データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7 気候・環境大臣会合コミュニケ

[場所] 
[年月日] 2021年5月21日
[出典] 環境省
[備考] 暫定仮訳
[全文] 

共同のコミットメント

1. 我々、G7の気候・環境担当大臣は、2021年5月20日~21日オンラインで会 合を開催した。

2. 現在進行中のパンデミックへの対応を続ける中で、我々は深刻な懸念をもって、気候変動と生物多様性の損失という前例のない相互依存の危機が、自然、人類、繁栄、安全保障に対する実存的な脅威となっていることを認識する。我々は、世界の生物多様性の損失と気候変動の主要な要因の一部が、パンデミックにつながる可能性のある人獣共通感染症のリスクを高める要因と同じであることを認識している。我々は、地球の持続可能性に向けて動き出し、気候変動をさらに緩和・適応させ、生物多様性の損失と環境劣化を食い止め、回復させるために、緊急かつ具体的な行動が必要であることを強調する。我々は、気候変動と自然環境の健全性が本質的に関連していることを認識し、我々が取る行動が、並行してこれらの危機を解決する機会を最大化することを確実にする。

3. 我々は、パンデミックからのより良い復興を実現し、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の復興戦略と投資の中心に気候、生物多様性、環境を据える決意を強調する。そうすることで、我々は、持続可能な開発を促進し、人間らしい働きがいのあるグリーンの雇用を提供し、強靭性を構築するために、経済を変革する。我々は、また、クリーンエネルギーへの移行を加速し、食品ロスや廃棄物の削減、循環経済アプローチの推進などにより資源効率を向上させ、持続可能なサプライチェーンへの移行、生物多様性を含む自然や気候を中心に据える。我々は、2030年の目標をできるだけ早く、遅くとも2050年までにネット・ゼロ・エミッションを達成するという目標と一致させることで、2030年までに生物多様性の損失のカーブを曲げ、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、世界を自然にプラスとなる気候変動に強靭な道筋に導くことを支援する。

4. 我々は、これらがあらゆるレベルで緊急かつ野心的なグローバルな行動を必要とする地球規模の課題であることを認識する。我々は、国際協力と多国間主義へのコミットメントを再確認し、我々の国内及び国際的なコミットメントを完全に実施するために、共に作業を行う。この重要な行動の年に、我々は、最も野心的な地方、国、国際的なレベルの行動に支えられた、世界的な野心を高め、協力を強化する必要があることを認識する。我々は、全ての国に行動への参加を呼びかける。

5. COVID-19の危機は、政府の政策や意思決定における科学と証拠の重要性を強めた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)、国際資源パネル(IRP)、国連環境計画(UNEP)による最近の評価では、気候変動、環境劣化、生物多様性の損失に対処するためには、社会と経済の全てのセクターで迅速かつ広範囲な変革が必要であることが報告されている。地球観測システムに関する過去のG7会合の成果を想起し、我々は、地球の状態に関する情報を提供し、気候変動に対処し、重要で生物多様性のある生態系を保全、保護、回復するための行動を支援し、導くために、研究及び組織的な観測が重要な役割を果たすことを認識する。我々は、国内の行動と国際的なコミットメントが、利用可能な最良の科学に基づいていることを確認し、我々の経験とベストプラクティスを共有することで、証拠に基づく政策決定プロセスを強化したいと考えている他の国々を支援する。

気候変動と生物多様性の損失という2つの危機への対処

6. 我々は、海洋と海が地球システムにおける全ての過剰な熱の90%以上を吸収し、1980年代以来、排出された全ての人為的な二酸化炭素排出量の20〜30%を吸収し、地球上の全生命の80%までに住居を提供しながら、生物多様性と地球の気候調節において重要な役割を果たしていること、健全な海洋は30億人以上の人々の生活にとって重要であることを認識する。したがって、我々は、海洋を保全し、持続的に利用するために、国際的、地域的、国レベルでの取組を強化し、海洋の強靭性を高めることにコミットする。

7. 我々は、ほとんどの世界の陸域生物多様性が見られる森林が、気候変動の影響に対する脆弱性を軽減し、適応力と強靭性を改善し、熱帯林が毎年大気中から最大1.8GtのCO2を吸収・蓄積することで重要な炭素吸収源として機能しながら、重要な役割を果たしていることを認識する。我々は、森林減少・劣化が気候変動の重大な原因であると認識している。我々は、森林や生息地の連結性を含む自然生態系の保全、保護、回復のための緊急行動を行い、持続可能な森林経営を促進することにコミットする。また、生物多様性の損失や森林減少をこれ以上引き起こさないような脱炭素化の道筋を実行することを約束する。

8. 我々は、気候変動の緩和・適応、生物多様性、人々に多大な複合的利益をもたらし、それによって様々なSDGsの達成に貢献する上で、自然を活用した解決策が果たす重要な役割を認識している。このような利益には、特に、大気、水の質と利用可能性の改善、土壌の健全性、暴風雨や洪水の防止、災害リスク軽減、土地の劣化の緩和と防止が含まれる。自然を活用した解決策は、世界で最も脆弱で貧しい人々が偏って依存している広範な生態系サービスを保護・支援することで、持続可能な生活を提供することができる。したがって、我々は、その展開と実施を強化することをコミットする。我々は、自然を活用した解決策は、早急な脱炭素化と排出削減の必要性に取って代わるものではなく、これらの努力と並行して必要とされるものであることを強調する。海洋と森林に関する行動に加えて、我々は、土壌、草原、サバンナ、乾燥地、湿地、サンゴ礁、河川、湖沼、海岸砂丘、泥炭地、藻場、マングローブ、塩沼を含む生態系全体において、関連するセーフガードを確保しつつ、早急に行動を起こすことをコミットする。

9. 我々は、我々が共同の野心を達成するためには、革新的な資金を含む官民、国内外のあらゆる資金を必要とすることを再確認する。我々は、気候変動に対処し、自然と環境を保全、保護、回復し、持続的に管理するための国際的な行動を支援し、加速するために、政府開発援助やその他の資金を含む、全ての関連する資金、手段、方法を用いることにコミットする。我々は、国内外の資金の流れのこれらの目的への適合を促進させるために予見可能な投資環境と明確な公共政策及び戦略が重要であることを強調し、そのため、官民の資金動員に関連する国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)の次期議長国である英国の野心的な努力を歓迎する。我々はそれぞれ、自然を活用した解決策を含む、気候変動の緩和及び適応行動のための資金量を増加させるために集中的に取り組み、その実効性、アクセシビリティ、そして可能であれば予測可能性を高めることにコミットし、他の国々が我々の努力に参加することを求める。これらの努力と並行して、我々は、自然及び自然を活用した解決策のための資金量の増加に向けて集中的に取り組む。我々は、官民、二国間、多国間の幅広い資金源から、2020年から2025年にかけて年間1,000億米ドルを共同で動員するという先進国合同の目標へのコミットメントを再確認し、G7のいくつかの国が気候資金を増加するために既に行ったコミットメントを歓迎し、グラスゴーでのCOP26に向けて他の国が新たにコミットメントを行うことを期待する。我々はこれらの目的のために民間資金を動員するための環境整備を促進するとともに、最貧層や、気候変動、生物多様性の損失、環境劣化に対して最も脆弱な人々を支援するための国際社会の行動を強化する。我々は、気候と生物多様性のための資金の相乗効果をさらに高め、気候と自然のための共同便益をもたらす資金調達を促進することにコミットする。

10. 我々は、国際開発金融機関(MDBs)、二国間開発金融機関(DFIs)、多国間基金、公的銀行、輸出信用機関に対し、自然と気候のための資金を増加させ、特に途上国及び新興市場向けに民間資本を一層動員することにより、これらの機関からの資金の流れをパリ協定の諸目的に適合させることを確保し、生物多様性条約(CBD)を含む生物多様性に関する国際条約とポスト2020生物多様性枠組の目的を支援するよう求める。我々は、MDBs、二国間DFI、その他の支援機関に対し、気候資金の目的及び目標を達成し、それらの目的及び目標をより野心的なものにし、分析、政策提言、意思決定、融資において気候及び自然を主流化することにより、資金を大規模に動員することを求める。さらに我々は、全てのMDBsに対し、UNFCCCCOP26までに、その事業をパリ協定に適合させるとともに、パリ協定の目標を支援するための計画とその期日を公表することを求め、それら機関が各々の事業全体に自然を主流化することにコミットする共同声明に署名することを推奨する。また我々は、MDBsに対し、特に適応と強靭性、自然を活用した解決策など、資金不足となっている分野において、自然及び気候向けの民間資金プログラムの実証と拡大に、彼らの民間セクター部門をコミットさせることを強く求める。

