データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7英議長国による声明:COPへの道

[場所] イギリス・コーンウォール
[年月日] 2021年6月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

I.はじめに

 我々が、11月のグラスゴーにおける国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)までの先を見通すに当たり、G7議長国としての、また、来るグラスゴーにおけるCOP26の議長国としての英国が、イタリアと連携して発出したこの声明は、2021年6月12日~13日のカービスベイ・サミットに出席したG7各国及びゲスト国による新たな気候及び自然に関するコミットメントの全体像を把握するものである。パリ協定に沿って、議長国は、先進国が、経済全体にわたる総量削減目標を実行することによって、また、緩和の努力及び気候変動の影響に適応する上で開発途上国を支援するための気候資金を動員することにおいて、主導的な役割を担い続けるべきことに留意する。

II.カービスベイにおける議論

 カービスベイにおける会合の間、英国、豪州、カナダ、欧州連合(EU)、フランス、ドイツ、イタリア、インド、日本、韓国、南アフリカ、及び米国の各首脳は、自然、人類、繁栄及び安全保障を脅かす、気候変動と生物多様性の損失という相互に関連した課題について議論した。彼らに加えて、国連、国際通貨基金、世界銀行、及び経済協力開発機構(OECD)の長が、「COP26の市民代表」であるデイビッド・アッテンボロー卿と共に出席した。同卿は、首脳に対し、環境危機を回避するために、緊急の行動をとることを呼びかけた。

 「気候変動を取り上げることは、今や、科学あるいは技術上の課題であるのと同様に、政治及びコミュニケーション上の課題でもある。我々は、気候変動に適時に対処するスキルを有している。我々全てにとって必要なのは、気候変動に対処するという世界的な意思である。(中略)このG7の会合において、中国における生物多様性COPにおいて、またグラスゴーにおけるCOP26においてなされる決定は、これまで人類が行ってきた決定の中で最も重要な決定である。」

 G7サミットにおける議論は、グラスゴーにおける国連気候変動枠組条約のCOP26、及び昆明における国連生物多様性条約のCOP15を心待ちにしつつ、この同卿のメッセージを確認するとともに、2021年が、持続可能な未来の達成に向けての国際的なリーダーシップにとって不可欠な年であることを強調した。ジョンソン首相が述べたように、

「我々の気候上の難問を解くのは見かけ上単純で、ネット・ゼロを達成し、世界の気温上昇を1.5℃に抑えることだ。私は、ネット・ゼロへの移行を支援し、グリーンな産業革命を始動させ、変化する気候が我々に何を投げかけようとも揺らぐことのない経済を構築するために可能な、いかなる場所及びいかなる時においても、G7各国が彼らの声と投票権を用いるというコミットメントを、常に求めていくことになる。我々は、気候資金における既存のコミットメント、すなわち年間1,000億ドルの目標という長年の懸案を必ず達成しなければならないし、そこからさらに踏み込んでいかねばならない。先進国は、自分たちのみで気候変動を食い止めることはできないが、他の国々に対し、我々先進国に対してむしろそのような影響をもたらし、汚い技術を迂回して一気に発展するよう求めるのであれば、我々には、途上国がそうするのを支援する道義上かつ実践上の義務がある。」

III.COP26議長国目標を支援する

 COP26議長国目標を考慮して、ジョンソン首相は、自国経済及び途上国経済における世界的なグリーン移行を促すとともに、ネット・ゼロに到達する道筋において途上国を支援するために取っている特定の行動を開始するよう、パートナーを会議に招待した。

目標1:今世紀半ばまでに世界のネット・ゼロを確実なものとし、1.5℃を射程に入れ続ける

 COP26に先立って、COP議長国である英国は、全ての国に対し、今世紀半ばまでのネット・ゼロ到達と整合的な2030年の野心的な排出削減目標(国が決定する貢献(NDC))を提出するよう、呼びかけている。こうした限界を超える目標を達成するために各国に必要なのは、石炭のフェーズアウトを加速し、森林減少を抑制し、電気自動車への切り替えの速度を上げ、再生可能エネル

