの国で潜在GDPを下回っており,リスクのバランスは下方に傾いている。我々の最優先事項は,より高い生活水準及び質の高い雇用を実現するまで世界の成長を引き上げることである。このために,我々は,強固で,持

続可能で,均衡ある,かつ,包摂的な成長を実現するために,全ての政策手段-金融,財政及び構造政策-を個別的にまた総合的に用いるとの我々のコミットメントを再確認する。特に,金融政策は,引き続き,中央銀行のマンデートと整合的に,経済活動及び物価の安定を支えるべきである。我々は,包摂性を高め,公的債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保しながら,財政政策が成長と雇用創出を強化するため機動的に用いられるべきであることに同意する。その際に,我々は,例えばインフラ投資など質の高い投資への重点化を含め,財政の質を向上させることが重要であることに同意する。我々は,マクロ経済政策との適切な調整を確保しながら,生産性及び潜在産出量を増大させるために構造改革を進展させることに引き続きコミットする。我々は,バーリにおける会合で我々の財務大臣及び中央銀行総裁により合意された,我々の既存の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は,行き過ぎた世界的な不均衡の縮小に努める。我々は,政府に対する市民の信頼を強化し持続可能な世界の成長を促進する手段として,あらゆる形態の腐敗及び租税回避にも対処することにコミットする。

格差

17.我々は,G7の財務大臣及び中央銀行総裁により採択された「成長及び格差のためのバーリ政策アジェンダ」を,幅広い政策オプションの提示を通し包摂的な成長を促進する枠組みとして,歓迎する。我々は,単に収入におけるもののみならずあらゆる形態における格差が,主要な問題の源であることを認め

る。実際,世界レベルにおいても,行き過ぎた格差が,信任を損ない,将来の成長可能性を制限してしまう。さらに,格差は,社会的結合を害し,制度を圧迫しながら,国内の地域間の格差を助長し,世代間の流動性を損なう。この点において,我々は,世界経済があらゆる人のために作用するよう,我々の経済及びコミュニティの能力及び強じん性を変化の速度に即応できるものとすべく努める。

ジェンダー間の平等

18.女性及び女児は変化の強力な担い手であることから,ジェンダー間の平等は,人権の達成のための基本であり,我々にとっての最優先事項である。彼女らのエンパワーメントを促進し性別による格差を埋めることは,正しいのみならず我々の経済にとっても賢明であり,持続可能な開発に向けた進展への極めて重要な貢献である。女性及び女児は,高い割合で,差別,ハラスメント及び暴力並びにその他の人権侵害に直面している。今日,かつてないほどに,女児及び女性はより良い教育を受けているが,彼女らは依然として未熟練労働や低賃金の仕事に雇用されることが多く,無償のケアと家事の大部分の負担を背負っており,彼女らの私生活及び公的生活における参画及びリーダーシップ並びに経済的な機会へのアクセスはばらつきがあるままである。信用と起業家精神における性別による格差並びに女性の資本,ネットワーク及び市場へのアクセスの向上によって,女性の経済への関与を増大させることは,劇的に積極的な経済的影響を持ち得る。我々は,G7として,ジェンダー間の不平等に対処する重要な措置を実施してきているが,より多くのことが行われる必要がある。したがって,我々は,ジェンダー間の平等をあらゆる我々の政策において主流化することに引き続きコミットする。我々は,W7による重要な貢献を歓迎する。さらに,我々は,女性及び女児の経済的エンパワーメントを促進するため,初の「ジェンダーに配慮した経済環境のためのG7ロードマップ」を採択した。

貿易

19.我々は,自由で,公正で,互恵的な貿易及び投資は,相互的な利益を創出しながら,成長及び雇用創出の主要な原動力であることを認識する。それゆえ,我々は,不公正な貿易慣行に断固たる立場を取りつつ,我々の開かれた市場を維持するとともに,保護主義と闘うという我々のコミットメントを再確認する。同時に,我々は,貿易が必ずしも常にあらゆる人の利益のために作用してきたわけではないことも認める。このため,世界経済が提供する機会を全ての企業及び市民が最大限享受できるような適切な政策を採用することにコミットする。

20.我々は,真に公平な競争条件を促進するため,あらゆる貿易歪曲的な慣行(ダンピング,差別的な非関税障壁,強制的な技術移転,市場を歪曲する政府及び関連機関による補助金その他の支援を含む。)の撤廃を推進する。我々は,鉄鋼,アルミニウムその他主要な産業部門における世界的な過剰生産能力に対処し,こうした問題が他の分野で発生しないよう,協力を更に強化し,パートナーと共に取り組んでいくことにコミットする。この意味において,鍵となる技術の促進を目標とした市場歪曲的な措置に懸念を持っている。このため,我々は,G20により設立され,OECDにより支援される鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの設立を歓迎し,全てのメンバー国に対し,世界的な鉄鋼の過剰生産能力の根本原因に対処するために,市場の機能及び調整を強化