11. 我々は、COVID-19からのより良い復興と世界的なグリーン・リカバリーの達成の文脈で、途上国が直面する特に大きな打撃、また、債務負担の増大が財政余力を狭め、万人のためのクリーンで持続可能なエネルギーへのアクセスを含む他の開発目標と並んで、グリーン・リカバリーのための経済刺激策を実施する能力を制約する可能性があることを認識する。我々は、マクロ・財政政策、自由で公正なルールに基づく多国間貿易システム、民間資金を動員できる環境整備のための国際的な取組や国内での努力が、経済を変革し、活性化させるための強力な手段となることを認識している。我々は、スターン卿の取組に感謝し、彼がG7議長国である英国から依頼された「持続可能で強靭かつ包括的な成長と回復のためのG7のリーダーシップ」に関する論文を興味深く留意する。我々は、世界的な景気回復に向けた支援と、ネット・ゼロへの円滑な移行、生物多様性の損失への対応、及び民間部門の動員における財務大臣の役割に関する財務大臣間の議論を歓迎する。

誰一人取り残さない

12. 我々は、気候変動、生物多様性の損失そして環境劣化が、女性や女児、先住民族、障害者、その他周縁化されたグループを含む最も脆弱なコミュニティ、貧困にあえぐ人々、そして既に交差的な不平等や差別に直面している人々に不均衡な影響を与えていることを認識する。我々は、リーダー及び変革の主体としての彼らの重要な役割を認識するとともに、新規および既存の政策を、社会正義、経済的エンパワーメントおよびジェンダー平等の達成を支援するために適応させることで、彼らの声を聞こえるようにし、彼らの意思決定への完全かつ平等で意義ある参加を支援するため、環境正義の問題に対する取組を強化する。さらに我々は、国内法や国際文書で認められているように、先住民族の権利を保護する必要性を認識し、気候変動や生物多様性の損失に取り組む中での彼らの知識やリーダーシップを尊重し、重視する。我々は、女性、周縁化された人々、少数派のグループが直面している気候や自然のための資金へのアクセスに対する障壁に対処することをしっかりとコミットするとともに、より一層ジェンダーに配慮し金融市場における包摂性を高めていく。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとそれに関連したSDGsを実施し、UNFCCC、CBD、国連砂漠化対処条約(UNCCD)のジェンダーに関する行動計画を支援する行動を取るとのコミットメントを再認識する。

13. 我々は、ネット・ゼロの排出とネイチャー・ポシティブな経済への移行が公正で包摂的な方法で行われることを確実にする。移行は、いかなる個人、グループ、地域も取り残されないよう、影響を受ける労働者やセクターに関する政策及び支援と密接に関連していなければならない。

気候変動

パリ協定の下で取組の進展を加速させることを約束したG7

14. 我々は、パリ協定の実施を強化し、その潜在的な可能性を最大限に引き出すための、我々の強固で揺るぎない約束を再確認する。この目的のために、我々は気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、排出量を削減する野心的かつ加速的な努力を行い、気候変動の影響への適応を強化し、資金と支援を拡大し、自然を保護、回復、持続的に管理し、そして、包括的でジェンダーに配慮した行動を強化する。我々はこれらの目的を念頭に置きながら、グラスゴーにおけるCOP26の成功とその先に向けて、取組を行うコミットメントを再確認する。

緩和の転換をもたらすG7のネット・ゼロ

15. IPCCの2018年版「1.5°Cの地球温暖化に関する特別報告書」に記載されているように、回避できる気候への影響は2°Cよりも1.5°Cの方が大きいことを認識し、世界平均気温の上昇を産業革命以前の水準よりも1.5°Cに抑えるための努力を追求することが世界的に急務である。これには、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けるための道筋に適った気候・環境行動において継続的な改善に従った、全ての国、特に主要な排出国による意味のある行動が必要となる。我々G7メンバーは、模範となり、可能な限り早く、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量をネット・ゼロにすることをそれぞれ約束する。

16. 我々は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を段階的に削減するための国内対策をとること、及びオゾン層保護と気候変動への取組におけるモントリオール議定書の利益を強化するための更なる行動を追求することの重要性を確認し、まだモントリオール議定書のキガリ改正を批准していない全ての国に対し、同改正を批准するよう求める。

短期的な行動―ネット・ゼロへの道筋を通じたより良い復興と更なる強靭性

17. 世界経済のネット・ゼロ・パスウェイへの転換を加速するには、持続可能な開発のための2030アジェンダに沿って、誰一人取り残さずに、COVID-19からグリーンで、持続可能、強靭で、包括的、ジェンダーに配慮した回復をする必要がある。パリ協定の目標達成に向けた進捗を加速させるために、我々は、高炭素投資に伴う座礁資産のリスクを認識した上で、それぞれの強化されたNDCと2050年のネット・ゼロ・コミットメントに向けた経路に沿ったCOVID-19からの回復のための投資を行うことで、グリーンの雇用や持続可能で強靭な成長を含む持続可能な開発のための重要な機会を活用する必要がある。

中長期的な行動―ネット・ゼロに整合的なNDC及び長期戦略による先導

18. 我々は、IPCC特別報告書2018の調査結果を深い懸念を持って強調し、気候変動による壊滅的な結果のリスクを低減するため、地球温暖化を工業化以前のレベルより1.5°Cに抑える軌道に世界を乗せるためには、2030年までに世界の年間GHG排出量を二酸化炭素換算で25~30Gt以下に削減する必要があることを認識する。我々は、2050年までに温室効果ガス排出量をネット・ゼロにするための具体的な道筋を示した長期戦略を、可能な限り早く提出するとともに、COP26までに提出できるよう最大限の努力を払うことを約束する。我々は、最新の科学、技術や市場の発展を反映させることを含め、長期戦略を定期的に更新することを約束する。また、我々は、UNFCCC事務局が作成したNDC統合報告書の初版に懸念を持って留意する。この報告書では、多くの締約国がまだ新しいNDCや更新されたNDCを提出していないことが強調されている。2020年までに提出されたNDCは、総じて、地球温暖化を1.5°Cに抑えるか、2°Cを大きく下回るものとなっているIPCCが特定したパスウェイに見られる範囲には遠く及んでいない。我々は、全てのG7メンバーによって発表された2030年目標に反映された大幅に強化された野心を歓迎する。これにより、我々は、それぞれの2050年温室効果ガス排出量純減目標に向けた明確かつ信頼性のある道筋を歩むことになる。我々は、これらのコミットメントが、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けること、ビジネス、投資家、そして社会全体に明確な方向性を示すことに重要な貢献をすることに留意する。まだ提出していない国は、COP26に先立ち、強化したNDCを可能な限り早くUNFCCCに提出することを約束する。

19. G7メンバーは、単独で気候変動に取り組むことはできない。G7は、全ての国、特に他の主要な排出国に対し、2050年のネット・ゼロの約束をした数多くの国に加わり、長期的な戦略を含めた達成のための具体的で信頼できる戦略を提示し、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れるようにNDCを強化することを求め、まだ行っていない締約国がCOP26に先立ち、野心を高めたNDCをできるだけ早くUNFCCCに提出することの重要性を強調する。

20. 我々は、パリ協定に沿って、我々の連続したNDCが進歩を表し、可能な限り高いレベルの野心を反映するという約束を再確認する。我々のNDCとLTSは、グローバル・ストックテイクの結果と、利用可能な最良の科学、特にIPCCの報告書(今後発表される第6次評価報告書を含む)やIPBESの報告書から引き続き情報を得る。NDCの準備と実施において、我々は市民参加のコミットメントを再確認する。我々は、ジェンダー対応を含む野心的な気候変動対策を推進する上で、あらゆるレベルの政府、企業、労働者、地域コミュニティ、非政府組織、学術界、先住民、若者、その他の非国家主体が重要かつ積極的な役割を果たすことを強調する。我々は、気候変動に対する野心と行動を加速・拡大するために、国際的な気候行動に関するマラケシュ・パートナーシップ(MPGCA)を強化し、そのイニシアティブの追跡調査を改善することを求める。我々は、経済全体の努力の一環として、全てのセクターにおける行動を促進するために、強化された国際協力による利益を認識する。

気候変動の影響からのより多くの人々の保護

21. 我々は、世界中で既に経験している気候変動の影響を、特にその影響に最も脆弱な人々が受けていることを、重大な懸念を持って認識する。我々は、自然を活用した解決策を含む適応行動を強化、加速及び拡大し、最も脆弱な人々が、野心的な国家適応計画を含む地域、国及び自治体レベルの計画により特定された、気候変動と生物多様性の損失の影響に適応し対処できるよう支援することを約束する。我々は、パリ協定第9条4へのコミットメントを再確認する。パリ協定第9条4は、各国が主導する戦略を考慮に入れ、適応と緩和の間の均衡を達成することを目指すための、規模を拡大して行われる資金の供与を求めている。これには、適応行動のための資金を引き続き拡大することも含まれる。我々は、企業、労働者、投資家、都市、女性、先住民及び市民社会が、脆弱なコミュニティを支援するために行動を起こす上で重要な役割を果たしていることを強調する。最後に、我々は、「適応のための行動に関するコアリション(the Adaptation Action Coalition)」、「G7気候リスク保険強靱性グローバルパートナーシップ(InsuResilience Global Partnership)」及び国別適応計画グルーバルネットワークを通じて、また、非国家主体が2030年までに脆弱なコミュニティの40億人の人々の強靭性を強化するために「強靭性のための競争(Race to Resilience)キャンペーン」へ参加すること、そして、「国際的な気候行動に関するマラケシュ・パートナーシップ」の下で行われる適応のための活動に参加することを含めて、適応及び強靭性を強化するために協力するよう全ての国及び非国家主体に求める。我々G7メンバーは、自らの国家計画における適応の重要性を認識し、可能な限り早急に、可能であればCOP26までに、適応に関する情報を提出することにコミットする。我々はさらに、適応政策、計画、戦略及び行動の提供において、脆弱なグループ、コミュニティ及び生態系に配慮し、多様で包括的な、ジェンダーに配慮した、参加型の、そして、完全に透明性のあるアプローチへの約束を確認する。気候・環境大臣として、我々は、適応行動のための資金貢献の規模の拡大を継続することを含む、適応に関する行動を拡大し、より多くの人々を気候の影響から守るための外務・開発大臣トラックの作業を認識し、全面的に支持する。

