データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7カービスベイ首脳コミュニケ:より良い回復のためのグローバルな行動に向けた我々の共通のアジェンダ

[場所] 
[年月日] 2021年6月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 我々G7の首脳は、2021年6月11~13日、英国コーンウォールで集い、新型コロナウイルスに打ち勝ち、より良い回復を図ることを決意した。我々は、パンデミックにより命を失った全ての人を追悼するとともに、パンデミックを克服するために今も取り組んでいる人々を称賛した。これらの人々が範を示した協力及び決意に触発され、我々は、共通の信念及び共有された責任がリーダーシップ及び繁栄の基盤であるという、最初に我々を集結させた原則によって結束し、集まった。この、自由で開かれた社会及び民主主義としての我々の揺るぎない理想、並びに、多国間主義に対する我々のコミットメントに導かれ、我々は以下のとおり、グローバルな行動に向けたG7の共通のアジェンダに一致した。

 ・可能な限り多くの人々に、可能な限り速やかに可能な限り多くの安全なワクチンを供給することで、世界中で予防接種を行うための強化された国際的な取組を即時に開始し、これを推進することで、パンデミックを終息させ、将来に備える。ここカービスベイにおけるものを含む前回2月の会合以降の、来年にかけて10億回分のワクチンを供給することとなるコミットメントにより、パンデミックが始まって以来のG7のコミットメントは、総計ワクチン20億回以上の供給に相当する。同時に我々は、全ての大陸におけるグローバルな生産能力を増加・調整し、早期警戒システムを改善することによって、国際保健への脅威に対する我々の共同の防衛を強化し、安全で有効なワクチン、治療及び検査の開発サイクルを300日から100日へと短縮する目標の下で科学を支援するために、適切な枠組みを創設する。

 ・我々がパンデミックの最中に実施した12兆ドルの支援を基礎として、回復計画を前進させることにより、我々の経済を再活性化する。我々は、必要な期間にわたり経済への支援を継続し、我々の焦点を、危機対応から移行し、年齢、民族又は性別にかかわらず、いかなる場所も人々も取り残されることのないように、雇用を創出し、インフラへ投資し、イノベーションを推進し、人々を支援し、レベルアップさせる計画を伴う、将来に向けた成長の促進に移行させる。過去の世界的な危機においてはこのようになされたわけではなく、我々は、今回は異なるものとすべく決意している。

 ・改革された貿易体制、より強靭な世界経済、及び、底辺への競争を覆すより公正な世界規模の課税システムの中で、より自由でより公正な貿易を擁護することにより、将来の繁栄を確保する。我々は、開かれた社会としての価値を堅持しつつ、サイバー空間から宇宙まで、世界経済及び社会の将来の先端領域が全ての人々の繁栄及び福祉を増進させることを確保するために協働する。我々は、我々の共通の価値に従った共通善のための技術変革の潜在性を確信する。

 ・雇用を創出し、排出を削減し、世界的な気温上昇を1.5度に抑えることを追求するグリーン革命を支援することにより、我々の地球を守る。我々は、2030年までの20年間で我々全体の排出を半分に抑え、2025年までに気候資金を増加及び改善させつつ、遅くとも2050年までのネット・ゼロにコミットするとともに、2030年までに陸地及び海洋の少なくとも30%を保全又は保護することにコミットする。我々は、将来の世代のために地球を守るという我々の責務を認識する。

 ・世界中で他国・地域との我々のパートナーシップを強化する。我々は、クリーンかつグリーンな成長のためのイニシアティブを通じたものを含め、インフラ投資への我々のアプローチの段階的な変化を通じ、世界のより良い回復のための新たなパートナーシップを発展させる。我々は、世界合計で1,000億ドルという野心に達するとの我々の目標を支えるため、最もニーズのある国に対する国際通貨基金(IMF)からの支援を増強させることを含め、アフリカとの新たなディールに向けて、我々の現在のパートナーシップを深化させることを決意する。

 ・絶えず変化する世界において、成功の揺るぎない基盤として我々の価値を支持する。我々は、最大の問いに答え、最大の課題を克服するために、民主主義、自由、平等、法の支配及び人権の尊重という力を活用する。我々はこれを、個人を尊重するとともに、更に4,000万人の女子に教育機会を与えるという目標を支援すること及び教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)に対する少なくとも27.5億ドルの拠出を含め、平等、特にジェンダー平等を促進する方法で行う。

 我々は、他国と協働して、また、ルールに基づく多国間システムの中で、このオープンなアジェンダを前進させることを追求しなければならない。特に、我々は、人々及び地球にとって、よりクリーンでよりグリーンな、より自由で、より公正で、より安全な未来を確保するために、G20のパートナーと並んで、また、全ての関連の国際機関と共に取り組むことを期待する。

はじめに

1. 我々G7の首脳は、2021年6月11~13日、我々の国民及び地球にとっての重

要な節目において、英国コーンウォールで一堂に会した。

2. 我々は、新型コロナウイルス(COVID-19)が我々の社会において、また世界中で及ぼしている影響、そしてそれらの影響が一様ではないことについて認識する。我々は、パンデミックにより亡くなった全ての人々を追悼するとともに、このウイルスを克服するために引き続き取り組んでいる全ての人々を称賛する。

3. 開かれた社会及び経済として結束し、また、民主主義、自由、平等、法の支配及び人権の尊重という共通の価値に導かれ、我々は、世界中で新型コロナウイルスに打ち勝ち、全ての人のためにより良い回復を図ることにコミットする。我々は、これらの価値が全ての人類の社会及び経済発展の最良の基盤であり続けることを固く確信する。我々は、国民に投資し、ジェンダー不平等を含む不平等と闘い、尊厳を促進し、自由を擁護することにより、我々の時代の大きな課題に挑むことのできるイノベーションを解き放つことができることを確認する。

4. グローバルな行動のための我々のアジェンダは、国際協力、多国間主義及び開かれ、強靭で、ルールに基づく世界秩序への我々のコミットメントに立脚したものである。民主的な社会として、我々は、人権を保護し、法の支配を尊重し、ジェンダー平等を推進し、国家間の緊張を管理し、紛争、不安定及び気候変動に対処し、並びに貿易・投資を通じ繁栄を共有するための国際的な機関による取組を支持する。そのような開かれ、強靭な国際秩序は、翻って、我々の市民の安全と繁栄の最良の保証人でもある。

5. 我々はコーンウォールで、開かれた社会の価値と役割に関する共通の声明で一致した豪州、インド、大韓民国及び南アフリカの首脳の参加を得た。我々は、グローバルな課題に取り組むに当たり、これらの及び我々の全てのパートナーと引き続き協力する。我々は、多国間主義へのコミットメント並びに強力、持続可能、強靭かつ包摂的な回復を実現するため、G20、国際連合(国連)及び更に幅広い多国間システムと協力することへのコミットメントを再確認する。

保健

6. 我々の喫緊の焦点は新型コロナウイルスに打ち勝つことであり、我々は、2022年中にパンデミックを終息させるという共通の目標を設定する。新型コロナウイルスのパンデミックは、全ての場所でコントロールされるまでは、どこにおいてもコントロールされたことにはならない。相互に結び付いた世界において、国際保健及び健康安全保障(ヘルス・セキュリティ)の脅威に国境は関係ない。我々はそれゆえ、新型コロナウイルスと闘うために今グローバルな行動を強化すること、そして将来の脅威に対する我々の共同の防御を改善し、国際保健と健康安全保障を強化するための具体的な措置をとることの双方にコミットする。これには、世界保健機関(WHO)を強化し、同機関の国際保健システムにおける主導的及び調整的な役割を支えることを含む。

7. 我々は、誰しもがパンデミックによる影響を免れることはできず、パンデミックが身体的な健康のみならず、精神的な健康及び社会的福祉にも影響を及ぼしていることを認識する。我々は、ほとんど不可能であると考えられた速さで新型コロナウイルスに関する医薬品等を開発及び供給し、パンデミックから抜け出す道を切り開いた最前線の対応者、医療従事者、有償・無償のケア従事者、科学者及び製造者の非常なる努力を賞賛する。同時に我々は、これらの医薬品等への世界全体での公平なアクセスを実現し、我々の進歩を逆転させかねない新型コロナウイルスの新たな変異株によるリスクを管理するための道のりが長いことを認識する。

8. 2022年中にパンデミックを終息させるためには、世界の人口の少なくとも60%への予防接種が必要であることを認識し、我々は人命を救うための行動を強化する。我々の国際的な最優先事項は、大規模な予防接種の国際公共財としての役割に留意し、最貧国のために安全かつ有効で、入手可能かつ安価なワクチンの提供を加速化することである。我々は、G20ローマ宣言及び我々の外務・開発大臣が一致した公平なアクセスに関する声明の承認を改めて表明する。我々は共に、また他者と、それぞれが展開することのできる能力と資格を最大限活用して、ワクチンのための資金調達及びワクチン共有、科学、自主的なライセンス供与を通じたアクセスの確保、製造及び輸出を通じた入手可能性の確保、サプライチェーンの開放並びに供給の最後の1マイルの支援を通じて、世界的な予防接種のための取組を支えるため協働する。

9. 我々は、最貧国にワクチンを供給する最も主要な経路としてのACTアクセラレータ(ACT-A)及びそのCOVAXファシリティへの支援を再確認する。パンデミックが始まって以来、我々は、前回2月の会合以降に拠出を表明した19億ドルを含め、ACT-Aのワクチンの柱に対し、ワクチン供給のための資金として86億ドルをコミットしてきた。これは、ワクチン10億回分以上の供給に相当する。我々は、COVAXファシリティの事前買取制度(AMC)における目標を超える資金プレッジを動員した、日本とGaviワクチン・アライアンスの共催により成功を収めた最近のCOVAXワクチン・サミットを歓迎する。ワクチンの供給速度の加速化が緊急に必要であることを認識し、我々は来年にかけて少なくとも8億7千万回分のワクチンの直接的な共有にコミットする。我々は、これらのワクチンをできるだけ早く入手できるようにするとともに、少なくともその半分を2021年末までに、主にCOVAXを通じて、最も必要とする人々に届けることを目指す。これらを合わせると、我々の資金的貢献及び直接的なワクチンの共有をワクチンの接種回数に換算すれば、パンデミックが始まって以来のG7のコミットメントは、総計ワクチン20億回分以上の供給に相当する。前回2月の会合以降ここカービスベイにおけるものを含む我々のコミットメントにより、来年にかけて10億回分のワクチンが供給されることになる。我々は、民間部門、G20及びその他諸国と協働し、今後数か月間にわたりこの貢献を拡大するため取り組む。

10. これらのコミットメントは、世界的な予防接種に向けた取組のためのより幅広い貢献に基づくものである。これらには、相当量の輸出を継続するとのコミットメントの下に、そのほぼ半分が非G7諸国に供給済み又は供給予定である本年輸出済み及び輸出予定の少なくとも7億回分の国内生産ワクチンの輸出に加え、自主的なライセンス供与の促進、加えて、これまでCOVAXによる供給の95%を占める非営利による世界的な生産の促進を含む。