する効果的な政策的解決策を速やかに実践するよう求める。我々はまた,輸出信用に関する国際作業部会に対し,公的に支援された輸出金融に対する新たな指針の策定を求める。

21.我々は,ルールに基づく国際的な貿易体制の重要性を認識する。我々は協力して,全てのWTO加盟国による全てのWTOルールの完全かつ透明な実施及び効果的かつ適時の執行を確保するためにWTOの機能を改善し,また,第11回WTO閣僚会議の成功を達成することにコミットする。

22.我々は,国際的に認められた社会,労働,安全,租税協力及び環境上の基準が,世界経済及びそのサプライ・チェーンにおいてより良く適用され,また,これらの基準が促進されるよう,努力することにコミットする。

23.最後に,我々は,国際的な投資活動も成長の維持及び雇用創出において重要な役割を果たし得ることを認め,それゆえ,海外直接投資を促進するため予測可能な環境を創出することに努める。

人の移動

24.現在進行中の移民及び難民の大規模な移動は,安全保障と人権に対する影響を考慮すれば,各国及び国際レベルでの調整した努力を必要とする地球規模の傾向である。難民と移民との間の区別を考慮しつつ,我々は,移民の流れの管理と規制は,緊急的アプローチ及び長期的アプローチの双方が必要であることを認識する。我々はまた,可能な限り彼らの母国の近くで支援し,難民が母国のコミュニティに安全に帰還して,そのコミュニティの再建を手助けできるようにする必要性を認識する。同時に,我々は,全ての移民と難民の人権を確保しつつ,個別あるいは共同で,自らの国益及び国家安全保障において,自国の国境を管理し政策を策定する主権国家としての権利を再確認する。

25.我々は,各国がそれぞれの領域内で移住の要因に対処する条件を作り出す手助けをすべく連携を確立することに合意する。なぜならこのことが,これらの課題に対する最良の長期的解決だからである。我々はまた,国家は,人の流れを管理し,難民及び移民を保護し,危険に晒されている女性,青少年,子供及び難民といった最もぜい弱な難民及び移民を守り,また,国境管理を強化し,帰還の制度を構築し,また法執行面での協力を強化することに関する責任を共有することを認識する。これらは,非正規又は非合法の移住を減らし,移民の密入国,人身取引及び搾取並びに現代の奴隷制を含むあらゆる形態の奴隷制と闘うために不可欠な措置である。このような形で,我々は,安全で,秩序があり,正規の移住の前向きな側面の価値を守る。それは,適切に管理された流れは,出身国と目的国の双方に,そして移民と難民自身に経済的及び社会的利益をもたらし得るものであるからである。

アフリカ

26.アフリカの安全保障,安定及び持続可能な開発は,我々にとって高い優先事項である。我々の目標は,まさに,2030持続可能な開発アジェンダの関連する目標に関しては,危機及び紛争のより優れた防止,対応及び管理のためのアフリカの能力を発展させるために,アフリカ諸国及び地域機関との協力と対話を強化することである。安定したアフリカとは,安定した投資環境を意味する。この点に関し,我々は,当該大陸における投資を促進する重要な手段として,EUによる来たるべき対外投資計画(EIP)の開始,想定されるアフリカとのG20パートナーシップ・イニシアティブ及び第6回アフリカ開発会議(TICADVI)における投資プレッジに留意する。また,アフリカにおけるエネルギーへの安定したアクセスを拡大する我々の努力を継続することが重要である。アフリカの潜在力を引き出すには,イノベーション,教育,ジェンダー間の平等及び人的資源の開発を通じて,何百万もの人々をエンパワーすることが必要である。また,一定水準の雇用,より良い医療サービス及び食料安全保障は,急速に変化する世界においてより強じんな社会を構築することに貢献する。我々は,若い世代に対し,特に適切な技術,質の高いインフラ,金融資源,そして持続可能で,繁栄した,安全な未来を提供するために,アフリカ連合アジェンダ2063を支持しつつ,アフリカ大陸と連携して取り組んでいくことを目指す。また,そのような進展は移民圧力を減らし,人道上の緊急事態を軽減し,全ての人にとっての社会経済的な機会を創出することに役立つことを約束するものである。

食料安全保障及び栄養

27.飢餓を終わらせ,食料安全保障と栄養改善を達成し,持続可能な農業を促進することは,G7の重要な目標である。我々は,我々のパートナーや国際的な関係者を巻き込んだより広範な取組の一部として,2030年までに,開発途上国の5億人の人々を飢餓と栄養不良状態から救い出すという我々の共同目標を再確認する。

28.我々は,紛争や不安定な情勢によって壊滅的なレベルの食料不安が進行しており,既に南スーダンの一部における飢饉やソマリア,イエメン及びナイジェリア北東部における深刻な飢饉のリスクを発生させ,2000万人以上の人々に深刻に影響を与えていることを深く懸念している。我々は,国連事務総長が緊急行動を求めたことを強く支持する。我々は,人道支援を迅速に動員し,根本的な危機の原因に対処する政治的プロセスを引き続き支持するとともに,強じん性を構築するための関与を強化しつつ,将来の危機を予防し,緩和し,より良い備えをするための国際的な人道システムの強化にコミットしている。