グリーン・リカバリーを支援するための資金動員と整合化

22. 我々G7は、官民、二国間、多国間の幅広い資金源から、意味のある緩和行動と実施面での透明性という文脈において、2025年にかけて年間1,000億米ドルを共同で動員するという先進国合同の目標へのコミットメントを再確認する。我々は、G7のいくつかの国が気候資金を増加するために既に行ったコミットメントを歓迎し、グラスゴーでのCOP26に向けて他の国が新たにコミットメントを行うことを期待する。我々は、パリ協定を実施する上で効果的な手段として緑の気候基金(GCF)をより一層強化するというG7のコミットメントを強調する。さらに、我々は、資金を動員するためには世界的な努力が必要であるというパリ協定の認識を強調する。この文脈において、我々は、新興国を含む全ての潜在的な公的資金の提供者が、既存の提供者とともに、途上国における気候変動対策を支援することを奨励する。我々は、革新的な資金調達手段、二国間・多国間金融機関、ブレンデッド・ファイナンス、政策、リスク・プール、および環境整備がこの点において重要な役割を果たすとの認識に立って、2050年までに世界的なグリーン・リカバリーとネット・ゼロ排出を達成するには、民間部門を動員するための努力を緊急に拡大する必要性があることを強調する。

23. 我々は、パリ協定の第2条1cに反映されているように、また、持続可能な開発目標に沿って、温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靭である発展に向けた方針に資金の流れを適合させることが極めて重要であることを確認する。この目標に向けた努力の一環として、我々は、公的資金の流れをパリ協定の目標と適合させることにコミットし、全ての国、並びにMDBs、DFIs、多国間基金、公的銀行、輸出信用機関に対してもこうした努力に参加することを求める。我々は、気候変動対策を支援するための適切な環境を整備し、気候変動を経済及び金融の意思決定プロセスに組み込む上で、すべての政府の政策や行動のみならず、官民のステークホルダーが変革をもたらす役割を持つことを強調する。また、企業や投資家に対し、「Race to Zero」に参加し、彼らの事業をパリ協定の目標に整合させ、遅くとも2050年時点での科学的根拠に基づくネット・ゼロの目標を設定することを強く促す。

24. 我々は、カーボンマーケット及びカーボンプライシングが、費用効率の高い排出レベルの削減を促進し、イノベーションを推進し、ネット・ゼロへの転換を可能にする技術のブレークスルーを後押しするポテンシャルを有することを認識する。我々は、自主的な目的に用いられるものを含む、高い十全性のあるカーボンマーケットメカニズムの設計は、あらゆる形態の二重計上の回避を確実にする確固としたルールと計上に基づくべきであるとの、環境十全性と持続可能な開発の根本的な重要性を確認する。それらは、保守的な排出量及び排出削減量の推定と仮定の活用とともに、カーボン・リーケージのリスクを軽減し、社会及び生態系へのネガティブな影響を回避し、潜在的な再排出に対処するためのセーフガードを備える必要がある。さらに我々は、このようなメカニズムは民間資金の動員を可能にし、地球温暖化を1.5°Cに抑えることへ向けた野心のギャップを埋めることに役立つことを留意する。

パリ協定が持つ可能性の開放

25. 我々は、上記の目的に沿って、COP26で一連の野心的な成果を達成するという約束を堅持する。我々は、強化された枠組みの透明性のための共通の表と様式の採択、協力的アプローチ(パリ協定第6条)やNDCの共通のタイムフレームの決定を含等むパリ協定ルールブックに関する未解決のマンデートを、透明性と説明責任を促進し、環境十全性を確保する方法で終了させることの重要性を強調する。パリ協定の3つの柱(緩和、適応、支援)におけるマンデートに対処し、我々の約束を実現するとともに、COP26に先立ち、また、その先に向けて、世界規模での実施を加速するための国際協力を強化する。我々は、気候変動の影響に最も脆弱な人々への支援に引き続き重点を置き、途上国のパートナーのグリーンで、持続可能で、強靭かつ包括的で、また、ジェンダーに配慮したCOVID-19からの回復に向けた支援を継続する。これには、二国間、多国間基金への拠出、NDCパートナーシップなどの他のイニシアティブを通じた、国家計画と目標(NDC、LTS、NAP、適応コミュニケーションを含む)の準備と実施の支援が含まれる。我々は、OECDが「低炭素経済への移行における気候及び経済的強靭性に関する水平プロジェクト」の一環として、「気候に関する行動のための国際プログラム」を創設したことを歓迎し、その気候変動対策への貢献を期待する。

ネット・ゼロ経済への移行支援

26. 我々は、ネット・ゼロへの移行は、移行期にあるセクターのスキルや知識を活用し、グリーン雇用のための新たな労働市場を開拓するとともに、クリーンで持続可能な産業や技術のパイオニアに投資することで、誰も取り残さない方法で、ネット・ゼロを実現するために必要な熟練した労働力を開発することにかかっていると認識する。我々は、ジェンダーに配慮した方法で、ネット・ゼロ経済に必要なスキルの長期計画に沿って、よりグリーンな環境を取り戻すための適切なスキルとトレーニングを確保することで、労働者が直面する課題に取り組む。これは、グリーン雇用や多様な労働力の創出を支援し、高炭素部門の労働者が、より持続可能な慣行やグリーン技術を実施するためのスキルや知識を身につけることを支援する。我々は、2030年までに、クリーンエネルギー分野における女性の給与、リーダーシップ、機会の均等化を目指す「Equalby30」キャンペーンの公約を再確認する。我々は、強化された一連のコミットメントを採択することにより、「Equalby30」キャンペーンの下での取組を含め、エネルギー分野におけるジェンダー平等と多様性を推進するための努力を深めることに合意する。これは、多様性とジェンダー平等を世界のエネルギー部門の復興努力の中心に据えるという我々のコミットメントを支え、より包括的で公平なエネルギーの未来を構築するのに役立つ。我々は、クリーンエネルギーへの移行の一環として、全ての労働者に対する具体的な支援の必要性を認識する。

27. 我々は、ネット・ゼロの世界経済への移行を実現、加速させるためには、大規模な国際的協力が必要であると認識する。これを可能にする制度的な仕組みを構築し、必要に応じて適切に強化し、既存のイニシアティブとの相乗効果を活用して、経済全体でのネット・ゼロ・エミッションの達成を確実にする必要がある。我々は、パリ協定の目標を達成するために各セクターで必要とされる移行のペース、主要な排出セクターを脱炭素化するための制度やセクターごとのフォーラムの国際的な状況を見直し、COP26及びその先の主要セクターでの協力関係を強化することを目的として、会合を開催する。

28. 我々は、ネット・ゼロ経済への移行を推進する上で、都市、州、地域等地方自治体と緊密に連携することの重要性及びその行動を支援する中央政府の重要な役割を認識する。我々は、革新的で持続可能なエネルギーソリューションを通じて、ネット・ゼロ排出の未来を先導する都市の役割を強調する。地方自治体及び企業、労働者、コミュニティ、市民社会を含む地方公共団体は、高排出セクターに対する野心的な行動の中心的存在であり、市民やコミュニティのための公平で包括的な開発を確保しつつ、排出量を抑制するソリューションを実施する必要がある。我々は、市民、企業、地域が脱炭素社会を実現できるよう、地域の戦略や計画の策定支援、低炭素都市インフラのモデルプロジェクト実施のための投資促進、行動変容の促進、地域の活動や成果の透明性を高めるための情報システムを活用、具体的な活動のグッドプラクティスの普及を含む、様々な施策を実施していく。

ネットゼロ・エネルギー

29. 我々は、「第一の燃料」としての省エネルギーが、排出削減、エネルギー安全保障、経済成長、持続可能な開発、エネルギー貧困の緩和、及び雇用創出に大きく貢献することを認識する。したがって、我々は、世界的な省エネルギーの改善率の低下に懸念を持って留意し、建物、産業、運輸における改善を実現するための我々の努力を強化することにコミットする。我々は、この政策領域におけるベスト・プラクティスを学ぶために、より強力な国際交流の必要性を引き続き強調する。我々は、新しいビジネスモデルのための政策フレームワークを開発し、全てのセクターにおける省エネルギー対策への必要な投資を確保するために、国際連携を強化・調整することの重要性を強調する。したがって、我々は、省エネルギーに関するグローバルな協力のための主要な国際フォーラムとして、省エネルギーハブが設立されたことを歓迎する。我々は、SEAD(Super-Efficient Equipment and Appliance Deployment) イニシアティブを歓迎する。さらに我々は、2030年までに世界で販売される4つの主要なエネルギー使用製品(照明、空調、冷蔵、モーターシステム)の効率を2倍にするというSEADイニシアティブによる目標を承認し、我々が自由に使えるあらゆる政策的手段を用いてその目的に貢献する。

