データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 外務省

[場所] ロンドン
[年月日] 2021年5月5日
[出典] 公平なアクセス及び協力に関するG7外務・開発大臣声明
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々G7の外務・開発大臣は、新型コロナウイルスのパンデミックの深刻な状況を終わらせ、包摂的で持続可能な世界的回復を達成し、パンデミックへの備え及び対応を向上させるとともに生物学的脅威に対抗するための持続可能な長期的アプローチに向けた、開かれ、透明性のある多国間の取組を主導するとの共通の目標を確認する。我々は、世界がこれらの目標を達成するために必要な変化を牽引すべく、G7のリーダーシップにコミットする。

 我々の声明は、来たるローマにおけるG20グローバル・ヘルス・サミット及び同サミットの宣言に期待している。G7の外務・開発大臣として、我々は、新型コロナウイルスのパンデミックを終わらせ、将来の脅威への備えを確実にするというG20と共通の目標に対する我々の具体的な貢献を提示する。

 グローバル・コミュニティとして、我々の共同の活動により、新型コロナウイルスに対する安全で有効なワクチンの開発、製造及び分配が前例のない速さと規模で実現した。2020年、我々は、通常ならば10年かかることを1年で達成した。我々はまた、更に多くのことが必要であると認識してはいるものの、研究を加速化させ、診断と治療のための新たな費用対効果の高いツールの国の保健システムへの導入及び拡充を加速した。G20諸国とともに、我々は、新型コロナウイルスのACTアクセラレータ(ACT-A)及び主要な国際保健分野のパートナー(世界保健機関(WHO)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、ワクチン・アライアンス(Gavi)、国連児童基金、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)、革新的な新たな診断のための基金、ウェルカム・トラスト及びユニットエイド)を支援してきた。我々は共に、リスクと資源を分配するための先駆的なCOVAXファシリティを立ち上げ、G7諸国は、Gaviが運営を担い、2021年中に支援受給資格のある低・中所得国に少なくとも13億回分の新型コロナウイルス・ワクチンを供給することを目指すCOVAXファシリティの途上国向け枠組みである事前買取制度(AMC)に対し、2021年に必要な資金の64%に当たる53億米ドル以上を拠出している。

 我々は、全ての人々が安全になるまで誰も安全ではないことを理解する。我々は、パンデミックが、脆弱で疎外された集団、特に女性や女児に対し不均衡な影響を与えることを認識するとともに、そうした集団に手を差し伸べるために特に注意を向ける必要があることを認識する。我々は、我々の共通の健康と安全は、公衆衛生へのアプローチと整合的な形で、最も脆弱で最も重大な障害に直面し、最大の支援を必要とする人々に焦点を当てることによってのみ達成できることを理解する。我々は、新型コロナウイルス対応ツールへの公平なグローバル・アクセスの重要性と、パンデミックの深刻な状況に終止符を打ち、新たな変異種の出現を含む将来の感染症の発生を予防、探知及び制御できる効果的な保健システムの重要性を認識する。透明性があって効果的な多国間の協力が、これまでの我々の成功の重要な推進力であった。パンデミックの深刻な状況を終わらせ、国際社会が将来への最善の備えを行う上で、そうした協力が本年の我々のアプローチの中心に据えられなければならない。我々は、新たに出現するパンデミックの脅威の予防、探知及び報告並びにこれへの対応のため、また、保健システムと国際的な対策の枠組みの強化(明確な措置発動基準を備えた早期警報及び警戒システムの改良、持続可能な健康安全保障(ヘルス・セキュリティ)のための資金調達メカニズムの支援、強化された透明性及び説明責任、情報、データ及びサンプルの迅速な共有、強化された製造及び供給増強能力並びに多様化されたサプライチェーンを含むあらゆるレベルにおける強じん性の確立を含む。)のため、国際的な協働、説明責任及び透明性の不可欠性を認識する。

 我々は、25か国によるACTアクセラレータの憲章の諸原則を想起する。我々は協力して、迅速に生産され、かつ、世界中で公平にアクセス可能な高品質で、安全で、有効で、安価なワクチン、治療及び診断を追求するために協力する。我々はまた、世界で最も貧しい国々のアクセスの障壁に立ち向かうとともに、このパンデミックに効果的に対応し、将来の感染症の発生に備えるために、世界中における保健システムの強化を支援する必要がある。

