[文書名] G7外務・開発大臣会合コミュニケ
I. 前文
1. 我々G7の外務・開発大臣及びEU上級代表は本日、我々の国民、我々の地球、我々の安全保障そして我々の将来の繁栄にとっての重要な節目で会合を行った。民主主義は世界中で圧力にさらされており、パンデミックは引き続き深刻なグローバルな課題を突き付け、新たな技術的脅威は増大し、気候変動の破壊的な影響は増している。我々は、開かれた社会、共通の価値及びルールに基づく国際秩序を強化することにコミットする。我々は、自由で公正な貿易、また、自由で安全な資本、データ、知識、思想及び人材の流れが、我々の長期的な繁栄にとり不可欠であることを確認する。我々は、自由民主主義と自由で公正な市場が、包摂的で持続可能な社会・経済発展にとり最良のモデルであり続けることを確認する。我々は、脅威に共に立ち向かい、共通の安全保障を達成するために我々の資源を投入することにコミットする。我々は、住む場所、アイデンティティ、信条、ジェンダー、障害又は人種に関わらず、あらゆる個人のために人権の尊重を促進し、人権を保護する。我々は、ジェンダー平等を更に進めるために国際社会と協力して取り組むことにコミットし、女子教育、女性のエンパワーメント並びに女性及び女児に対する暴力の終焉に焦点を当てることの重要性を再確認する。
2. 我々は、最も喫緊の外交及び安全保障課題に共に行動をとる必要性を確認する。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、グローバルな課題にはグローバルな協働が必要であることを強調した。我々は、保健システムへの投資が、経済成長と将来のパンデミックの脅威に対応するための我々の能力を強化することを再確認する。我々は、ワクチン、治療及び診断への緊急の、公平なアクセスを含め、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びパリ協定に沿って、新型コロナ感染症からのグリーンで、包摂的で持続可能な回復を達成するために、開発パートナーである途上国、特にアフリカの途上国と協力することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、パートナーである途上国が、紛争、気候変動、貧困、食料不安並びに新型コロナウイルスの健康面、人道面、人権面及び経済面での影響という密接に関連し合う脅威に対処し、これらを防止するのを支援すること、また、我々が将来のパンデミックにより備えられるようより良い回復を図ることにコミットする。我々は、パンデミックが持続可能な開発目標(SDGs)に向けた進捗を更に後退させたことを深く懸念する。我々は、2030年までにSDGsを達成することを目指して更なる努力を行うことにコミットし、誰一人取り残さないことを確保することにコミットする。
3. 我々は、強化されたG7アフリカ・パートナーシップ及びインド太平洋への一層の関与を含め、グローバルな協力を更新することにコミットする。我々は、6月のG7首脳会議への参加に先立ち、共通の優先事項を前に進めるために、外務・開発大臣会合に招待国として参加した豪州、インド、大韓民国及び南アフリカを歓迎する。我々は、東南アジア諸国連合(ASEAN)外務大臣会合の議長による我々の議論への参加を歓迎する。
II. 外交・安全保障政策
ロシア
4. 我々は、ロシアの無責任かつ不安定化を招く行動の負のパターンが続いていることを深く懸念する。これには、ウクライナとの国境沿い及び違法に併合されたクリミアにおけるロシア軍による大規模な軍備増強、他国の民主的システムを弱体化させることを目的とした悪意のある活動、悪意のあるサイバー活動及び偽情報の活用が含まれる。我々は、自国の利益や安全に対するロシアの情報機関に関係する活動の影響を受けた全てのパートナーとの完全な連帯を表明し、そうしたロシアの行動に揺るぎない決意で対抗し続ける。我々は、ロシアの西側諸国との関係の悪化に遺憾の意を持って留意し、外交関係に関するウィーン条約を国家間の外交関係の不可欠な基礎として尊重することの重要性を強調する。
5. 我々は、政治的動機に基づく告発によるアレクセイ・ナヴァリヌィ氏の逮捕、判決及び拘束並びに同氏への軍用レベルの化学神経剤「ノビチョク」類のロシア領域での使用への非難に関する1月26日の我々の共同声明を想起する。いかなる化学兵器の使用も容認されず、そのような兵器の使用を禁止する国際的な規範に反する。化学兵器禁止条約の下でのロシアの義務に照らし、ロシアに対し、これ以上の遅滞なく、ロシア国内で行われた化学兵器の使用について調査し、信頼性のある説明を行うことを求める。化学兵器を使用した者は、責任を負わなければならない。
6. 我々は、ロシアにおける人権状況の悪化並びに反対派の声、人権擁護者、独立した市民社会及びメディアに対する組織的な取締りについて、引き続き深く懸念する。
]7. 我々は、ロシアとの安定した、予測可能な関係への関心を改めて表明する。しかしながら我々は、サイバー空間の安全保障や偽情報の分野を含め、ルールに基づく国際秩序を脅かすロシアの行動に対処し、それを抑止するために、我々の総力とパートナー諸国の総力を強化し続ける。我々は引き続き、地域の危機への対処に当たり、また、気候変動、軍備管理、軍縮・不拡散、北極圏における平和的で持続可能な経済開発や環境保護等の共通の関心事項たるグローバルな課題への対処に当たり、ロシアに関与する。
ウクライナ
8. 我々は、4月12日の我々の声明を想起し、ロシアに対し、ウクライナとの国境沿い及び違法に併合されたクリミアにおける状況を緩和するよう求める。我々は、領海を含む国際的に承認された国境内におけるウクライナの独立、主権及び領土一体性に対する支持を再確認する。我々はロシアに対し、ウィーン文書第3章の下で提起された具体的な懸念や質問に対処することを含め、自国の軍隊及びその活動の透明性に関して自ら約束した欧州安全保障協力機構(OSCE)の原則及びコミットメントを堅持することを求める。この点に関し、ロシアが実質的な回答を行わず、ウクライナと向き合わないことは、ウィーン文書の文言及び精神と完全に相容れないものであり、我々は遺憾に思う。モスクワが直ちに部隊を完全に撤退させ、緊張を緩和するために必要な措置をとることが極めて重要である。我々は、アゾフ海のウクライナの港へのアクセスを妨げる、違法に併合されたクリミアやケルチ海峡の近郊を含む黒海の一部へのアクセスを封鎖するためのロシアの行動に深い懸念を表明する。我々は、この状況におけるウクライナの抑制的な姿勢と外交的アプローチを称賛する。我々は、紛争の政治的解決と永続的な平和に向かう外交的な道筋として、ミンスク合意の完全な履行を確保するためのノルマンディー・プロセスを通じたフランス及びドイツの取組に対する継続的な支持を強調する。我々は、三者コンタクト・グループにおけるOSCEの役割を歓迎し、この点に関し、ロシア及び同国が支援する部隊に対し、停戦合意に再度コミットするよう要請する。我々は、国際的な制裁の期間がとりわけロシアによるミンスク合意の下でのコミットメントの完全な履行とウクライナへのクリミアの返還に関連付けられていることを想起し、制裁の実施に引き続き完全にコミットする。我々は、クリミア自治共和国及びセヴァストーポリ市のロシアによる一時的な占拠を断固として非難する。我々は、国際クリミア・プラットフォームの立ち上げのためのウクライナのイニシアティブを原則として歓迎する。我々は、クリミア半島における、特にクリミア・タタール人に対する人権侵害を非難する。我々は、ウクライナの民主主義及び制度を強化する取組を支援し、ウクライナに対し、改革課題、すなわち民主主義を強化し、経済成長を促進し、国際的なドナー及びパートナー並びにウクライナの市民へのコミットメントを果たすための法の支配、司法改革、コーポレート・ガバナンス及び腐敗対策について更なる進捗を図ることを促す。我々は、駐ウクライナG7大使グループに対する信頼を強調し、改革の実施の監視及び支援における同グループの役割を認識する。
ベラルーシ
9. 我々は、ベラルーシにおける2020年8月の不正な大統領選挙後の政治上及び人権上の危機について深く懸念する。我々は体制に対し、OSCEの独立専門家ミッションから得られた勧告を実施し、民主的な願望を表明したために不当に投獄された全ての人々を解放し、今も続く人権と基本的自由の抑圧を終わらせるよう求める。我々は、継続するジャーナリスト及び人権擁護者に対する抑圧を非難し、体制に対し、平和的な集会の権利を尊重するよう求める。さらに、我々は体制に対し、反対派や市民社会の真の指導者を含む社会の全ての部門と有意義な対話を開始し、政治危機を解決する手段としてそうした対話を仲介するとのOSCE議長の申し出を受け入れるよう求める。我々は体制に対し、国際的な監視の下で行われる新たな、自由で公正な選挙の実施を求める。我々は、ベラルーシの人々の民主主義への願望を支援し、人権侵害に責任を持つ者に責任を負わせることにコミットする。
西バルカン
10. 我々は、西バルカン6か国の安全保障、経済復興及び欧州的な視点に対し、平和と安定のための極めて重要な投資として、我々の共通のコミットメントを再確認する。我々は、最も悪質な事案に対し厳しい措置を講じながら組織犯罪、不正な資金調達及び汚職に対処することを含め、とりわけ法の支配に関する必要な国内改革を前進させることの重要性を強調する。我々はそれゆえ、アルバニア及び北マケドニアのEU加盟交渉の正式な開始を支持する。我々は、特に共通地域市場、西バルカンのためのグリーン・アジェンダ及びベルリン・プロセスを通じた地域協力の更なる進展を支持する。我々は、コソボとセルビアに対し、EUの仲介による対話の枠組みにおける交渉に建設的に関与し、地域の安定に資する包括的かつ法的拘束力のある合意を通じ両国関係を完全に正常化することを求める。我々は、モンテネグロ及びセルビアのEU加盟交渉に関する改革アジェンダの実施を支援する。我々は地域の国々に対し、国内の政治的空間を拡大し、市民社会や独立系メディアを取り巻く環境を改善するよう求める。民族の系譜に従った国境線の変更についての正当性を欠く見解は、地域が直面する課題の解決にならない。このような変更は、地域の安全保障に対する脅威となる。我々は、ボスニア・ヘルツェゴビナの領土一体性を損なういかなる試みも断固として拒否する。我々は、ボスニア・ヘルツェゴビナの全ての当事者に対し、選挙改革及び限定的な憲法改正に同意し、また実施し、欧州人権裁判所の判決を履行し、OSCEの民主制度・人権事務所及びヴェネツィア委員会と緊密に協力して民主的な願望の実現へ向け国を動かすよう求める。我々は、クリスティアン・シュミット氏のボスニア・ヘルツェゴビナ上級代表への立候補を歓迎する。
