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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 不平等との闘いに関するビアリッツ議長総括

[場所] ビアリッツ
[年月日] 2019年8月26日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.議長国は,不平等に対処するため,関連する国際機関の参加を得て,「G7不平等との闘い」に特化したセッションを開催した。議長国は,不平等は,世界の安定・繁栄,社会の一体性及び民主主義的な制度への市民の信頼に対する重大な課題となり,強じんで包摂的な経済発展をむしばむことを強調した。議長国は,我々のルールに基づく国際協力が不平等と闘うための強力な手段となり得ることを強調した。

2.議長国は,不平等との闘いにおいて国際機関を動かすこと,並びに,このセッションの文脈におけるILO事務局長,世界銀行総裁,IMF専務理事,WTO事務局長及びOECD事務総長による共同声明の重要性を強調した。また,何人かの首脳は,デジタル化の文脈において不平等に取り組むこと,そして,特に大阪トラックの下でのものを含めデジタル経済・データの潜在力を十分に活用するための政策議論を促進することの重要性を強調した。

3.幾人かの首脳は,すべての人々に対して,社会保障及びプライマリー・ヘルス・ケアを含む支払い可能な質の高い保健医療サービスが確保されていることが肝要であると強調した。また,これらの首脳は,世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)増資に焦点を当てつつ,保健システム強化に対する更なる投資を要請した。幾つかのG7メンバーは,2019年10月9日から10日までリヨンで開催されるグローバル・ファンド増資会合を視野に入れた実質的な資金的貢献を既に表明しており,それは50億米ドル以上に達している。

4.議長国は,不平等への取組,特に,「公正で適正な賃金を含むディーセント・ワークの促進,及び,より包摂的な成長・繁栄の共有の達成」のための社会的対話を支持する,市民社会エンゲージメント・グループがもたらした貢献,特にLabour 7とBusiness 7の共同宣言を賞賛した。また,議長国は,差し迫ったグローバルな課題に対処するため,市民社会が育むことができる,具体的な行動及び提言の重要性を強調した。

5.議長国は,不平等を軽減することに携わっている民間企業との2019年8月23日の会合(包摂的な成長のためのビジネス・イニシアティブ)について報告した。議長国は,「IGF(包摂的成長ファイナンス)フォーラム」原則を歓迎し,また,関心のあるG7参加国がこのイニシアティブへの支持を検討するよう要請した。このイニシアティブの正式な開始は,2019年11月の次回パリ平和フォーラムの

期間中となる。

6.このセッションは,また,自発的に活動し,政府から完全に独立したグループであるジェンダー平等アドバイザリー評議会の代表者との有意義な議論の機会を提供し,同評議会は,女性・女児の実用的で戦略的なニーズに係る作業について報告を行った。議長国は,ジェンダー平等のための新しく革新的な法律のグッド・プラクティスに関する同評議会の作業と提言が果たす極めて重要な役割を想起した。ジェンダー平等アドバイザリー評議会に対し,特に,同評議会の創設国であるカナダと2019年にこれを更新したフランスは,感謝をした。G7の首脳は,ジェンダー平等のためのビアリッツ・パートナーシップの立ち上げ,紛争関連の性的暴力生存者のための国際基金への支持,さらに女児・女性の教育・訓練に関する別個の宣言を採択した。議長国は,パートナーに対して,学校でのいじめの問題に取り組むため,仏がユネスコ及び他の国際機関と協働して,2020年にパリで国際会議を主催することも報告した。