データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2021年開かれた社会声明

[場所] 
[年月日] 2021年6月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 我々、英国、豪州、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、インド、日本、韓国、南アフリカ、米国及び欧州連合の首脳は、全ての人々及び地球の責任ある管理のための尊厳、機会及び繁栄の基礎として、開かれた社会、民主的な価値及び多国間主義に対する共通の信念を再確認する。民主主義のもとで暮らす世界の過半の人々のリーダーとして、我々は、以下に関連する国際規則及び規範の尊重を含め、我々を結びつける価値を擁護することを再確認し、他国に対して奨励することが喫緊であると確信する。

 ●全ての人が完全かつ平等に社会に参加できるよう、世界人権宣言及び他の国際人権文書に定められている、全ての人のオンライン及びオフライン双方における人権と、あらゆる形態の差別への反対。

 ●責任及び透明性のある統治体制内における、自由かつ公正な選挙での各市民の投票権や、全ての人々の平和的な集会・組織・結社の権利を含む、民主主義。

 ●デジタルインクルージョン、物理的及びデジタル領域双方における市民的及び政治的権利の完全な享受を含む、社会的包摂性、連帯、全ての人のための機会均等。

 ●女子教育、ジェンダーに基づく暴力の撲滅のための対応及び取組、女性及び女児の権利の促進、性と生殖に関する健康と権利の擁護を通じたものを含む、ジェンダー平等並びに女性及び女児の政治的、社会的及び経済的エンパワーメント。

 ●民主主義を守り、恐怖と抑圧のない生活を人々が送ることを助ける自由としての、オンライン及びオフライン双方における表現の自由。

 ●各人が司法にアクセスし、公正な裁判を享受するための、法の支配、及び腐敗の影響又は強制から自由な、効果的で独立した公平な司法制度。

 ●全ての人の利益となる、新型コロナウイルスのワクチン接種を含む、世界的な課題に対する協働の他、自由かつ公正でルールに則った貿易へのアクセスを含む、開放性、透明性、説明責任の原則に支えられた効果的な多国間システム。

 ●人権及び基本的自由の促進における、市民領域及び人権擁護者を含む多様で独立した多元的な市民社会とのパートナーシップの重要性。

 これらの基礎的価値は、我々の包摂的な生活様式を規定し、我々の国民の利益となるものである。基本的自由は人々に力を与え、機会を最大化し、共通の課題に対処し、世界の発展を推進するために必要なイノベーションと創意を刺激する。開放性は、いかなる国が一国で達成できるよりもよい結果をもたらす協働を奨励する。

 新型コロナウイルスの流行からより良い回復を成し遂げる中で、我々は、誰一人取り残さず、我々の国民に対しより良い生活の質をもたらし続けなければならない。我々は重要な分岐点におり、顕在化する権威主義、選挙介入、腐敗、経済的強制、偽情報を含む情報操作、オンライン上の危害やサイバー攻撃、政治的な動機によるインターネットの遮断、人権侵害、テロ及び暴力的過激主義による、自由及び民主主義に対する脅威に直面している。我々はまた、人種差別及びジェンダー平等への抵抗を含む、継続した不平等と差別による、我々の社会構造に対する脅威に直面している。これらの脅威の中で、我々は、全ての人に対する普遍的人権及び平等な機会を促進する未来に向けて、開かれた、包摂的な、ルールに基づく国際秩序を構築していくために協働する。我々の民主的なシステムは強固で強靭であるが、我々はそれに満足してはいけない-我々は、我々自身の脆弱性に対応し、共通の脅威に対処する。この精神のもと、我々はパートナーと以下の事項について協力することにコミットする。

 ●市民領域及び報道の自由を保護し、表現の自由及び集会・結社の自由、信教や信条の自由を促進し、人種差別を含むあらゆる形態の差別に取り組むことにより、開かれた社会を世界的に強化すること。

 ●情報交換を継続し、「即応メカニズム」といった関連のパートナーシップを通じたものを含め、偽情報や恣意的拘束等の、人権及び民主主義、法の支配に対する共通の脅威に対する効果的な対応をしかるべく調整すること。

 ●開かれた市場、公正な競争及び法の支配を基礎とした我々の共通の経済モデルを再び主張し、また、世界貿易機関を改革することにより、経済的な解放性及び強靱性を促進し、経済的強制に反対すること。

 ●腐敗及び不法な資金の流れを予防かつ対処し、清廉性、透明性及び説明責任を促進すること。

 ●包摂性を促し、能力構築を通じたものを含むデジタル面での市民領域を保護する、国際的に受け入れられた規範の尊重を促進し、新技術の設計及び適用が我々の共通の価値を反映し、人権及び国際法を尊重し、多様性を促進し、公共の安全に関する原則を取り込むことを確保すること。ジェンダー平等及び女性のエンパワーメント、世界的な回復における女性及び女児の人権の十分な享受、障害者の包摂、教育と雇用における若者の機会均等を優先課題とすること。

 ●全ての国々に対し、研究の透明性と研究インテグリティの向上を求めることにより、世界的な課題への科学に基づいた対応について協働し、イノベーションを促進すること。

 ●「公正で平和的で包摂的な社会を促進する」という持続可能な開発目標(SDGs)の目標16を含むSDGsや、開発課題のために重要となる資金繰りに対応するための具体的な行動を含む、2030アジェンダの開発途上国による達成に向けた支援へのコミットメントを強化すること。

 我々は、G20サミット、国連・米国民主主義サミットを含む他の多国間枠組みにおいて、これらのコミットメントに基づき取組がなされることを楽しみにしている。我々は、全ての人のために、これらの共通の価値を積極的に促進するため、インド太平洋及びアフリカを含む世界中のパートナーと協働することを決意する。我々は、志を同じくする全てのパートナーに対し、本声明を支持するよう求める。