データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] テロ及び暴力的過激主義との闘いに関する G7 タオルミーナ声明

[場所] タオルミーナ
[年月日] 2017年5月27日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1 我々G7首脳は,連帯して,英国マンチェスターにおける残忍なテロ行為の犠牲者の御家族に対し,最も深い同情と哀悼の意を表する。我々は,あらゆる形態のテロを最も強い言葉で非難する。

2 国,国籍又は信条を問わずG7メンバー国及び世界の全ての地域を襲うテロ及び暴力的過激主義への対策は,引き続きG7にとっての主要な優先事項である。我々は,我々の市民の安全及び安心を確保し,また彼らの価値や生活の仕方が完全に維持されるよう,共同の取組において連帯し,テロリスト及びその活動を教唆する者を必要に応じて見つけ,特定し,排除し,及び処罰するために,最も強力な行動をとる。

3 我々は,テロ行為,その行為を犯した者及び支援者を厳格に阻止し,捜査し,また訴追することによって,テロとの闘いをより高いレベルに引き上げる。我々の価値及び規範に関する共通のシステム,人権及び文化的多様性の尊重,基本的自由の推進及び我々の社会が依って立つところの諸原則は,引き続き我々の共通の行動の指針であり,この共通の脅威に対する第一にして最良の防御である。我々は,この目標を達成するために,伊勢志摩で採択されたG7行動計画の完全な実施に引き続きコミットする。

4 しかし,マンチェスターでの残忍な襲撃は,我々がこれらのコミットメントを行動に移すため,今こそ努力を倍加しなければならないことを証明する。我々は,以下のコミットメントの実施に焦点を置き,また,テロを壊滅させるために民間部門及び市民社会と共同で取り組むために,我々の内務大臣にできる限り早期に会合するよう指示することで合意する。

5 第一に,我々は,テロリストによるインターネットの悪用と闘う。インターネットは,ここ数十年で最も重要な技術上の成果の一つである一方,テロ目的のための強力な手段ともなることが示された。G7は,通信サービス・プロバイダやソーシャル・メディア企業に対し,テロ関連の内容に対処する取組を大幅に増加するよう呼びかける。我々は,産業界が,暴力への扇動を促す内容の自動的な検知を改善する新たな技術やツールを緊急に開発し,共有するため行動するよう奨励し,また同様に,インターネット上の過激主義と闘うために提案されている産業界主導のフォーラムを含め,産業界の取組を支持することにコミットする。我々は,我々の共通の価値観に根ざし,表現の自由の原則を適切に尊重する代替的で前向きな言説の促進を支援する。我々は,テロ及び暴力的過激主義,過激主義者によるインターネット上のリクルート,暴力へとつながる過激化や扇動を支持するプロパガンダに対抗する。このために,我々は,市民社会,若者・宗教の指導者,収容施設及び教育機関との連携を強化する。

6 第二に,我々は,紛争地から分散する外国人戦闘員によってもたらされるリスクを管理する共同のアプローチを追求する。我々は,最大の効果がもたらされ得る上流部分に特に焦点を当てつつ,渡航あるいは帰還する外国人戦闘員の脅威に対処するため,通過国や目的国における能力構築のためのリソースを結集させる。我々は,外国人戦闘員を彼らの出身国に戻すために法的な手段を整備すべく,我々の専門知識やリソースを提供する。我々は,Da’esh/アル・カーイダの支配地域に渡航したことがあると判明している個人に関する一層の情報共有にコミットする。我々は,帰還する外国人戦闘員の訴追を可能とするため,戦闘地における証拠を遡って収集することについて協力する。我々は,ぜい弱な女性や子供のような訴追され得ない者について,国際的な人権水準の遵守を確保しつつ,措置を整備する。

7 第三に,我々は,テロリストの資金源及び資金調達経路並びに暴力的過激主義の資金調達の遮断に我々の取組を改めて向け,行動をとる。資金は,暴力的過激主義者及びテロリストにとって必須のものであるので,世界中の若者を過激化させ,我々の国益を脅かす暴力的過激主義者の資金調達に対抗する。したがって,我々は,金融活動作業部会(FATF)により実施される作業に対する支持を維持するとともに,G7資金情報機関の間の改善された情報共有及び他の権限のある当局との間及び民間部門とのより良い協力の重要性を認識する。我々は,彼らの支援ネットワークを途絶えさせる狙いを定めた金融制裁を採り,また,我々はこれらの制裁に関するG7の協力を強化する。我々は,テロリストに対して身代金を支払わないという我々の決意を,改めて明確に表明する。