 開放性、透明性及び協力は、イノベーションを牽引し、公平なグローバル・アクセスを支援し、世界の保健及び保健安全保障(ヘルス・セキュリティ)を改善する上で不可欠である。G7の社会は、これを達成するために必要なリーダーシップを発揮することができる。以下の諸点を通じ、我々は、分野横断的なワン・ヘルス・アプローチを取りつつ、新たな人獣共通感染症や薬剤耐性菌による感染症問題を含むパンデミック、感染症の発生及び保健の緊急事態の発生可能性を低減させ、そうした事態への備えを改善するために、引き続き協力することにコミットする。

 我々は、我々の国内における活動を補完するものとして、そして、開かれた民主的な社会としての共通の価値の下に結束し、次のことを行う。

 1. パンデミックの深刻な状況を終わらせ、将来の感染症の発生を制御するために必要な、安全で有効な新型コロナウイルスのワクチン、治療及び確度の高い診断への公平なアクセスを世界中で可能にする。世界中でワクチンの展開が始まる中、これには、各国がワクチンの導入及び分配に関し説明を受けた上で決定を行うための支援を行うこと、迅速で確実な薬事規制上の承認を可能とすること、ワクチンの分配と国内の接種計画の透明性を確保すること、そして、信頼できる分配チェーンを含む、より広範な保健システムの強化を通じて供給を支援することを含む。さらに、最も必要とする人々にワクチンが届くよう、疎外された人々が直面し得る課題に積極的に対処し、また、人道上の危機や紛争下にある人々を優先的に手当てするための支援を含め、各国内における安全で、有効で安価なワクチンへの公平なアクセスを促進する。我々はWHOその他のステークホルダーと協力し、情報、データ及びサンプルを迅速に共有し、新たな変異種を監視するための情報共有プラットフォームを含む実験及び配列に係る分析能力を構築し、ワクチンの安全性と有効性を評価する厳格な薬事承認プロセスを確保するために、研究開発への投資と調整を強化しなければならない。我々は主要なドナーとして、また、他の資金調達メカニズムを活用し、ACTアクセラレータ及びCOVAXファシリティの途上国向け枠組み(AMC)の支援への我々のコミットメントを再確認する。

 ・我々は、6月のCOVAXワクチン・サミットにおけるものを含むCOVAXファシリティへの拠出のプレッジを促進すること、できるだけ早く実際に拠出すること、現物支援の提供、そして、世界的にワクチンを共有するための主要なメカニズムである同ファシリティと調整し、これを活用することを含め、同ファシリティによる直接の調達を補い、ワクチンの迅速で公平な展開を可能にするために、COVAXファシリティを財政的に支援することにコミットする。我々は、公平性の原則と公衆衛生データに基づいて分配される安全で有効なワクチンへのアクセスを支援することにコミットする。

 2. 世界中における公平なアクセスのため、開かれた、多様で強じんなサプライチェーンを保護する。民間部門は、ワクチン、治療及び診断を世界中で迅速かつ大規模に供給する上で不可欠なパートナーである。我々は、グローバル・バリュー・チェーンの重要性を認識し、自主的かつ相互に合意された契約条件に基づくライセンス、技術移転、委託製造並びに官民での費用及びリスクの分担の取組の奨励及び支援のために産業界と協力する。公的部門及び民間部門からの情報を得て、我々は、高品質で、安全で、有効で、かつ安価な診断、治療及びワクチンへの公平かつ迅速なアクセスのために必要となる開発、製造及び分配能力の拡大のための様々な選択肢の実施を特定し、支援する。

 ・我々は、企業間のパートナーシップの促進、互いに合意した条件による自主的なライセンス供与及び技術移転に係る契約の奨励等を通じ、新型コロナウイルスのワクチン、治療及び診断並びにそれらの構成品を安価で提供できる規模の生産拡大を促進するため、産業界と協力することにコミットする。これに加え、我々は、新型コロナウイルス関連物品の人道的な輸送への混乱を回避することにコミットする。

 3. 人々に正確な情報を提供し、ワクチンの接種計画を監視するためのメディアや市民社会の関与を通じたものを含め、厳格な規制当局により承認もしくは許可されたワクチン又はWHOによる事前認証もしくはWHOの緊急使用リストに掲載されたワクチンの世界的な最大限の接種を可能にする。我々は、WHOのような他のステークホルダーと協調してワクチンへの信頼性を世界的に高めるため取り組み、厳格に規制されたワクチンへの信頼を高めるよう努める。我々は、世界的なワクチンへの信頼を効果的に高めるためには、特定の国の状況に合わせたアプローチの策定についても支援する必要があることを認識する。厳格に規制されたワクチンの世界的な接種は、現在、敵対的な国家や非国家主体からのものを含むうわさ、作り話、誤情報及び偽情報により損なわれており、我々はこうした問題と闘うため、我々の取組を調整する。