11. 我々は、ワクチンと同様に、治療、検査及び公衆衛生システムの強化に係るACT-Aの全ての柱に対する我々の支持を再確認する。2月の会合以降、G7として我々はACT-Aに対し、ワクチンへの支援を含め総額20億ドル以上をコミットしてきたところであり、パンデミックが始まって以降の我々のコミットメントの総額は100億ドル以上に上る。我々は、ACT-Aのマンデートの2022年への延長に関する議論を、その効果及び説明責任を最適化するための包括的な評価の計画に留意しつつ、支持する。これだけの規模の取組には、地域機関との緊密な連携の下で、ドナー国及び受益国双方への調達及び供給に関する、信頼でき、透明性を持った、最新かつ明確な情報に基づく、ACT-Aがもたらした進捗に関する密なモニタリングを必要とする。この進捗については、ローマでのG20に報告されるべきである。

12. 我々の目標達成を支えるに当たり、我々は、今回のパンデミック及び次のパンデミックのためのグローバルな供給ネットワークを維持するためにより多くの場所におけるより多くの生産を通じて、ワクチン、原材料、検査、治療、個人防護具(PPE)等の新型コロナウイルスのためのツールの供給を拡大するための徹底したアプローチにコミットする。これは、不要な貿易制限措置を終了させ、また開かれ、多様性があり、安全で強靭なサプライチェーンを支持することを通じたものを含む、開かれた貿易及び透明性の原則に基づく。それは、現行の生産能力の効果的な利用を妨げる障害を打破し、かかる能力を更に増強するためのパートナーシップを促進する実際的及び実践的なアプローチにより支えられる。この目的のため、我々は、安全で有効なワクチン及びその他のパンデミック関連ツールの製造能力の最適化を図り、サプライチェーンに関する情報を共有するための国際的なワクチン供給ネットワークを調整するべく、ACT-Aファシリテーション・運営理事会作業部会を、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、Gavi、国連児童基金(UNICEF)に加え、医薬品特許プールのようなその他のパートナー並びに民間セクターと共に支持する。新型コロナウイルスのワクチンへの公平なアクセスの必要性を強調し、我々は、低所得国における製造を支援するとともに、この点に関する知的財産の重要性に留意し、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及びTRIPS協定と公衆衛生に関する2001年のドーハ宣言の下で整合的に取り組むことを含め、知的財産の役割に関するWTOにおける議論に建設的に参加する。我々は、自主的なライセンス供与や相互に合意した条件に基づく技術移転が国際的な供給の拡大に与えてきた前向きな影響に留意する。我々は、インフルエンザに関する10%目標のかつての前例に留意し、営利を目的としない生産、段階的で透明性のある価格設定、製造者による生産量の一部のCOVAXへの共有を含め、最貧国のために入手可能でアクセス可能な新型コロナウイルスのツールを確保するための全ての選択肢を模索する。我々は、自主的なライセンス供与と相互に合意された条件に基づく技術移転に基づく新たなパートナーシップを促しながら、全ての大陸における新型コロナウイルス対応ツールの製造能力を加速する取組を支援し、特に、地域の製造拠点の設立に向けたアフリカの取組を支援すべく努める。我々は、各国の即応体制を強化すべく、COVAXを通じたものを含め、パートナー、地域機関及び受益国と引き続き協働し、ワクチンへの信頼性を支える我々の取組を維持する。

13. ウイルスに遅れを取らないよう、世界のワクチンが懸念される変異株に対して引き続き有効で、効果的な検査及び治療が利用可能であることを確保すべく、我々は、最新の調査とイノベーションへの投資を継続することにコミットする。このために我々は、ウイルス及びその新たな変異株と戦うための迅速な探知を可能とする上で必要な世界的なサーベイランスと遺伝子配列解析並びに迅速な情報共有を強化する。G7諸国は、可能な限り、パンデミック期間中における全ての新しい新型コロナウイルス陽性の検体のうち少なくとも10%の遺伝子配列解析を実現し、その遺伝子配列情報を既存の世界的なデータベースと共有するよう、あらゆる努力を行うべきである。

14. 上記に沿って、我々はパンデミック及びその他の保健課題に対処する脆弱な国々を支援するための我々のコミットメントを継続し、拡大する。これには、酸素、検査、治療及びPPEを含む命を救う医療用品等の供給に関して重要な役割を果たしてきたグローバルファンドやユニットエイド(Unitaid)等のACT-Aのパートナー機関の支援並びにWHOとの協働による各国の保健システムの強化、能力構築、感染症の発生に関する管理及び拡大防止への支援を含む。我々は、世界銀行グループ及びその他の国際開発金融機関(MDBs)に対し、資金的支援の速度を上げるよう求め、この観点からACT-Aへの支援を継続する。

15. 現在のパンデミックへの対応と並び、我々は、将来のパンデミックに対しより良く備え、薬剤耐性を含む長年存続する国際保健の脅威に対処できるよう、国際保健及び健康安全保障システムを強化するために今行動しなければならない。我々は、ローマ宣言、第74回世界保健総会で採択された「健康危機における備えと対応に関するWHOの強化」決議に盛り込まれた措置を歓迎し、パンデミックへの備え及び対応のための独立パネル(IPPPR)の力強い勧告並びに国際保健規則(IHR)検証委員会及び独立監視諮問委員会(IOAC)の作業を認識する。我々は、より強靭でより良い備えを持った国際保健システムを築くために、諸勧告の迅速な実施を進め、世界保健総会で合意されたとおり、条約の潜在的価値の検討を含む必要な多国間の行動を追求するために、G20、国連、WHO、WTOその他関連国際機関と、それぞれのマンデート及び意思決定のためのルールに従い、協働を継続することを期待する。我々は、世界保健総会で合意されたように、秋に開催されるパンデミックの備えに関する特別会合に期待する。

16. G7諸国として、我々は国際保健システムを強化するための国際的な取組における我々の特別の役割と責任を認識し、これを支えるために我々の独特の強みを活用することにコミットする。我々は、G7カービスベイ保健宣言及びG7保健大臣宣言を承認し、そこに示された、全ての国が健康危機の予防、探知及び対応並びに健康危機からの回復のためのより良い備えを持つことを確保するための、国際保健規則(IHR)に則した取組を含む具体的な行動を承認する。我々は、特に以下の点を強調する。

 ・人間及び動物の健康と環境との重要な関連性を認識し、パンデミックに対する予防と備えの全ての側面について「ワンヘルス」アプローチを強化することにより、その取組の統合を促進すること。

 ・国際保健規則(IHR2005)の完全な実施と改善された遵守への我々のコミットメントを改めて表明することを含め、透明性と説明責任を強化すること。これには、起源不明の感染症発生に係る調査、報告及び対応を含む。我々はまた、専門家報告書で提言されたように、中国におけるものを含む、適時の、透明性のある、専門家主導で科学に基づくWHOによる第二段階の新型コロナウイルスの起源に関する調査の実施を求める。

 ・将来のパンデミックにおける共同の行動の引き金となるような世界的な手順を作成することにより、対応の速度を改善すること。

 ・保健及びケア分野における女性や少数派のエンパワーメント及びリーダーシップを含め、公正性、包摂性及び公平性を確保することで、健康危機と貧困や構造的不平等といったより広範な健康の社会的決定要因との相互関連性に対処すること、また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を進めることにより誰一人取り残さないこと。

 ・能力を構築し、医療従事者の安全を維持するため、世界中で医療及びケア従事者に投資することを含め、新たな、また長期残存する病原体の発生に対処するための国際保健システムの強靭性を高めること。

 ・長期的な備え、持続可能な国際保健及び健康安全保障を支えるため、これに限られないが特にWHOの、財政モデルを強化すること。我々は本年、堅固な財務報告、また向上が図られ、定義付けられた説明責任及び監視により支えられた持続可能な国際保健及び健康安全保障のための資金をめぐり、コンセンサスを築くための選択肢を模索する。我々は、我々の財務大臣に対し、他者、G20及びそのハイレベル独立パネル(HLIP)と協働し、この点において進捗を図るよう求める。我々は、国際保健脅威カウンシルに対するIPPPRの提言を含め、世界的な健康安全保障のための資金調達に係る国際的な説明責任、追跡及び配分を強化するための選択肢を模索する。

17. G7は、強化された国際保健面での対応の一部として、我々の共同の科学的能力を展開する上で、主導的な役割を果たす。データは、実効的な早期警戒及び健康危機への迅速な対応を支える上で変革的な役割を果たすことができる。我々はそれゆえ、現在のパンデミックとの闘いにおける新たな変異株の特定並びにパンデミックを引き起こす可能性を持つ将来の病原体の探知及び監視のためのデータの収集、共有及び分析を可能とする国際的、地域的、及び国内的な病原体サーベイランスの質と対象範囲を改善する必要がある。我々は、データ共有のための基準及びルールを含む、インフルエンザやポリオ対策プログラム等の既存の探知体制に立脚しながらもより優れた遺伝子配列解析能力とより広い対象範囲を備えた共通の枠組みに基づいて、世界的な病原体サーベイランス・ネットワークであるグローバル・パンデミック・レーダーの立上げを支持し、その実現を支援するため専門家及び各国と協力するとのWHOのコミットメントを歓迎する。我々は、ジェレミー・ファラー卿による病原体サーベイランスに関する議長国への報告に留意する。この目的のため、我々は、「パンデミック及び疫学情報のためのWHOのグローバル・ハブ」及びこのネットワークの一部としての追加的なセンターを歓迎する。これは、地域レベルでの能力構築によって支えられる必要もあるが、それにより、世界中で国際的な解析及び病原体サーベイランスの能力を増強することになる。我々は、WHOが、ネットワークの進捗についてG20プロセスの一環として本年末までに各国首脳に対し報告することを求める。

18. 我々は、たった300日余りで成し遂げた新型コロナウイルスのワクチン開発を含め、今回のパンデミックへの対応で目にしてきた並外れたイノベーション、科学の力及び協働を維持し、これらに立脚することが必要不可欠である。G7メンバーとして、我々には、安全で有効な診断、治療及びワクチンを今後より一層素早く利用可能にするために果たすべき特別の役割がある。将来の健康危機が予測し難い性質であることを認識した上で、将来パンデミックが発生した場合には、我々は、公平なアクセスと高い規制基準という貿易及び透明性をめぐる我々の核心的原則と整合的な形で、安全で有効なワクチン、治療及び診断を100日以内に利用可能にするための適切な枠組みの創設を模索する。我々は、議長国英国により召集されたパンデミックへの備えに関するパートナーシップに関与している英国の首席科学顧問及びG7諸国のカウンターパート、国際機関、産業界の代表並びに専門家に感謝し、彼らの実践的な提案に留意する。我々は、100日目標を歓迎し、これには、官民の継続的で調和的な協働と、今次危機において例外だった事項を将来的には日常的なものとするため、国際的な保健機関のリーダーシップが必要であることを認識する。我々は、G7の首席科学顧問又は相応の立場の者に対し、本年末までにこの進捗を評価し、各国首脳に報告するよう招請する。