インド太平洋
11. 我々は、インド太平洋地域のG7招待国及びASEANからの外務大臣との議論を歓迎する。我々は、ASEANの中心性とインド太平洋に関するASEANアウトルックへの支持を再確認し、アウトルックに沿った具体的な協力を追求することにコミットする。我々は、G7諸国、ASEAN及び他の地域的ステークホルダーの強化された協力が、新型コロナウイルスのパンデミックからのより良い回復と気候変動の差し迫った要請に対処する持続可能な回復を追求するに当たり、極めて重要であることを認識する。
12. 我々は、包摂的で、法の支配、民主的価値、領土一体性、透明性、人権及び基本的自由の保護並びに紛争の平和的解決に基づく自由で開かれたインド太平洋を維持することの重要性を改めて表明し、幅広い活動を通じてASEAN及び他の諸国と共にこれらに取り組む意図を強調する。優先事項として、我々は、質の高いインフラ投資に関するG20原則、最高水準の透明性、グリーン及びデジタルへの移行と整合的な質の高いインフラ開発及びインフラ事業を通じ、地域の連結性を改善することの重要性を強調する。我々は、民間資本を促す必要性を認識する。
中国
13. 我々は中国に対し、高度な技術力を有した主要国及び主要経済国として、ルールに基づく国際システムへの建設的な参画を促す。気候変動及び生物多様性の損失を含むグローバルな課題に対処するための行動を取ること、新型コロナウイルスからの経済的回復を促進すること、また、現在のパンデミックに対する闘いを支え、将来のパンデミックを防止することは、中国を含む我々全ての利益となる。我々は、地域及び国際の平和、安全及び繁栄を促進するために、中国と協働する機会を探求する。
14. 我々は中国に対し、国際法及び国内法上の義務に従い、人権及び基本的自由を尊重するよう求める。我々は、新疆及びチベットにおける人権侵害、特にウイグル族その他の民族・宗教上の少数派が標的とされていること、そして大規模な「政治的再教育」収容所のネットワークの存在、強制労働制度及び強制不妊に関する報告について、引き続き深く懸念する。我々は、問題意識の喚起並びに我々のビジネス界に対する助言及び支援の提供を通じたものを含め、我々自身が利用できる国内的手段を通じて強制労働の事例に対処することの重要性について合意する。我々は、現地情勢を調査するための独立した、かつ、制限のない新疆へのアクセスを強く支持する。我々はそれゆえ、国連人権高等弁務官によるそのようなアクセスを引き続き求める。
15. 我々は、3月12日の我々の声明を想起し、中国が香港における選挙制度の民主的要素を根本的に損なう決定を行ったことについて、依然として重大な懸念を有する。我々は中国に対し、英中共同声明及び香港基本法に規定されたものを含む自国の国際的なコミットメント及び法的義務に従い行動し、香港の高度の自治並びに権利及び自由を尊重するよう求める。我々は中国及び香港当局に対し、権利や自由、民主的価値を擁護する人々を標的とすることを止め、司法制度の独立性を維持し、中国本土に事案が送致されないことを確保するよう求める。
16. 開かれた社会並びに透明性のある、予測可能な国際的なルール及び基準に基づくシステムの中で行われる自由で公正な貿易を支持する諸国として、我々は、貿易、投資及び開発金融に関するものを含め、こうした自由で公正な経済システムを損なう慣行についての懸念に関し結束している。我々は、恣意的で威圧的な経済政策及び慣行に直面する中で、世界経済の強じん性を促進するために共に取り組む。我々は中国に対し、同国の世界経済における役割に相応する義務及び責任を担い、かつ果たすよう要請する。
17. 我々は中国に対し、サイバーによって可能となる知的財産の窃取を実行し、又は支援することを控えることを含め、サイバー空間において責任ある行動を取るとの自国のコミットメントを堅持するよう促す。
18. 我々全てにとっての懸案事項についての国際協力を強化するため、我々は、国際機関における包摂的なプロセスを確保することが不可欠であると信じる。我々は、世界保健機関(WHO)の諸フォーラム及び世界保健総会への台湾の意義ある参加を支持する。国際社会は、新型コロナウイルスのパンデミックへの対処に関する台湾の成功裏の貢献を含め、全てのパートナーの経験から恩恵を得られるべきである。
北朝鮮
19. 我々は、北朝鮮の体制下における政治犯収容所の大規模なネットワークにおけるものを含め、書面の形で報告されているような北朝鮮における人権侵害を引き続き深刻に懸念する。我々は北朝鮮に対し、全ての人々の人権を尊重し、全ての関連国連機関と協力し、国連北朝鮮人権状況特別報告者によるアクセスを許可し、また、拉致問題を即時に解決することを求める。北朝鮮の他国との境界の閉鎖を受け、また、北朝鮮における状況に関する情報の欠如を踏まえ、我々は、脆弱なコミュニティの福祉、とりわけ十分な栄養、清潔な水及び医療施設へのアクセスについて深く懸念している。人道支援は、国連安全保障理事会(安保理)決議及び人道上の原則に整合的な形で提供されるべきである。我々は北朝鮮に対し、可能な限り早期に、国際人道機関によるアクセス及び人道上のニーズに関する独立の調査のためのアクセスを促進するよう要請する。我々は、人民の福祉よりも違法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を優先するとの北朝鮮の体制による選択の結果である、北朝鮮の危険な人道状況を引き続き深刻に憂慮する。
20. 我々は北朝鮮に対し、挑発的な行動を控え、非核化の明確な目標を持って外交プロセスに関与することを求める。我々は、関連する国連安保理決議に従った、北朝鮮の全ての違法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄の目標に引き続きコミットする。我々は、その関連で取組を続ける米国の意欲を歓迎し、支援を提供することに引き続きコミットする。我々は、北朝鮮が、非核化に向けた、具体的、そして検証された行動をとっていないことに遺憾の意を表明するとともに、北朝鮮に対し、全ての国際的な義務を遵守するよう求める。北朝鮮の計画が存在する間、北朝鮮の違法な兵器開発を対象とする制裁が維持されることは極めて重要である。G7は、大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄することを北朝鮮に求める全ての関連する国連安保理の制裁の完全な履行を確保するために協働することにコミットする。我々は、特に「瀬取り」を含む違法な海上での活動や海外労働者の継続した活用といった、北朝鮮の制裁を回避する戦術に対抗することにもコミットする。我々は北朝鮮が、早期に核兵器不拡散条約(NPT)及び国際原子力機関(IAEA)保障措置に復帰し、化学兵器禁止条約(CWC)に加入するよう求める。我々は、金融犯罪や機微な産業を標的としたものを含む悪意のあるサイバー活動の拡大の報告を懸念しており、北朝鮮の違法な計画の資金源となっている北朝鮮のサイバー活動に対抗するため、一層の国際的な連携を求める。我々は、全ての国に対し、関連する国連安保理決議の完全な履行を要請する。我々は、国連安保理決議第1874号に従い設置された専門家パネルによる最新の報告書に示されているとおり、これらの決議を未だに履行していない国があることに、緊急の懸念をもって留意する。我々は、能力構築、拡散対抗及び拡散金融に関し、引き続き連携する意図を有する。我々は、朝鮮半島における緊張の平和的解決を支持し、北朝鮮に対し、南北間の対話の再開を求める。
ミャンマー
21. 我々は、ミャンマーにおける軍事クーデターを最も強い表現で非難する。我々は国軍に対し、直ちに緊急事態を解除し、直ちに民主的に選出された政府の権力を回復し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問、ウィン・ミン大統領、人権擁護者、ジャーナリスト、市民社会構成員、学者、教員、医療関係者、宗教指導者及び外国人を始めとする恣意的に拘束された全ての人々を直ちに解放するよう求める。我々は、ミャンマーの治安部隊により行われた暴力及び平和的な抗議活動の参加者に対する暴力的な抑圧を非難する。国軍及び警察は、直ちに暴力を停止し、最大限自制し、国際人権法を始めとする国際法を尊重しなければならない。人権及び国際人権法の侵害について責任を有する者は、その責任を負わなければならない。
22. 我々は国軍に対し、ミャンマーを民主主義に向けた道筋に復帰させるよう求める。我々は、包摂的な民主主義を唱道し、これに向けて取り組んでいる全ての人々との連帯を改めて表明する。これは、国民統一政府(NUG)、市民の不服従運動等と並び、連邦議会代表委員会(CRPH)その他の民主派指導者による取組を含む。我々は、4月24日にジャカルタにおいて開催されたASEANリーダーズ・ミーティング、また、ミャンマーにおける危機の解決に向け当事者を集めたASEAN議長のリーダーシップを歓迎する。我々は、暴力の即時停止の必要性、全ての関係当事者間での建設的な対話の開始、ミャンマーの全当事者が関与できる、対話プロセスの仲介を促進するためのASEAN議長の特使の任命、ASEAN人道支援、そして、同特使によるミャンマー訪問についてのコンセンサスを歓迎する。我々は、同特使の活動を含むASEANの取組を建設的に支持することにコミットしており、可能な限り早期の実施を求める。我々は、ミャンマー担当の国連事務総長特使による継続した対話の取組及び同特使による全ての当事者との取組に対する支持を改めて表明する。