 ・我々は、専門知識や教訓を含む共有された知見と効果的な戦略に基づき協働するため既存のメカニズムを通じて取り組むことにコミットし、誤情報や偽情報を軽減し、厳格に規制されたワクチンの最大限の接種を促進する。

 4. 特に途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を支援するとの我々の共同のコミットメントを再確認する。パートナー国の国内資源や他のステークホルダーと協力して、我々は、パンデミックに終止符を打ち、より強く回復することを目指し、保健システムを強化し、誰一人取り残さないようにする。このことは、世界の健康と繁栄の基礎をなすものであり、また、安価で質の高い、不可欠な保健サービスの一環として、高品質の、安全で有効なワクチン、治療及び診断への公平なグローバル・アクセスを確保し、紛争下や人道上の危機にある場合を含む保健上の脅威への備え及び対応のための効果的な公衆衛生機能を促進する上で、極めて重要である。

 ・我々は、過去の投資を基礎として、強化された国内の保健システム及び公衆衛生機能という新型コロナウイルスへの国際的な対応と回復から生まれた前向きなレガシーにコミットし、他の保健分野における資源の転置と悪影響を最小限に抑えることにコミットする。我々は、ドナーとして、また多国間機関や多国間イニシアティブの構成員として、そして主要な資金提供者としての立場を通じ、ACTアクセラレータ保健システム・コネクターを通じたものを含め、我々の多国間パートナー達に保健システムの強化に関する一層の協力のため責任を持たせるべく取り組むとともに、地域の及び国内の公衆衛生機関に対する我々の支援の調整を強化するため、地域的なパートナーシップを構築する。

 5. このパンデミックに対する共同の国際的な対応の教訓と成功を把握し、将来に向けた多国間システムを強化する。我々は、部門横断的なワン・ヘルス・アプローチを取りつつ、新たに出現する潜在的なパンデミックの脅威に直面した際、感染症への対応のための供給増強能力と拡張のトリガーを持ち、改善されたリスク評価及び管理により得られる情報を用い、メカニズムの強化や緊急事態への備え及び対応並びに国際保健安全保障(グローバル・ヘルス・セキュリティ)のための持続可能な資金調達を増大させることを含め、パンデミックへのより適切な備え及び対応のための枠組みを強化するため、2021年に具体的な進展を遂げることが非常に重要であると考える。これは、「パンデミックへの備え及び対応のための独立パネル(IPPR)」、国際保健規則(IHR)検証委員会及び「パンデミックへの備えと対応のための国際公共財への資金提供に関するハイレベル独立パネル(HLIP)」並びにその他入手可能で関連する報告書に基づくものとなる。これには、次のものが含まれる:国際的なパンデミックへの備え及び対応を強化し、包括的な性と生殖に関する保健サービスを含む不可欠な保健サービスの継続的な提供を確保するより強じんな保健システムを構築するための、パートナーを迅速に動員し、調整できる、協調的な多国間メカニズム。国内の機関や関連国際機関との協議に基づく、クルーズ船を含む海や空の国際的な渡航に関する公衆衛生上の新たな指針の奨励と、WHOが調整及び主導的役割を果たし、国際保健規則の実施を改善できるようにするためのWHOの強化。異なるチャネルを通じた投資の活用及び展開において最大の効率化、即応性及び説明責任を生み出すことができるよう、世界銀行その他の国際金融機関及び国際的なグローバル保健イニシアティブとの緊密な連携。そして、国際保健に関する条約の潜在的価値を探求するといった長期的な検討。

 ・我々は、総額220億米ドルのワクチン、治療及び診断の展開を支援する国際開発金融機関(MDB)の資金調達パッケージを歓迎し、パンデミックへの対応及び多国間システムの強化のために共同で取り組むに当たり、世界保健イニシアティブを含む他の多国間主体と協議しつつ、MDBの断固とした、透明性の高い実施を支援するためにMDBと協力することにコミットする。我々は、この危機から学んだ教訓を共有し、我々の国際支援のアプローチを、将来あり得るパンデミック及び保健危機の緩和と対応に適応させるべく取り組むことにコミットする。これには、経済協力開発機構(OECD)の新型コロナウイルス世界評価連合の作業を更に強化することを含む。

(了)