経済回復及び雇用

19. 新型コロナウイルスからの回復のための我々の計画は、パンデミックに由来する喫緊の課題のみならず、世界経済及び社会における人口動態、技術及び環境の傾向を含む長期的な変化並びにその多くが新型コロナウイルスにより拡大することとなった国家間及び国内における不平等への対処により、我々を、強固で、持続可能で、均衡ある、包摂的かつ強靭な成長への道筋に置くものである必要がある。こうしたグローバルな課題の相互に関連する性質を認識し、我々は、共通のコミットメントに向けた統合的なアプローチを取っている。

20. パンデミックの影響を緩和するため、我々は、市民と企業に対して、雇用維持、所得支援及びビジネスの継続を含め、財政支援及び流動性措置を含む計12兆ドル超の前例のない支援を提供した。我々は、必要な期間にわたり経済への支援を継続し、我々の支援の焦点を、危機対応から、将来に向けた強固で、強靭で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長の促進に移行させる。回復が確かなものとなれば、我々は、将来世代の利益のためにも、将来の危機に対応し、より長期的な構造的課題に対処できるよう、財政の長期的な持続可能性を確保する必要がある。

21. 我々は、働きがいのある人間らしい仕事の維持、支持及び創出、質の高いインフラ、イノベーション、訓練及び技能への投資、不平等への対処を含め、主要な優先課題を共有する。我々は、お互いの計画から学び、回復へのそれぞれの段階を通じアプローチを更新することを確保すべく、引き続き意見を交換し、ベストプラクティスを共有する。我々は、G7議長国である英国からの委託により「持続可能で強靭かつ包摂的な経済的回復と成長のためのG7のリーダーシップ」をまとめたニック・スターン卿に感謝する。我々が2050年までのネット・ゼロを目指す中、我々の経済成長及び回復へのアジェンダの中心にあるのは、生産性を向上させ、新たに働きがいのある人間らしい質の高い仕事を創出し、温室効果ガスの排出を削減し、我々の強靭性を改善し、人々と地球を守る、グリーン及びデジタルの分野での変革である。

22. 我々は、世界規模で公正な課税システムを必要とする。我々は、6月5日のG7による歴史的なコミットメントを承認する。我々は現在、G20/OECDにおける包摂的枠組みを通じて、課税権の配分に関する公平な解決策及び国別での15%以上の野心的なグローバル・ミニマム課税に関するグローバルな合意についてコンセンサスに至るための議論を継続しており、7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で合意に至ることを期待する。これにより我々は、21世紀にふさわしい、より公正な課税システムを創出し、40年にわたる底辺への競争を覆すことに向けて重大な一歩を踏み出した。我々の協力は、より強固に公平な競争条件を作り、投資を支えるためのより多くの税収を集める助けとなり、租税回避を取り締まるだろう。

23. 我々は、陸上、航空及び海上の国際的な往来の安全な再開が世界経済に与える重要性並びにWHO、国際民間航空機関及び国際海事機関による国際的な往来に関する新たな公衆衛生指針を含めその達成に向けた多国間の取組を認識する。我々は、そのためにはデジタル・アプリケーションの相互運用性及び相互認証、検査条件、適用除外を含む予防接種状況の把握、並びに対応措置がいつ必要とされるかに関する相対的基準を含む、人の往来に関する一連の共通基準が必要となることを認識している。我々は、G7交通大臣及び保健大臣による現在進行中の議論を歓迎し、安全な再開のための協力を深めるよう求める。

24. 全ての市民に責任のある指導者として、我々は、性別、年齢、障害、民族、性的指向又は経済的地位にかかわらず、いかなる地理的地域も人々も取り残されることのないように、我々の回復への計画が、教育及び技能向上の強化並びに労働市場への参画及び経済のレベルアップのための変革の促進によるものを含め、全ての人のためのより良い回復につながるものとなるよう確保することを決意する。我々は、過去の世界的な危機からの回復は常にそのような形でなされたわけではないことを認識した上で、今回は我々の対応が引き続き過去とは異なるものとすべく、その決意をもって共に連帯する。

25. パンデミックの間における我々の支援が、数百万の人々の雇用維持を助けた一方で、危機によりいまだに多くの人々が職を失っており、若年者、女性、不利な条件におかれたグループ及び非正規雇用・未熟練の労働者に関するものを含め、その影響は同等に及んでいるわけではない。危機により、社会的保護のシステムの重要性が示されるとともに、社会において、しばしば無給であり、しばしば不釣り合いに多くが女性であるケア提供者が果たす極めて重要な役割と驚くべき貢献が明らかになり、また、我々の回復計画の一部としてこうしたケア提供者の働きがいのある労働条件を改善することの重要性が示された。同時に、技術の変化は我々の労働市場を大きく変えようとしている。我々は、将来のためにいかにして労働市場を整備するかを対象とする、社会的パートナー並びにL7(労働)、Y7(若者)、W7(女性)及びB7(ビジネス)等のG7エンゲージメント・グループとの議論を含む、より良く、よりグリーンで、より包摂的な回復に関するG7雇用タスクフォースの貢献を歓迎する。現行の我々の協力における最優先課題の一つは、ILOの労働における基本的原則及び権利を十分尊重し、かつ関連する国際労働基準を考慮に入れつつ、我々の労働市場がこうした変化に対応し、あらゆる人に働きがいのある人間らしい仕事と平等な機会をもたらすべく進展し続けることを確保することである。

26. 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界的な危機及び衝撃により引き起こされる、経済上の強靭性に対するリスクを例証した。これら危機及び衝撃は、例えばパンデミックの結果として、そして慢性的な市場の不均衡や歪曲性といった課題により、鋭いショックから形となって表れ得る。我々の回復は、より強靭な回復であることを確保しなければならない。我々は回復するに当たり、こうしたリスクにはより協調的な方法によって対処する必要がある。我々は、我々同士で、そして同盟国と共に、経済の強靭性に向けた新たなアプローチにおいてより強力に共働する。我々は、気候変動及び拡大しつつある不平等を、世界経済に対する主要リスクであると認識する。我々は、ストレステストのような他で用いられているモデルを反映させ、重要鉱物資源及び半導体のような分野で、極めて重要な世界的なサプライチェーンの強靭性に係るリスクに対処するためのメカニズムを検討し、ベストプラクティスを共有する。我々はまた、全ての人に対する開放性に関して強靭であり、開かれた市場、透明性及び競争という我々の共通の原則を保つに際してのリスクに対処可能であることを確保するため、G7投資審査専門家会合における投資の安全保障に関する協力を強化する。我々の解決策は、開放性、持続可能性、包摂、イノベーション及び競争といった我々の共通の原則に基づき、開かれた市場の利益の維持と強化に資する。それらがなければ我々は、将来の世界経済において変動と細分化が常態化することを覚悟しなければならない。このために我々は、経済の強靭性に関するG7パネルによる作業を評価し、経済協力開発機構(OECD)による支援作業を多とするとともに、我々は引き続き、同パネルにより強調された課題に取り組む。

自由で公正な貿易

27. 我々は、ルールに基づく多角的体制の基本原則及び目的として、自由で公正な貿易に対するコミットメントの下、連帯する。我々は、多角的貿易体制が、全ての者にとって自由で公正で、より持続可能かつ強靭で、世界の市民のニーズに応えるよう、現代化されたルールブックと改革された世界貿易機関(WTO)を中心として改革されることを確保するため、世界の主要民主国家が共通のビジョンの下で連帯する必要性に合意する。我々は引き続き、貿易がもたらし得る繁栄を、我々の国のあらゆる場所で、そして世界中の人々、特に貧困層にとって実感できるものとなるよう確保することに特に焦点を当てる。

28. 我々は、世界貿易体制における問題及び共通の世界的な課題に対処するため、多国間及び複数国間のアジェンダを支持する。我々は、この点に関するG7貿易大臣による取組を支持するとともに、G20における更なる作業に期待している。11月の第12回WTO閣僚会議(MC12)を見据え、我々は、漁業補助金に関する多国間交渉について意味ある結論に到達すること、及び電子商取引交渉を進展させることを含め、喫緊の課題について進展を図るべく、他のWTO加盟国と協働する。我々はまた、サービス国内規制に関する共同声明イニシアティブの下での参加国・地域による交渉の妥結に向け行われている作業を歓迎する。我々は、我々の貿易政策が確実に女性の経済的エンパワーメントに資するよう検討するというG7貿易大臣によるコミットメントを支持し、ジェンダー別データ及び分析という強力な実証の基礎を発展させる重要性を認識する。我々は、女性の貿易への参画及び経済的エンパワーメントを促進すべく、貿易大臣に対し、より広範なWTO加盟国が野心的な結果をMC12においてもたらすことを支持するよう奨励する。我々は、持続可能なサプライチェーンへの移行の促進に関するG7貿易大臣の結論を承認し、カーボンリーケージのリスクを認識し、このリスクに対処し、我々の貿易慣行がパリ協定の下での我々のコミットメントと合致するよう協力的に取り組む。我々はまた、保健に関する貿易を支持するための現実的、効果的かつ全体的な解決策を形成するためのWTOにおける作業についてのG7貿易大臣の呼びかけと共に、新型コロナウイルス対策に不可欠な物品及びワクチン並びにその原料の製造における、開かれた、多様で、安全かつ強靭なサプライチェーンに対する貿易大臣の支持を歓迎する。

29. 我々は、農業、太陽光、衣類の部門におけるものを含め、グローバルなサプライチェーンにおいて、国家により行われる脆弱なグループ及び少数派の強制労働を含むあらゆる形態の強制労働の利用について懸念する。我々は、人権の堅持、グローバルなサプライチェーンの全過程における国際労働機関加盟国の立場から生じるものを含む国際労働基準、及び強制労働の事例に対処することの重要性について合意する。我々は、個人を強制労働から守り、グローバルなサプライチェーンが強制労働の利用に関わらないことを確保するため、我々自身が利用できる国内的手段及び多国間機関を通じて協働し続けることにコミットする。我々はそれゆえ、G7貿易大臣に対し、2021年10月のG7貿易大臣会合に先立ち、グローバルなサプライチェーンにおけるあらゆる形態の強制労働の利用の根絶に向けた強化された協力及び共同の取組のための分野を特定するよう指示する。

30. 我々は、公正な競争を促進し、全ての人のためになる共有された繁栄を確保できるよう、WTOの現代化において進展が図られることを確保する上で必要な持続的な取組及び機運を与える。我々は、MC12に先立ち、以下の点を進めるべく、WTOにおいて、また、より広範なWTO加盟国と協働する。

 ・デジタル化及びグリーン移行といった世界経済において起きている変革を新たなルールによってより良く反映するとともに、強制技術移転、知的財産窃取、競争優位を得るための労働・環境基準の引下げ、国有企業による市場歪曲的な行動、及び過剰生産能力につながるものを含む有害な産業補助金といった不公正な慣行から保護するためのルールを強化するよう、世界貿易のルールブックを現代化すること。

 ・透明性に係る義務のより一層の尊重及び遵守並びにWTOの強化された監視・審議機能を通じたものを含め、既存の及び現代化されたルールブックをより強固に遵守すること。

特別 ・かつ異なる待遇の仕組みが世界経済における発展を反映しつつも引き続き後発開発途上国及び低所得開発途上国の特別のニーズについて説明可能なものとなるよう対処することを含め、ルールブックの下における各国の異なる責任についてより公正なアプローチを取ること。