30. 我々は、再生可能エネルギーの基本的な役割を確認する。我々は、世界中で再生可能エネルギー技術が急速に成長し、コストが低下し、価値が高まっていることを歓迎し、システムへのさらなる統合の必要性を強調するとともに、再生可能エネルギーが経済成長、雇用、低廉なエネルギーへのアクセス向上の主要な推進力であることを認識する。我々は、再生可能エネルギーの開発・導入における大きな進展は、技術開発、革新的な市場設計を含む支援的な規制・政策環境、そして産業界主導のコスト削減という好循環によってもたらされたことを認識する。我々は、再生可能エネルギーの開発・普及をグローバルに、特に途上国を中心に支援するとともに、一歩進んだ対応が緊急に求められている再生可能な冷暖房の開発・普及を加速するというコミットメントを確認する。我々は、革新的な再生可能エネルギーソリューションを通じて、資源に関する自己決定権とコミュニティとしての所有権を育みつつ、島嶼部や遠隔地、農村部におけるクリーンエネルギーへの移行を促進することの重要性を認識する。

31. 我々は、ネット・ゼロへの道筋に向けた世界経済の変革を支援するための技術として、エネルギー貯蔵の役割を認識する。我々は、規制枠組や市場構造を含む、エネルギー貯蔵市場の導入を支援する政策や手段を通じて、エネルギー貯蔵技術のコスト削減と性能向上のために民間部門を支援することにより、エネルギー貯蔵技術のイノベーションを推進し、その商業化と展開を加速することにコミットする。

32. 我々は、石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因であることを認識し、2030年のNDC及びネット・ゼロ・コミットメントに沿って、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電設備からの移行を更に加速させる技術や政策の急速な拡大と、2030年代の電力システムの最大限の脱炭素化に今コミットする。その際には、我々は、エネルギー安全保障と強靱性の重要性を再認識し、影響を受けた労働者、地域、コミュニティへの支援が重要であることを強調する。我々は、途上国におけるクリーンエネルギーへの移行がもたらす新たな経済的機会と持続的で質の高い雇用創出を支援するエネルギー移行協議会の活動を感謝を込めて歓迎する。我々は、G7として模範を示すことや、協力的なイニシアティブや機関と協力することを含め、ネット・ゼロ・パワーに向けた世界的な進展を加速するためのさらなる方法を模索することにコミットする。我々は、一部のG7メンバーが脱石炭同盟に参加している点に留意する。我々は、COP26までに、G7メンバーによる更なる共同行動のための基礎を築くべく参集する。

33. パリ協定第2条1.cに基づき、我々は、国際的な公的資金を、2050年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにし、2020年代に排出量を大幅に削減するという世界的な達成目標に向け調整することにコミットする。我々は、途上国におけるクリーンエネルギーへの移行を支援するため、官民の国際的な資本の流れを、パリ協定に則った投資に向け、高炭素な発電から離れていくことを促進することにコミットする。このため、我々は、パリ協定の長期的な目標と利用可能な最良の科学に沿った、気候の中立性に向けた野心的で明確に定義された道筋と一致する形で、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、それぞれの国の裁量による限られた状況以外では、炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する政府の新たな国際的な直接支援をフェーズアウトしていく。上記のアプローチ全体と一致する形で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への世界的な投資を継続することが気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けることとは相容れないことを認識した上で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への国際的な投資をすぐ止めなければならない点を強調し、我々は、政府開発援助、輸出金融、投資、金融・貿易促進支援を含め、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の全面的な終了に向かっていく具体的なステップを2021年中にとることをコミットする。我々は、これらの目標に向けて、我々の公的な貿易及び輸出金融の支援方針をレビューすることにコミットする。さらに我々は、他の主要経済国がこれらのコミットメントを採用することを求める。我々は、石炭からの移行を加速し、新興国における再生可能エネルギーの導入を支援するものを含む、新しいセクター別の基金を立ち上げるという、最近の気候投資基金理事会の決定を確認する。

34. 我々は、パリ協定に反映されているように、国が定めた開発の優先順位に従って、労働力の公正な移行と働きがいのある人間らしい仕事及び質の高い雇用の創出という必須事項を考慮に入れる必要があることを再確認する。持続可能な開発目標を想起しつつ、我々は、全てのコミュニティにとって、エネルギーをよりアクセスしやすく、低廉で、クリーンなものにすると共に、低炭素経済における働きがいのある人間らしい仕事の創出に取り組む、人々を中心とした移行にコミットする。我々は、クリーンエネルギーへの移行が勢いを増す中、産業やコミュニティ全体で労働者を再教育し、未来の産業を発展させることを支援する。我々は、人々やコミュニティのエネルギー貧困を緩和し、特に社会から疎外された人々の雇用への障壁を取り除くことで、全ての人々にとって実体的かつ公平な経済成長と繁栄をもたらすなど、人々を中心とした移行に内在する大きな経済的機会を歓迎する。

35. 我々は、非効率な化石燃料補助金が、無駄な消費を助長し、エネルギー安全保障を低下させ、クリーンなエネルギー源への投資を妨げ、気候変動の脅威に対処するための努力を損なうことを認識する。我々は、2025年までに非効率な化石燃料補助金を撤廃するというコミットメントを再確認し、全ての国がこのコミットメントを採用することを奨励する。我々は、このコミットメントを達成するための国際的な行動を奨励し、透明性の向上を求める声を支持する。

36. 我々は、地球温暖化を抑制するためには、エネルギー分野、廃棄物分野、農業分野からのメタン(化石起源及び生物起源)や、ブラックカーボンなどの他の強力な温暖化物質の排出及び漏出を削減するための野心的かつ緊急な行動が重要であると認識する。そのためには、これらの排出量をより正確に把握し、定量化するための測定と報告の改善が必要である。

37. 我々は、エネルギーシステムを変革する中で、エネルギー安全保障を維持することの重要性と、開放的で、柔軟性があり、透明性が高く、競争力があり、安定的で、持続可能で、信頼性が高く、強靱なエネルギー市場の必要性を認識する。我々は、パリ協定とネット・ゼロ目標に沿ったエネルギー源によってエネルギー需要を満たす必要性を認識しつつ、エネルギー移行の過程においてエネルギー需給のバランスを保つための投資の必要性を再確認する。我々は、革新的で、クリーンで、安全で、持続可能なエネルギー技術の安全性を強化する戦略と行動を策定することにコミットする。これには、サイバーセキュリティの脅威に直面した場合の強靱性、変動性再生可能エネルギーのシステム統合、エネルギー貯蔵、柔軟性のある発電所、水素、また、需要側の管理、スマートグリッド、持続可能なバイオ燃料や水素の貯蔵を含む関連インフラが含まれる。我々は、市場統合、柔軟性、脱炭素化の促進、供給の安定性とシステムの安全性の確保において、電力の相互接続が重要な役割を果たすことを認識する。我々は、クリーンエネルギーへの移行期に時限的に天然ガスが必要になる可能性があることを認識しており、2030年代の電力セクターの最大限の脱炭素化に向けて、関連する排出量の削減に取り組む。また、重要鉱物や重要な再生可能エネルギー関連部品を含む、安全で、安心で、持続可能なクリーンエネルギーのサプライチェーンを確保することの重要性にも留意する。

38. 我々は、低廉で、信頼性が高く、持続可能でクリーンな近代的エネルギーへのアクセスが、持続可能な開発目標を実現するための重要な要素であることを確認する。我々は、エネルギーアクセスを向上させ、世界中でエネルギー貧困を根絶するための進展を歓迎する一方で、エネルギーへのアクセスに関する持続可能な開発目標の達成に向けて、世界は依然として軌道に乗っていないことに留意する。我々は、持続可能なエネルギーアクセスを達成する上で、ジェンダー平等が重要な役割を果たすことに留意し、G7ジェンダー平等アドバイザリー評議会の活動との相乗効果を歓迎する。我々は、脆弱で周縁化された人々に与えるエネルギー貧困に関する不均衡な影響に対処するための、グローバルで包括的なクリーンエネルギーへの移行を、途上国と成熟した経済圏の両方において推進するに際して、普遍的で公平かつ持続可能なアクセスを達成することの重要性を強調する。我々は、SDG7の進捗状況をハイレベルエネルギー対話の中で取り上げるという国連のコミットメントを歓迎する。

39. 原子力の使用を選択した国々は、エネルギーミックスにおける原子力の役割を再確認した。それらの国は、低廉な低炭素エネルギーを提供し、ベースロードエネルギー源としてエネルギー安定供給に貢献するという原子力の潜在性を認識する。