23. 我々は、クーデター以降のミャンマーにおける人権・人道状況の悪化を深く懸念する。我々は、ロヒンギャその他の少数派を含む、支援を必要とする全ての人々が、迅速、安全かつ制限なしに人道支援にアクセスできることの重要性を強調し、脆弱な人々の極めて重要なニーズを満たすため、国軍が国連に対し即時かつ無制限のアクセスを付与することについての我々の要求を改めて表明する。我々は軍事政権に対し、医療施設及び医療関係者の安全を尊重するよう求める。我々は、状況が許す場合には、バングラデシュや地域のその他の場所から難民が、また、ミャンマー国内の国内避難民が、自発的に、安全に、尊厳を持って、そして持続可能な形で帰還することの必要性について強調する。我々は、少数派に属する人々の権利と保護を引き続き唱道する。
24. 我々は、国軍が方針を転換しない場合に更なる措置をとる用意があることを改めて表明する。その観点から、我々は、ミャンマーに対する全ての武器、弾薬その他の軍事関連装備の供給、販売、移転及び技術協力の提供を引き続き防止することにコミットする。我々は、国軍関連の複合企業とビジネスを行う際にデュー・ディリジェンスを実施することにコミットし、他の者に対しても同様に行うよう求める。我々はまた、我々の開発援助が国軍主導の体制を支援することを防止し、援助がミャンマーの人々、特に人道上の原則に従って最も援助を必要とする人々の利益となることを確保するために協力する。我々は、全ての国に対し、同様の措置をとるよう求める。
東シナ海及び南シナ海
25. 我々は、東シナ海及び南シナ海並びにその周辺における状況を引き続き深刻に懸念する。我々は、台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す。我々は、緊張を高め、地域の安定とルールに基づく国際秩序を損なう可能性のあるいかなる一方的行動にも強く反対することを改めて表明し、地域における軍事化、威圧及び威嚇の報告についての深刻な懸念を表明する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の普遍的かつ統一的な性質を強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、UNCLOSの下の仲裁裁判所により下された2016年7月12日付けの判断は、南シナ海における紛争の平和的解決に向けた重要なマイルストーンであり、有用な基盤であると考える。
アフガニスタン
26. 持続可能で包摂的な政治的解決は、全てのアフガニスタン人に恩恵を与える公正かつ永続的な平和を達成する唯一の方法である。我々は、ドーハにおける和平交渉の継続及びイスタンブールにおいてアフガニスタンに関するハイレベル会合を開催するための取組を支持する。平和に向けた取組を支援するためには、地域の諸国が引き続き協力することが重要である。我々は、アフガニスタンの全ての当事者に対し、改めて和平プロセスに完全に関与することを求める。我々は、アフガニスタンの将来に関する全ての議論における女性、若者及び少数派の人々の有意義な参画並びに彼らの声の包摂のために、主張し続ける。我々はまた、交渉当事者がアフガニスタンの市民社会の多様な視点を包摂することを可能にするメカニズムを承認する。
27. 我々は、女性、若者及び少数派を含む全てのアフガニスタン人がそのために闘い、享受し、尊重するようになった権利を守るために取り組む。我々は、過去20年間における前向きな経済的、社会的及び政治的な成果を基礎として、平和及び繁栄の中で暮らしたいというアフガニスタン人の願いを支持する。G7諸国は、アフガニスタンの人々の願望を支援するために国際開発援助、アドボカシー活動及び外交を用いることにコミットする。アフガニスタン政府に対する現在及び将来の支援は、2020年11月のジュネーブ・ドナー会合において決定されたとおり、アフガニスタン・パートナーシップ枠組みにおいて示された原則の遵守と第2次アフガニスタン平和と開発のための国家枠組みにおける成果に向けた進展をより所としている。
28. 我々は、主としてタリバンが責任を有する、女性、ジャーナリスト及び人権活動家を標的とする殺害作戦を含む、文民に対する攻撃の即時の停止を求める。我々は、包括的な停戦への道筋として、暴力の大幅な削減を求める。我々は、全ての当事者に対し、支援を必要とする者への安全かつ妨害されない人道アクセスを与えることを要請する。
リビア
29. 我々は、最近の暫定国民統一政府及び首脳評議会の承認を含む、ベルリン・プロセス開始以降にリビアで達成された進展を歓迎する。我々は、共通の優先事項及び目的を反映する国連安保理決議第2570号(2021年)及び同第2571号(2021年)の採択を歓迎し、リビアの当局及び機関がこれらを完全に実施することを求める。我々は、暫定国民統一政府に対し、リビア政治対話フォーラムにより合意されたロードマップに示されたとおり、2021年12月24日に、包摂的で、透明性があり、かつ信頼できる大統領選挙及び議会選挙が実施されるよう必要な準備を行うこと、リビアの人々に対する基本的サービスの提供を改善すること、人権を尊重し、難民及び移民の保護を確保すること、そして、女性と若者の完全、平等かつ有意義な参画及び保護を確保することを求める。我々は、リビアの諸機関を統一し、同国の石油インフラを保護することで、石油収入が全てのリビアの人々の利益のために透明性を持って予算として割り当てられ、かつ、分配されるようにすることの重要性を強調する。
30. 我々は、外国人戦闘員や傭兵の存在によるものを含め、リビアの主権が侵害されることにより国際の平和及び安全に与えるリスクを認識する。チャドにおける紛争においては、反乱軍がリビア南部から攻勢に出ており、このことを如実に思い起こさせるものである。我々は、全てのリビアの当事者に対し、2020年10月23日の停戦合意の完全な履行を確保するよう求め、全ての国に対し、同合意の完全な履行を尊重し、支持するよう要請する。これには、武器禁輸措置の完全な遵守と、全ての外国軍事勢力と傭兵のリビアからの遅滞なき完全な撤退が含まれる。
31. 我々は、2020年10月23日の停戦合意を完全に履行する目的で、国連リビア支援ミッション(UNSMIL)に対し「5+5合同軍事委員会」及びリビア主導の停戦監視メカニズム(LCMM)への支援の提供を求める国連安保理決議第2570号における要請を歓迎する。我々は、リビアの政治移行プロセスを支えるためのLCMM及びUNSMILのより幅広い取組を支持することにコミットする。我々は、武装集団及び全ての関連する非国家武装主体の武装解除、動員解除及び再統合に関する計画の必要性を強調する。我々は、治安部門の改革、そして、リビア全体のための包摂的な、責任のある、文民主導の治安体系の構築の必要性を強調する。我々はまた、移行期の司法及び和解を求める。我々は、リビアに派遣される事実調査団を立ち上げるとの国連人権理事会の決定を歓迎する。我々はリビア当局に対し、同調査団との協力を継続し、同調査団に完全なアクセスを付与することを求める。
シリア
32. シリアの危機は今や11年目に入り、推定1,300万人が人道支援を必要としている。我々は、アサド政権及びその支援者によるシリアの人々に対する継続した残虐行為及びシリアへの、また、シリア国内における定期的かつ持続的な人道アクセスを妨害する試みを非難するとともに、支援のアクセス及び提供の政治化を非難する。我々は、危機の影響を軽減するために不可欠な、完全かつ妨害されないシリアへの人道アクセスを求める。我々は、支援を必要としている人々が必要な支援を手に入れることができるよう、今後本年中に国境をまたぐ人道支援が再び許可されることを強く支持する。
33. 我々は、シリアの人々への関与と支援、また、国連安保理決議第2254号に沿ったシリア紛争の政治的解決への支持を強く表明するものとして、シリア及び地域の将来に関する第5回ブリュッセル会合を歓迎する。
34. 国連安保理決議第2254号及び同第1325号に沿って、我々は、全ての当事者、特にアサド政権に対し、拘束者の解放及び女性の意義ある参加を含め、紛争を解決するために国連が仲介する包摂的な政治プロセス、特に憲法委員会に有意義な形で関与することを要請する。これには、難民の安全で、自発的な、かつ尊厳ある帰還を可能とする、シリア全土での停戦及び安全かつ中立的な環境が含まれる。これは、海外在住者を含む全てのシリア人の参画を確保する、国連監視下での自由で公正な選挙に向けた道筋を整えるべきである。信頼できる政治プロセスがしっかりと実施されるときが来て初めて、我々はシリアの復興に対する支援について検討を行う。
35. 我々は、アサド政権に対し、国連安保理決議第2118号の下での義務を遵守することを要請し、シリアが2020年7月9日の化学兵器禁止機関(OPCW)執行理事会決定で示された措置を完了し、化学兵器の更なる使用を控えるまで化学兵器禁止条約上の権利及び特権を停止するとしたOPCW締約国会議の決定を強く歓迎する。我々は、化学兵器の使用及び関連する国際人道法や国際人権法を含む国際法の違反に責任ある者の責任追及に固くコミットし、適切な国際刑事司法、調査メカニズム及び移行期の司法メカニズムの活動を支援することを誓う。
イラン
36. 我々は、イランが決して核兵器を開発しないよう確保することにコミットしている。我々は、米国及びイランによる包括的共同作業計画(JCPOA)の遵守への相互の復帰を達成するため、JCPOA参加国間での、また、米国との個別の実質的な議論を歓迎する。JCPOAは引き続き、イランの核計画が専ら平和的な性質のものであることを確保する最善の方法である。イランが、いかなるこれ以上の緊張の高まりを避けることにより、これらの議論の余地を維持することが不可欠である。今般のイランの行動は非常に重大な展開であり、深刻な懸念事項である。これらには信ずべき民生上の必要が見当たらず、特に重大な示唆を持つ。我々は、イランによるNPTに関連する保障措置上の義務その他のコミットメントの遵守を確保することを支援するため、極めて重要な監視及び検証作業を実施している国際原子力機関(IAEA)を強く支持する。回復され、完全に履行されるJCPOAは、不拡散体制の支援を含む、地域及び安全保障上の懸念に更に対処するための道筋を整え得るものである。我々は、資金供与、訓練並びにミサイル技術及び武器の拡散を通じたものを含む、代理軍事勢力及び非国家主体に対するイランの支援を非難する。我々はイランに対し、国連安保理決議第2231号に合致しない全ての弾道ミサイル活動を停止し、不安定化させる行動を控え、地域の安定と平和を醸成するに当たって建設的な役割を果たすよう求める。我々は、イランに責任を負わせるため、ウクライナ国際航空752便の悲劇に関する徹底的かつ信頼できる調査を確保するための取組を支持する。我々は、平和的な集会の自由、結社の自由、信教又は信条の自由及び表現の自由に関する権利の行使に影響を与えるものを含む、イランにおける継続した人権の侵害を深く懸念する。外国籍の者及び二重国籍者並びに人権擁護者は、恣意的な逮捕、拘束及び長期の懲役刑に直面しており、解放されるべきである。