8 これに加え,我々は,我々の国境当局間の協力,そして我々のパートナーの国境当局との間の協力を強化すること,また,旅行者の審査において,乗客予約記録(PNR)や事前旅客情報(API)の利用の拡大を支援することに引き続きコミットする。我々は,国際レベルでのAPIの利用におけるギャップを埋めることの重要性を改めて表明するとともに,テロとの闘い並びに外国人戦闘員の流れの阻止及び帰還の監視においてAPIが効果的な手段として極めて重要であることに留意する。

9 我々は,テロリストの支援やテロリストの手への武器の流れへの対策,暴力につながる過激化の防止及び対策,情報共有の円滑化,テロと国境を越えた組織犯罪との結び付きの解体並びに効果的で均衡性があり,リスクに基づいた航空保安措置のより良い実施の促進において,引き続き主要な役割を果たしていく。我々は,第三国が保護のための安全対策を向上させることを強く奨励し,また,支持する。我々は,テロ対策のための世界的な行動に不可欠な要素として,関連する全ての国連安全保障理事会決議及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(UNTOC)を含む国際文書を実施するために,我々の間の協力を強化し,第三国とのパートナーシップを強化する。我々は,「暴力的過激主義の防止のための国連事務総長行動計画」及び国連の「グローバル・テロ対策戦略」を引き続き支持する。

10 我々はまた,その情報共有機能において,国際刑事機構(インターポール)を支持することにコミットする。我々は,優先パートナー国のデータベース・システムへの接続を更に強化し,いかにしてこの取組を共同で加速することができるかについて引き続き評価する。

11 我々は,テロと闘うための手段としての,文化の特有の役割を確信している。文化を育むことは,人々の間の寛容及び対話,相互理解,宗教の多元的共存並びに多様性の認識と尊重を促進する道である。文化は,アイデンティティや人類の記憶の維持に貢献し,国家間の対話や交流を奨励するとともに,最終的には,特に若者の間の過激化や暴力的過激主義を防止するための特別な手段となり得る。

12 我々はまた,文化遺産の保護と文化財の略奪及び違法取引へ対抗するために協力するとの我々の強い決意を確認する。このような文化財は,テロ集団及び組織の活動の資金源であるが,同時に,彼らの支配地域から文化的多様性を根絶する凶悪な手段でもある。

13 我々は,暴力的過激主義対策,テロ資金対策,国境及び航空保安の強化並びにサイバー関連の能力の強化といった諸分野における,効果的,効率的かつ焦点を絞った能力構築及び技術援助プログラムの実施に向け,国際的・地域的な機関及び団体を運営していくことにコミットする。

14 社会的及び経済的な包摂性及び機会の欠如が,テロ及び暴力的過激主義の増大を助長する可能性があることから,我々は,治安,社会的包摂及び開発を結合した包括的なアプローチを通じて,これらの問題に対処していくことにコミットする。異文化間及び異なる信仰間の対話のように,多元的共存,寛容及びジェンダー間の平等を促進するためのG7の取組は,テロ及び暴力的過激主義に対する我々の行動の有効性を増加させる。

15 テロ及び暴力的過激主義に対する我々の行動は,共通の価値のシステムに根

ざすものであり,それは引き続き,協調し,調整された我々の行動のための堅固な基盤を提供する。我々は,全てのテロ対策の取組が民主主義,人権の尊重及び法の支配という共通の原則に基づかなければならないことを強調する。我々は,テロ資金調達及び暴力的過激主義の資金調達を途絶させ,紛争地域からの外国人テロ戦闘員の帰還を管理するとともに関連する地域の安定に係るリスクに対処し,テロ目的のインターネットの広範な利用に対策を講じ,暴力につながる過激化の根本原因に対処するといった主要課題に取り組むに当たって,G7によって国際社会の中で確立されてきた伝統に引き続き依拠する。