29.我々は,食料不安及び栄養不良という課題の地球規模の様相を強調する一方で,栄養不足者率が最も高く,地方及び都市部の貧困が根深く,特に大量の人の移動があると共に,後発開発途上国の3分の2以上が所在するサハラ以南アフリカにおいて緊急の行動が必要とされていることを認識する。

30.したがって,我々は,政府開発援助の増加,エルマウ及び伊勢志摩において定義された食料安全保障と栄養関連の勧告と整合的な形での我々の個々の介入に関するより良いターゲッティングと評価及びそれらが女性や女児に到達していることの確保,責任ある民間投資を惹きつける支援の取組,他の開発のステークホルダーからの追加的資源など数々のあり得べき行動を通じて,サハラ以南アフリカにおける食料安全保障,栄養及び持続可能な農業に対する共同の支援を高めることを決定した。我々は,様々な資金を組み合わせたファイナンス(ブレンデッド・ファイナンス)及び民間資金を活用する官民連携(PPP)を奨励する。我々は,最も顧みられない地域及び最もぜい弱な人々にも手をさしのべることを目的として,アフリカの国々の優先事項及びアフリカ連合アジェンダ2063に整合的な形で行動する。

気候変動・エネルギー

31.我々は,集団的なエネルギー安全保障を強化し,開かれ,透明性があり,流動的な,かつ,安全な,エネルギー及び技術のための世界的な市場を確保することにコミットする。我々は,原子力を利用することを選択した全ての国々が原子力安全,核セキュリティ及び核不拡散で最高の水準を確保することを再 確認する。我々は,成長と雇用の創出の観点から,エネルギー分野の変革及び クリーン・テクノロジーによって提供される重要な経済的な機会を活用するこ とを決意する。

32.米国は気候変動及びパリ協定に関する自国の政策を見直すプロセスにあるため,これらの議題についてコンセンサスに参加する立場にない。米国のこのプロセスを理解し,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本及び英国の元首及び首脳並びに欧州理事会及び欧州委員会の議長は,伊勢志摩サミットにおいて表明されたとおり,パリ協定を迅速に実施するとの強固なコミットメントを再確認する。

33.この文脈において,我々は,開発途上国を支援することの重要性に合意する。

イノベーション・技能・労働

34.次世代生産革命(NPR)は,競争力を増大させ,イノベーション主導型の成長を促進する特別な機会を提供する。既存の生産制度を再形成することによって,NPRは,実際に,零細・中小企業(MSMEs)を含む全ての企業並びにあらゆる部門及び地域にまたがる人々にイノベーションとデジタル化の利益を享受

させ,また,女性がSTEMキャリアを追求する機会を向上させることができる。

35.同時に,自動化と新興技術の進展は,イノベーション及び経済成長に貢献する一方で,我々に課題を提起し,将来の仕事を顕著に変化させる。我々は,全ての人々にとって機能する転換を確保すべく,ステークホルダーとの強固な協働をも通じ,NPR及び進行中の転換に関連するリスクを管理することによってこの課題に向き合い,仕事と教育の将来を再考する責任がある。国内の状況に基づき,我々の教育制度及び働き方は適応されなければならない。会社や社会的パートナーは初期及び生涯にわたる教育及び訓練の双方に緊密に関与するとともに,新しい関与にコミットすべきである。我々はまた,必要な時に,マルチステークホルダー・アプローチで,我々の労働力に安定をもたらすように,健全な労働市場政策の実施及び我々の福祉制度への調整によって,労働の新たな形態に対処し労働環境を改善する必要がある。

36.これらの理由により,我々は,「イノベーション,技能及び労働に関するG7人間中心の行動計画」を採択した。この計画は,OECD及びILOの支援を得て詳しく検討され,今後の閣僚会合の中で関係閣僚によって更に発展されるべく,NPRの利益を最大化する一連の潜在的な政策提言の概要について述べている。

37.加えて,鍵となるステークホルダーとの対話を促進し,G7に対しイノベーションの課題に関する直接的な洞察を提供するべく,我々は,「人間中心のイノベーションに関するG7首脳への戦略的諮問会合」(I-7)を設置した。このグループの最初の会合は,トリノにおける「G7イノベーション・ウィーク」の期間中に開催される予定である。

保健

38.我々は,世界健康安全保障を前進させ,世界中で身体的及び精神的な健康の改善を進める政策を追求することにコミットしている。健康な生活と福祉はより広範な経済,社会及び安全保障の向上にとって重要である。我々は,女性及び青少年の健康及び保健医療が促進されなければならないことを認識する。我々は,人間の健康に影響を与える環境的な要因の役割を認識する。我々は,保健システム,公衆衛生上の緊急事態及び長期的な課題に対する備え及び迅速かつ効果的で調整された対応を強化することにコミットする。これを基礎として,我々は,我々の保健大臣に対し,11月の会合期間中にこれらの問題に対するフォローアップを行うよう求めた。

結論

39.我々は,カナダ議長の下,2018年に会合することを楽しみにしている。