イラク
37. 我々は、2021年10月の自由で公正な選挙により強化されるであろうイラクの安定、主権及び多元性に引き続き完全にコミットする。我々は、イラク政府により主導され、対ISILグローバル連合により支えられた、ISILとの闘いを継続し、解放された地域を安定化させ、同地域の不可欠な公共サービスを回復するための継続した取組を歓迎する。我々はまた、ISILの再来をイラク軍が防止できるように治安部隊及び軍の教育機関の強化を支援するイラク政府の要請に基づくNATOイラク・ミッションが実施する活動を歓迎する。我々は、イラク政府の持続可能で包摂的な発展のための経済改革並びに地域及び国際パートナーとのバランスの取れた関係を目指した外交政策の追求に向けた取組を支持する。我々は、イラクにおいて継続する不安定な治安状況及びイラク国内の120万の国内避難民(IDPs)の人道状況を懸念する。
イエメン
38. イエメンにおいて継続中の紛争は、同国の統一性及び独立に対する影響と合わせ、引き続き深刻な懸念の要因である。我々は、グリフィス国連特使への支持を改めて表明し、イエメン国内の全ての当事者に対し、即時の停戦、紅海の港を通じた輸入品の自由な流通、サナア空港の再開並びにイエメンの女性及び若者の意義ある参画を伴う包摂的な政治対話の再開に関する国連の提案に同意するよう求める。我々は、ホーシー派によるサウジアラビアに対する越境攻撃を非難し、また、同派による継続したマアリブへの攻撃は少なくとも100万の国内避難民を脅かすものであり、停止されなければならない。我々は、人権侵害及び国際人道法の違反についての説明責任を求める。我々は、全ての紛争当事者が、完全な人道アクセスを提供し、文民の保護を確保する必要性を断固として強調する。我々は、人道支援及び物資、特に燃料が、同国に、また、同国全土で、阻害されることなく流通する必要性を改めて表明する。石油タンカー「サーフィル」による重大な脅威に留意し、我々はホーシー派に対し、国連ミッションによるアクセスを即時に促進するよう求める。
G7アフリカ・パートナーシップ
39. 我々は、最近の議長国の下で遂げた進展を基礎として、アフリカ諸国、地域機関及びアフリカ連合とのパートナーシップを強化する決意を再確認する。我々は、全ての人々にとっての繁栄、経済的包摂性及び安定を高めるため、彼らと共に取り組む。この文脈で、我々は、アフリカ大陸自由貿易圏協定の批准を特に歓迎し、また、アフリカ大陸全土のアフリカの国連平和維持要員の勇敢さを称賛する。国際的な健康安全保障(ヘルス・セキュリティ)及び保健システム、開かれた社会の強化、ジェンダー平等、女子教育、気候変動への適応に関する支援並びに飢饉防止への我々のコミットメントは、アフリカ大陸において目に見える影響をもたらす。我々は、我々の議長年を通じて、共通の課題についてアフリカのパートナーと共に緊密に取り組むための機会を探求する。
エチオピア
40. 我々は、ティグライ情勢に関する2021年4月2日の我々の声明を想起し、継続する暴力並びに悪化する人道及び人権危機について引き続き深く懸念する。我々は、文民の殺害、強姦及び性的搾取その他のジェンダーに基づく暴力、宗教的及び文化的な遺産・遺跡の破壊及び略奪、何十万人のティグライ人及びエリトリア難民の強制的な移動を非難する。我々は、エチオピア人権委員会及び国連人権高等弁務官事務所が、人権侵害について調査することで合意したことを歓迎する。我々は、全ての当事者に対し、敵対行為を即時に停止し、文民の保護を確保し、人権及び国際法並びにメディアの自由及びアクセスを尊重し、性的暴力を含む人権侵害に責任を有する者にその責任を負わせるよう求める。我々は、悪化する食料不安に鑑み、紛争の当事者に対し、即時かつ妨害されない人道アクセスを提供するよう求める。ティグライにおける外国軍事勢力の存在は深く憂慮させられるものであり、事態を不安定化させるものである。我々は、エリトリア軍がティグライから撤退するとのエチオピア及びエリトリア両政府による発表を認識するが、これがまだ始まっていないことを引き続き懸念する。撤退のプロセスは迅速、無条件かつ検証可能でなければならない。我々は、ティグライにおける明確で包摂的な政治プロセスの構築を求める。我々は、エチオピアの統一性及び領土一体性に引き続きコミットする。我々はまた、信頼できる選挙及びより広い国民和解を可能とする、エチオピアにおけるより幅広い包摂的な政治プロセスを求める。
ソマリア
41. 我々は、ソマリアにおける政治的な行き詰まり、政府と反対派勢力との最近の暴力的な衝突及び人道上の影響を深く懸念する。我々は、モハメド・ファルマージョ氏の大統領としてのマンデート及びソマリア議会のマンデートを2年延期する決定に動揺したが、これは選挙プロセスに関する継続中の行き詰まりの解決策となるものではなく、代わりにソマリアの指導層の信頼性を損ない、同国の機関による進展を脅かし、ソマリアの人々の安全及び将来を危険にさらすものである。我々は、(2020年)9月17日の合意に基づく選挙モデルを最終化することを目的とした、連邦政府と連邦各州の指導者との対話の再開についての議会による5月1日の承認を歓迎する。我々は、ソマリアのステークホルダーの幅広い支持なく以前のマンデートを延長することにつながる、これ以上のいかなるイニシアティブにも反対であることを強調し、いかなる併存するプロセスや部分的な選挙にも反対する。我々はソマリアの指導者に対し、自制を示し、政治的緊張や暴力を高め得る更なる一方的な行動も控えるよう要請する。全ての当事者が冷静さを保ち、ソマリアの安定及び安全を保護することが必要不可欠である。我々は、特使を任命するとのアフリカ連合平和・安全保障理事会の決定を歓迎し、こうした取組を支持する用意がある。我々はソマリアの指導者に対し、直ちに対話に戻ることによって、ソマリアの人々に対して彼らが有する責任を堅持することを要請する。我々は彼らに対し、建設的な対話に関与し、現実的な解決策を見つけ、残る課題についてコンセンサスに至ることを求める。これに失敗する場合には、国際社会はソマリアに対するアプローチを変えることになる。
スーダン
42. 我々は、2019年の革命後のスーダンにおける平和、繁栄及び民主主義を実現するための暫定政府の取組を称賛する。これには、債務救済につながる主要な経済改革の実施、包括的和平協定に向けた進展、そして移行における継続的で有意義な女性の包摂が含まれる。G7は、政治的及び資金的にこの進展を支持しており、移行が成功し、スーダンの人々にとっての永続的な変化を実現することを確保するため、国際社会からの継続的な注視及び支援を要請する。
チャド
43. 我々は、イドリス・デビー・イトゥノ大統領の殺害並びにチャドにおける最近の暴力及び人命の喪失を非難する。我々は、チャドの領土一体性及び安定への我々のコミットメントを強調する。アフリカ連合を支援するため、我々は軍事移行評議会に対し、包摂的な国民対話の実現と、民主的な自由で公正な選挙への平和的な、文民主導の、そして迅速な移行のための条件を作り出すよう求める。この文脈で、我々は、一部の反対派のメンバーを含む文民政府の任命が前向きな一歩であることに留意する。我々は、軍事移行評議会、政府及び治安部隊に対し、暴力を避け、平和的なデモの自由を含む人権を尊重することを期待するとともに、最近の抗議に対する抑圧について非難する。
サヘル
44. 我々は、サヘルにおける継続した不安定性、暴力の増加及び深刻化する人道危機を懸念する。我々は、サヘル地域における不安定性の要因に対処するため、アフリカのパートナーにより主導され、サヘルのための連合その他の支援を受けた、強化された取組を歓迎する。我々は特に、我々の取組に一層の一貫性をもたらし、国際的なパートナーとサヘル地域の政府との間の相互の説明責任を支え、サヘル地域の安全及び安定のためのパートナーシップを通じたものを含め、文民及び政治的側面に強く焦点を当てつつ安定化に向けた一層統合されたアプローチへの転換を実現するための手段として、サヘルのための連合によるロードマップの重要性を強調する。この一部として、我々は、法の支配、腐敗対策及び包摂的なガバナンスに対応するため、2021年2月のンジャメナ首脳会合の際に合意された「民生的増派(civilsurge)」及び構造改革を実施するとのG5サヘル各国政府のコミットメントを歓迎する。我々は、G5サヘル各国政府により主導された開発の取組を支援するためのサヘル同盟の活動、特に、相互の説明責任及び政治対話を高める活動並びに統合的領土アプローチを歓迎する。我々は、サヘル地域における全ての関係者が、紛争解決及び平和構築のプロセスに参加する女性の権利を含む人権を尊重し、適用可能な国際人道法を尊重することの必要性を強調する。我々は、文民と軍事的主体の間でのより良い調整を含む、改善された人道アクセスを求める。我々は、マリにおける和平合意の継続した履行及び全てのマリの人々のニーズを満たす民主的に選出された政府への迅速な回帰を達成するための、信頼のおける、包摂的な選挙を求める。我々は、サヘル地域における一層の安全保障を実現するためのマリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)、G5サヘル合同軍及びバルカン作戦の取組を称賛する。
モザンビーク
45. 我々は、カーボ・デルガードにおいて激化する紛争及びISIS関連組織によるテロ攻撃の増加を深く懸念する。我々はモザンビークに対し、カーボ・デルガードにおける人権侵害に責任を有する者にその責任を負わせることを要請する。我々はモザンビークに対し、国際社会と引き続き協力して、反乱による人道上の影響を解決し、紛争と不安定性の根本原因及び促進要因に対処し、また、暴力の更なる激化を防止するよう促す。この点に関し、我々は、北部地域における人道及び治安状況に対応するためのモザンビーク政府の活動と、国際的な支援についての同政府の迅速な検討を歓迎する。我々は、暴力的な過激主義に対抗するに当たって、モザンビーク政府及びその人々との連帯を表明する。
