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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7貿易大臣会合議長声明

[場所] 
[年月日] 2021年3月31日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 本日、G7貿易大臣は、初のG7貿易トラックの下で、第一回会合を開催した。貿易大臣は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの影響に取り組む上で世界貿易が果たしている重要な役割を強調し、力強い経済回復のために貿易ができる貢献を歓迎するとともに、より良く復興(ビルド・バック・ベター)する必要性を強調した。また、ルールに基づく多角的貿易体制の重要性を再確認し、ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ世界貿易機関(WTO)新事務局長を本会合に歓迎した。

 G7貿易トラックには、自由で公正な貿易をグローバルに主張していく大胆な目的がある。G7貿易大臣は、世界の主要な民主主義貿易国家が、世界貿易システムをより公正で、より持続可能で、市民のニーズに応えるものにするという共通の課題のもとに団結すれば、この課題は世界中のパートナーが共有し具体化を助ける準備が整うことを確信している。

自由で公正な貿易

 G7貿易大臣は、自由かつ公正で、全ての国と人々のために機能する世界貿易システムを支持する。本年は、世界と世界の経済構造にとって明確な転換点となる。G7貿易大臣は、多角的貿易体制が直面している課題に対応するために必要なリーダーシップを提供する重要性を認識した。貿易大臣は、全ての人のための繁栄の確保に資するWTO改革の進展を確かにするために必要な、持続的な努力とモメンタムを提供する決意を表明した。したがって、G7貿易大臣は、第12回WTO閣僚会議(MC12)の課題を進めるとともに、WTO改革の議論に重要な政治的モメンタムを提供するため、本年のG7を活用する。貿易大臣は、幅広いWTO加盟国の関与を得る上でプルリラテラル(複数国間)の取組が果たしてきた積極的な役割を認識しつつ、交渉の場としてのWTOを強化するための改革を探求する。また、G7貿易大臣は、透明性、特別なかつ異なる待遇(S&DT)及び紛争解決に関する重要な作業がWTOで行われる必要があることを認識する。

 多角的貿易体制は、豊かさの力となり得る。多角的貿易体制は、競争と経済成長を促進し、生活水準の向上に貢献し、何百万人もの人々を貧困から救ってきた。多角的貿易体制は、全ての加盟国のニーズに応え、自由で公正な貿易の基盤を提供するものでなければならない。G7貿易大臣は、世界貿易は民主的で開放された市場システムのために機能すべきであり、これらの制度が、不公正な貿易によって損なわれてはならないと認識した。

 しかし、全ての市民が貿易の恩恵を実感しているわけではない。さらに、市場や競争を歪曲する慣行は、効率性を低下させ、多角的貿易体制に対する公正さや信頼性についての認識を損なう。2018年のシャルルボワG7首脳声明に共鳴する形で、G7貿易大臣は、真に公平な競争条件を発展させることの重要性を想起した。貿易大臣は、一部の産業で過剰生産能力の原因となっているものを含む、有害な産業補助金などの市場歪曲的な慣行が我々の経済に及ぼしている影響を議論し、これらに共同で対処する方策を計画する。

貿易の現代化

 G7貿易大臣は、世界の経済と環境の変化を反映するため、多角的貿易体制の改革が必要であると信じる。世界がネット・ゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)に移行する中で、貿易大臣は、カーボン・リーケージの環境へのリスクと、これを緩和する潜在的な方策を認識した。貿易大臣は、加速している気候と生物多様性の危機に取り組む上での貿易の役割を認識し、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を含め、気候変動に対処し自然を保護するための国際的な努力を推進するために、2021年が重要な年になることを認識した。したがって、貿易大臣は、持続可能なサプライチェーンの促進と協力のための機会を特定することに焦点を当て、貿易と気候・環境との連関について議論を深める。さらに、G7メンバーは、持続可能性に明らかに影響を与える、漁業補助金に関するWTO交渉の、意味のある妥結を得ることにコミットしている。

 貿易は市民のためのものでなければならないと強調した上で、G7貿易大臣は、特に新型コロナからの回復を支援するために、貿易を通じて女性の経済的エンパワーメントを進めることの重要性を強調した。閣僚は、貿易において、リーダー、企業経営者及び公平な待遇を受けた労働者に女性がより多くを占めることが、最終的には、より多くより良い雇用と経済の成長をもたらすという見解を共有した。G7メンバーは、「She Trades Outlook」のような、国際機関による貿易政策とジェンダー平等に関するより深い研究と横断的な分析を促進する。貿易大臣は、WTOにおける貿易とジェンダー平等に関する目下の進展を認識し、次回の議論では、貿易における女性を支援するための証拠の根拠を改善する新たな機会を探求し、次回のWTO閣僚会議におけるこの分野の優先事項を議論することを企図する。

 また、G7貿易大臣は、新型コロナからの回復に向けて、保健に関する製品の貿易やサプライチェーンの強靭性の向上を支える貿易政策を進化させる方策をさらに検討することで一致した。新型コロナウイルスの感染拡大の規模とペース、そして偏った世界的回復は、我々のすべての経済に困難をもたらしている。G7メンバーはまた、政府、製造業者、その他の業界関係者が協力して、ワクチンの生産・流通の強化を支援する政策を特定することを促す。

デジタル貿易

 G7貿易大臣は、成長、イノベーション、生産性及び繁栄にとってのデジタル貿易の重要性を認識した。G7貿易大臣は、デジタル貿易が我々の人々とビジネスに多大な機会を提供していることを想起し、デジタル貿易がパンデミックからの経済回復において中心的な役割を果たし得ることを強調した。G7メンバーは、開かれたデジタル市場を支え、デジタル保護主義に反対する点で団結している。G7メンバーは、法の支配に基づく市場経済国のグループとして、デジタル市場は競争力があり、透明性が高く、国際貿易及び投資に容易にアクセスできるものであるべきだと信じる。また、信頼性のあるデータの自由な流通(DFFT)、消費者とビジネスの保護、国境を越えた円滑な物品とサービスの移動を可能にするデジタル貿易システムの重要性についても一致している。G7貿易大臣は、世界的にデジタル貿易を促進し、公正かつ包摂的なグローバル・ガバナンスを追求することを決意する。G7貿易大臣は、英国議長下で、G7のデジタル貿易に対するアプローチを導く一連の高い水準の原則をさらに検討していくことで一致した。

  デジタル貿易は、引き続きWTOにおける新しいルール作りの重要な分野である。デジタル貿易を規定するルールは、ビジネスや消費者、労働者がその可能性を十分に活用できるよう、イノベーションや新興技術に対応したものでなければならない。G7貿易大臣は、WTOにおける電子商取引に関する共同声明イニシアティブを推進するための努力を倍加することにコミットした。G7貿易大臣は、第12回WTO閣僚会議までに実質的な進捗を達成することを目指す。

 G7貿易大臣は、5月の次回会合において、対話を強化し、共有する課題をさらに前進させることを期待する。

(了)