ネットゼロ・モビリティ

40. 我々は、持続可能なモビリティを促進し、2050年までのネット・ゼロ・エミッションの達成に向けて、運輸部門からのGHG排出量を削減することの緊急の必要性について強調する。我々は、このためには、パリ協定の目標及び我々のそれぞれの2030年のNDCとネット・ゼロ・コミットメントに沿って、2020年代を通じて、またそれ以降も道路交通セクターの世界的な脱炭素化のペースを劇的に増加させる必要があることを認識する。これに関連して、また、この取組の一環として、我々は、ゼロエミッションビークル移行協議会を歓迎・支援し、途上国の移行支援方法の検討を含め、旅客及び貨物用のゼロエミッションビークルの展開を加速するために、他のグローバルパートナーと協力するというコミットメントを確認する。また、一部の国が2040年又はそれ以前に乗用車の販売をゼロエミッションにするという目標を掲げていることを認識する。さらに、自動車のライフサイクル全体の脱炭素化を推進する必要がある。我々は、産業基盤の移行を支援し、急速に成長する持続可能なモビリティの世界市場を支えるために必要な技術の研究、さらなる開発、スケールアップのための意欲的な投資を行うことにコミットする。我々は、都市部と農村部において、公共交通、シェアード・モビリティ、サイクリング、ウォーキングなど、より持続可能な交通手段の提供を促進するための努力を強化し、鉄道や水上のインフラへの投資によりインターモーダルな輸送を支援する.

41. 我々はさらに、国際航空部門と海事部門の両部門をパリ協定の緩和目標と一致する排出量削減の道筋に乗せるため、排出量を削減する効果的な取組の緊急の必要性について認識する。我々は、国際海事機関(IMO)における野心的な中長期的措置の策定・採択を支援し、パリ協定の気温目標に貢献することを目的とした初期の段階にあるIMO戦略の改定に向けて、船舶からのGHG排出量削減に関する初期戦略の野心度を強化することについて、世界的な合意を形成することにコミットする。また、国際民間航空機関においても、航空分野の脱炭素化のための我々のビジョンに沿った野心的な長期グローバル目標の策定と採択を支援する。

ネットゼロ・イノベーション

42. 我々は、クリーンエネルギーのイノベーションが、持続可能で包括的な成長の原動力となり、雇用を創出し、強靱な経済復興を可能にするものであると認識する。また、2050年又はそれ以前にネット・ゼロの目標を達成するためには、この10年間でイノベーションを加速する必要があると認識する。これには、環境や人類への悪影響を確実に回避しつつ、ゼロ及びネガティブカーボン技術の実証と早期展開を拡大することが含まれる。これを可能にするのは、ESG(環境・社会・ガバナンス)を含むメカニズムと明確なシグナルであり、民間セクターの投資を促し、革新的な技術を迅速に市場に投入することである。産業の脱炭素化を加速するため、我々は、既存の主要なイニシアティブの活動を補完・支援し、野心を増幅させるとともに、状況に重大なギャップがある場合にはそれを埋めるため、G7産業脱炭素化アジェンダを立ち上げることをコミットする。産業界の脱炭素化のペースを加速させるため、その状況における重大なギャップを、それがどこに存在しても、埋めながら、我々は既存の重要なイニシアティブや野心を増大させる活動を履行しサポートするG7産業脱炭素化アジェンダの立ち上げにコミットする。

43. G7において、クリーンエネルギー・イノベーションへの投資を、ネット・ゼロの野心に沿ったレベルまで増やすことにコミットする。我々は、クリーンエネルギー・イノベーションの野心の向上とクリーンエネルギー技術革新のための具体的な行動を継続的に推進する国際協力を強化するためのグローバル・プラットフォームとして、ミッション・イノベーションの第2フェーズの開始を支持する。我々は、経験を共有し、野心を高め、革新的な政策・規制・市場措置を含むクリーンエネルギー導入のための協力行動を実施するためのグローバルなプラットフォームとして、クリーンエネルギー閣僚会議の第3フェーズの開始を支持する。我々は、ミッション・イノベーションとクリーンエネルギー大臣会合との間で、イノベーションから、省エネルギーや再生可能エネルギー源を含むクリーンで持続可能なエネルギー技術の展開に至るまでの努力をよりよく調整するための緊密な連携を奨励する。我々は、G7メンバー全体のクリーンエネルギー及びネット・ゼロ・テクノロジーのイノベーションとスケールアップを加速し、途上国におけるグリーン・トランジションを支援することを牽引するような適切なメカニズムを構築する。我々はまた、クリーンエネルギー技術の展開を成功させるためには、熟練した、技術的に高度で多様な労働力へのさらなる投資が必要であることを認識する。

44. ネット・ゼロ産業を支えるイノベーションは、既存のセクターの移行を支援するだけでなく、新しい産業の誕生によって付加価値を生み出すことができる。我々は、COP26に向けて、グリーン産業製品の国際的に競争力のある市場を創出するために、基準や公共調達に関する行動を調整する既存のイニシアティブを基に、協力して取り組んでいく。また、並行して、省エネルギーの向上、循環経済及び資源効率性の原則の策定、電化、産業用熱の包括的な利用、産業における廃棄物の削減、燃料転換、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)などを通じて、主要な産業プロセスからの排出量を削減していく。我々は、2050年までに経済全体の排出量を正味ゼロにするためには、鉄鋼、セメント、化学、石油化学などの削減困難な産業部門における脱炭素化に向けた早期の取組が重要であると認識する。これらの削減困難な産業部門がこれを達成するために、我々は、水素の利用、電化、持続可能なバイオマス、CCUS、合成燃料(アンモニアや水素から作られた燃料を含む)などの産業用脱炭素技術のコストを下げるために、より大きなレベルのイノベーション資金を目標とすることにコミットする。産業のネット・ゼロを達成するためには、世界的な努力が必要であることを認識し、我々は、金融・技術協力や多国間フォーラムを通じて、低・中所得国を支援する。我々は、産業の脱炭素化を加速するために協力し、新たな産業用脱炭素イノベーションミッションの構築とクリーンエネルギー大臣会合の産業用深層脱炭素化イニシアティブの設置を歓迎するとともに、産業の移行に関するリーダーシップグループの継続的な活動を支援する。

45. 我々は、ネット・ゼロへの道筋において、再生可能エネルギー由来のもの及び低炭素のものにおける水素の重要性を認識する。我々は、燃料電池のグローバルな展開への支援を含め、我々の経済全体において、低炭素なもの及び再生可能エネルギー由来のものにおける商業規模での水素を推進するための努力を強化する。これにより、将来の国際的な水素市場の発展を実現し、エネルギー部門の現在及び将来の労働者に新たな雇用を創出することができる。

46. 自然の炭素吸収源の保護・拡大に焦点を残しておかなければならない一方で、直接空気回収(DAC)などのネガティブ・エミッション技術も、温室効果ガス排出量のネット・ゼロを達成する上で重要な役割を果たすことを認識する。ネガティブ・エミッションは、完全に脱炭素化することが難しい部門において残留排出量を相殺するために必要となる。また、ネット・ゼロ・エコノミーという目標を達成するためには、CCUSのような技術的ソリューションや、必要に応じてカーボンリサイクリングがいくつかの国にとっては重要になる。

環境

自然との関係性の再構築

47. 健全な自然環境は、世界的に、人々の健康、福祉、繁栄に不可欠であり、持続可能な開発を支えている。生物多様性の保護、保全、持続可能な利用、回復に関する既存の世界的な合意にもかかわらず、生物多様性と生態系の機能における世界的な負の傾向は、継続又は悪化すると予測されている。したがって、我々は、G7メッス生物多様性憲章及びリーダーによる自然への誓約に適宜基づきつつ、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させるという我々の強い決意を確認する。

48. 我々は、2019年のIPBES「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」及び2021年のUNEP報告書「自然との共存」について、深い懸念を持って想起する。我々は、いずれも人間活動の結果である生物多様性損失の5つの直接的な要因、すなわち土地・海の利用の変化、生物の直接搾取、気候変動、汚染、侵略的外来種に対処するため、緊急に行動することにコミットする。我々はまた、持続不可能な消費・生産の方法やパターンに起因するものを含め、資源の乱開発や違法な搾取、さらには特定された間接的な要因にも対処していく。我々は、政府、企業、農家、学術機関や科学者、非政府組織(NGO)、市民、先住民及び地域社会等、全てのパートナーとステークホルダーによる協調的かつ協力的な行動が必要であることを強調する。また、これらのグループをコ・デザイン、意思決定、実施に参加させることの重要性を強調する。

49. 我々は、CBDCOP15、UNFCCC COP26、ラムサール条約 COP14、UNCCD COP15、国連環境会議(UNEA)5、国連食料システムサミット、国連海洋会議等において、また国連生態系回復の10年及び「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年を支援するために、野心を高め、行動を加速・強化することにコミットする。我々はまた、地域的な海に関する条約を含め、関連する多国間環境協定の国内及び制度レベルにおいて、必要に応じて、既にある相乗効果を高め、縦割りを解消し、連携を支援していく。

