データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 平等と経済成長に関するシャルルボワ・コミットメント

[場所] シャルルボワ
[年月日] 2018年6月9日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

‐ 我々G7首脳は,我々の市民の経済的繁栄を最大化するため協力することにコミットしている。近年,急速な技術の変化,世界経済の統合の一層の深化及び雇用創出の増大の中で,世界経済は強化された。同時に,あまりにも多くの市民がその経済成長の恩恵を受けていない。

‐ G7諸国経済が直面している主要な課題は,全ての市民が経済的な成功に貢献し役割を果たすための,真の,公正な機会を有することを確保することである。不平等は,特に不利な状態に置かれた集団が,その潜在力を実現し,完全に貢献することができない場合に,信認,社会的一体性及び成長を低下させ得る。

‐ 経済成長は生活水準を向上させるための基礎である一方で,我々は,国内総生産(GDP)等の伝統的な尺度を通じて我々が今日見ることができるものよりも,人々が日々の生活において直面している課題についてより全体像を把握しつつ,社会的及び経済的進歩を考察する方法を拡大する必要があると認識する。勤労者が変化する労働市場の需要についていくための備えができているどうか,就労を望む全ての人が仕事を得られているかどうか,並びに就くことができる仕事が働きがいのある人間らしいもので,賃金が高く,男女,不利な状態に置かれた集団及び差別に直面している人々に平等な機会を提供するかどうかという,G7各国の経済が直面している広範な問題を検討す

ることが重要である。

‐ 人々が世界経済に完全に参画することを妨げる障壁を取り除くとともに,ジェンダー間の不平等の根本的な原因に取り組むことは,貧困を削減し,成長を促進し,質の高い雇用及び全ての人にとって人間らしい働きがいのある雇用を創出するために不可欠である。経済的に疎外された人々,特に女性の創造性及び生産性は,持続可能で,強靱な経済にとって重要である。

‐ 全ての人々のためになる経済成長のために条件を整備し強化するには,民間部門,社会的パートナー,及び労働者のような他の鍵となるステークホルダーとの協力,及び革新的なアプローチに関する知識及びベスト・プラクティスの積極的な共有,技能に関する情報や雇用形態の新たな方途への開放性,政策が女性及び男性に及ぼす異なる影響に関する理解,並びに人々及び彼らが直面する独特の多様な現実に焦点を当てることが必要である

‐ 新たな技術の出現は,我々をより近づけ,我々の生活の質を改善し,及び世界をより良いものするための潜在性を有する。しかしながら,それらは,全ての人々のためになる成長を促進する上での新たな課題も提起する。我々は,科学及び技術のような高い成長分野において少数派となることが多い集団が完全に含まれること,労働者が現在と将来の雇用のための技能と訓練を有していること,並びにそれによって我々の経済がより強固で,かつ,より競争的であることを確保することを支援しなければならない。

‐ 社会における格差に対処し,人々の信頼及び経済統合を促進し,並びに技術の変化により良く備えるために,我々は以下にコミットする。

● 以下を含む,福祉の広範な側面を反映する経済的繁栄の尺度を検討。

 ・ 例えば技能のレベルに応じた雇用率に反映される技能開発及び訓練。

 ・ 子供の貧困率に反映される子供及び家族への支援。

 ・ 例えば早期の学習へのアクセス等,世代を超えた家族間での収入及び教育のための機会に反映される,全ての市民が成功するための機会。

 ・ 雇用率,男女間の参画の格差,非自主的パートタイム労働者比率及びジェンダーによる賃金格差に反映される完全な経済的参画。

 ・ 必要に応じ,性別及び年齢別の家計及び個人の実質の中位所得の水準及び伸びに反映される,成長の利益のより広範な共有。

● 成長や生産性を促進し,質の高い雇用を創出するために,開かれたアクセスを有する,スマートで,持続可能で質の高いインフラ投資の促進。

● 労働者が技術及び仕事の需要における変化にしっかりと備えることができるようにすること,並びに労働者がその労働生活において必要とする学習へのアクセスを可能にすることを確保するために,労働市場政策及びプログラムを適応させ,ベスト・プラクティスを共有。これは,生涯教育,並びに職業訓練における投資を更に強化し,実習制度及び職業学習のための機会を拡大する取組を含む。

● 長期的な成長の源としての,民間部門,イノベーション及び競争に資する経済的環境の創出。

● 教育,労働力開発,及び国内政策が,テクノロジーの変化に遅れをとらないよう,また,労働市場のニーズの変化に沿うように,ビジネス,市民社会の団体,及び教育パートナーとの協力を促進。

● デジタル・リテラシー,根本的かつ社会的技能に投資するとともに,標準的でない形態の業務に従事する人を支援するために社会保護システムを適応させることを検討。

● 不平等を削減し,労働市場への参加を支援する,効果的かつ効率的な税制度の構築,又は維持。

● 税源浸食や利益移転及びその他の形態の租税回避に対処し,また,持続可能な開発を進めるため税に関する能力構築に引き続き取り組むことにより,全ての人々にとって税制を公正にし,徴税を円滑にするためのアプローチを共有し,国際的取組を支援。さらに,我々は,脱税,腐敗,マネーロンダリング及びテロ資金供与と闘うために,金融口座や実質的所有者に関する国際基準のグローバルな履行を促進。

● アクセス可能で手頃な,質の高い保育を推進することで,家庭を更に支援するとともに,児童手当や育児休業へのアクセスを改善。

● 民間企業,国有企業及び公的な雇用者に対し,男女双方にとっての仕事と介護の責任を調和させることを円滑にする措置をとるとともに,男女間の賃金格差を減少させるための取組を強化するよう奨励。

● 有給の出産休暇や育児休業等の措置,並びに人間らしい働きがいのある雇用機会,リーダーシップの機会,リソース及び資金への女性による平等なアクセスを確保するイニシアチブ等の措置により,労働市場の機会及び無償のケアワーカーの分配におけるジェンダー間の平等を支援。