海洋安全保障
46. 我々は、海洋の国際的なカバナンスの協力的な制度を促進し、国際法に基づくルールに基づく海洋秩序を維持することへの我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、全ての国が誠実に行動し、信頼を構築して海洋の安全を確保し、武力や強制による威嚇の行使を伴わない、仲裁等の国際的に認められた法的な紛争解決メカニズムを通じたものを含む、国際法に従った紛争の平和的な管理及び解決にコミットすることの必要性を再確認する。我々は、航行及び上空飛行の自由を含む公海の自由並びに沿岸国の権利や管轄権及び海洋のその他の国際的に適法な利用を含むその他の権利及び自由に対する我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、ヤウンデ海上安全保障体系の実施におけるギニア湾沿岸諸国によって達成された進捗、特に海賊その他の海上における犯罪活動への対策を歓迎するとともに、ギニア湾における共同の海洋プレゼンスに関するEUのパイロットケースを歓迎する。我々は、G7++ギニア湾フレンズの調整枠組みにおけるものを含め、地域の諸国並びにその他の諸国と関連国際機関が海賊の根本原因に更に対処するよう促す。我々は、グローバル・テロ対策フォーラムの「海洋安全保障及びテロリストの渡航に関するイニシアティブ」を歓迎する。
不拡散及び軍縮
47. 我々は、核不拡散体制の礎石として、また核軍縮と原子力技術の平和的利用の追求の基盤としての核兵器不拡散条約(NPT)の不可欠な役割を強調する。G7の優先事項は、NPT運用検討会議において、3つの柱全てにわたって同条約の実施を前進させる意義ある成果を得ることである。我々は、全ての者にとっての損なわれることのない安全保障とともに、核兵器のない世界という究極の目標にコミットしている。我々は全ての国に対し、生物兵器禁止条約の運用検討会議において同条約を強化することなどを通じ、疾病が武器として利用されるおそれに対抗するよう要請する。我々はまた、大量破壊兵器の拡散と闘い、化学、生物、放射性物質及び核兵器(CBRN)並びに関連物資の拡散を防止するに当たり世界中の脆弱な諸国を支援する、G7により主導された31か国からなるグローバル・パートナーシップの特有の、かつ貴重な貢献を再確認する。
III. 開かれた社会
48. 我々は、全ての人々が、民主主義、人権の尊重、効果的で責任ある統治、法の支配が確保され、自由で公正な貿易と世界的な成長を通じて繁栄の恩恵が全ての人に共有される、より開かれた世界から恩恵を受けることができると信じる。我々は、開かれた社会の基盤を強化し、人権及び包摂的な連結性を推進するために協力して取り組むことにコミットする。我々は、偽情報や情報操作、監視、悪意のあるサイバー活動、検閲、汚職、不正な資金調達、市民社会空間の閉鎖等の脅威から連携して防御することにコミットする。我々はまた、安全で活気のある市民社会空間、デジタル分野の包摂性の促進、独立系メディアの支援を含め、全ての人の権利と自由を保護する包摂的な民主的制度の強化にもコミットする。我々は、腐敗防止、オンライン上の危害への対処、及びオンライン上の開かれた社会を守るためのシステムデザインにおける公共の安全性についての技術産業界との協力に関するG7内務大臣による重要な取組を支持する。我々は、民主主義サミットを主催する米国のイニシアティブを歓迎し、支持する。我々は、メディアの自由、インターネットの遮断、サイバー・ガバナンス、信教又は信条の自由、即応メカニズム、恣意的拘束に関する次の措置にコミットする。我々は、6月のG7首脳会議における、開かれた社会に関する豪州、インド、韓国及び南アフリカとの首脳レベルでの議論に期待している。
メディアの自由
49. 我々は、世界中の民主主義と人権を堅持する上で極めて重要なメディアの自由を擁護することにコミットする。我々は、女性や疎外され脆弱な状況下にある者がオンライン及びオフラインの両方で不均衡に標的にされていることに留意しつつ、ジャーナリストに対する脅迫、嫌がらせ及び暴力を非難する。我々は、公の場での議論の形成、透明性の促進及び説明責任の確保において、多様な意見が重要であることを認識する。
50. 我々は、メディアの自由に関わる環境を世界的にも国内的にも改善するための努力において、メディアの自由コアリションの活動を、情報と民主主義のためのパートナーシップを始めとするその他の国際的なイニシアティブ及びメカニズムと共に歓迎する。我々は、協調した外交、アドボカシー活動及び支援を通じたメディアの自由を守るためのあらゆる努力を歓迎する。我々は、我々の外交団に対し、同コアリションを通じることを含め各地で協調し、脅威にさらされているジャーナリストや独立系メディアへの支援と関与を強化するよう要請する。我々はそれぞれ、ジャーナリストの安全、情報へのアクセス及びメディアの持続可能性を改善するために、必要に応じ国別行動計画や同様の措置の策定等の国内行動をとることによって、模範を示すことにコミットする。
51. 我々は、SDGsの目標16. 10の文脈において、メディアの持続可能性を改善し、独立した多様なメディアへのアクセスを増やし、ジャーナリストを支援することの重要性を認識する。我々は、可能な場合にはグローバル・メディア・ディフェンス基金への自発的拠出を通じたものを含め、ジャーナリスト及びメディアに対し実践的、技術的及び計画的な支援を提供することにコミットする。我々はまた、この分野のベスト・プラクティスを把握し、調整し、そして共有するために相互にまた他者と協力することにより、メディアへの我々の支援の有効性を改善することにもコミットする。
インターネットの遮断
52. 我々は、オンライン上の情報、知識及びデータへの国民のアクセスや国民によるこれらの拡散を意図的に妨害する国家による活動を懸念する。インターネットの遮断とネットワークの制限は、オンライン及びオフラインの市民社会空間を損ない、情報へのアクセス並びにオンラインでの平和的な集会、結社及び表現の自由の権利を不当に制限する。我々は、インターネット・ガバナンスに対するマルチステークホルダー・アプローチに対するコミットメントを再確認し、全ての国に対し、国際的な法的義務とコミットメントに従い、インターネットやモバイル・ネットワークサービスのアクセスや使用ができなくなることにより個人の自由や権利の行使を損なうこととなるような、意図的な妨害を行わないよう求める。我々は、志を同じくする国々、市民社会及び民間部門と共に、インターネットの遮断が発生した際の対処と対応のための連携を改善する。我々は、フリーダム・オンライン・コアリションの共同声明及びそれに付随する国家によるネットワーク妨害に関する政府のためのグッド・プラクティス集を歓迎する。
サイバー・ガバナンス
53. 我々は、既存の国際法がサイバー空間にどのように適用されるかについての共通の理解を促進するため協力することにコミットするとともに、「国際安全保障の文脈における情報及び電気通信分野での発展に関するオープン・エンド作業部会」(OEWG)、「国際安全保障の文脈におけるサイバー空間での責任ある国家行動の進展に関する国連政府専門家会合」(GGE)、そして、サイバー規範イニシアティブに関するディナール宣言、サイバー空間における責任ある国家の行動に関するルッカ宣言及びサイバーに関するG7伊勢志摩原則と行動を含むG7のこれまでの成果を更に強化するため協力することにコミットする。開かれた社会への我々のコミットメントは、国連総会決議68/167及び69/166に述べられるインターネット上での人権の促進、保護及び享受を含む、オンライン社会にも及ぶ。我々は、国連やフリーダム・オンライン・コアリションを通じたものを含むその他の国際場裏において、インターネットの自由を促進し続ける。
54. 我々は、サイバー空間における国家の行動の枠組みの不可欠の、かつ拘束力のある要素であり、他の領域における活動に適用されるのと同じようにサイバー空間における国家の行動に適用される国際法を堅持するとの共通のコミットメントを再確認する。我々は、既存の国際法がサイバー空間における国家の行動にどのように適用されるかについて、全ての国が自国の立場を共有することを促す。我々は、国連その他の国際場裏において、このアプローチの推進に向けた取組を強化する。
信教又は信条の自由
55. 包摂的で権利を尊重する諸国として、また、より安全で、より安定し、より包摂的な世界の創造に取り組む諸国として、我々は、全ての人の信教又は信条の自由の促進にコミットする。我々は、全ての国家が、信仰や信条にかかわらず、全ての人を法の下で平等に扱うことを強く促す。我々は、表現の自由の促進及び保護、あらゆる形態の憎悪及び差別との闘いを通じたものを含め、改宗や無宗教への権利を含む全ての人の信教又は信条の自由を守るために、可能な場合には、協調行動、メッセージの発出及び的を絞った支援を行うことにコミットする。適当な場合には、我々は、既存の各種連合、ステークホルダーのネットワーク及び多国間機関を通じ、この課題に関する情報、データ及び研究を共有することにコミットする。既存のフォーラムの中で、G7は世界中における信教又は信条の自由の促進と保護に向けた取組を強化する。そうした取組には、国連及びOSCEにおけるものや信教又は信条の自由に関する国際コンタクト・グループ等の非公式なプラットフォームを通じたものが含まれるが、それらに限定されない。我々は、英国議長年の間を通してこれらの問題に取り組み続けることを決意する。
即応メカニズム(RRM)