50. 変革のための行動が緊急に必要であることを強調し、生態系を保護・保全・回復し、生物多様性の損失を阻止・回復し、生物多様性の保全と持続可能な利用を確保し、気候変動に対するレジリエンスを向上させ、我々の生活・福利・経済が依存する健全な生態系を維持するために、我々はCBD COP15で締約国が採択する、野心的かつ効果的なポスト2020生物多様性枠組の合意と実施の成功に向けて尽力する。我々は、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させ、気候変動に対処するために、2030年までに世界の陸地の少なくとも30%と海洋の少なくとも30%を保全・保護すること(30by30)を含む、野心的かつ効果的な生物多様性の世界的なターゲットに向けて尽力することにコミットする。その取組は、効果的かつ公平に管理され、生態学的に代表的でよく連結された保護地域とその他の効果的な地域をベースとする保全手段(OECMs)によるシステムを通じたものを含み、先住民及び地域社会がこのターゲットの実施における完全なパートナーであることを認識する。我々は保護地域とOECMsの効果的かつ衡平な管理を確保するよう努め、世界の生物多様性、生態系サービス、気候保護に最大の便益をもたらす地域に焦点を当てて、生態系の連結性を改善するよう努める。我々は、これらのターゲットを達成するために、実施を強化し、我々の行動の透明性を高める強力な説明責任の枠組みの重要性を強調する。そして、強固な実施、モニタリング、レビューの枠組みの開発を積極的に支援していく。我々は、陸域、淡水、海洋及び沿岸の生態系を保全、保護、回復するために、科学的根拠に基づく強固な国内実施計画、戦略、政策を強化又は導入し、これらの世界的な目標やターゲットを成功裏に実現するための役割を果たしていく。我々は、地域海プログラム、地域海条約、地域漁業管理機関(RFMO)を含め、管轄する国際機関や地域機関と協力する。我々は、国の状況やアプローチに応じて、2030年までに、自国の陸水域と内水面を含む土地と沿岸・海域の少なくとも30%を保全・保護することで、30by30に貢献する。

自然の主流化

51. 世界経済フォーラムの「自然とビジネスの未来」レポートによると、2019年の世界のGDPの半分以上、約44兆ドルが自然に依存する産業から生み出された。Waldronetalによる報告書「地球の30%を自然のために保護する:コスト、利益、経済的示唆」によると、2つのバイオームで30%の保護を達成するだけで、2050年までに年間1,700億ドルから5,300億ドルの経済的総利益が得られる可能性がある。この報告書ではまた、地球上の陸と海の30%を適切に保護するための世界的な金融コストは、年間1,030億ドルから1,775億ドルと推定されている。そのため、陸と海を保護・保全することで得られる経済的利益は、それを守るための経済的コストをはるかに上回ることは明らかである。

52. 我々は、生物多様性の経済学に関するダスグプタレビューの貢献を歓迎する。これはとりわけ「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)をベースにしている。生物多様性の損失を回復させ、我々の繁栄を守り拡大させるために、経済学の考え方やアプローチを根本的に変える必要があるという本レビューの結論は、我々の活動の参考になる。我々は、経済及び金融の意思決定において、自然から得られる財やサービス、自然に帰属する本質的な価値を考慮するための取組みを支援するために、必要に応じてダスグプタレビューやその他の報告書の知見に基づいて協力していく。我々は、生態系のプロセスやその相互関係、経済活動による生態系への影響を深い理解を確実に経済及び財政の意思決定の一部として組み込むために、必要な、緊急かつ変革的な行動をとることにコミットする。また、環境リスクを適切に管理し、関連する取引コストを削減することを確実に行うために、標準化された自然資本会計手法の開発において、我々は企業やその他のステークホルダーと協力して、標準化された自然資本会計の手法を開発する。我々は、環境・経済統合勘定(SEEA)生態系勘定システムの更新を継続するための国連統計委員会による作業を歓迎する。

53. 我々は、全ての部門と政策において自然を主流化することにコミットする。我々は、気候関連リスクと自然関連リスクの両方を組織のリスク管理アーキテクチャに統合すること、及び自然資本への投資の緊急性と必要性を認識する。このようにして自然にとって望ましい事業や投資に向かわせることにより、金融がより大きな役割を果たすことが可能となる。我々は、自然関連の財務情報開示に関する作業の重要性を認識し、自然関連財務情報開示タスクフォースの設立とその目的に関心を持って留意する。

54. 我々は、ダスグプタレビューの知見に基づいて政策提言を行っているOECDの分析に留意する。G7は、金融及び経済の意思決定において自然を主流化するための行動を特定するために、これらの提言をレビューすることにコミットする。特に我々は、OECDの分析に留意し、一部の補助金が環境や人々の生活に有害な影響を与えていることを認識する。そのため、我々は、自然への有害な影響が認められている関連政策の見直しにより模範を示すことをコミットし、自然に良い結果をもたらすよう、必要に応じて行動を起こす。

ワンヘルス・アプローチによる人獣共通感染症と薬剤耐性(AMR)の予防と対策

55. COVID-19パンデミックは、人間、植物、動物及び環境の健康が相互に依存していることを思い出させるものであり、したがって我々は、ワンヘルス・アプローチの強化の重要性を強調する。我々は、「IPBES生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書」がこの議論に貢献することを歓迎する。また我々は、生息地の喪失、人間による自然領域への侵入、農地の拡大等の土地利用の変化、非持続可能な食糧生産システム、森林減少、気候変動、合法・非合法の野生生物取引、非持続可能な国際貿易、非持続可能な消費等の人間活動の結果として、人間と野生生物や家畜との接触が増え、人獣共通感染症の発生と拡大のリスクが高まっていることを懸念とともに認識する。COVID-19パンデミックは、既存及び新規の人獣共通感染症の脅威を予防し、対抗するための緊密な国際協力の重要性を強化した。我々は、人間、野生生物、家畜、環境の間の相互作用、これらの集団に存在する病原体、これらの相互作用から生じるリスク、そして人獣共通感染症の制御と予防について、分野横断的な研究や科学的分析、証拠をさらに求める。我々は、全ての政府に対し、透明性を確保し、人獣共通感染症に関するデータや情報を迅速に共有することを求める。

56. G7として我々は、特に開発途上国と移行経済国との間で、タイムリーな関連情報の共有、ベストプラクティスの実践、能力の構築、国内外での技術の向上を通じて、監視システムのレジリエンス向上に向けた世界的な協力の強化と取組を継続する。

57. 我々は、ワン・ヘルス作業部会の活動を支持し、英国議長の下で設立された国際人獣共通感染症専門家コミュニティ(IZCE)に自主的な形で参加する。IZCEは、人獣共通感染症と、その原因、予防、モニタリングに関して専門知識と利害関係を有する各国の窓口担当者を一同に集める。ベストプラクティスや方法論を共有することで、コミュニティ全体の知識が向上し、世界レベルでのリスク評価、リスク管理、早期警報能力の向上に貢献することができる。我々は、Tripartite Plus(WHO, FAO, OIE 及び UNEP)、ワン・ヘルス・ハイレベル専門家パネルなどのイニシアティブとの補完性を確保し、重複を避ける必要があることを認識する。IZCEは、例えばG7首席獣医官グループのような他の関連するG7作業部会と連携していく。

58. 我々は、データの理解を深め、可視性、アクセス性、相互運用性を高めることが、ワン・ヘルスに対する脅威や問題に対するグローバルな監視と対応を改善するための重要な第一歩であると認識する。我々は、気候、環境、健康のステークホルダーに対し、この重要な作業において、Tripartite Plus (WHO, FAO, OIE及びUNEP)を支援するためにどのような協力ができるかを検討することを奨励する。

59. 我々は、抗微生物剤の環境中への放出が、薬剤耐性(AMR)を引き起こす可能性があり、人間や動物の健康、環境衛生に影響を与えることを認識している。我々はまた、重金属や殺生物剤が、AMRに加え、人間や動物の健康、環境衛生に影響を与える可能性があることにも留意する。我々は、AMRに取り組む上でのワンヘルス・アプローチの重要性を強調し、全ての政府に対し、抗微生物剤の健全な管理及び不適切使用の削減措置を速やかに実施することを求める。この観点から、我々は土壌微生物がAMRに対し果たしうる潜在的な役割に注目する。我々は、Tripartiteの組織と協力し、UNEA3で義務付けられている環境中に発生・拡散するAMRに係る汚染、メカニズム、原因及び影響に関する根拠を補強することをUNEPに要請する。我々は、この問題に対する長期的かつ持続可能な解決策の策定及び実施のため、政府及び政府から独立した医薬品規制当局、農業、学界、産業界、AMRに関するTripartite、UNEPを含む関係者との密接な連携にコミットする。我々は、特に医薬品製造及び医療施設の排水、農業及び水産養殖等から環境中に放出される抗微生物剤の安全な濃度に関する国際基準が現在存在しないことに懸念を持って注目する。我々はまた、この点に関するAMR産業連盟の活動を認識している。我々は、環境中のAMRに関する知見を蓄積することにコミットする。我々は、必要に応じて、このような基準を策定し、合意するために、医療、食品、農業を所管する政府関係者及び政府から独立した医薬品規制当局と連携していく。