ギーへの投資を推奨することである。

 カービスベイ・サミットにおいて、首脳は、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5度高い水準までのものに制限するための努力を、この努力が気候変動のリスク及び影響を著しく減少させることとなるものであることを認識しつつ、継続するための、世界的な義務について議論した。国ごとに道筋が異なり得ること、及び開発途上国、特に気候変動の影響に対し最も脆弱な国が直面する固有の課題を認識しつつ、首脳は、パリ協定の気温目標を射程に入れ続けるため、この10年間で排出を大幅に削減し、世界の温室効果ガスの排出ネット・ゼロに可能な限り早期に到達する上で必要とされる共同の取組を認識した。

 G7カービスベイ首脳コミュニケにおいて詳述されたG7首脳による共同のコミットメントを超えて、英国は、2030年までに、1990年の水準から少なくとも68%、2035年までに78%の排出を削減するとのコミットメントを再確認した。豪州は、2005年の水準から26~28%以下という2030年までの排出削減目標を超過達成するとともに、長期戦略を、COP26に先立ち発表するとの意思を再確認した。カナダは、2030年までに、2005年の水準から40~45%の排出を削減するとのコミットメントを再確認した。EUは、2050年までに気候中立に到達するとともに、2030年までに、1990年の水準から少なくとも55%の純排出を削減するとのEU全体の目標へのコミットメントを再確認した。フランスは、2030年までに、1990年の水準から40%の排出を削減するとのコミットメントを再確認した。ドイツは、2045年までにネット・ゼロに到達するとともに、2030年までに、1990年の水準から65%の排出を削減するとのコミットメントを再確認した。イタリアは、2030年までに、1990年水準から33%の排出を削減するとのコミットメントを再確認した。日本は、2030年度において、2013年度から46%削減するとともに、50%の高みに向け、挑戦を続けるとのコミットメントを再確認した。韓国は、2050年までにネット・ゼロを達成するとともに、更新されたNDCをCOP26において発表するとのコミットメントを再確認した。米国は、2030年において、排出を2005年の水準から50~52%以下にするとの、更新されたNDCにおける目標へのコミットメントを再確認した。

 カービスベイにおける議論の中で、首脳は、再生可能エネルギー及びクリーンエネルギー技術の加速された展開に勇気づけられた。デイビッド・アッテンボロー卿は、発言において石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因であることを強調し、その文脈において、首脳は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行の更なる加速及び電力システムの最大限の脱炭素化の必要性を議論し、2021年5月に国際エネルギー機関(IEA)により発行された「2050年までのネット・ゼロ」報告書に記載されているフェーズアウトの日程が先進国及び開発途上国で異なることに留意した。

 また、首脳は、回復において、グリーンな成長を促進し、気候変動に対処するための持続的な政策支援と投資の重要性を認識した。首脳は、議論において、パリ協定に沿って、誰一人、どの集団も、又はどの地域も取り残されないよう、国の定義する開発の優先順位に従って、労働者の公正な移行並びに働きがいのある仕事及び質の高い仕事の創出の必要性に留意した。

 G7カービスベイ首脳コミュニケにおいて詳述されたG7首脳による共同のコミットメントを超えて、英国は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を2024年までにフェーズアウトするというコミットメントを再確認し、化石燃料への新規の国際的な直接支援を2021年中に終了することをコミットし、ガソリン車及びディーセル車を2030年までに、ハイブリッド車及びプラグインハイブリッド車を2035年までにフェーズアウトすることをコミットした。カナダは、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を2030年までにフェーズアウトするというコミットメントを再確認し、海外における石炭火力発電、採掘、インフラのための新規融資を行わないことをコミットし、国内における新規又は拡張した石炭採掘はカナダの気候計画と整合しないことを確認した。EUは、排出削減対策が講じられていない第三国における新たな石炭インフラに対する、全ての資金を直ちに終了するというコミットメントを再確認した。フランスは、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を2022年までにフェーズアウトするというコミットメントを再確認し、石油への政府による国際的な直接支援を2025年までに、ガスに関しては2035年までに終了させるというコミットメントを再確認した。また、フランスは、2040年までにガソリン車及びディーゼル車の新規販売を終了するとコミットした。ドイツは、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を遅くとも2038年までにフェーズアウトするというコミットメントを再確認し、2030年までに700万から1,000万台の電気自動車を導入するという目標にコミットし、石油、天然ガス、ガソリン、ディーゼルの燃焼から生じる全ての排出に対する価格を導入した。イタリアは、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を2025年までにフェーズアウトするというコミットメントを再確認し、2025年までに400万台、2030年代までに600万台の電気自動車を段階的に導入するという目標にコミットした。インドは、2030年までに450ギガワット(GW)の再生可能エネルギーを設置するというコミットメントを再確認し、2030年までにインド鉄道を炭素排出ネット・ゼロにするというコミットメントを再確認した。日本は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了へのコミットメントを表明し、2035年までに、新規販売される全ての乗用車を電動化するという目標にコミットした。韓国は、海外の石炭火力発電プラントへの公的資金を止めることをG7同様にコミットした。南アフリカは、石炭への依存度を現在のエネルギー構造の89%から、2030年までに59%に削減するという目標に留意した。米国は、2035年までに電力セクターをネット・ゼロにするという国内目標に及び排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了にコミットした。