56. 我々は、我々の民主的なシステムと開かれた社会を外国の悪意ある活動から守るための我々の継続中の共同の取組の一環としての、即応メカニズム(RRM)へのコミットメントを再確認する。共に取り組むことにより、我々は、我々の民主的な制度やプロセスを標的とし、我々の民主主義の完全性に対する国民の信頼を損なおうとし、そして我々の情報空間に干渉しようとする者を抑止する。我々は、NATOを含む他の組織やフォーラムの価値ある取組と協調することにより、我々の総合的な能力を強化することにコミットする。我々は、我々の民主主義に対する脅威についての共通の理解を深めるために我々の分析能力を向上させ、調整された方法で対応する能力を強化することにコミットする。我々は、ワクチンに関する偽情報を含め、情報空間において何が悪意ある活動を構成するかについての共通の理解に向けて取り組む。今後もベスト・プラクティスを共有し、外国の干渉への対応、選挙の保護、偽情報や情報操作への対応、ソーシャルメディア・プラットフォームへの関与といった課題に対する共通のアプローチを進展させる。
57. 我々は、社会全体によるアプローチを通じて取り組み、市民社会その他の関連ステークホルダーに緊密に関与し、また、これらの課題に取り組むパートナー国自身の努力を支援することへのコミットメントを改めて表明する。その一環として、我々はRRMに対し、変化する脅威の展望の諸側面及びあり得べき対応に関するテーマ別年次報告書を作成するよう求める。
二国間関係における恣意的な拘束
58. 我々は、恣意的な逮捕及び拘束は、国際人権法に反するものであることを再確認する。我々は、疎外され、脆弱な状況下にある人々並びに人権擁護者、ジャーナリスト及び市民社会の活動家がより頻繁に恣意的に拘束され、また、恣意的に拘束された人々が他の人権侵害にも脆弱であることを認識する。
59. 我々はさらに、2021年2月15日にオタワで採択された「二国間関係における恣意的拘束の利用に反対する宣言」への支持を再確認する。我々は、そうした慣行に従事する国々に対し、直ちにそれを停止し、国際的な義務とコミットメントを尊重するよう求める。我々は、国民がそのような形で拘束されている国、そして拘束されている個人と連帯する。
60. 我々は、「二国間関係における恣意的拘束の利用に反対する宣言」を拡大することにより、行動を強いるため又は外国政府に対し影響力を行使するために恣意的拘束を行う主体を抑止するため、共にまた志を同じくするパートナー国と取り組むことにコミットする。我々はさらに、「二国間関係における恣意的拘束に対するパートナーシップ行動計画」を歓迎し、宣言の支持国その他の志を同じくするパートナーに対し、パートナーシップ行動計画に示された自発的な協力及び関与の分野への参加を積極的に検討するよう招請する。
IV. 持続可能な回復
61. 我々は、全ての人々が新型コロナウイルスのパンデミックからの包摂的で持続可能な回復を達成することへのコミットメントを再確認する。我々は、パンデミックが脆弱な国々や人々に及ぼす広範囲にわたる経済的、社会的及び政治的影響を認識し、また、飢餓と栄養不良の大幅な増加を認識する。我々は、新型コロナウイルス、紛争、気候変動及び生物多様性の損失がもたらす複合的な脅威を認識し、緊急性をもって行動する必要性を認識する。パンデミックは、ジェンダー平等の格差を広げた。女性は多くの国で対応の最前線にいながら、経済的な機会から排除されている。我々は、安全で有効なワクチン、治療及び診断ワクチン、治療及び診断への世界中における公平なアクセスを可能にすることや、より良い保健システムを構築するための具体的な行動をとることを確保すること等を通じ、新型コロナウイルスに対する保健分野での対応における協力を強化するとのコミットメントを堅持する。我々は、国際保健におけるWHOの中心的な役割を強化することにコミットする。我々は、より強じんな保健及び教育システム、より適切なパンデミックの予防と将来の脅威への備えを実現することにコミットする。我々は、持続可能で包括的な経済成長に焦点を当てること、そして2030アジェンダ及びSDGsの実施を加速することを決意する。この点に関し、我々は、グローバルな、グリーンで強じんな回復を支援するためのG7気候担当大臣、環境大臣、保健大臣及び財務大臣の取組を歓迎する。
新型コロナウイルスのワクチン、治療及び診断への公平なグローバル・アクセスの実現
62. 我々は、新型コロナウイルスの国際保健分野への影響に対応するに当たり、開かれた、透明性のある多国間アプローチへのコミットメントが不可欠であるとの信念を確認する。これほどの規模の世界的な保健分野の緊急事態には、協調的な行動とグローバルな連帯が必要である。我々は、COVAXファシリティを含む、新型コロナウイルス対策の国際的な枠組であるACTアクセラレータ(ACT-A)の全ての既存の柱への支援を改めて確認する。我々は、ACTアクセラレータへの十分な資金提供が中心的課題であると認識する。我々は、イノベーションを促すというG7諸国のコミットメントと整合的なアプローチにより、保健システムの強化並びにワクチン、治療及び診断への安価かつ公平なグローバル・アクセスを支持し、必要とする人々が安価で公平なアクセスを得られるよう支援するための取組を更に強化する。我々はこの点に関し、「新型コロナウイルス対応ツールへの公平なアクセスに関する憲章」を想起する。我々は、ワクチン、治療及び診断の供給のための効果的で十分に機能するグローバル・バリューチェーンの重要性を認識し、産業界と協力して自主的な、及び相互に合意した条件でのライセンス供与、技術及びノウハウの移転、委託生産、透明性、データ共有、官民でのコスト及びリスク分担等を促し、また支援する。我々は、長期的な影響に対処するため、新型コロナウイルス後の関連製品の地方、地域及び世界における生産のための持続可能な環境を生み出す必要性を認識する。我々は、これらのイニシアティブへの資金提供における107億米ドルを超えるこれまでのG7の共同コミットメントを歓迎し、パンデミックの阻止と保健安全保障の強化における次の重要な措置として、全てのパートナーが支援を増やすことを促する。この関連で、我々は、Gaviと米国が共催したCOVAXファシリティ増資準備会合に続きGaviと日本が共催するCOVAXワクチン・サミットに期待している。
63. 我々は、新型コロナウイルスのパンデミックの深刻な状況の収束を加速化するため、G7外務・開発大臣の「公平なアクセス及び協力に関する声明」にコミットする。我々は、6月のCOVAXワクチン・サミットにおいて表明されるものを含め、COVAXファシリティへの拠出のプレッジを促し、できるだけ早く実際に拠出を行い、物品の支援を提供し、また、国際的なワクチン共有のための主要なメカニズムであるCOVAXと調整するとともにこれを活用すること等を通じ、COVAX自身による直接調達を補い、ワクチンの迅速で公平な展開を可能とするため、COVAXを財政的に支援することにコミットする。
64. 我々は、G7保健大臣の取組を支持するとともに、パンデミックへの備えと国際保健安全保障(ヘルス・セキュリティ)を改善させるためにパートナーと共に、保健システムの強化、ワン・ヘルス・アプローチを組み込んだ解決策の開発、薬剤耐性問題への取組並びにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ及び健康関連のSDGsの達成に向けた進展の加速化を主導し、調整するWHOと協力するG7の継続的な取組を支持する。我々は、WHO、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)及び国連環境計画(UNEP)の支援によるワン・ヘルス・ハイレベル専門家パネルの設置を歓迎する。我々は、パンデミックからの教訓を学び、それを応用することを確保する決意である。我々は、来たるローマにおけるG20世界保健サミットの開催及びその宣言と、国際的な保健条約の潜在的な価値の探求等の長期的な検討を含むグローバルな保健体系の強化に向けた緊密な協力の推進に期待している。我々は、健康上の脅威に対しより良く保護され、より強じんな世界を築くために、国内機関や関連国際機関との協議に基づくクルーズ船を含む海や空の国際交通に関する新たな公衆衛生指針を促すこと、また、WHOが行った新型コロナウイルスの起源に関する調査の次の段階のための、及び将来の起源不明の感染症の流行を迅速に調査するための専門家主導による透明で独立したプロセスへの支持を含め、我々の外交及び開発上の政策と計画を動員する。我々はG7保健大臣と共に、76か国における国際保健規則(IHR)の実施と遵守を支援するというG7のコミットメントに基づき、IHRレビュー委員会の勧告を勘案しつつ、公衆衛生及び保健安全保障能力並びにアフリカ、アジアその他の地域の地域的機関に対するG7の支援、またこれらとG7との協働に係る調整を改善することにより、低所得・低中所得国と連携して取り組むことにコミットする。我々は、公衆衛生を改善するための各国及び地域における保健分野の優先課題とリーダーシップと連携して、これらを支援する。我々は、国際保健に関するG7カービス・ベイ進捗報告書の発表と、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと国際保健安全保障を推進するための保健システムの強化へのG7のコミットメントに関する同報告書の結論から得られる教訓に期待している。
65. 我々は、世界的なワクチンの開発と展開を加速し、人道的状況におけるものや性と生殖に関する健康及び権利のためのものを含む必要不可欠な健康及び栄養に関するサービス及び保健物資へのアクセスを回復し、次いで維持し、そして、より強い即応メカニズムを通じたものを含めパンデミックに備えるための国際保健体系を強化するために、パートナー国の国内資金も活用しながら、保健システム及び保健安全保障(ヘルス・セキュリティ)を支えるとともに、持続可能な資金調達を確保することが引き続き必要であることに留意する。我々は、G7財務大臣と協力して、新型コロナウイルスのワクチン、治療及び診断へのアクセスの需要を満たすために既存の国際的な資金源へのアクセスを促進するための実際的な行動について、また、パンデミックの存続期間の短縮化を目指し、また、特に脆弱な国のニーズに焦点を当てながら、新型コロナウイルスACTアクセラレータの資金ギャップへの最善の対応について、コンセンサスを築くことを期待する。この点に関し、我々は、WHOにより開始された「パンデミックへの備え及び対応に関する独立パネル(IPPR)」及びG20によって設置された「パンデミックへの備えと対応のための国際公共財のための資金調達に関するハイレベル独立パネル(HLIP)」の成果に期待している。