 ・WTOの交渉機能及び紛争解決制度を適切に機能させること。これには、長期にわたる課題に対処することが求められる。

 ・世界貿易体制のいかなる現代化も後発開発途上国及び低所得開発途上国の社会的及び経済的な成長と発展の支えとなるよう、世界貿易体制に統合するためのWTOルールの十分な実施におけるものも含め、そうした国々の利益を支えること。

将来的な先端領域

31. サイバー空間から宇宙空間に至るまで、世界経済と社会の将来的な先端領域が、今後数十年にわたり世界中の人々の将来の繁栄と福祉を決定することになる。我々が、拡大するモデルの相違を目にする中で、この変革は、経済機会、安全保障、倫理及び人権の間の相互作用、並びに国家、ビジネス及び個人の役割の間のバランスに関する重要な問を提起する。

32. 我々は、持続可能で、包摂的で、透明性があり人間中心の形で繁栄を強化する、共通善のための信頼できる、価値主導のデジタル・エコシステムに向けた現行のアジェンダの一部として協働する。その中で、我々は、デジタル・エコシステムが我々の共通の価値を反映する形で発展することを確保するため、我々の規制枠組みを更新するとともに、若者を含む他の関連するステークホルダーと共働することを、我々の持続的な戦略的優先事項とする。我々は、分断されず、人々を力付ける自由・イノベーション・信頼を支える、開かれた、相互運用可能な、信頼できる、かつ、安全なインターネットを維持することにコミットする。適切に利用されれば、技術は医療的能力を強化し、環境への脅威に立ち向かい、教育へのアクセスを拡大し、新たな経済機会を切り開くことにおいて我々の後押しとなるものである。我々は、公共財のための技術の進展及び世界のデジタル読解力の向上のため、こうした技術を活用する。我々は、新技術の利用と発展が、我々の共通の民主的価値観及び開かれた競争的な市場、人権や基本的自由等のための強力な保護手段へのコミットメントを反映することを確保するため、グローバルな規範及び基準の実施及び発展に関して連携及び支持を強化する。我々はまた、こうした民主主義的価値を損ない得る、政府によるインターネット遮断やネットワークの制限といった措置に対する我々の反対を確認する。我々は、意思決定の新たな形態が、アルゴリズムが歴史的な偏見を植え付け、若しくは拡大させ、又は新しい形の偏見若しくは不公正を生み出しさえもするという事例を表面化させていることに留意しつつ、官民の関係機関がそれぞれの仕組みにおいて偏見に対処すべく行動をとることを促すデータ収集の調和のとれた原則の進展を支持する。

33. 我々は、民間部門に対し、我々の取組に参加することを求めるとともに、こうした標準を支える価値と原則に沿った、標準設定に対する産業界主導の包摂的なマルチステークホルダー・アプローチへの支持を再確認する。このため、我々は、OECDの支持の下での2021年9月の「未来技術フォーラム」に関する議長国のイニシアティブを歓迎する。このフォーラムには、開かれた社会を支えグローバルな課題に対処する上での技術の役割を議論するために有志の民主主義パートナーが集う。このフォーラムは、規制の分断のリスクを緩和し、我々の新興技術エコシステムの一貫性を高めるための取組を支え、首脳が適切な国際的フォーラムにおいて検討すべく提案を招請する。我々は、政府、産業界、学術界、市民社会及び他の主要なステークホルダーの間の対話を促進するとの目標を支持する。このため、我々は引き続き、オープン・ガバメント・パートナーシップを基礎として、我々の技術における更なる透明性を構築するために大胆な行動をとる。2018年及び2019年にカナダ及びフランスの各議長国の下で進められた「人工知能のためのグローバル・パートナーシップ(GPAI)」の作業を基礎として、我々は、2021年11月のパリにおけるGPAIサミットに期待しつつ、人工知能に対する我々の開かれた人間中心のアプローチを中心として全てのパートナーを結集することを目指す。我々の基本的価値観と原則を反映した効果的な基準設定を支持するため、我々は、適切な場合に、標準化機関への関与と同機関への任命に関する我々の協調を、産業界との協議を含め、強化する。我々は、各国の国内の標準化機関の間を含めた情報とベストプラクティスのより良い共有、能力構築の強化及び標準策定への複数の関係者の参加への支持にコミットする。このため、我々は「デジタル技術標準に関するG7連携のための枠組み」を承認する。

34. 我々は、将来的な先端領域の進展に関する特定の分野における協力を支持する。デジタル・技術大臣の作業を基礎として、我々は、本年の我々の協力の焦点が特定の分野を中心とする構造化された対話であることに合意する。

 ・引き続きデータ保護に関する課題に対処しながら価値のあるデータ主導の技術の潜在力をより良く活用するため、信頼性のある自由なデータ流通を擁護すること。そのために我々は、デジタル大臣による「データフリーフローウィズトラストに関する協力のためのG7ロードマップ」を承認する。

 ・世界経済回復を支える効率性及び経済貯蓄を生み出すために、電子的移転可能記録をビジネス界が利用することを可能にすること。この目標を支えるため、我々は、「電子的移転可能記録に関するG7の協力のためのフレームワーク」を承認する。

 ・表現の自由を含む人権及び基本的自由を守りつつ、インターネットの安全性を向上させヘイトスピーチに対抗するため、更なる行動をとること。我々は、子ども及び脆弱な危険にさらされているグループ、特に女性及び女児を含む我々の市民をオンラインでもオフラインでも守る。我々はそれゆえ、オンラインの安全性を改善するための共通のアプローチを掲げることを目指したデジタル大臣の「インターネット安全性原則」を承認する。我々はG7内務担当大臣に対し、種々の形態のオンライン上の虐待を含む既存の及び新たに出現するオンライン上の種々の形態の性別に基づく暴力への対策に関する情報及びベストプラクティスの共有に係るG7の合意に取り組むことを奨励する。我々は、クライストチャーチ・コールへの支持を確認し、言論の自由及び人々のプライバシーへの合理的期待を尊重する必要性を強調しつつ、内務担当大臣に対し、2017年にイスキアで始まり2018年のトロント及び2019年のパリでも継続された暴力的過激主義者及びテロリストによるインターネットの使用の防止及び対抗に関する作業を継続するよう更に奨励する。我々は、既存の国際法がサイバー空間にどのように適用されるかについての共通の理解を推し進めるために協働することにコミットし、国連及びその他の国際場裏におけるこのアプローチを促進するための外務大臣による作業を歓迎する。我々はまた、ランサムウェアの犯罪ネットワークによる共通の脅威の高まりに緊急に対処すべく協働することにコミットする。我々は全ての国に対し、自国の国境内から活動するランサムウェアの犯罪ネットワークを緊急に特定し、分断するよう求めるとともに、それらネットワークに対しその行動についての責任を問うよう求める。

 ・サプライチェーンを守ること。5G及び将来の通信技術を含む電気通信インフラが我々のより広範なデジタルインフラ及び情報通信技術(ICT)インフラを支える上で果たしており、また、今後果たすであろう基盤的役割を認識し、我々は、安全で、強靭で、競争的で、透明性があり、持続可能で多様なデジタルインフラ、電気通信インフラ及びICTインフラのサプライチェーンを促進する。

 ・世界経済全体でイノベーションを促進させ、消費者の選択肢を拡大するために、デジタル競争に係る協力を深化させること。我々は、大きな市場力を有する参加者がデジタル市場及びより広範な経済を阻害するために自らの力を悪用し得るとの国際的なコンセンサスが高まっていることを認識する。それゆえ我々は、2019年のフランスG7議長の下での「競争とデジタル経済」に関する共通理解を基礎として、デジタル市場における競争を奨励しイノベーションを支援する一貫した方法を見出すために、既存の国際的な及び多国間のフォーラムを通じて協働する。

35. これらの優先事項のほかに、我々は、将来的な先端領域に関するその他の協力分野が適切なものであるかどうかの再評価を行う。我々は、現在と未来の人類の熱意を支えるべく、安全で持続可能な宇宙利用にコミットする。我々は、宇宙交通の管理と調整のための協調的アプローチの必要性に則して、持続可能な宇宙活動に関する共通の基準、ベスト・プラクティス及びガイドラインを作成することの重要性を認識する。我々は、次世代のために宇宙環境を保全すべく、国連宇宙空間平和利用委員会、国際標準化機構、国際宇宙機関間スペースデブリ調整委員会といったグループを通じ、全ての国が協働することを求める。

36. これらの将来的な先端領域の全て及び来たる世紀のより広範な課題を支えるのは、科学的発見及びその展開の重要性である。我々はそれゆえ、研究・開発に関するより強固な協力を促進し、過去1年間に見られた歴史的な水準の協力を国際的に有益な結果へと築いていく、研究セキュリティ及びインテグリティ並びにオープン・サイエンスの原則を促進するために協働する。ここにおいて中心であるべきは、女性を含む全てのグループを包摂する、多様で強靭な科学・研究コミュニティを築くことである。科学、技術、工学及び数学(STEM)の分野における女性と女児の参画の少なさをめぐる不均衡が、こうした成長産業へのアクセスへの障害となっており、国内的に我々は、そうした不均衡の是正を追求する。我々は、既存及び潜在的な新規のメカニズム及びイニシアティブが、どのように将来のシステミックな危機、自然災害及び技術変化のペースへの、リスク低減、予防及び対応を支援することができるかについて探求する。このため、我々は「研究協力に関するG7協約」を承認するとともに、研究協力を促進する政策、法的枠組み及び計画の支持、研究データの共有の促進、研究の評価及び協力への報償並びに知識の共有の拡充の探求、そして開かれた相互主義的な研究協力に向けてG7全体にわたる研究・イノベーションのエコシステムの保護に資する共通の一連の原則の策定に対するG7のコミットメントを承認する。

気候及び環境

37. 気候変動及び生物多様性の損失という前例のない相互依存の危機が、人類、繁栄、安全保障及び自然に対し存亡に係る脅威を与えている。世界的な行動と協同したリーダーシップを通じて、2021年は、我々が、排出を削減し適応行動を世界的に増加させ、生物多様性の損失を止めて反転させ、政策及び技術変革を通じて新たな質の高い仕事の雇用を創出し繁栄と福祉を増大させるグリーン移行にコミットすることで、我々の地球にとって転換点となるはずである。生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議(COP26)及び国連砂漠化対処条約(UNCCD)第15回締約国会議(COP15)に先立ち、我々は、温室効果ガス排出を削減し、気温上昇を1. 5度に抑えることを射程に入れ続けるための努力を加速させ、気候変動の影響から人々を守るために適応と強靱性を強化させ、生物多様性の損失を止めて反転させ、これらの目標を達成するための資金を動員しイノベーションを活用することにコミットする。我々は、「強靱性のための競争(Raceto Resilience)」及び「ゼロ排出に向けた競争(Raceto Zero)」キャンペーンを含む、科学に基づく目標を通じたグローバルな気候及び生物多様性への野心に向けたビジネス界、市民社会及び地域のコミットメントを歓迎し、奨励する。我々は共に、脆弱なコミュニティや少数派のグループの積極的な役割及び参加を歓迎し、気候・環境分野におけるジェンダー平等を含む平等の達成に向けて取り組む。我々は、エネルギー分野におけるジェンダー平等のための「30年までに平等を実現させる運動(the Equalby 30 Campaign)」における進展への努力を継続する。