 首脳は、移行においてビジネス界、労働者、市民社会及び地方自治体が果たす中心的役割を認識し、「ゼロ排出に向けた競争(Race to Zero)」キャンペーンを通じたコミットメントに留意し、より多くのパートナーにCOP26に先立ち参加するよう求める。

目標2:コミュニティと自然生息地を保護するための適応策

 気候はすでに変化しており、我々が排出量を削減しても変化し続け、壊滅的な影響を及ぼす。COP26では、気候変動の影響を受ける国々が、生態系の保護と回復、防御策や警戒システム、強靭なインフラや農業を構築し、家や生活、さらには命の損失を回避できるよう、協力していく必要がある。

 カービスベイにおいて、首脳は既に世界中で経験されている気候変動の壊滅的な影響についての見解を共有し、気候変動及び生物多様性の損失の影響に適応し対応するため、脆弱な人々、コミュニティ、及び自然の生息地を支援することにコミットした。議長は、途上国のパートナーが気候変動の悪影響に対して特に脆弱であるというパリ協定の認識を確認した。この取組を支援するため、首脳は、(「国家適応計画」を含め)国家計画に応じて、また、地方及び国以下のレベルにおいて、適応行動に対する資金源の規模を拡大させる必要性について議論した。さらに、首脳は、国の状況やアプローチに応じて、2030年までに少なくとも世界の陸地の30%及び世界の海洋の30%を保全又は保護するための「30by30」目標、並びに国内目標を支援するという重要な目標を認識した。生物多様性条約COP15は、2030年への新たな目標を含む、新たな「生物多様性の世界的枠組」を決定する10年に一度の機会である。

 コミュニティと自然生息地を保護するための適応を支援するため、英国は適応に関する情報を提出し、リスク情報を活用した早期行動パートナーシップ(REAP)及び気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップのパートナーとなっている。気候変動によって引き起こされるダメージや損失に対処し、命を守るため、英国、ドイツ、そして米国は支援パッケージにコミットした。この一環として、英国とドイツは、地域のリスクプールを通じて脆弱なコミュニティに事前に手配された災害リスクファイナンスを提供し、REAP及び気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップの保護目標に貢献するため、1億2千万ポンド、1億2千5百万ユーロの新規融資をそれぞれコミットしている。英国とインドは、災害に強靭なインフラのためのコアリション(CDRI)の下、小島嶼開発途上国(SIDS)向けの新しい施設を通じて、気候変動に強靭なインフラを促進することを共同でコミットした。豪州は、「災害に強靭なインフラのためのコアリション(CDRI)」の執行メンバーであり、COP26までに「適応に関する情報」を提出することを約束し、「適応のための行動に関するコアリション」と「気候に強靭な投資のためのコアリション(CCRI)」にも参加している。カナダは気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップ、CDRI、「気候に強靭な投資のためのコアリション(CCRI)」に参加、及び「適応のための行動に関するコアリション」へ参加しており、COP26までに適応に関する情報に参加し提出することをコミットした。EUは、気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップに参加し、フランス、ドイツ、イタリアを含むメンバー国を代表してCOP26までに適応に関する情報を提出することをコミットした。フランスは気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップ及びREAPに参加した。ドイツは気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップ及びREAPに参加した。イタリアはCCRIに参加した。小島嶼開発途上国に関するコミットメントと共に、インドは「適応のための行動に関するコアリション」に参加した。日本は気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップ、REAPそして「適応のための行動に関するコアリション」の運営委員会に参加し、実行可能であればCOP26までに適応に関する情報を提出することにコミットした。生物多様性に関して、インドと南アフリカは、海洋を保護することと各国が協力して行動することの重要性を指摘した。米国は気候リスク保険強靱性グローバル・パートナーシップ及びREAPに参加しており、COP26までに適応に関する情報を提出することをコミットした。米国は「適応のための行動に関するコアリション」に参加した。また、CDRIの活動への支援を表明し、SDISの気候変動への強靭性の強化を含め、エネルギーシステムを変革し、島や遠隔地のコミュニティの強靭性を高めるための新たなイニシアティブにコミットした。カナダと英国は海洋リスク及びレジリエンス行動アライアンス(ORRAA)に正会員として参加した。フランス、ドイツ、イタリア、日本、米国、EU、そしてインドはORRAAにオブザーバーとして参加した。