ジェンダー平等
66. 我々は、あらゆる多様性において、ジェンダー平等並びに女性と女児の権利の促進及び保護に関するG7の継続したグローバルなリーダーシップを再確認する。我々は、新型コロナウイルスからのより良い回復に当たって、女子教育、女性のエンパワーメント、女性及び女児に対する暴力の終焉という3つの交差する目標に焦点を当てることの重要性について認識する。我々は、「女性、平和及び安全保障」の課題を進展させることにコミットする。我々は、国連女性機関(UNWomen)が開催し、メキシコ及びフランスが共同議長を務めた「平等を目指す全ての世代フォーラム」(GEF)の今年の目標及び6つの野心的な行動連合を称賛し、またその目標と緊密に連携することにコミットするとともに、「女性、平和及び安全保障並びに人道支援に関するコンパクト」が含められたことを歓迎する。我々はまた、8月に予定される女性のエンパワーメントに関するG20イタリア議長国下の閣僚会合に期待する。
女子教育
67. 我々は、新型コロナウイルスが、全ての子ども、ただし特に女子及び既に取り残されていた者に影響を及ぼす、現代史上最大の教育の混乱要因であることを認識する。我々は、教育が基本的人権であり、ジェンダー平等と貧困削減の基盤であることを再確認する。我々は、より良く、より公平で、より強じんな教育制度を再構築することにコミットする。
68. 我々は、世界中の何百万もの貧しい10代の女子がパンデミックにより学校に通えなくなっていること、また、これらの女子の多くが紛争、危機及び強制的な移動によっても影響を受け、それにより既に学校に通うことができないことに留意する。SDGsの目標4(SDG4)の達成期限である2030年まで10年を切っていることを踏まえ、我々は全ての政府と国際社会に対し、全ての子どもたちが12年間の安全で質の高い教育を受けられるようにするため、これまでにはない形で共に取り組むことを求める。我々は、SDG4の達成を加速させるための2つの新たな国際的で野心的なマイルストーン目標にコミットし、国際社会に対し、これらを採用し、達成に向けて結束することを求める。
a. 2026年までに、低所得・低中所得国において、更に4,000万人の女子を学校に通わせる。
b. 2026年までに、低所得・低中所得国において、更に2,000万人の女子が10歳又は小学校修了までに読解力を身に付けさせる。
69. 我々は、本G7外務・開発大臣コミュニケの「女子教育に関する宣言」に示されたこれらの目標を達成するためのアプローチを承認する。我々は、教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)を通じたものを含め、資金的及び技術的な資源を動員することにコミットし、教育に対する支出を守るために各国政府と協力する。
女性のエンパワーメント
70. 我々は、女性と女児が、常に無償のケア労働の大部分を負担し、資金へのアクセスが限られた非公式で不安定な雇用にある傾向が強いことを認識する。新型コロナウイルスのパンデミックにより、女性の経済的機会と参画が更に損なわれている。我々は、女性と女児が直面する特定リスクに対応するため、保育を含む手頃な料金の質の高いケア・サービスと全ての人のための包摂的な社会的保護の重要性を認識する。
71. 我々は、女性の権利団体が女性や女児の公的生活への包摂を強化するとともに、彼女たちの抱える問題に耳が傾けられ、広まり、彼女たちのニーズが満たされることを確保する上で不可欠な役割を果たしていることを認識する。我々は、SDGsの目標5. 5へのコミットメントを確認し、新型コロナウイルスからの回復における地方や国の及び国際的な意思決定への女性及び女性の権利団体の完全、平等及び積極的な、そして意義のある参加とリーダーシップを求める。これには、新型コロナウイルス・タスクフォース、ジェンダーに配慮した回復のための行動計画やイニシアティブの策定、実施及び見直し、気候に関する行動やイニシアティブ、さらに人道支援及び危機管理への有意義な参画とリーダーシップが含まれる。
72. 我々は、総合的な性教育を含む質の高い、手頃な料金の包括的な性と生殖に関する健康サービスへの普遍的なアクセスを、命を救い、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成する上で極めて重要なものとして認識する。G7は、全ての個人の性と生殖に関する健康と権利(SRHR)への我々の完全なコミットメントを再確認する。我々はさらに、全ての個人が差別、脅迫、搾取及び暴力を受けることなく、達成し得る最高水準の身体的及び精神的健康を享受する権利を認識する。我々は、パンデミックによるSRHRへの深刻な影響を防止し、これに対処するために協力することにコミットする。我々は、青少年、人種的及び民族的な少数派に属する者、LGBTQI+を含む最も疎外され、十分な待遇を受けられずにいる集団に特に注意を払いながら、SRHRの普遍的な享受に向けた進展を加速していくため、他の国々や市民社会との協力を含め、我々の取組を強化することにコミットする。
73. 我々は、新型コロナウイルスの破壊的な経済的影響から回復する女性を支援するために特に行動しなければならないことを認識した。2018年のG7シャルルボワ・サミットで立ち上げられた最初の「2Xチャレンジ」の成功に続き、我々は、リスクにさらされ、疎外された者を含む途上国の女性に対し、今後2年間(2021-2022年)にわたり改善された経済的機会を提供するために、他の関係者と協力して150億米ドルを投資するとの我々の開発金融機関(DFI)による新たな目標を歓迎する。DFIと国際開発金融機関(MDB)の拡大グループは、ビジネス、金融機関及びファンド・マネジャーが資金を動員し、女性に対し働きがいのある人間らしい仕事と質の高い雇用機会、また、指導的地位の機会、資金調達、より柔軟な職場慣行、手頃な価格の商品及びサービスへのアクセスを提供するのを支援する。
女性及び女児に対する暴力の終焉
74. 我々は、新型コロナウイルスがあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力(GBV)を増加させ、複合的な形態の差別に直面している女性と女児がしばしば最も危険な状態にさらされていることに懸念を持って留意する。この問題に対処するためには、より強固な政治的意思、より多くの資源及び説明責任が緊急に必要とされる。英国の「暴力防止のために何が役立つか」プログラムやスポットライト・イニシアティブといった取組により得られた証拠は、この暴力が予防可能であることを示す。我々は、支援の拡大と証拠に基づく生存者中心及び被害者中心の政策及び計画の実施を通じ、GBVの予防と除去そしてGBVへの対応にコミットする。
75. 我々は、「人道支援におけるジェンダー平等に関するウィスラー宣言」を再確認し、「緊急時におけるGBVからの保護に関する行動要請」のパートナーとして、紛争関連の性的暴力の防止と対応を含め、紛争、人道その他開発の文脈におけるGBVへの対応を強化するために共に取り組むことにコミットする。
援助部門における性的搾取及び虐待並びに性的ハラスメント
76. 我々は、人道部門及び開発部門における性的搾取及び虐待により一層対処するという、受益者、彼らのコミュニティ、被害者及び生存者に対するG7メンバーとしての共同の責任を認識する。我々は、性的搾取及び虐待並びに性的ハラスメントを一切許容しないとの国連事務総長の方針並びに2018年のロンドン・サミット及び2019年のOECD開発援助委員会(DAC)勧告を想起する。我々は、援助の実施に関与する他の全ての関係者に対し、「開発協力及び人道支援における性的搾取、虐待及びハラスメントの停止に関するDAC勧告」を遵守するよう求める。
飢饉防止、人道的危機及び食料不安
77. 我々は、3,400万人以上が食料不安の緊急事態に既に直面し、壊滅的な状況又は飢饉の一歩手前の状況にあり、8,000万人近くが土地を強制的に追われ、2億3,700万人が人道支援を必要としているとの国連の報告を深刻に懸念する。我々は、エチオピアのティグライ、ブルキナファソ及び中央サヘル、コンゴ民主共和国、スーダン、アフガニスタン、シリア並びにハイチが特に懸念される一方で、イエメン、南スーダン及びナイジェリア北東部が差し迫った危機に直面していることに留意する。我々は、人道システムが大きな負荷にさらされており、国連の対応計画がますます資金不足に陥る中で、ニーズの規模及び深刻さが増していることを懸念する。我々は、人道アクセスへの妨害及び国際人道法の不遵守に起因するものを含め、武力紛争が食料不安の危機の主要因であると信じる。我々は、この状況が、新型コロナウイルスの影響を含む、気候変動及び社会経済的な影響により悪化していることに留意する。
78. 我々は、2021年に飢饉を予防するとともに人道ニーズの増大を阻止し始めることを目指す「飢饉防止及び人道危機に関するG7パネル」及び「コンパクト」の取組を承認する。我々は、支援を提供し、民間部門や基金財源を含め、飢饉を予防するための重要な資金的課題に対処する上で必要とされるドナー層の拡大及び多様化を追求し、人道アクセスを促進するとともに文民を保護し、危機が更に悪化することを防ぐために先行的行動を拡大し、各国の国内制度を通じた危機への備えと対応を強化するために世界銀行グループと連携し、支援を最も必要としている人に必要な時に支援を届ける上で必要な調整されたデータ収集及び分析を支援することにコミットする。我々は、慢性的な飢餓もまた増加していることを認識し、2015年にドイツ・エルマウにてG7により合意された「食料安全保障及び栄養に関する広範な開発アプローチ」に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、食料安全保障作業部会の取組に対する我々のコミットメントを再確認するとともに、今後本年内に開催される国連食料システムサミット及び東京栄養サミットに照らした一貫した多国間の行動の重要性を強調する。
気候変動への適応及び強じん性