38. G7メンバー国として、我々は皆、パリ協定と、各国の強固な政策及び措置並びに国際協力の規模拡大を通じたその実施の強化及び加速へのコミットメントを再確認する。このため、この10年間に意味のある行動をとることの重要性を認識しつつ、我々は可能な限り早く、遅くとも2050年までに、温室効果ガス排出のネット・ゼロを達成するための野心的で加速された努力に共同でコミットする。この目標に沿って、我々はそれぞれ、引き上げた2030年目標にコミットしており、まだ行っていない場合には、COP26に先立ち可能な限り早期に、整合性の取れた「国が決定する貢献(NDCs)」を提出することにコミットし、それらは2010年と比較して約半分、又は2005年と比較して半分以上、我々の全体の排出を削減するようなものとなる。我々はまた、COP26までに、2050年長期戦略(LTSs)を提出すること、並びに最新の科学、技術の進歩及び市場の進展を反映すべくパリ協定に沿って必要に応じこれらを定期的に更新することにコミットする。我々自身の国内計画において適応の重要性を認識しつつ、我々はまた、できる限り速やかに、もし実現可能ならばCOP26までに、適応に関する情報を提出することにコミットする。これらのコミットメントを履行する上で、我々は、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けるための努力を引き続き増加させ、ネット・ゼロ経済に向けたG7の道筋を立てる。我々は全ての国、特に主要排出国・地域に対し、パリ協定の下での可能な限り高い野心及び実施に際する透明性を反映するための彼らのコミットメントを向上させつつ、グローバルな取組の一部としてこれらの目標に我々と共に加わることを求める。我々はまた、OECD気候行動に係る国際プログラム(IPAC)を始め、補完的な国際的イニシアティブの価値に留意する。

39. 野心が信頼性のあるものであるためには、我々の経済及び社会の全ての部門における目に見える行動によって支えられる必要がある。我々は、国際エネルギー機関(IEA)によって提供された明確なロードマップに留意しつつ、また、最も緊急で汚染が激しい分野及び活動を優先しながら、関連する政策に支えられ、技術主導によるネット・ゼロへの移行を主導する。

 ・エネルギー分野では、我々はエネルギー効率を向上させ、再生可能エネルギー及び他の排出ゼロエネルギーの展開を加速させ、無駄の多い消費を減らし、エネルギー安全保障を同時に維持しながらイノベーションを活用する。国内的には、我々は、2030年代の電力システムの最大限の脱炭素化を達成すること、また、それを更に加速させる行動にコミットする。国際的には、我々は、国際的な公的資金を、2050年より前の温室効果ガス排出ネット・ゼロ及び2020年代に排出量を大幅に削減することの世界的な達成と整合性の取れたものとするようコミットする。我々は、野心的な気候中立への道筋、パリ協定、1. 5度目標及び利用可能な最良の科学に整合的な形で、国際的な炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する政府による新規の直接支援を、限られた例外を除き可能な限り早期にフェーズアウトさせる。野心が信頼性のあるものであるためには、我々の経済及び社会の全ての部門における目に見える行動によって支えられる必要がある。我々は、国際エネルギー機関(IEA)によって提供された明確なロードマップに留意しつつ、また、最も緊急で汚染が激しい分野及び活動を優先しながら、技術によるネット・ゼロへの移行を主導する。

 ・石炭火力発電が温室効果ガス排出の唯一最大の原因であることを認識し、また、このアプローチ全体及び我々の強化された「国が決定する貢献(NDCs)」に沿って、我々は国内的に、我々の2030年NDCs及びネット・ゼロ・コミットメントと整合的な形で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行を更に加速させる技術や政策の急速な拡大にコミットした。この移行は、誰一人、どの集団も、又はどの地域も取り残されないよう、政策、そして影響を受ける労働者及び部門にとっての公正な移行に対する支援と密接に関連を持って進めていかねばならない。石炭から離れるというこの国際的移行を加速させるため、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への継続した世界的な投資が1. 5度を射程の範囲内とし続けることと相容れないことを認識した上で、我々は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への国際的な投資をすぐ止めなければならない点を強調し、政府開発援助、輸出金融、投資、金融・貿易促進支援等を通じた、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了に今コミットする。この移行は、エネルギー移行委員会を通じた調整を含め、これを達成するための支援によって補完されなければならない。我々は、気候投資基金(CIFs)による作業、及び来年最大20億ドルを「石炭からの移行促進」及び「再生可能エネルギーの統合」プログラムに拠出するドナーの計画を歓迎する。開発途上及び新興国・地域における再生可能エネルギーの発展を支援するため、これらの譲許的資金は、民間部門からのものを含む共同融資によって100億ドルまで動員されることが期待されている。我々は、その他の主要経済国・地域に対し、こうしたコミットメントを採用するよう求め、また、最も汚染の激しいエネルギー源をフェーズアウトし、クリーンかつグリーンな移行を促進するため技術とインフラへの投資を拡大することについて我々に加わるよう求める。より大きい点では、我々は、2025年までに非効率な化石燃料補助金を終了させるとの我々の既存のコミットメントを再確認し、全ての国に対し、これによって移行を支援するために世界的に利用可能となる多くの資金源や明確なタイムラインにコミットする必要性を認識し、我々に加わるよう求める。

 ・運輸分野では、我々は、持続可能で、脱炭素化された移動と、バス、列車、海運及び航空産業を含む排出ゼロ車両技術を拡大することにコミットする。我々は、2020年代を通して、またそれ以降も、このために道路交通部門の世界的な脱炭素化のペースを劇的に加速させる必要性を認識する。これは、充電及び充填インフラを含む必要なインフラの展開の加速化、及び公共交通機関、共有モビリティ、自転車、徒歩を含むより持続可能な交通手段の提供の強化への支援を含む。我々は、排出ゼロ車両の導入を促進するために、ディーゼル車やガソリン車の新規販売からの移行を加速させることにコミットする。

 ・産業・イノベーション分野では、経済全体で排出ネット・ゼロを達成するため、我々は、鉄鋼、セメント、化学、石油化学等の分野を脱炭素化するための行動を取る。この観点から、我々は、既存のイニシアティブにおける野心を補完し、支援し、拡張するために、G7産業脱炭素化アジェンダの開始等を通じて、科学、技術イノベーション、政策デザイン、資金調達及び規制における我々の集団的な強みを活用する。これらには、グリーンな製品を定義し、これへの需要を刺激するとともに産業におけるエネルギー・資源効率を向上させるための、公共調達、基準及び産業努力に関する更なる行動が含まれる。我々は、電化及び電池、水素、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)、排出ゼロ航空・海運、原子力発電の使用を選択する国にとっては原子力発電に関する進捗を加速させることに焦点を当てる。したがって我々は、ミッション・イノベーションの第二段階及びクリーンエネルギー閣僚会合の第三段階の開始を完全に支持する。

 ・住居とビル、産業については、我々は、再生可能なエネルギーによる暖房及び冷房設備の配備や、エネルギー需要の削減において、緊急の行動変化を必要としていることを認識する。これは、ビルの設計や、持続可能な素材及び部品に関して移行が必要とされていることを補完する。したがって、我々は、世界で販売されている照明、冷房、冷蔵及び発動機システムの効率を倍増するという、「超効率的な設備及び機器の普及(SEAD)」イニシアティブの目標を歓迎する。

 ・農業、林業及びその他の土地利用に関する分野では、我々は、我々の政策が持続可能な生産、生態系の保護、保全及び再生、炭素の隔離を奨励するよう確保することにコミットする。我々は、COP26における「持続可能な農業政策への移行に関する対話」と9月の国連食料システムサミットにおいて、これらの課題を議論する機会を歓迎する。

40. 世界的なグリーンで強靱な回復という我々の共同の野心を達成することは、収入、イノベーション、雇用、生産性及び成長を高めるとともに、気候変動及び環境悪化による存亡に係る脅威に対処するための行動も加速させる、我々の時代における最大の経済機会を提供する。必要な資金と実際の資金フローの差を埋めるためには、資金の動員及び整合化とともに、誰も取り残さないネット・ゼロ排出の強靱な未来を支える技術、インフラ、エコシステム、ビジネス、雇用及び経済に対しての巨額の投資が必要とされる。これには、官民、国家、多国間のあらゆる資金源の展開及び整合化が含まれる。我々は、ネット・ゼロ経済への移行への資金調達に当たって開発途上国が直面する特有の課題を認識し、有意義かつ透明性のある脱炭素化努力の文脈で、これらのパートナーを支援するとの我々の二国間及び多国間のコミットメントを守る。我々は、意味のある緩和行動及び実施の透明性という文脈において、2025年にかけて、官民の資金源から年間1,000億ドルを共同で動員するという先進国共同の目標を再確認する。このために、我々は、それぞれ、この期間の我々の全体的な国際的公的気候資金を増加及び改善させることにコミットするとともに、他の先進国に対し、この努力に参加し、貢献を強化することを求める。我々は、気候資金を増やすため、G7のいくつかの国々が既に表明しているコミットメントを歓迎し、グラスゴーにおけるCOP26に先立ち、他の国からの新たなコミットメントを期待する。この数量及び予見可能性の増大は、実効性及びアクセス可能性の向上により補完され、適応や強靱性、災害リスク及び保険、さらには自然及び自然に基づく解決策への支援のための更なる資金貢献を含む。我々は、気候のための資金と生物多様性のための資金の相乗効果を更に強化すること、及び気候及び自然双方に共通便益をもたらす資金を促進させることにコミットし、自然及び自然に基づく解決策への資金量を増加させるために集中的に取り組む。我々は、気候及び自然資金を拡大させるためのMDBsの努力を歓迎し、それらに対し民間部門からのものを含む資金動員の増加を求め、それらや開発金融機関(DFIs)、多国間基金、公的銀行及び関連機関に対し、COP26までに、ハイレベルな計画と、これら機関の全ての事業がパリ協定の目的及び我々が支持する多国間環境協定に十分適合し、これを支援するまでの期日を公表するよう呼びかける。