 英国は「海洋プラスチック憲章」を支持し、英国の5億ポンドのブループラネット基金は、ガーナ、インドネシア、太平洋島嶼国などの国々が、持続不可能な漁業に対処し、マングローブやサンゴ礁などの沿岸生態系を保護・回復し、海洋汚染を削減することを支援する。豪州は、「自然と人々のための高い野心連合」に参加し、気候変動に対する自然を活用した解決策への資金を増加している。また、ブルーカーボン・イニシアチブと海洋保護への支援を拡大するために1億ドルを拠出し、G7と共に世界的な「30by30」目標への支持を確認し、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界共通のものとすること及び海洋プラスチック汚染に関する世界的な合意の形成を支援している。カナダは、今後10年間でさらに20億本の木を植えることにコミットしており、2018年のG7議長国のときから「海洋プラスチック憲章」を先導している。EUは、「海洋プラスチック憲章」を支持し、次回の国連環境総会で新しい世界的なプラスチック協定の交渉を開始することを支持した。フランスは「海洋プラスチック憲章」を承認した。ドイツは「海洋プラスチック憲章」を承認した。イタリアは「海洋プラスチック憲章」を承認した。インドは、G7と共に世界的な「30by30」目標への支持を確認し、2030年までに国内の土地劣化の中立性を達成し、劣化した土地を2,600万ヘクタール回復させることを約束した。日本は、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組を含め、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界共通のものとすることに取り組んでいる。韓国はG7と共に、「自然と人々のための高い野心連合」を支持し、世界的な共同の「30by30」目標を支持することを確認した。

目標3:資金の動員

 我々のこの初めの2目標を果たすため、全ての資金の流れはパリ協定と整合的にならなくてはならない。先進国は2025年までの官民の資金源から年間1,000億ドル以上の気候資金を動員するという約束を履行しなければならない。加えて、国際金融機関は彼らの役割を果たすべきであり、我々は世界的なネット・ゼロを確保するために必要な官民セクターにおける数兆もの資金の解放に向けて取り組む必要がある。

 カービスベイにおいて、首脳は、コペンハーゲンでコミットされ、パリで再確認された先進国による途上国への年間1,000億ドルの気候資金動員を含む官民の気候資金の拡大の喫緊の必要性について議論した。この文脈において、首脳は、適応と自然のための資金の拡大と気候資金の実効性及びアクセス可能性の向上について、それらの重要性を確認した。首脳は、グリーンで気候強靭な回復をいかにして達成するのかについて議論し、全ての国においてこれを支持するためには、世界的に金融部門が変革されることが必要であり、それが世界的資金需要を満たす上で主要な役割を果たすことに留意した。首脳は、資金動員には、先進国主導による官民双方を含むグローバルな努力を必要とすることに合意し、国際開発金融機関(MDBs)、国際金融機関(IFIs)及び開発金融機関(DFIs)に対し、民間との協調融資を含め気候及び自然のための資金を増加させ、これら機関の政策及び投資を2023年まで又は早期にパリ協定に整合させるよう確保することを求めた。首脳は、MDBs、DFIs及びその他の公的金融機関に対し、緩和、適応及び強靭性のための民間資金を動員する解決策並びに野心的なNDC、気候強靭性及び気候を支える経済政策の実施を追求する開発途上国を支援する解決策の策定を加速させることを求めた。首脳はまた、途上国や新興市場が、特に気候変動を緩和し、適応しつつ、移行期において最大限の機会を生み出すことを支援するため、これらの目標に向けた民間資本のより一層の動員に向けて現在進行中の変革を支持した。

