データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 途上国における女児・思春期の少女・女性のための質の高い教育に関するシャルルボワ宣言 

[場所] シャルルボワ
[年月日] 2018年6月9日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

‐ 我々G7首脳は,ジェンダー平等は人権の達成のための基本であると認識している。我々は,社会的発展と持続可能な経済成長は,女児,思春期の少女及び女性を含め全ての人々の完全な参加によっていることを理解しており,G7のアジェンダの中心に女性及び女児を置いた。我々は包摂的で衡平な質の高い教育は,特に,開発の文脈及び紛争に苦しむ国において,女児及び女性のエンパワーメント並びに経済的な平等を達成するための基本であることを理解している。教育,平等な機会,及び現代の技能は,幼年期から中等教育修了まで,そして中等教育修了後においても,個人及び社会全体のより良い生活に不可欠である。質の高い教育は,平和と安全保障を促進し,健康と人生の成果の改善を推進する。我々は,開発及び人道支援を通じて,ジェンダー平等を達成することを希望する教育を支援する。我々は,女性と女児の教育へのアクセスを妨げる障壁に対応し,開発途上国及び危機的な状況において女児及び女性の将来を改善することが全ての人々にとってより良い世界を築く基礎となることを理解しており,これらのことに取り組む。

‐ 我々は,2016年末現在,世界中で避難を強いられた人は6,550万人おり,そのうち半分以上が18歳以下であり,彼らに質の高い教育と学習の機会へのアクセスがほとんどなかったか全くなかったことを懸念とともに認識する。何百万人もの若年層にとって,本来この期間は,読み書き,計算を学び,また最終的には,大人になった際に自らと家族の生活を維持するための仕事に応用可能な技能を会得するために学校に通っているべき時間である。その代わりに,彼らは不確実な未来に直面している。女児は不均衡に影響を受け,避難に関連した貧困を理由として学校へ通えなくなることが多く,早期の結婚を強いられ,性的及びジェンダーに基づく暴力に直面している。障害を持った女児は,特に疎外されており,彼女たちを開発の主流に統合するために特に焦点を当てる必要がある。これらの要素に対応し,紛争や危機の状態にある全ての子供と若年層の教育へのアクセスを可能な限り遅滞なく回復することは,経済的なエンパワーメントとより良い未来への道を開く。

‐ 我々,G7首脳は,緊急事態下の女児及び女性の教育を優先事項と認識しており,緊急事態及び紛争の影響を受けた脆弱な国家を含む開発途上国の女児,思春期の少女及び女性の質の高い教育に継続して投資する。我々の既存の取組を基礎として,我々は,女児及び女性の質の高い教育への平等なアクセスを増やすために,開発途上国政府,国連の専門機関,市民社会団体,民間部門及び「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」や「教育を後回しにはできない(ECW)」といったグローバル・パートナーシップを含むパートナーと協力する。このあらゆる過程で,我々は,教育・学習についての決定に女児及び女性の声が反映されることを確保することにコミットする。我々は,さらに女性,若者,平和及び安全保障に関する国内及び国際的なイニシアティブ,特に,国連「女性・平和・安全保障」アジェンダ及び「若者・平和・安全保障」アジェンダとの間の関連性を探求する。

‐ 我々は,以下にコミットする。

 1.紛争及び危機下における,難民と国内避難民のキャンプ内外での教育へのアクセスにおける格差を解消する:我々は,紛争・危機状態により子供と若年層,特に女児が学校に通えない期間を短縮することに取り組む。我々は,難民,国内避難民並びに難民の受入れコミュニティ及び発生コミュニティを含む地域の女児及び女性に対する教育機会及び学習成果の向上を目的として促進する。

 2.人道支援と開発協力の間の調整を改善する:我々は主要な人道・開発機関及び受入れ国政府と連携しこれらの機関の間の更なる調整を促進する。我々は,子供にとっての安全な場所としての学校を支援しつつ,人道的対応及び平和構築の取組の早期の段階で,ジェンダー平等へのコミットメントを確保し,女児及び女性への質の高い教育へのアクセスの改善を優先する。

