データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 外国の脅威からの民主主義の防衛及び共通の価値の擁護

[場所] ロンドン
[年月日] 2021年5月5日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 G7は、共通の民主的価値を有し、基本的自由、人権及び法の支配を尊重する。我々は、開かれた社会とそれを支える民主的システムを守り、促進し、奨励することにコミットする。

 外国の悪意ある主体は民主主義の弱体化をしつこく試み、一部の国は自国の権威主義的統治システムや地政学的目的の推進を追求する。G7は、グローバルなリーダーシップを示し、そうした悪意のある主体を暴き、抑止するための行動を取り、そして民主主義を防衛するため協力することにコミットする。

 G7及び他の民主主義国において、例えば以下のような様々な形をとった干渉の試みが見られる。

偽情報その他の形態の情報操作

 民主的機関及びプロセスへの信用を損ない、独立したメディアに影響を与え、市民の言説を操作し、市民の公共の空間を閉鎖し、社会の一体性を損ない、公衆衛生を脅かす試み。例えば、

・特にワクチンの安全性と有効性に関する偽の及び(又は)誤解を招く情報の人為的な流布又は増幅と、新型コロナウイルスに対する国際的な取組を脅かす、公衆衛生に関する極めて重要なメッセージの弱体化

・社会的一体性を損ないながら、分断を広げ、特に少数派に対する憎悪を植え付ける試み

・我々の国益に反する目的を支持するための市民の言説の操作や意図的な歪曲

選挙干渉

 民主的プロセスとその結果、並びにそれらに対する国民の信頼と信用を損なおうとする試み。例えば、

・選挙制度の完全性や選挙の結果を損なうことを意図した偽の及び(又は)誤解を招く情報の人為的な流布

・不利な情報を入手し、公開するための、選挙官吏、政党、候補者等のコンピュータ・システムへの危害

・市民による投票又は投票のための登録を防止し、又は妨害する試み

・特に女性や少数派の候補に対する威嚇や脅迫

基本的自由及び人権への干渉

 個人が正当な人権や表現の自由を含む基本的自由を行使することを妨げる意図を持って、個人に対し影響を与え、圧力をかけ、又は脅そうとする試み。例えば、

・国の主体に批判的な人権擁護者、市民社会の活動家及びジャーナリストを沈黙させようとする試み

・人権擁護者、市民社会の活動家及びジャーナリストに対する威嚇や脅迫

 G7即応メカニズム(RRM)は、2018年の立上げ以来、我々の民主主義に対する多様で変化する脅威を特定し、それら脅威に対応するための貴重な場を提供してきた。脅威の評価をリアルタイムで共有し、ベスト・プラクティスと教訓を交換し、協調的な行動に向けて取り組むことで、我々は脅威に対する共通理解を強化し、脅威に対抗するための各国の能力を磨くことによって、我々の社会の強じん性と他の民主主義国を支える力を高めてきた。

 我々は、これまでの成功の上にRRMを強化することにコミットする。我々は、

 1. RRMの活動及びRRMが取り組んでいる課題について啓発するため、年次報告書を発表する。

 2. NATOを含む他の国際的なパートナーとの関係を強化し、メカニズムを拡大する。

 3. 我々の分析能力を高め、磨き、情報交換の強化を継続する。

 4. 情報空間における違法な活動に関する共通の理解に向け取り組む。

 5. 市民社会、学術界、産業界等の重要なパートナーへのアウトリーチを調整する。

 我々は、民主主義、透明性及び開放性という共通の価値を指針として、外国からの干渉の脅威に共に立ち向かう。

(了)