 途上国への資金動員を支援し、G7カービスベイ首脳コミュニケにおいて詳述された共同のコミットメントを超えて、首脳は最近、2025年にかけて気候資金を増加及び改善させるための以下の特定のコミットメントを行った。英国は2021年から2025年の気候資金を(2016年から2020年と比較して)116億ポンドに倍増し、このうち適応の約半分の30億ポンドを自然のために、また全てを主に無償資金に基づくものとする。豪州は、5年間にわたり気候資金を増加させ、その3分の1を大洋州の小島嶼開発途上国に向けるというコミットメントを再確認した。カナダは、2025年にかけて、気候資金を53億カナダドルに倍増し、無償資金の配分を40%に増加する(この資金には、適応、生物多様性及び自然に基づく解決策のための資金の増加が含まれる)。EUは、2021~27年にわたり気候資金を240億ユーロに増額し、生物多様性目的の年間支出を2024年には7.5%に、2026年と2027年には10%にするという野心に向けて取り組む意図を再確認した。フランスは、2025年に向けて気候資金を(2020年時点で50億ユーロから)年間60億ユーロへと増額し、その3分の1を適応に向けるとともに、2030年までに気候資金の30%を生物多様性との共通便益に向けるとのコミットメントを再確認した。ドイツは、遅くとも2025年までに気候資金を40億ユーロから60億ユーロに増加することを将来の見込みとして公表した。日本は、今後5年間で6.5兆円の気候資金の延長と、適応のための支援の更なる強化を含めた気候資金の質の向上にコミットした。米国は、2024年までに公的気候資金を倍増して57億ドルとし、適応資金についても三倍増とすることを誓約し、国際開発金融公社(DFC)及びミレニアム挑戦公社を通じたコミットメントについても増加させている。議長は国連総会に先立って予定されるイタリアによるコミットメントも含め、COP26に先立ち、他の国からも更なるコミットメントを期待する。韓国は2025年までに環境関連のODAを増額させるとともに、途上国のグリーン移行と炭素中立な経済成長を加速させるためにグリーン・ニューディール信託基金に500万ドルを拠出する。排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行を決意した開発途上国の努力を支援するために、英国、カナダ、ドイツ及び米国は、今後1年間に気候投資基金の「石炭からの移行促進」及び「再生可能エネルギーの統合」プログラムに対し20億ドルまでコミットすることを計画しており、この計画は最大で100億ドルの民間資金を直接動員することが期待されている。

 G7カービスベイ首脳コミュニケで詳述されたG7首脳による共同のコミットメントを超えて、英国は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に沿った義務的開示の2023年までの大多数への適用、2025年までの全面適用にコミットした。フランスは、ワンプラネットサミットの枠組を通じての我々の経済のグリーン化の促進のため、官民双方のパートナーと協働するとともに、2021年5月の金融市場参加者の追加的財務透明性に関する規則の公表によりTCFDの提言を完全に実施した。日本は、主要上場企業におけるTCFDに基づく開示の義務化に向けた措置をとっている。米国は、気候関連の金融リスクを特定し開示するための包括的な政府全体の戦略の策定にコミットしている。

目標4:協働して実現する

 我々は、協力してこそ気候危機の課題に立ち向かうことができる。COP26において、議長国は、政府、ビジネス界、市民社会の協力により、気候危機に取り組むための行動とパートナーシップを加速させなければならないことを明確にしている。多国間プロセスの中で、次期COP26議長国である英国は、「どの問題も、どの締約国も取り残さない」という野心的な交渉成果の一環として、パリ協定実施指針(パリ協定の運用を可能とするための詳細規定)の未決定の要素の合意を促進することをコミットする。