41. 我々はまた、途上国や新興市場が、特に気候変動を緩和し、適応しつつ、移行期において最大限の機会を生み出すことを支援するため、これらの目標に向けた民間資本のより一層の動員に向けて現在進行中の変革を支持する。我々は、MDBsとDFIsに対し、これら機関の業務において資本動員のための戦略、イニシアティブ及びインセンティブを優先するよう求める。G7は、開発資金、DFIs間の更なる連携、気候投資基金及び緑の気候基金に対する何十億の価値のある計画されたコミットメント等、数十億以上の民間資金を動員する全てのものへの我々のより大きな戦略的手法等を通じて、異なった種類のブレンデッド・ファイナンス(様々な資金を組み合わせたファイナンス)の手段を活用することにコミットする。我々はまた、災害リスクファイナンス市場の更なる発展を奨励する。このため、G7のメンバーは、気候リスク保険強靭性グローバル・パートナーシップ及びリスク情報を活用した早期行動パートナーシップ(Risk-InformedEarlyActionPartnership)に則した形で、迅速な行動、災害リスク及び保険のために、数億もの価値がある新たな資金拠出にコミットした。我々は、ネット・ゼロへの移行を支援し、かつ奨励するために、民間資金向けの必要な市場基盤の構築にコミットする。世界的にグリーンな金融市場を発展させることは、民間部門の資金の動員を助け、我々のネット・ゼロへのコミットメントを達成するための政府の政策を強化する。我々は、最近立ち上げられた「ネット・ゼロのためのグラスゴー金融連合」を支持し、実体経済における排出を削減するという彼らのコミットメントの迅速で強固な履行を求める。我々は、一貫した、市場参加者の意思決定に有用な情報を提供し、かつ、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づく義務的な気候関連財務開示へ、国内の規制枠組みに沿う形で向かうことを支持する。我々はまた、自然関連財務情報開示タスクフォースの設立及びその提言に期待する。これらのイニシアティブは、必要とされる何兆ドルもの民間部門の資金を動員し、ネット・ゼロへの我々のコミットメントを達成するための政府の政策を強化することに役立つ。我々は、高い十全性のある炭素市場及び炭素の価格付けが、炭素の価格付けのための政策手段の最適な活用を通じ、費用効率の高い排出レベルの削減を促進し、イノベーションを推進し、ネット・ゼロへの転換を可能にする潜在力を有することを認識する。我々は、世界全体の排出ネット・ゼロの道筋の達成のため、我々の経済の脱炭素化を加速する公正かつ効率的な炭素の価格付けの軌跡を確立することの重要性を強調する。これら全てにおいて、我々は、女性及び女児が未来のグリーン経済に十分に参加できるよう、気候及び自然のための資金、投資及び政策へのジェンダーにおける取組を発展させる。

42. 生物多様性の損失は、気候変動とともに、我々の地球及び人々に対する、内在的に関連付けられ、相互に強化し合い、等しく重要な存亡に係る脅威である。この文脈で、我々は、G7として、我々が生物多様性の減少の一因となっていることを認識し、その回復と保全に我々の役割を果たすことを誓約する。我々は、生物多様性条約COP15において締約国により採択される、野心的な目標を設定し、履行を強化し、及び定期的な報告及びレビューを強化する野心的なポスト2020生物多様性枠組を支持する。我々は、自然への影響が我々の政策決定に当たり十分に考慮されることを確保するとともに、生物多様性及びこれを支える自然環境の損失の軌道を反転させる上で、世界を支援する我々の責任を認識する。

43. 本年の昆明での生物多様性条約COP15及びCOP26における自然のための力強い結果を支持し、2020年の第75回国連総会で立ち上げられた「リーダーによる自然への誓約」に留意し、我々は、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な任務を支えるG7・2030年「自然協約」を採択する。「自然協約」により、我々は4つの主要な柱にわたり行動をとることにコミットする。

 ・第一に、我々は、2030年までに世界の陸地の少なくとも30%と世界の海洋の少なくとも30%を保全又は保護することを含む、野心的かつ効果的な生物多様性に関する世界目標に向けて尽力することにコミットする。我々は、国の状況やアプローチに応じて、2030年までに、自国の陸水域と内水面を含む土地と沿岸・海域の少なくとも30%を保全又は保護することで貢献する。この行動は、絶滅の危機を食い止め、水及び食料の供給を守り、二酸化炭素汚染を吸収し、将来のパンデミックのリスクを減らすことを助ける。また、我々は、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)による、利用可能な最良の科学的証拠に基づいて条約地域における南極海の海洋保護区(MPAs)の代表システムを開発するためのコミットメントを全面的に支持する。

 ・第二に、我々は、持続可能な自然資源の管理及び利用への移行を支援し、及び、自然、ひいては生計に悪影響を及ぼす持続不可能かつ違法な活動に対処するため適切な手段を用いる。これにはプラスチックによる海洋汚染の深刻化に対処するための行動の加速化も含まれる。また、その行動には、第5回国連環境総会(UNEAー5. 2)を含む国連環境総会を通じて、既存の枠組みの強化及び海洋プラスチックごみに対処するためのあり得べき新たな協定又はその他の枠組みを含めた選択肢について取り組むことを含む。

 ・第三に、我々は、自然の保護、保全及び回復に対する投資を増加させることに向けて集中的に行動する。これには、2025年にかけて自然を活用した解決策のための資金を増加することにコミットし、気候と生物多様性の資金の相乗効果を最大化し、また、政策的及び経済的意思決定の双方において自然の重要性を確保することを含む。

 ・最後に、我々は、我々が締約国である多国間環境協定の強化された説明責任及び実施メカニズムを優先的なものとする。我々は自然協約を実施し、2030年ビジョンの実現を確保するため、必要に応じて我々の行動と野心を徐々に高める選択肢のレビューを行う今後5年間のG7首脳サミットの機会など、既存のG7のメカニズムを通じ、定期的に自然協約に対する我々の進捗をレビューする。生物多様性条約の締約国であるG7メンバー国は、COP15で合意される予定のポスト2020生物多様性枠組の成功裏の実施にも尽力する。

ジェンダー平等

44. ジェンダー平等は、開かれた、包摂的な、公正な社会の中核である。ジェンダー平等における継続的なギャップは、働きがいのある仕事、平等な賃金、社会的保護、教育、技術、多くの他の分野と同様、基礎的なサービスへのアクセスに影響する。また、家庭における無償のケア責任の不平等な分担と有償のケア労働の低賃金が、女性のエンパワーメント、社会的・経済的参画及びリーダーシップを制限している。ジェンダー平等は他の特性と交差する部分があり、あらゆる形態の人種差別やLGBTQI+の人々に対する暴力及び差別に対処することを含め、我々の行動はこれらの交差性を意義ある形で考慮する必要がある。我々は、特にジェンダーに基づく暴力、性と生殖に関する健康及び権利、教育及び雇用に関して苦労して勝ち取った進歩を逆行させる恐れがある、女性及び女児に対する新型コロナウイルスの破壊的及び不均衡な影響を認識する。

45. ジェンダーの公平・平等の推進は、より良い回復のための我々の計画及び政策の中心的な柱であり、女子教育、女性のエンパワーメント、女性及び女児に対する暴力の終焉、という三つの主要な優先事項からなる。ジェンダー平等の達成は、意思決定の全ての側面において、女性の完全、平等かつ有意義な参画に支えられる必要がある。我々は、「平等を目指す全ての世代フォーラム(GEF)」と緊密に協力することにコミットし、女性のエンパワーメントに関する初めてのG20閣僚会合の開催を称賛する。我々は、ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)の作業と提言に感謝し、秋に同評議会の詳細な報告書を受け取ることを楽しみにしている。我々は、この議題に関する我々の世界的なリーダーシップを示すため、ジェンダー平等に一貫して持続的に焦点を当てることに合意し、全てのG7議長国の常設の組織としてGEACを召集することを意図する。我々は、強固なデータとそれを時間をかけて追跡する方法がなければ、ジェンダー平等に向けて真の進展はなし得ないことを承知している。我々は、GEACが、ジェンダー平等を達成するためのG7のコミットメントを年毎に監視するため、説明責任ワーキンググループやタオルミーナ・ロードマップといった既存の説明責任のメカニズムと協働するよう奨励する。

46. 我々は、全ての個人の性と生殖に関する健康と権利(SRHR)を促進し保護するための我々の完全なコミットメントを再確認し、それらがジェンダー平等、女性及び女児のエンパワーメントにおいて、また、性的指向及び性自認を含む多様性への支援において果たす重要かつ変革的な役割を認識する。我々は、最もリスクに直面している人々、周縁化され不十分なサービスの提供しか受けていないグループに対する特別な注意を持って、新型コロナウイルスのパンデミックによる、性と生殖に関する健康と権利へのアクセスに対する悪影響を予防し、対処するために協働することにコミットする。新型コロナウイルスによる危機の間、女性及び女児に対する暴力が増加したことを認識しつつ、我々は、あらゆる形態の性的及びジェンダーに基づく暴力(GBV)を予防し、対応し、除去することにコミットする。我々は、女性のエンパワーメントを通じて、また、我々の国内、パートナー国国内及び紛争地域でのパンデミック対応及び回復等を含め、証拠に基づいたアクセス可能な生存者及び被害者中心の政策、予防及び支援プログラムの実施を拡大することにより、これを達成する。我々は、国際援助の中で性的搾取・虐待への対応について更に取り組むという、受益者やパートナー、彼らのコミュニティ、生存者に対する集団的責任を認識する。我々は、女性及び女児に対するジェンダーに基づく暴力を非難し、紛争下における性的暴力の行使を糾弾し、そのような行為が人道に対する罪又は戦争犯罪を構成することを強調する。我々は、現下の紛争に対応する様々な法的及び制度的枠組みに留意し、外務・開発大臣に対し、紛争に関連する性的暴力をめぐる国際的な体系を強化するためには何が最適か検討するよう奨励する。

47. 新型コロナウイルスは、もともとあった不平等を悪化させ、世界中の子供たち、特に最も周縁化されリスクに晒された女子の歴史の中で、最悪の教育危機の一つをもたらした。就学前から中等教育までの約1100万人の女子が学校に戻れないというリスクにさらされている。我々は、SDGのゴール4に関して、2つの新しい世界的な女子教育の重要目標にコミットする。一つは、2026年までに、低所得国及び低中所得国において4000万人以上の女子に教育を提供すること、もう一つは、2026年までに、低所得国及び低中所得国において2000万人以上の女子が10歳までに又は小学校終了時までに読解力を身につけることである。我々は、G7外務・開発大臣による「女子教育に関する宣言」を承認する。これらの目標は、持続可能な資金によって支えられなければならず、したがって本日、G7メンバーは、7月の増資に先立ち、教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)に対し、全てのプレッジを合わせて次の5年間で少なくとも27. 5億ドルの資金提供にコミットする。我々は他の主体に対し、G7と一緒に、GPEが十分に資金提供されるための野心的なプレッジを行うよう求める。

グローバルな責任及び国際的な行動

48. 我々は、ここカービスベイで我々と共に会合したインド太平洋地域及びアフリカからの国々、すなわち、豪州、インド、南アフリカ及び大韓民国の首脳と共に署名した「開かれた社会に関する声明」に反映されているとおり、国際システムにおける開かれた社会としての我々の共通の価値を推進するために協働する。さらにこれに加え、我々は、偽情報を含む民主主義への外国からの脅威に対抗するためにG7即応メカニズムを強化することを通じたものも含む民主主義支援に関する協力の強化、メディアの自由の強化及びジャーナリストの保護の確保、信教又は信条の自由の支持、あらゆる形態の人種差別の非難、紛争下において文民が保護されない場合を含む人権侵害への対処、「二国間関係における恣意的拘束の利用に反対する宣言」の強化やそのパートナーシップ行動計画の歓迎によるものを含む恣意的拘束の慣行への反対並びに不正な資金活動に関する情報の共有、ペーパーカンパニーの悪用への対処及び不正な行為者による不動産化を含む資産隠し能力の制限を含め腐敗に対する行動の必要性の認識にコミットする。我々は、安全で活力のある市民空間を確保することにより平和的で公正で包摂性のある社会の成長を支援する。我々の側でも、B7(ビジネス)、CS7(市民社会)、L7(労働)、S7(科学)、W7(女性)、Y7(若者)を含む社会のあらゆる分野を代表する外部のエンゲージメント・グループの観点と専門性からのインプットにより我々の議論は裨益している。我々は、これらの団体による我々の幅広い政策的な優先事項に関する検討と提言に感謝する。

