データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ビアリッツ宣言:開かれた自由で安全なデジタル化による変革のための戦略

[場所] ビアリッツ
[年月日] 2019年8月26日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.我々,G7,豪州,チリ,インド及び南アフリカ共和国の首脳は,経済協力開発機構(OECD)事務総長と共に,2019年8月26日にビアリッツで会合し,開かれた自由で安全なデジタル化による変革を促進するための最善の戦略について議論し,それを現在の諸課題から保護する決意を改めて表明した。

2.我々は,インターネット及びデジタル化による変革において使われる関連技術が,我々の社会及び経済発展の重要な要因であることを認識する。それは,全ての個人及びコミュニティをエンパワーする新しい方法をもたらし,かつてないほどの情報及び知識へのアクセスを提供してきた。しかしながら,社会的一体性及び民主主義的価値を脅かす否定的な影響が存在する。オンライン上の嫌がらせは,様々な形式で,特定の集団,とりわけ女性,少数派及び脆弱なユーザーを特に標的とし,多くの人権の完全な享受を制限する。

3.我々は,言論及び表現の自由に関する権利にコミットしている。我々は,多様な視点からの情報へのアクセスは民主主義にとって本質的なものであると信じる。我々は,様々な法的及び政治的な伝統を有するが,関連するステークホルダーとの徹底的かつ建設的な意見交換の価値を評価する。我々は,「情報及び民主主義のための国際的なパートナーシップ」の設立に関する進展,及び,ジャーナリストの保護のためのコンセンサスを得ることを目的として7月10日・11日にロンドンで開催された「メディアの自由に関する国際会議」の結果について,仏議長国から報告を受けた。

4.我々は,国家及び非国家主体による不法で悪意ある行動及び外国からの敵対的な干渉に対し,我々の民主主義国家を強化するために協働することを決意する。我々は,サイバーセキュリティ,戦略的コミュニケーション及びカウンター・インテリジェンスの分野を含むハイブリッドな脅威に対処する能力を強化し続ける。我々は,G7即応メカニズムの継続中の活動に留意する。

5.我々は,開かれた自由で安全なインターネットのための相互の目的に向けて国際的なパートナーと協働しており,特に「クライストチャーチ・コール」及び「テロ及びテロに通じる暴力的過激主義によるインターネットの悪用の防止に関するG20大阪首脳声明」によってもたらされるモメンタムの継続に留意する。我々は,テロリストのプロパガンダに対抗するための前向きなナラティブが引き続きこの取組の重要な要素となることを改めて強調する。我々は,違法なオンライン・コンテンツ及び活動に対処しつつ,また,我々の民主主義的価値及び法の支配を尊重しつつ,インターネットの肯定的な影響を実現することを目指すインターネットのためのマルチステークホルダー憲章に関する見解について報告を受けた。

6.我々は,データ,情報,アイデア及び知識の越境流通が,プライバシー,データ保護,知的財産権及びセキュリティに関する問題を提起する可能性がある一方で,生産性の向上,イノベーションの増大及びより良い持続可能な開発をもたらすことを認識する。データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)は,デジタル化による変革の機会を活かすものである。この観点から,国内及び国際的な法的枠組みの双方が尊重されることが必要である。我々は,異なる枠組みの相互運用性を協力して奨励し,開発のためのデータの役割を確認する。我々は,5Gネットワーク及びサプライチェーンにおけるセキュリティの脆弱性により引き起こされる脅威に対処する必要性につき一致している。

7.人工知能(AI)技術は,我々の社会及び経済に根本的な変化をもたらす。AI技術は,かつてないイノベーション及び成長のサイクルを開くことができる。AIは,持続可能な開発のための2030アジェンダの達成に向けた歩みを進めるための革新的な解決策,及び,我々の最も喫緊の課題の一部への対処に役立つ重要な利益を提供することができる。首脳は,AIが,社会,世界経済及び仕事の未来を変えており,人々の福祉を向上させる潜在力を有するが,経済,プライバシー及びデータ保護に関する異なる影響,並びに,民主主義に対する潜在的な影響をもたらすかもしれないことを認識する。

8.我々は,AIの未来に関するイタリア及びカナダの議長下での活動を認識する。我々は,人権,包含,多様性,イノベーション及び経済成長に基礎を置く,AIの責任ある発展を支持し,これを導く必要性を認識する。我々は,AIの問題に関する学際的な研究結果及びベスト・プラクティスを定期的に理解し,共有するためのAIに関する活動を進展させる方法を探求し続け,また,国際的なAIのイニシアティブを結集する。我々はこの関連で,カナダ及びフランスによって提案されたイニシアティブである,「AIに関するグローバル・パートナーシップ」や他の関連するイニシアティブを認識する。我々は,2019年5月に採択されたAIに関する勧告に沿って,AIを進展させるための我々の活動を支持するというOECDの意図を歓迎する。