79. 我々は、最も脆弱なコミュニティへの気候変動の影響に深刻な懸念をもって留意し、2021年3月31日の英国主催の気候と開発に関する閣僚級会合での進展を歓迎する。我々は、地方、国及び国以下のレベルにおける野心的な適応計画及び適応に関する情報により特定された優先事項及びニーズを考慮して、適応行動への資金貢献の規模の拡大を継続することにコミットする。
80. 我々は、2025年に向けて年間1,000億ドルを共同で動員するという先進国の共同目標へのコミットメントを再確認するとともに、パリ協定に従って、規模を拡大して行われる資金の供与については、各国主導の戦略を考慮しつつ、適応と緩和との間の均衡を達成することを目指すべきであるとの目標を再確認する。我々は、適応行動に貢献するための資金を増やすとのいくつかのG7諸国により既に行われたコミットメントを歓迎し、新たなコミットメントが他の諸国からもグラスゴーにおける国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)よりも前に行われることに期待する。自然に基づく解決策を含め、気候のための資金の有効性と利用可能性の向上にコミットする。この資金は、ジェンダーの平等及び包摂性を進展させ、疎外された集団、先住民並びに女性及び女児のニーズと声を反映させることを目指す。我々は、国際開発金融機関や他の公的及び民間金融機関に対し、気候及び自然のための資金を増やし、実現に向け野心的な計画を策定することを求める。我々は、「地方主導の適応のための原則」を歓迎するとともに、脆弱な共同体が自らに影響を与える決定を行う必要性を認識する。
81. 我々は、小島嶼開発途上国(SIDS)を含む脆弱な国々による気候変動への適応を支援するためにビジネス及び投資家が果たすべき重要な役割を認識する。我々は、強化された民間資金の動員並びに適応及び強じん化の解決策のための国内市場創出のための更なる官民連携の必要性を強調するとともに、民間部門の一層のコミットメントを促すための取組を促進する。我々は、「適応と強じん性への投資の加速に関する協同事業」の取組及び今年参加した追加的なG7の開発金融機関を歓迎する。我々は、協同事業に参加するG7諸国が、適応及び強じん性への投資を主流化するとともに実質的に増大させることを共に追求するための実践的な計画を提示し、先ずは農業に焦点を当てた上で、COP26の前に気候リスク管理に関する具体的かつ詳細な行動を進展させることを歓迎する。我々は、協同事業が2020年の開発銀行サミットで立ち上げられてからの前向きな進展を歓迎するとともに、農業に焦点を当てる2021年の同サミットまでの更なる進展を期待する。我々は、主要な農業・食料企業に対し、企業活動及びサプライチェーンにおける持続可能性を向上させ、気候への影響を減少させるよう求めるとともに、これを達成するための更なる措置をとるためにG7の農業・食料企業と連携する。
82. 我々は、2015年のG7エルマウ・サミット後の災害リスクファイナンスに関する進展を歓迎する。我々は、気候リスクをより適切に評価し、管理するためにリスクファイナンスを動員するとの脆弱国の野心に留意する。我々は、パートナー国の政府に対し、事前及び事後のリスク管理の一部として国の社会的保護計画を強化し、その範囲を拡大することにコミットするよう促す。我々は、途上国における備え及び早期行動を支援する我々の従前のコミットメントを想起し、こうした投資により貧しく脆弱な人々に対し提供されてきた大規模かつ重要な保護を歓迎する。我々は、適切な場合における対象が絞られた、持続可能な形での保険料補填を供与するためのメカニズムに加え、リスクプールの規模と範囲を含め、世界のリスクファイナンス構造に発展の機会があることを認識する。我々は、6月の首脳会議までに更に野心的な資金コミットメントを行う個別のG7諸国の意思を歓迎する。我々は、InsuResilienceグローバル・パートナーシップと連携してCOP26までにベスト・プラクティスに関する原則を確立することにより、この資金による効果を改善することを目指す。我々は、同パートナーシップ及びREAP(Risk-InformedEarlyActionPartnership)といった、早期行動、気候及び災害リスクファイナンス並びに気候関連災害への保険の取組を支持する。我々は、InsuResilienceグローバル・パートナーシップのビジョン2025に沿って、また、2025年までに10億人の人々を災害から一層安全にするとのREAPの目標に貢献しつつ、これらの手法を通じて2025年までに5億人の貧しく脆弱な人々をカバーするというG7の野心を支持する。
83. 我々は、気候に強じんな投資のためのコアリション(Coalition for Climate Resilient Investment)及び災害に強じんなインフラのためのコアリション(Coalition for Disaster Resilient Infrastructure)のメンバーによる重要な取組を歓迎する。我々は、緊急ファイナンスに関し、国際的なリスク予測、優先順位付け及び脆弱国への助言を強化する必要性を認識する。我々は、既存の災害リスクファイナンスの取組及び主要な国際組織に対し、連携を強化し、相乗効果を向上させるよう呼びかける。我々は、自然災害、気候、環境その他の大きな影響をもたらすテールリスクをより体系的に世界のリスク監視及び備えに統合すること等を通じて世界のリスク監視を強化するとの20か国財務大臣・中央銀行総裁のコミットメントを想起する。我々は、小島嶼開発途上国や後発開発途上国を含む脆弱国及びパートナーと連携して、災害リスク予測を強化するための選択肢を検討し、COP26の前にその結果を公表するとの個別のG7諸国の意図を歓迎する。
84. 最後に、我々は、適応のための行動に関するコアリション(the Adaptation Action Coalition)及び強じん性のための競争キャンペーン(the Race to Resilience Campaign)を通じ、また、「国際的な気候行動に関するマラケシュ・パートナーシップ」において行われた活動の紹介を通じ、適応を強化するために協力するよう全ての国に対し求め、非国家主体に促す。我々は、世界の新型コロナウイルスからの回復を支援し、食料システムへの気候変動の影響に対処するために、気候変動の水関連の影響への強じん性を築き、世界の農業関連の調査制度を動員することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、国の調査機関や国際農業研究協議グループ(CGIAR)のような多国間の調査機関、そして公的及び民間部門の能力を活用することにコミットする。これは、栄養がある安価な食料を包摂的な方法で、また水及び陸地の資源を保護しつつ増大する人口に届けながら、知識を生み出し、技術革新システムを強化し、そして、パートナーシップが食料システムを強じんで安定したものにし、食料システムが変化する気候に適応できるようにする上で必要な技術革新の速度と規模を加速させることを確保する上で極めて重要である。
開発金融
85. 我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダ及び開発資金に関するアディスアベバ行動目標に沿って、開発金融の優先課題に対処するための具体的な行動を取るとともに、カナダ、ジャマイカ及び国連事務総長により共催された「新型コロナウイルスの時代とその後における持続可能な開発のための2030アジェンダの資金調達イニシアティブ」を通じて展開された政策オプションに留意する。我々は、ワクチン、治療薬及び診断並びにパンデミックへの備えのための持続可能な資金調達に加え、脆弱国向けの緊急財政支援の動員を手助けするために、国際組織及び慈善活動団体だけでなく、我々の財務大臣及び保健大臣とのパートナーシップを歓迎する。我々は、国際通貨金融委員会(IMFC)から国際通貨基金(IMF)への、新規の特別引出権(SDRs)の一般配分について包括的な提案を行い、脆弱国の回復に向けた取組を支援するためのSDR配分後の自発的な融通の方法について検討することについての要請を歓迎する。我々はまた、2021年12月末までとなる6か月間のG20・パリクラブの債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)の更なる、そして最後の延長を支持するとのG20のコミットメントを歓迎する。我々は、ケースバイケースで債務脆弱性に対処するため、DSSI後の債務措置に係る共通枠組を実施するための現在の作業を歓迎する。これは、パリクラブとG20の新興債権国との間で初めての協調された債務措置が実施されること、また、他の公的二国間債権者及び民間債権者が措置の同等性の原則に沿って参加することが確保されることを支援するものとなる。
86. IMFが2021年から2025年にかけてアフリカにおける約4,250億ドルの資金ギャップを想定する文脈において、我々は、アフリカへの追加の緊急財政支援を動員するための財務大臣及び国際金融機関の取組を歓迎する。我々はG7の開発金融機関に対し、民間投資の機会を開放し、アフリカの持続的な回復支援するための更なる協働を求める。我々はまた、アフリカにおけるパンデミックの広範囲に及ぶ影響を認識するとともに、ワクチンへの公平なアクセスを可能とし、強じんな保健システムの発展を支援しながらワクチン、治療及び診断の生産に係るアフリカの計画を支援する必要性を認識する。我々はアフリカ諸国の政府に対し、貿易を強化し、投資を誘致し、そして持続可能かつ人間らしい仕事を創出するために最適な条件を設定するよう促す。
V. 結語
87. 我々は、例外的な、急変しやすい状況において会合していることを認識する。我々は、パートナー諸国と、そして多国間体制の中で、地球にとってよりクリーンで、より自由で、より公正で、そしてより安全な未来を形作るために共に取り組むことにコミットする。我々は共に、また他の多くの国々と一緒に、目に見える問題と成果に取り組み続ける決意である。我々は、6月のカービス・ベイでの首脳会議に心から期待する。我々は、アフリカ諸国の外務大臣の参加が歓迎される本年中の第2回外務・開発大臣会合において、これらの問題について更に進展を得ることを期待する。
(了)