我々G7首脳は,引き続き開発途上国における女児及び女性への教育に対する障壁を取り除くための取組を強化する。我々の投資は以下の世界的な行動を支援する。

 3.女性に将来の職に備えて貰う:我々は,質の高い高等教育へのアクセスの増加,革新的な(教育)提供メカニズムの促進及び生涯にわたる学習の機会の創出を奨励する。利用可能で市場ベースのスキル訓練と職業技術教育・訓練(TVET)を含む多様な学習ツールへの支援を通じて,我々は,女性に対して高い技術を必要としない職を超えて,労働力において女性が占める割合が低い高成長で高賃金のセクター及び科学,技術,工学及び数学(STEM)のように需要がある職業を含む機会を増やすことを追求する。我々は,開発途上国において技術的及び職業教育・訓練を受けた思春期の少女と女性の数を増やすことに引き続き務める。我々は,ジェンダー間のデジタル・デバイドを克服し,デジタル・エコノミーにおける女性の参加を促進することに努める。

 4.性別・年齢毎のデータと説明責任を向上させる:我々は,女児及び女性の教育への参加,修了及び学習,訓練及び若年層の雇用における進展について情報収集,モニタリング,分析,出版及び報告を向上させるために持続可能な開発目標4,5及び8の統計学アカウンタビリティ・パートナーと協力する。

 5.政府に対して全ての人々への教育の継続性を確保することを奨励する:我々は,危機及び紛争状態を見込んだ計画を含む,我々の開発パートナーの教育セクター計画のあらゆる過程で女児の教育のための特別の措置の統合を奨励する。我々は,学習のための安全でアクセス可能な環境を提供する学校を支援する。学校は,危機下及び紛争地域における女児のための継続した教育に必要であるだけではなく,彼女たちの世界が混沌としている中で女児に対する感情的な及び身体的な保護を提供する。

 6.革新的な教育の提供を支援する:特に脆弱で手をさしのべるのが困難なグループのために,我々は,公的な教育を補完する認定された,質の高い,非公的な,加速化した平等な教育の機会を支援する。これらの機会は,危機や紛争の影響を受けた者を含む,女児と女性のための公的な教育への道を作り出すとともに中等又は高等教育学位の取得を支援する。

 7.ジェンダー平等を促進する少なくとも12年間の安全で質の高い教育へのアクセスを増やす:我々は,女児と女性が,幼少時から中等学校までの少なくとも12年間の質の高い教育を修了できる平等な機会を提供しようとする開発途上国パートナーの取組を支援する。我々は,教育を通じて進展するために,女児が基本的な読み書き及び計算技能を学習することを確保する。我々は,部分的には教育セクター,特に,教師の訓練及び働きがいのある給与を伴う有能な男性及び女性双方の教師の雇用と定着を通じたキャパシティ・ビルディングを通じて教育制度におけるジェンダー平等を促進するための取組を支援する。我々は,ジェンダーに配慮した質の高い教育の基準を満たし,学習を促進するカリキュラムと学習教材を支持する。我々は,思春期の少女が成人になった際に成功できる機会が向上するような,性的リスクを回避し,早期の妊娠及び性感染症の予防を強化する保健ケア教育を支持する。特に,障害を持った女児といった脆弱でしばしば学校から除外される者を含む女児と女性のために,学校と学習の道筋へのアクセスを増すことに取り組む。我々は,学校における暴力を撲滅し,ジェンダー平等及び健全な関係の発展を支援するために教師並びにコミュニティとの協力を奨励する。

 8.ジェンダー平等と質の高い初等及び中等教育への障害を取り除く:我々は,安全な学校のための投資等を通じた,学校及び教育機関を安全で,女児と女性を歓迎するものにする行動を支持する。我々は,危機下及び紛争地域における(登下校の際の)交通機関の安全の重要性を認識する。我々は,栄養のある食料へのアクセスを向上し,女性器切除の根絶,並びに児童婚,早婚及び強制婚の終結のための行動を支持する。我々は,女児が学校に通い続けることができるように,適切な保健ケア及び証拠に基づく保健情報へのアクセスを促進する。我々は,学校教育を受けなかった場合の機会費用を提示しつつ,女児の教育の価値について,両親,世話をする者及びコミュニティを教育する行動を支援する。我々は,十分なサービスを受けていない者が子供を学校に通わせ続ける費用を負担するインセンティブを促進する。