49. 我々は、大国や主要エコノミーが担うルールに基づく国際システム及び国際法を堅持するという特別の責任を認識する。我々は、全てのパートナーと共に、またG20、国連及びより広い国際社会の一員として、この点における役割を果たすことにコミットし、他者に対し同様の行動を促す。我々はこれを、我々の共通のアジェンダ及び民主的な価値に基づき行う。中国に関して、そして世界経済における競争に関して、我々は引き続き、世界経済の公正で透明性のある作用を損なう非市場主義政策及び慣行という課題に対する共同のアプローチについて協議する。多国間システムにおけるそれぞれの責任の文脈において、我々は、相互の利益になる場合には、共通のグローバルな課題において、特に気候変動枠組条約COP26その他の多国間での議論で気候変動及び生物多様性の損失に対処するに当たり、協力する。同時に、そうした協力をする際にも、我々は中国に対し、特に新疆との関係における人権及び基本的自由の尊重、また、英中共同声明及び香港基本法に明記された香港における人権、自由及び高度の自治の尊重を求めること等により、我々の価値を促進する。

50. 我々は、我々の外務・開発大臣による5月の声明を承認する。これを基礎として、特に最近の進展を反映するため、我々は次のような当面の課題について改めて検討した。

51. 我々は、ロシアとの安定した、予測可能な関係への関心を改めて表明し、相互利益となる分野がある場合には引き続き関与する。我々は、ロシアに対し、他国の民主的システムへの介入等の不安定化を招く行動及び悪意のある活動を停止し、また、国際人権に係る自国の義務及びコミットメントを果たすよう求めることを再確認する。特に、我々はロシアに対し、ロシア国内で行われた化学兵器の使用について緊急に調査して信頼性のある説明を行い、独立した市民社会及びメディアに対する組織的な取締りを止め、また、国内でランサムウェア攻撃、身代金洗浄のための仮想通貨乱用その他サイバー犯罪を行う者を特定し、その活動を遮断し、責任を問うよう求める。

52. 我々は、国際的に承認された国境内におけるウクライナの独立、主権及び領土一体性への我々の支持を改めて表明する。我々はロシアに対し、緊張を緩和させ、国際義務に従い行動し、ウクライナの東部国境及びクリミア半島におけるロシアの軍隊及び軍需品を撤収させるよう求める。我々は、ロシアがウクライナ東部における紛争の当事者であり、仲介者ではないとの見方を堅持する。我々は、ミンスク合意の履行を確保するためのノルマンディー・プロセスへの我々の支持を確認し、ロシア及び同国が支援する部隊に対し、建設的に関与し、停戦合意に再度コミットするよう求める。我々は、改革について更なる進捗を促しながら、ウクライナの民主主義及び制度を強化する我々の取組を再確認する。

53. 我々は、FR4978便の強制着陸並びに独立系のジャーナリスト及び同人のパートナーの逮捕により示されたように、ベラルーシ当局による人権、基本的自由及び国際法に対する継続中の攻撃を深く懸念する。我々は、制裁を課すことを通じたものを含め、責任を持つ者に責任を負わせ、ベラルーシにおける市民社会、独立のメディア及び人権を支持し続けるべく協働する。我々はベラルーシの現体制に対し、方向転換し、欧州安全保障協力機構(OSCE)のモスクワ・メカニズムの下での独立専門家ミッションの全ての勧告を履行し、社会の全部門と意味のある対話を開始し、新たな、自由で公正な選挙を行うよう求める。

54. 我々は、エチオピアのティグライ地域において進行中の紛争、及び潜在的に何十万人もの人々が飢饉の状況にあることを含む、次々に明らかになる大規模な人道的悲劇の報告について深く懸念する。我々は、まん延する性暴力を含む進行中の残虐行為を非難し、進行中の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)による調査を歓迎し、報告されたティグライにおける人権侵害についての十分な説明及び人権侵害を行った者の裁きを求める。我々は、敵対行為の即時停止、あらゆる地域への妨害されない人道アクセス及びエリトリア軍の即時撤退を求める。我々は全ての当事者に対し、危機に対する唯一の解決策である、信頼性のある政治プロセスを追求するよう求める。我々はさらにエチオピアの指導者に対し、全てのエチオピア人の人権及び政治的権利の尊重に基づく未来に向けた国民和解及びコンセンサスを促進するため、より幅広い、包摂的な政治プロセスを前進させるよう求める。

55. サヘルにおける国際的動員の増大及びテロとの闘いの進展を認識しつつ、我々は、文民を標的とした攻撃の継続及び深刻化する人道危機について懸念を表明する。我々は全ての関係者に対し、人権及び国際人道法の尊重を強く求める。我々は、2021年2月のンジャメナ首脳会合において、サヘルのための連合に集結したG5サヘル各国政府及びそのパートナーにより合意された「民生的強化(civilsurge)」の政治及び民生に係る要素に焦点を当て、不安定化を促す要因に対処する取組を新たにするとの我々のコミットメントの実現に取り組む。我々は、チャド及びマリにおける最近の事案への対応におけるアフリカ連合及び西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)による取組を支持する。我々は、両国において、民主的で憲法に基づく統治への迅速な、かつ文民により主導される移行のための条件を作り出す必要性を改めて表明する。

56. 我々は、リビアの暫定行政機構による、ベルリン・プロセスの枠組みの下で国連による側面支援を受けたリビア主導及びリビア独自の安定の追求に対する全面的な支持を確認する。我々は、12月24日に、自由で、公正で包摂的な選挙が実施されることの重要性を再確認する。我々は、リビアからの全ての外国戦闘員及び傭兵の撤退を通じたものを含め、2020年10月23日の停戦合意の完全な履行の緊急の必要性を改めて表明する。全ての国家は、国連安全保障理事会決議第2570号及び第2571号を遵守しなければならない。

57. 我々は、アフガニスタンの全ての当事者に対し、暴力を削減し、恒久的かつ包括的な停戦の成功裏の実施を可能とするための方法に合意し、和平プロセスに完全に関与することを求める。アフガニスタンにおいては、持続可能で包摂的な政治的解決が、全てのアフガニスタン人に恩恵を与える公正かつ永続的な平和を達成する唯一の方法である。我々は、国の治安上及び人道上の緊急のニーズに対処するアフガニスタン政府に対する支援を維持し、困難の末に手に入れた権利及び自由を守り続けようとする女性、若者及び少数派を含むアフガニスタンの人々を支える決意である。

58. 我々は、朝鮮半島の完全な非核化並びに全ての関連する国連安全保障理事会決議に従った北朝鮮の違法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の検証可能かつ不可逆的な放棄を求める。我々は、全ての国に対し、これらの決議及び関連の制裁を完全に履行するよう求める。我々は、全ての関連するパートナーとの調整の下で外交的な取組を続ける米国の意欲を歓迎するとともに、北朝鮮に対し、対話に関与し、これを再開することを求める。我々は北朝鮮に対し、全ての人々の人権を尊重し、拉致問題を即時に解決することを改めて求める。

59. 我々は、ミャンマーにおける軍事クーデター及びミャンマーの治安部隊により行われた暴力を最も強い言葉で非難し、恣意的に拘束された人々の即時解放を求める。我々は、安定した包摂的な民主主義のために平和的に主張を行う人々への支援を約束する。ASEANの中心的役割を想起し、我々は、ASEANの「5つのコンセンサス」を歓迎し、その速やかな実施を求める。我々は、開発援助又は武器売却のいずれについても国軍を利することがないよう確保する我々のコミットメントを改めて表明し、ビジネスに対し、貿易及び投資を行う際に同様のデュー・ディリジェンスを実施するよう強く求める。我々は、必要性が明らかになるのであれば追加的な措置を追求することについて、G7の結束を再確認する。我々はまた、人道状況を深く懸念し、脆弱な人々や避難民に対する制限のない人道アクセスを求め、人道対応計画を支援し、そして他者に対し貢献するよう促す。

60. 我々は、包摂的で法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を維持することの重要性を改めて表明する。我々は、台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的な解決を促す。我々は、東シナ海及び南シナ海の状況を引き続き深刻に懸念しており、現状を変更し、緊張を高めるいかなる一方的な試みにも強く反対する。

61. 我々は、イランが決して核兵器を開発しないよう確保することにコミットしている。我々は、米国及びイランによる包括的共同作業計画(JCPOA)でのコミットメントへの復帰を達成するため、JCPOA参加国間での、また、米国との個別の実質的な議論を歓迎する。我々は、不拡散による利益を回復するというJCPOAの目標及びイランの核計画が専ら平和的な性質のものであることを確保するという目標を支持する。我々はイランに対し、透明性を減じる全ての措置を停止するとともに撤回し、国際原子力機関(IAEA)との完全な、かつ時宜を得た協力を確保するよう求める。回復され、完全に履行されるJCPOAはまた、地域及び安全保障上の懸念に更に対処するための道筋を整え得るものである。我々は、資金供与、訓練並びにミサイル技術及び武器の拡散を通じたものを含む、代理軍事勢力及び非国家武装主体に対するイランの支援を非難する。我々はイランに対し、国連安全保障理事会決議第2231号その他関連の決議に合致しない全ての弾道ミサイル活動及び拡散を停止し、不安定化させる行動を控え、地域の安定と平和を醸成するに当たって建設的な役割を果たすよう求める。我々は、2020年1月にイランにより撃墜されたウクライナ国際航空752便の犠牲者のための透明性、説明責任及び正義を追求する取組を支持する。我々は、イランにおける継続した人権の侵害に対する深い懸念を改めて表明する。

62. 我々は、クルド人のペシュメルガを含むイラクの治安部隊とイラク政府によるイスラム国(ISIS)への成功裏の対処を賞賛し、解放地域の安定化を含む取組に対する継続的な支援を確認する。我々はまた、イラクの主権、独立及び領土一体性への我々の支持を確認する。我々は、国連安全保障理事会決議第2576号と同決議における自由で公正な10月の選挙の実施確保を支援するための選挙監視の求めを完全に承認し、全てのイラク人に対し、同選挙への参加を促す。最後に我々は、イラク市民及びイラク政府の招請に応じISISとの戦いに従事するイラク軍への訓練及び助言のためイラクに滞在していた有志連合の要員に対する攻撃に関し、違法な武装集団の責任を問うイラク政府の取組を歓迎する。