 カービスベイにおいて、首脳は、気候変動及び生物多様性の損失という二重の課題と戦うための国際的な協働の重要性、並びに、グリーン技術及び自然に基づく解決策の発展及び展開を加速させるための協働の深化の重要性について議論した。首脳は、新たな「産業脱炭素化アジェンダ」を含む産業の脱炭素化に向けて、標準設定、投資支援及び調達といった政策手段を調整することを含め、いかに産業の脱炭素化に関して最良の協働を行えるかについて、より広範なイニシアティブ及びパートナーと協働し、議論を行った。また、途上国におけるクリーンエネルギーへの公正な移行によってもたらされる新たな経済的機会と持続的で質の高い雇用創出を支援するために、エネルギー移行協議会を含む国際的な協力体制のあり方についても議論した。

国際協力を支援するため英国は「リーダーによる自然への誓約(LPN)」に署名した。英国は、インドネシアと共同で森林、農業、コモディティ貿易(FACT)対話を立ち上げ、引き続き共同議長を務める。また、カナダ、EU、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国も「リーダーによる自然への誓約(LPN)」に署名した。EU、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、米国は森林、農業、コモディティ貿易(FACT)対話に参加している。G7メンバー国に加え、豪州、韓国、インドは、ミッション・イノベーション2.0(MI)とクリーンエネルギー大臣会合3.0(CMI)を支援し、低排出技術の開発と展開のペースを加速している。米国は2022年にCEM及びMI会合を主催する予定であり、いくつかのグローバルな技術革新イニシアティブの陣頭指揮を執っている。インドは、2023年にCEMとMIの会議を開催する予定である。インドは、英国と共に、COP26排出ゼロ車両移行協議会及びエネルギー移行委員会を通じて建設的な指導力を発揮することと並び、COP26においてグローバルなグリーン・グリッド・イニシアティブを立ち上げることにコミットした。インド韓国は、G7メンバーと共に、「超効率的な設備・機器の普及(SEAD)」イニシアティブに賛同し、2030年までに世界で販売される主要なエネルギー使用製品のエネルギー効率を2倍にするという目標を承認した。

IV.英国・イタリア共同声明:COP26までの5か月の道のり

 我々が、カービスベイから、9月のミラノにおけるプレCOP及び10月のローマにおけるG20を経て11月のグラスゴーを見通すに当たり、英国とイタリアは、G7、G20及びCOP26の議長国という立場を通して、また、この立場を越えて、全ての国と協働し、気候と自然に関するグローバルな行動を増加させることにコミットしている。2℃よりも1.5℃の方が、気候変動の影響がより回避されることを認識した上で、英国とイタリアは、全ての国がそれぞれの役割を果たし、1.5℃を射程に入れ続けるための措置をとることを求める。英国とイタリアは、パリ協定の実施を強化し、その潜在的な可能性を十分に引き出すことに対し、力強く不動のコミットメントを有していることを確信する。カービスベイでの議論において、そして本年を通じて、パリ協定の目標を達成するために、世界の排出、資金及び適応に関する重要なコミットメントを行ってきた。しかし、意味ある更なる行動が必要であり、COP26にかけての5か月を通じて、英国及びイタリアは、全ての国との協働を続け、4つのCOP26議長国目標に向けた野心的なコミットメントを行うよう、働きかけていく。

 英国とイタリアは、国連気候変動枠組条約COP26及び生物多様性条約COP15を迎えるに当たり、それぞれの議長国としての立場を活かして、機運を構築する意思を有している。我々は、包摂的で野心的なCOP26及び包括的な交渉成果にコミットし、全ての国、ビジネス界、市民社会、市民及びその他のステークホルダーが、我々と共に取組強化に参画することを求める。我々はビジネス界に対し、「強靭性のための競争(Race to Resilience)」及び「ゼロ排出に向けた競争(Race to Zero)」キャンペーンを通じた形を含め、科学に基づく目標を設定するよう奨励する。全体としてこれらの行動は、我々が2021年を、地球にとっての転換点とすべく一体となって追求していくに当たって、極めて重要となる。