自然資源の持続可能で合法的な利用への移行

資源効率性

60. 国際資源パネルの「世界資源アウトルック2019」の調査結果を想起しつつ、我々は、天然資源の継続的な劣化と損失が、持続可能な開発、保全と回復、食料安全保障、気候変動との戦いに対する我々の共有のコミットメントを果たす能力を脅かしていることを認識する。我々は、資源効率を向上させ、製品の地球環境フットプリントを削減し、地球規模でより持続可能な消費と生産の方法とパターンに移行することの重要性を強調する。我々は、自然環境への圧力と悪影響を軽減し、資源使用量を削減し、ライフサイクル手法を通じて素材の価値を最大化し、生物多様性の損失を抑制し、気候変動の緩和と適応のための行動を支援するために、ボローニャ・ロードマップに沿って、資源効率性を高め、より循環型の経済に移行するための行動を進めていくための我々のコミットメントを再確認し、そうすることで、あらゆる発生源からの汚染を削減することを決意する。我々は、資源効率性のためのG7アライアンスに、ボローニャ・ロードマップの全ての要素に関する技術的な作業を継続することを求め、次のG7議長国にその実施状況を把握するよう要請する。

森林破壊

61. 我々は、森林減少・劣化、生態系の転換が、気候、生物多様性、食料安全保障、生活に対する世界的な脅威であり、農業、鉱業、伐採、インフラの事業拡大によって引き起こされることを認識する。農地の拡大は、世界の森林減少の約80%を引き起こす要因である。その拡大のかなりの割合が、特に国際的に取引されるものを含む農作物の生産と関連している。我々は、国内の法律に従い、違法な土地転換や他の自然へ負の影響から派生する生産を含め、農業生産を森林減少・劣化及び自然へのその他の負の影響から切り離す、持続可能なサプライチェーンへの支援を増大させる。また、森林やその他の生態系の保全、持続可能な管理、回復、保護にコミットする。我々は、 UNFCCC COP26 議長国である英国が主催するFACT(Forest, Agriculture and Commodity Trade)対話における消費国と生産国の対話への参加や、国際熱帯木材機関の活動を通じたものを含め、開発と貿易を促進しながらこれを行う。我々は、森林減少・劣化とは無縁の商品の消費にインセンティブを与えるために、民間部門や生産国、非政府組織(NGO)、及び先住民及び地域社会等のパートナーと協力する。そのために、我々は、成功したグリーン・リカバリーを達成するため、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティを強化し、必要に応じて、環境的、社会的、経済的に持続可能でレジリエントな貿易を実現するデューデリジェンス要件の導入を含みうる規制枠組や政策を策定する。我々は、G7貿易大臣による、持続可能なサプライチェーンの促進に関する議論を期待する。

62. 我々は、天然林の損失に終止符を打ち、ボン・チャレンジに基づき2030年までに3億5千万ヘクタールの森林を回復させるという、森林に関するニューヨーク宣言への我々のコミットメントを再確認する。我々は、意思決定のパートナーとしての先住民及び地域社会を一方でまたエンパワーしつつ、森林ガバナンス、透明性、法の支配を強化するための施策を支援することをコミットする。我々はまた、持続可能な生産を拡大するための取組、森林減少を防ぎ、手つかずの森林を保護し、劣化した森林や土地を回復させるためのインセンティブを高めるための取組を含めた持続可能なファイナンスを促進し、森林の損失と劣化の要因に対処するための措置を支持する。我々は、世界、地域、国内における森林減少のモニタリングを強化する必要性を認識する。

自然に対する不正な脅威

63. 我々は、野生生物の違法取引(IWT)、木材及び木材製品、有害廃棄物やその他の廃棄物、貴金属・宝石などの鉱物の違法取引、違法伐採、違法・無報告・無規制(IUU)漁業が、我々の自然環境と生活に壊滅的な影響を与えており、その世界全体の経済価値は年間1兆〜2兆ドルを超えると推定されていることを認識する。これらの活動は、生物多様性の損失、汚職、マネーロンダリング、治安の悪さ、その他の組織的な犯罪活動を助長し、また、気候変動とその影響に対処するための努力を損なう。我々は、これらの犯罪や有害な活動に対処するため、国際的及び越境的な協力を強化するための努力を継続することをコミットする。

64. 我々は、野生生物の違法取引が深刻な犯罪であり、他の形態の組織犯罪と結びついた多国籍組織犯罪ネットワークによって行われることが多いことを認識し、この犯罪の深刻な性質を反映し、認識する形で、この犯罪活動に対処するために緊急に、かつ総力を挙げて行動することをコミットする。我々は、2018年のロンドン宣言における我々のコミットメントを実現することを引き続き強固に約束し、必要に応じて野生生物関連犯罪の捜査、起訴、裁定における法執行機関及び司法の能力強化に取り組む。我々は、既存の国際的なメカニズムを最大限に活用し、法制度、国際協力、能力強化、刑事司法の対応、法執行機関の取組を強化することに向けた焦点を維持しつつ、特に、予防を含めた、このような犯罪に効果的に対処する国際的な刑事法的枠組みを強化するためのオプションを議論する提案に留意する。我々は、消費行動を告発し、これらの違法製品が取引・販売されている市場を閉鎖するために、対象が絞られ、証拠に基づく介入策を創出することにより、違法取引による野生生物製品の需要を削減する努力を強化することをコミットする。我々は、野生生物犯罪対策国際コンソーシアム(ICCWC)の「野生生物・森林犯罪分析ツールキット」を用いて、野生生物・森林犯罪に対する行政的、予防的、刑事司法の対応を見直す。我々は、野生生物の違法取引やその他の自然への不正な脅威に起因する不正な資金の流れによりよく対処するために、受益所有権の透明性の強化に関する財務大臣の議論を歓迎し、この分野における金融活動作業部会の作業とその推奨行動を歓迎する。

65. 我々は、IUU漁業が依然として健全な海洋に対する最も深刻な脅威の一つであり、魚類資源の枯渇、競争の歪曲、海洋生息環境の破壊を引き起こし、より良い海洋ガバナンスと効果的かつ持続的な漁業管理を推進する国際的な努力を脅かしていることを認識する。我々は、途上国への支援などを通じ、IUU漁業を抑止するための国際的な協調行動の重要性を認識する。過剰漁獲、過剰漁獲能力(Overcapacity)、IUU漁業につながる有害な漁業補助金を禁止するための喫緊の努力が必要である。我々は、効果的な規律を導入する有意義な合意を確実に妥結するために、進行中のWTO交渉を可能な限り迅速に終了させることにコミットする。

66. カナダのG7議長国としての成果を踏まえ、我々は、地域漁業管理機関(RFMO)や特定の魚種に関するその他の適切な機関が使用しているものも含め、トレーサビリティを向上させるための漁獲証明制度(CDS)などの強力な措置を効果的に実施・施行することにより、IUU漁業を終わらせることにコミットする。これは、国連食糧農業機関(FAO)の違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)やその他の関連するイニシアティブの効果的な実施を含めた強固な寄港国措置の策定と実施、ならびにIUU漁業への取り組みを支援する監督・取締・監視(MCS)活動の強化へのコミットメントである。我々は、特に漁業活動、転載、水揚げ、及び水産物貿易に関する効果的な規制と強化された監視を通じてIUU漁業に効果的に対処するメカニズムを含む二国間合意の重要性を強調する。我々はまた、国際協力がこの問題に取り組むための最も効果的な方法であることを認識しつつ、IUU漁業に取り組むための情報、インテリジェンス、ベストプラクティスや専門知識の共有を強化することにコミットする。

67. 自然に対する不正な脅威が、世界の最貧層のコミュニティから持続可能な生活収入を奪っていることを認識しつつ、我々は、これらの活動に代わるものとして、持続可能な生計へ官民の支援を動員することにコミットする。我々は、森林と自然生息地を保護し、持続可能な土地利用を支援する上で、先住民及び地域社会の重要性を認識する。さらに我々は、国内法及び国際文書で認められているように、先住民が所有、占有、又はその他の方法で使用又は取得した土地、領土、資源に対する先住民の権利の法的承認を確保することの重要性を認識する。また、我々は国内法及び国際文書で認められているように、地域(又はその他)のコミュニティに属する人々、女性、及び周縁化されたグループに属する人々が適切な資源及び正当な保有権を確保することの重要性を認識している。我々は、土地保有権を含むこれらの問題の解決策を共同で開発するために、これらのグループとの関わりが重要であることを強調する。

