[文書名] 人工知能の未来のためのシャルルボワ・共通ビジョン
‐ 人工知能(AI)は,経済成長の新たな源を導入し,我々の社会に重要な利益をもたらし,人権の保護,ジェンダー平等の達成,増大する世界人口への食糧供給,我々の市民の健康増進,老人及び障害者のエンパワーメント,労働人口への参加の増加,有害な偏見への対抗及び包摂的な社会への支持を含む我々の最も喫緊の課題への対処に資する潜在性を有する。AI技術の広範な潜在性を実現するためには,起業家精神,研究,教育及び労働市場における思慮深い投資が必要である。それにより,関連する社会の影響に対応し,技能の需要における変化に適応し,将来の職業に関する技能及び知識を高めることができる。
‐ 経済成長,社会的信用,ジェンダー平等及び包摂性を促進するAIは,2018年のAIに関するG7モントリオール大臣声明で示されたイノベーションを促進する予測可能で安定した政策環境及び2017年のG7ICT・産業大臣会
合のトリノ宣言により示されたマルチステークホルダー及び人間中心のビジョンによっている。
‐ 我々G7首脳は,以下にコミットする。
1.適切な法体系の整備等を通じたプライバシーの保護,サイバー・セキュリティへの投資,適用可能なプライバシーに関する法律の適切な執行及びその決定の伝達,どのように個人データがAIシステムにより使用され得るかという点を含む既存の国家の法体系の個人への通知,産業界による安全,保証,データ品質及びデータセキュリティに関する研究開発の促進,個人のプライ
バシー並びに透明性を保護する他の変革的な技術の使用の模索により,人間中心のAI及びAIの商業的普及を促進し,引き続き適切な技術的,倫理的及び技術中立的なアプローチを前進させるための努力を行う。
2.新たな技術への市民の信頼を生み出すAIの研究開発への投資を促進すると共に,産業界が説明責任,保証,責任,セキュリティ,安全,ジェンダー及び他の偏見並びに潜在的な不正利用に関連する全ての問題に対処しつつ,経済成長及び女性の経済的エンパワーメントに資するAIの開発及び導入に投資することを奨励する。
3.実習制度,コンピューター科学及びSTEM(科学,技術,工学及び数学)教育を含む,特に女性,女児及び取り残されるリスクがある人々に対する,生涯学習,教育,訓練及び技能再教育を支持すると共に,AI技能のための従事者育成に関する情報交換を行う。
4.AIアプリケーションの開発と普及の全ての段階において,クリエーター,ステークホルダー,リーダー及び意思決定者として,女性,少数派の人々及び疎外された個人を支援し,関与させる。
5.様々なステークホルダーによる,どのようにAIのイノベーションを進めて信頼及び普及を促進するか並びに将来の政策に関する議論を喚起するかについての対話を促進する。
6.有害なステレオタイプに対処し,ジェンダー平等を促進することに特に関心を払いつつ,AIシステムの開発と普及における信頼を促進するための努力を支持する。安全性及び透明性を促進し並びにAIの意思決定手続への人間の介入に関するガイダンスを提供するイニシアティブを奨励する。
7.企業,特に,中小企業及び非技術的セクター企業によるAIアプリケーションの使用を促進する。
8.女性と少数派の人々の労働への参加割合を増加させるために,特に,これらの人々のニーズを対象とする政策を含む,取り残されるリスクのある者のために新たな仕事に必要な技能の開発のための活発な労働市場政策,従事員育成及び技能再教育プログラムを促進する。
9.全ての人々に新たな機会を創出し,特に,今日その大部分が女性である無償ケア提供者に対してより大きな支援及び選択肢を与えるためにAI技術及びイノベーションへの投資を奨励する。
10.AI及びモノのインターネット(IoT)やクラウドサービスのような発展中の新たな技術において,並びに自発的な行動規範,基準又はガイドラインの策定及びベスト・プラクティスの共有等を通じたデジタル・セキュリティを向上するための産業主導のものを含むイニシアティブを奨励する。
11.AIの開発と普及がプライバシー並びに個人データの保護のための適用可能な枠組みを尊重し,促進することを確保する。
12.強制的な技術移転,不当なデータのローカライゼーションに関する要求及びソース・コードの開示といった差別的な貿易慣行に対応すること並びに知的財産権の効果的な保護と執行の必要性を認識することにより,プライバシー及びデータ保護のための適用可能な枠組みを認識しつつ,情報の自由な流通を含む,AIイノベーションのためのオープンで公正な市場環境を支持する。