63. 我々は、紛争、気候変動、社会経済的打撃並びに慢性的な資源及びインフラ不足による影響に既に苛まれていた最貧国に対する新型コロナウイルスの甚大な影響を認識する。革新的な措置や大規模な予算面での支援を含め、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に沿って我々の経済を支え、より良い回復を図るための回復計画を進めるに当たり、パートナーである開発途上国、特にアフリカの諸国が取り残されてはならない。我々は、パンデミックが持続可能な開発目標(SDGs)に向けた進展を後退させ、世界の不平等を悪化させ続けていることを深く憂慮し、それゆえ、アディスアベバ行動目標アジェンダ(AAAA)やSDGsに沿った資金の流れを支持することを含め、SDGsの2030年までの達成のための取組を強化することに改めてコミットする。我々は、「新型コロナウイルスの時代とその後における持続可能な開発のための2030アジェンダの資金調達イニシアティブ」を通じて策定された政策オプションに留意する。

64. IMFの試算では、現在から2025年までの間、低所得国はパンデミックへの対応に約2,000億ドルが必要であり、また、先進国・地域との格差解消のために2,500億ドルの投資支出が必要となる。我々は、G20及びパリクラブの「債務支払猶予イニシアティブ後の債務措置に係る共通枠組」を実施するとのコミットメントを再確認する。我々は、公正で開かれた貸付慣行を支持し、全ての債権者にこれを遵守するよう求める。我々は、情報共有の重要性を強調し、債務措置における民間及び他の公的な二国間債権者の措置の同等性の必要性を改めて表明する。我々はMDBsに対し、その資金のより効率的かつ効果的な利用を含め、開発途上国向けの追加的な資金を引き出すためのあらゆる選択肢を探求し、バランスシート最適化及び自己資本の十分性に関する枠組みの更なる分析に取り組むことを求める。

65. 我々は、6,500億ドルのIMF特別引出権(SDR)の新規配分を支持するG7財務大臣・中央銀行総裁の合意を歓迎し、透明性及び説明責任に関する措置を伴って2021年8月末までに実施されることを求める。我々はIMFに対し、喫緊の課題に対処する最貧国及び最脆弱国を支えながら、ワクチン接種を含む保健ニーズを更に支援し、最も影響を受けている国々のよりグリーンでより強固な回復を助けるため、SDRを融通する様々な選択肢を探求すべく、全ての関係するステークホルダーと迅速に協働するよう奨励する。G7諸国は、各国の状況及び法的な要件に沿った自発的なSDRの融通や予算からの貸付によるものを含め、最も必要とする諸国、特にアフリカへの今次一般配分の効果を増強するためのグローバルな取組の一貫として、我々がとり得るオプションを積極的に検討している。これには、IMFの貧困削減・成長トラストへの資金供給の拡大並びにIMFの低所得国支援の能力を強化するための譲許的資金及び政策の見直しが含まれる。世界合計で1,000億ドルという野心に達するとの我々の目標を支えるため、我々は、G7と並び、可能な他の国々に対し貢献を求める。我々はG7財務大臣・中央銀行総裁に対し、G20及びその他のステークホルダーと協働すること等により、その詳細を至急検討するよう指示する。

66. 我々は、3,400万以上の人々が食料不安の緊急水準に既に直面し、壊滅的状況又は飢餓の一歩手前の状況にあると国連が報告するように、世界が前代未聞の人道危機に直面していることに深い憂慮をもって留意する。この点において、我々はG7外務・開発大臣によりコミットされた「飢餓防止及び人道危機に関するG7コンパクト」を承認する。我々は、70億ドルを人道支援に提供し、人道アクセスと女性及び女児を含む文民の保護を促進する外交行動をとり、そして国連及び世界銀行グループと連携して先行的かつ早期の行動を強化するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、新型コロナウイルスのパンデミック、気候変動、経済的打撃、生物多様性の損失及び増大する紛争といった悪化要因に留意しつつ、貧困、飢餓及び栄養失調が世界的に拡大していることに注意を呼びかけるとともに、これらの傾向を逆進させ、世界の食料システムを強化するための更なる行動が必要であることに合意する。我々は、2015年にエルマウで作成された「食料安全保障及び栄養に関する広範な開発アプローチ」への我々のコミットメントを再確認し、食料安全保障、食料システム及び栄養への責任ある投資がSDGsの目標2(SDG2)及び世界保健総会の栄養目標を支援する上で必要不可欠であることに留意する。我々は、これら分野における強力なコミットメントが、今後本年内に開催されるG20、国連食料システムサミット、COP26及び東京栄養サミットにおいて表明されるよう促す。

67. 我々は、新型コロナウイルスのパンデミックにより深まった低中所得国のインフラに係る大きなニーズを認識する。我々の共通の価値及び共通のビジョンを反映し、我々は、開発途上国とのパートナーシップを強化し、開発途上国のインフラのニーズが満たされるよう支援するためのインフラ資金、とりわけ質の高いインフラ及び投資に対する我々のアプローチにおける変革を目指す。我々は共に、また他者と、既存の行動を基礎としつつそれを超えて、我々のパートナーのニーズを満たす現場での影響力の最大化を目指して世界のより良い回復を図るとともに、我々の共同の取組が個別の取組の総和以上のものとなることを確保するためのパートナーシップを発展させる。このパートナーシップは、開発資金ツールを、気候変動の影響に対処する強靭なインフラ及び技術、保健システム及び健康安全保障、デジタル・ソリューションの開発、ジェンダー平等の推進、教育等といった点において開発途上国が直面する幅広い課題に振り向けるものとなる。特別の優先事項は、パリ協定及び2030アジェンダに沿った、持続可能でグリーンな変革を牽引するクリーンかつグリーンな成長のためのイニシアティブである。我々のアプローチを支えるのは、以下の主要な原則である。

 ・価値誘導型ビジョン:我々は、透明性があり、財政的、環境的及び社会的に持続可能な方法で実施されるインフラの開発、実現及び維持は、受益国及びコミュニティにとって有益な成果をもたらすと信じる。

 ・集中的な協働:我々は、パートナーである開発途上国に対する共同のオファーの規模及び範囲をどのように拡大できるかの決定に当たっての協力を強化しながら、それぞれが自国のDFIsその他関連機関を通じ、必要な行動を追求する。

 ・市場主導:我々は、現在の資金及びファイナンシングのアプローチはインフラの資金ギャップに対処するには不十分であると考え、持続可能な形で、開発資金に関するアディスアベバ行動目標に沿って、リスクを削減し、利益が期待される分野における責任ある市場ベースの民間資本の大幅な増加を支援かつ促進し、そして、現地の能力を強化するための官民にまたがる強化され、より統合されたアプローチを通して民間部門の資本及び専門性を動員することを含め、我々が使える開発資金ツールの強化にコミットする。

 ・強力な基準:我々のアプローチとバリューが堅持されることを確保するため、また、頂点への競争を牽引するため、我々は、質の高いインフラ投資に関するG20原則を始めとする質の高いインフラに関する多国間で合意された基準に基づくことを含め、環境、社会、財政、労働、ガバナンス及び透明性にまたがる高い基準を我々のアプローチの中心的綱領とする。これは、受益コミュニティの市民に対し、彼ら・彼女らが期待し、また受けるに値する長期の利益をもたらすことに寄与する。我々は、債務持続可能性にも沿った、透明性があり、開かれ、経済性があり、公正で競争的な貸付及び調達のための基準と、主要債権国のための国際的なルール及び基準の遵守の重要性を強調する。

 ・強化された多国間ファイナンス:我々は、多くのMDBsその他の国際金融機関(IFIs)が、事業計画、実施、社会・環境セーフガード及び分析能力に関し最も高い基準を体現するようになったと認識する。我々はIFIsとともに、それら機関の触媒的な影響を強化し、影響力がありかつ持続可能なインフラ投資に必要な資本の動員を増強し、かつ、事業開発とディスバースの速度がパートナー国のニーズを満たすことを確保すべく、協働する。

 ・戦略的パートナーシップ:我々はこのイニシアティブを、最も喫緊のニーズに焦点を当てた、イノベーションと技術開発を支えるための、国家間の戦略的かつ実質的なパートナーシップの基礎として位置付ける。

我々は、これらの原則に基づいてアジェンダを前進させることに共に取り組み、オープンかつ協働的なやり方でそれが発展することを確保するために、開発途上国のパートナーを含め、他者と緊密に連携する。我々は、実践的な提案を発展させ、秋に我々に報告を行うためのタスクフォースを設置する。

68. 我々の新たな戦略的アプローチの中心的な焦点は、アフリカにおける持続可能な成長を支えることにある。2021年5月18日にパリで開催された「アフリカ経済の資金調達に関する首脳会合」の結論及びアフリカのパートナー諸国により表明されたニーズに基づき、我々は、我々の現在のパートナーシップを、アフリカ大陸並びにアフリカの諸国、組織及び専門性を核に据える新たなディールに深化させる決意である。これらの野心に則した形で、我々DFIs及び多国間パートナーは、アディスアベバ行動目標に沿って持続可能な経済回復及び成長を支援するために、アフリカの民間部門に次の5年間で少なくとも800億ドルを投資することを意図する。これは、2018年に立ち上げられたG7のDFIs間の2Xチャレンジ・パートナーシップ並びに資金、指導的役割、質の高い雇用及び安価なケアにアクセスする上で女性が直面する不均衡な障壁への対処を支援するため2021年5月にG7外務・開発大臣により表明されたように、同パートナーシップのための150億ドルの新たな追加資金目標を基礎とする。我々は、5月18日に立ち上げられたアフリカにおける起業のためのアライアンスを歓迎し、国際金融公社の主催下で、アフリカの将来に対し一層の投資を行い、その成長の機会を活用することに意欲を持つ官民の全てのパートナーの参加を得て、年末までにその第1回会合が開催されることに期待する。我々はMDBs及びとりわけ世界銀行に対し、アフリカの中小企業(SMEs)の利益のためのリスク配分手段を開発し、強化することにより、一層多くの民間資金をアフリカに動員するよう求める。我々は、アフリカにおけるビジネス環境を向上させるための主要な枠組みとしてG20の「アフリカとのコンパクト」への支持を改めて表明し、改革指向のパートナーに対し、このイニシアティブに参加し、これを強化するよう求める。我々は、G7外務・開発大臣に対し、第2回外務・開発大臣会合においてパートナーである開発途上国及びDFIsとの協働を続けるよう促す。

69. 開かれた社会として、我々は説明責任及び透明性、並びに我々が行った約束を堅持することにコミットする。この考えの下、我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ及びグローバル・ヘルスを前進させる保健システムを強化するとのG7のコミットメントについて報告するG7説明責任作業部会からの2021カービスベイ進捗報告書を承認する。我々は、2022年中の同部会からの次の包括的な進捗報告書に期待する。

結語

70. コーンウォールにおいて、我々は、G7のパートナーシップを再活性化した。グローバルな行動のための我々の共通のアジェンダは、我々が本年そして将来の議長国の下で引き続き協調していく上で我々が共有するビジョン及び目標を示すものである。我々は、そうする中で、より良い回復を確実なものにするため特にG20サミット、COP26、CBD15及び国連総会において他の国々と合流するのを楽しみにし、また、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催することに対する我々の支持を改めて表明する。

(了)