海洋の行動

68. 我々は、海洋(Seasandoceans)の健全性が、人々と地球の経済的、社会的、環境的な福祉にとって極めて重要であり、生物多様性の維持や、気候の調節などの生態系サービスを提供する上で重要な役割を担っていることを認識する。しかし、海洋は人間の行動によって大きな脅威にさらされている。乱獲、IUU漁業、海洋生息地や資源の乱開発、侵略的外来種の侵入、海洋ごみなどの汚染、海洋生息地に対するその他の人為的圧力、マイクロプラスチック、水中騒音などが、海洋生物多様性の損失の主な要因となっている。同時に、気候変動は、海面上昇、異常気象、海洋の温暖化と成層化、酸素濃度の低下、海洋資源の移動などを引き起こし、海洋生物多様性にも影響を与えている。また、二酸化炭素の吸収量の増加は、海洋酸性化の促進にもつながっている。我々は、海洋・雪氷圏における気候変動に関するIPCC報告書の最近のハイレベルな調査結果を、懸念を持って認識する。我々は、「健全な海洋及び強靱な沿岸部コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント」を含む、カナダ及び他のG7議長国の成果を踏まえ、「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」(2021-2030年)を支援すること、地球の海がクリーンで、健全で、強靭で、生産的で、安全で、予測可能で、アクセス可能で、刺激的で魅力的であることを含むその目標に向けて取り組むことをコミットする。我々は、全ての人のために持続可能な海洋を確保し、2030年アジェンダ、SDGs、CBD、パリ協定、UNEA決議の下、コミットメントを科学的根拠に基づいて実施することを支援するための強固で継続的な科学的観測と協力の価値を認識する。我々は、サンゴ礁、マングローブ、藻場、塩沼、極地及びその他の生態系の保全、保護、回復を強化するための努力を継続し、炭素を隔離すると同時に気候変動への強靭性を高めることができるブルーカーボン生態系の価値を認識する。我々は、沿岸地域と海洋生態系の持続可能な強靭性の重要性を認識し、海洋リスク及びレジリエンス行動アライアンス(Ocean Risk and Resilience Action Alliance) (ORRAA)への支援を強化する。

69. 我々は、海洋の保全と持続可能な利用を含む海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する国連海洋法条約(UNCLOS)を支持することにコミットする。我々は、海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に係る明確な義務を含み、海洋保護区(MPAs)含めた区域型管理ツール(ABMT)を設立するためのメカニズムを含み、新しい海洋目標案や海洋のための30by30目標の履行を支援する、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国連海洋法条約の下の新たな野心的で国際的な拘束力を有する文書に係る交渉を、可能であれば2021年末までに、迅速に完了させるよう努力する。

70. 海洋の保護・保存のために必要な行動の一例として、我々は南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)による、条約地域における海洋保護区の代表システムを開発するためのコミットメントを全面的に支持する。これは、利用可能な最良の科学的証拠、東南極、ウェッデル海、南極半島における海洋保護区設立の提案に基づいているべきであり、南極の海洋生物資源の 保存に関する条約(CCAMLR Convention)を十分に考慮して行われるべきである。

71. 海洋ごみが世界中の海を汚染し続け、誤食や絡まりなどにより海洋生物に悪影響を及ぼしていることに加え、生息地や人々の生活に被害を与えていること、食品の安全性や人間の健康への影響が懸念されていることを認識しつつ、「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」及び必要に応じて「海洋プラスチック憲章」といった例に適宜留意しつつ、国、地域、世界の取組を踏まえ、我々は海洋ごみの発生源に対処するための行動を加速させることを決意する。我々は、陸上にある資源の不適切な管理や、放棄、逸失、その他の方法で投棄された漁具(ゴースト・ギアとも呼ばれる)を含め、海洋生物に大きな直接的影響を与える海洋ごみの主な原因が数多くあることを認識する。これらの問題に対処するための効果的な政策、実践、管理措置が、全ての国によって、産業界やNGOを含む関連するステークホルダーとのパートナーシップの下、国内、地域、国際的に採られる必要がある。漁具の逸失とその回収について、我々は、国連食糧農業機関、国際海事機関、地域漁業管理機関、地域海条約を含む「ゴースト・ギア」に対処するための関連する国際的・地域的な枠組みを通じて取り組むことをコミットし、グローバル・ゴースト・ギア・イニシアティブ(GGGI)などの他のイニシアティブと協働又は支援する。我々は、漁具のマーキングや回収などの具体的な行動を通じて協力し、国連食糧農業機関の漁具のマーキングに関する自主的なガイドラインの実施などを通じて、適宜、ゴースト・ギアに対処するための既存の取組を支援及び拡大していく。我々は、OECDの報告書「ゴースト・ギア対策に関するG7の行動に向けて(Towards G7 Action to Combat Ghost Fishing Gear)」の議論への貢献に関心を持って留意し、その提言を慎重に検討する。

72. ライフサイクルアプローチを検討するなど、海洋プラスチックごみとマイクロプラスチックに取り組むために必要な世界的行動の規模、緊急性、越境性を認識しつつ、我々はUNEA決議3/7により設立され、UNEA決議4/6によりUNEA5.2に向けて延長された「海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチックに関する専門家会合(AHEG)」の活動を歓迎し、既存の手段の強化、潜在的な新たな国際的な手段、多様なステークホルダーの関与を含む提案されたオプションについて、その機会に前進させることを目指し、特定されたオプションに関する議論又は交渉に全面的に関与する。我々は、「資源効率性のためのG7アライアンス」との協力で作成された、海洋ごみに対応する既存の国際開発金融機関(MDB)のリソースに関する来たるべきOECD調査に期待する

73. 我々は、「海洋の未来に関する拡大専門家作業部会」の議論を歓迎し、「国連海洋科学の10年」の下での野心的かつ協調的な行動の枠組みを確立する「G7海洋の10年ナビゲーションプラン」を支持する。この枠組みは、「国連海洋科学の10年」とその社会的成果、その他の国際合意を直接参照し、海洋行動を支えるために必要な海洋科学を推進するものである。我々は、「国連海洋科学の10年」とその社会的成果を支援するため、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)を含む国際的・地域的なパートナーや機関と緊密に協力することをコミットする。我々は、「海洋の未来に関するG7イニシアティブ」の進行中の活動を歓迎し、ベスト・プラクティスの共有、デジタル・ツイン・オーシャンの開発、海洋のネット・ゼロ能力に向けた取組、グローバル海洋指標枠組みの評価などのスコーピング活動の推進を含む、同イニシアティブの活動プログラムを引き続き支援する。

食品ロスと廃棄物

74. 我々は、世界的には、人間が消費するために生産される食料の3分の1が失われたり、廃棄されたりしていること、栽培されたのに食べられていない食料に、推定で年間250km³の淡水が消費され、推定で14億ヘクタールの土地が使用されていることを認識する。さらに、食品ロス及び食品廃棄物は、世界の温室効果ガスのうち推定8%を生み出している。また、我々は、2019年に世界で9億3,100万トンの食品廃棄物が、小売、食品サービス、家庭のレベルで発生し、これは消費可能な食品の17%に相当するというUNEPの「食品廃棄指数報告2021」における最近の推定に懸念を持って留意する。我々は、特に最も脆弱なコミュニティにおける食料安全保障を改善し、気候変動と土地劣化を緩和し、生物多様性を保護する上で、食品ロス及び食品廃棄物を削減することが重要であると認識する。我々は、持続可能な食糧システムを2030アジェンダとSDGsに適った取組の中心に据える必要性を強調する、来るべき国連食糧システムサミットを歓迎する。我々は、SDG12.3を達成するためのコミットメントを再確認し、「目標設定、測定、行動」のアプローチを活用すること、目標達成のための国家目標を設定することをコミットする。

75. 我々はさらに、「フードロスと食品廃棄物の測定及び報告基準」に概説されている透明性の高い方法論に従い、SDG12.3の下で作成された国際的な報告の要件に沿って、食品ロス及び食品廃棄物を測定することにコミットする。我々は、進捗を測定できる国のベースラインと目標を設定する。我々は、フードロス及び食品廃棄物を削減するため、食品サプライチェーンと家庭を支援するためのアクションを履行し、循環経済と資源効率アプローチを通じて持続可能な食品の消費と生産の採用を促進する。我々の活動には、官、民、及び市民社会のアクター間の協力や協働を促進すること、革新的なビジネスモデルや技術を導入すること、余剰食品の再分配、若者やより広い市民への教育、フードロスと食品廃棄物の防止に関するすべてのセクター間にまたがる行動変革プログラムが含まれる。もはや人間の消費の目的でなくなった食品は、全ての安全及び関連基準に適合していることが保証される限り、動物の飼料として使用したり、新しい製品に再加工したりすることで、廃棄物になるのを防ぐべきである。ボローニャ・ロードマップの下での我々のコミットメントを想起し、世界の食品廃棄物の約60%が家庭で発生していることを認識し、家庭レベルでの食品廃棄物削減のための行動を支援するキーコンポーネントに関する資源効率性のためのG7アライアンスの議論と、その事議長サマリー(Presidency summary)を歓迎する。我々はさらに、この問題に対処するためのG7全体のベスト・プラクティスの例を強調した資源効率性のためのG7アライアンスの文書を歓迎する。

結語

76. 我々は、英国の議長国としての任務に重要な貢献をしてくれた、正式なG7エンゲージメントグループ及びその他のパートナーに感謝の意を表す。我々は、2022年のドイツのG7議長国の下で、これらの問題やその他の問題について、引き続き協力的な取組を行うことを期待する。