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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] イノベーション,技能及び労働に関するG7人間中心の行動計画

[場所] タオルミーナ
[年月日] 2017年5月27日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

序文

イノベーション,より具体的に次世代生産革命(NPR)は,OECDの報告書「次世代生産革命:政府とビジネスへの示唆」で強調されているとおり,我々の企業,労働力および社会にとって前例のない「大きな変化」をもたらすこととなる。

我々の国家が既に国家単位で実施した取組に加えて,我々G7首脳は,イノベーション,技能,労働に関する主要な優先事項に関する共通の合意を,本日表明する貴重な機会を有することを認識する。関係閣僚会合を通じて,具体的な関連政策が更に検討されることとなる。

サミット首脳宣言に併せ,今日の我々の目標は,全ての部門の人々と企業がイノベーションの利点を最大限活用できるような統合された政策アジェンダを強調し,そうすることによって,イノベーションが我々の国家の全ての地域の繁栄,競争力,福祉の具体的な源泉となるよう我々の努力を拡大していくことである。

主要な政策柱および主要な政策優先事項

イノベーションとNPRによって引き起こされる「大きな変化」の機会を捉え,またその課題に対応するため,我々は,3つの主要な政策の柱と一連の政策優先事項を特定する。これらの特定な側面については,今後,関係閣僚間の議論で更に分析されることとなる。

柱<1>生産におけるイノベーション

この分野で,3つの主要政策優先事項として,(1)包摂性,(2)開放性,(3)セキュリティを特定する。

主要な政策優先事項1G7各国のデジタル革新における中小企業の重要な役割を認識し,新興企業に特に注意を払いつつ,イノベーション主導型経済に中小企業を含めることを強化する。

主要な政策優先事項2包摂的な経済成長と進歩の不可欠な原動力として,デジタル世界への人々や企業によるアクセスを促進し,人工知能の発展と利用に向けて前進する。プライバシーとデータの保護を確保し,デジタルセキュリティを強化しつつ,情報の自由な流通を促進,保護する。

主要な政策優先事項3デジタル経済を強化し,企業の成長と人々の福利に重要な役割を果たす知的財産保護とサイバーセキュリティに関するリスクインフォームド政策を推進し,支援する。

柱<2>知識に基づいた資本と有効なインフラ

この分野で,3つの主要政策優先事項として,(1)人的資本形成,(2)科学技術・イノベーション(STI)の資金調達に関する政策と仕組み,(3)グローバルな研究インフラ,を特定する。

主要な政策優先事項4十分に代表されていないグループに特別な注意を払いながら,次世代生産革命によってもたらされる機会と課題に取り組む研究者の能力を強化する。

主要な政策優先事項5科学技術,イノベーション(STI)の資金調達に関する政策と仕組みにおけるベストプラクティスを特定することにより,将来の知識とイノベーションの創出における研究の役割を強化する。

主要な政策優先事項6G7諸国がグローバル・リサーチ・インフラストラクチャーやeインフラのネットワークに参加することを通じ,G7諸国間の相乗効果を強化し,オープン・サイエンスの恩恵を享受する。

主要な政策優先事項7高速ブロードバンドネットワーク,次世代送電網,スマート・ロジスティックス,モビリティ・プラットフォーム等,次世代生産革命に有効な質の高いインフラの展開や相互接続に貢献し得る政策についてのG7諸国間の対話を強化する。人々,企業,研究者がそのようなインフラにアクセス可能とする政策を奨励し,それによって全ての分野で機会を創出できる新たなイノベーションへのアクセスを提供する。

柱<3>仕事の未来

この分野で,2つの主要政策優先事項として,(1)対話と(2)包摂性を特定する。

主要な政策優先事項8仕事の量・質の双方を向上させる人間中心のイノベーションを促進する。

主要な政策優先事項9包摂的で持続可能なイノベーション主導型の成長のため,仕事の未来に関連する適切な政策を設計する。

***

国家の法令に従って,我々は,産業,ICT,科学,労働,雇用分野の関連閣僚に対し,これらの主な政策の柱に沿って各分野における政策をさらに検討する任務を課す。

さらに,我々は,主要政策優先事項7の展開に関し,上述の閣僚に加え,環境,インフラ,運輸分野の関連閣僚とも具体的な協働が行われることを要請する。

それぞれの成果は,この行動計画の個別の附属文書を構成することとなっており,

「G7イノベーション週間」(トリノ,9月25日〜10月1日)の最後に追加されることとなる。

{文中の<1>はマル1、<2>はマル2、<3>はマル3}