データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7研究協約

[場所] 
[年月日] 2021年6月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 民主的な価値観をもつ開かれた社会として、我々は学問の自由を信じている。知的探求を行い、革新を行う自由は、我々が共通の課題に対する進歩を可能にし、全世界が裨益する知識と発見の先端領域を前進させることを可能にする。我々は、研究及びイノベーションが根本的にはグローバルな取組であることを認識する。各国、市民、各機関及びビジネス界は、国境を越えた開かれた研究協力を通じて、そうでなければ可能でなかったような非常に大きな前進を成し遂げてきた。我々は協働し、主導的な科学大国としての地位を活用して、グローバルな課題に関して協力し、研究の透明性とインテグリティを向上させ、イノベーションの推進と知識の前進のため信頼性のある自由なデータ流通を促進する。

共通の価値

 新型コロナウイルスへのグローバルな対応によって、科学を予防・準備・対応・回復及び強靭性の中心に据えた長期的協力がもたらす進歩が実証された。こうした進歩には、基礎研究やハイリスク・ハイリターンの取組に対する投資をはじめ、研究やそれを支えるインフラへの持続的な投資を必要とする。我々の国やコミュニティがパンデミックから回復して将来の衝撃に対する強靭性を備えるに当たり、我々は研究コミュニティやビジネス界との協力を継続し、特に最先端領域における研究のセキュリティの重要性を認識しつつ、知識、データ及びツールを可能な限りオープンかつ迅速に共有する際の障壁を取り除くとともに、オープン・サイエンスを促進し、オープンで安全かつ透明性のある形で市民への科学の普及を拡大させ、技術関連のリスクの最小化に努める。

 我々は透明で開かれ、機動的な研究協力があってはじめて、気候変動、パンデミック及び生物多様性の損失などの我々が現在直面し、また今後数十年にわたり直面する最大規模の課題に対処できる。我々は、全地球の人々が裨益する解決策に影響する、可能な限り広範な資源、専門知識及び視点を持ち寄らなければならない。

 我々は、国際研究協力、そして、そのような協力が繁栄するような自由、独立性、開放性、相互主義及び透明性の条件を促進することにコミットする。我々の政府には、特に研究コミュニティと連携し、我々の知的財産や個人データの窃取、悪用、不適切な利用及びその他の形態の不正行為を防止しながら、研究のエコシステムのセキュリティとインテグリティを効果的に確保する権利及び責任がある。

 我々は、「包摂的成長のための科学資金作業部会」により認識されたとおり、あらゆるグループを包摂する、強固で多様で強靭な科学・研究コミュニティを発展させることにコミットしている。十分なサービスを受けられないコミュニティや過小にしか代表されていないコミュニティ、疎外されたコミュニティの参加を深化させ、こうしたコミュニティによる研究・イノベーションのエコシステムへの参加を拡大させることが重要である。包摂することが、我々の研究基盤の強さを強化するとともに、参加を制限する社会面、法制面及び規制面の障壁を取り払い、性別による格差に対処することによるG7ジェンダー平等目標を補完する機運を高めることになる。包摂的成長の原則と実践により、G7全体やその他における多様なコミュニティ及び地域の間で科学の恩恵が広げられる。

行動

 開放性、相互主義及び協力は、G7共通の価値である。我々は、可能な限り開かれ、必要な限り安全な、効果的な国際協力を支える原則を堅持し守るため協働することにコミットする。これを促進するため、我々は、既存のG7作業部会の継続を通じたオープン・サイエンスに関する協力の継続や、新たな「研究エコシステムのセキュリティとインテグリティに関する作業部会」の設立を支持する。これに照らし、G7諸国は以下について協働することにコミットする。

●我々の科学者、研究機関及び革新的ビジネスの間における研究協力を促進する政策、法的枠組み及び計画を維持すること。

●研究データ、技術、インフラ及びサービスの入手可能性、持続可能性、利用可能性及び相互運用性を改善することにより、G7諸国間やG7を超えて、可能な限り開かれ、必要な限り安全な形で、研究データの効率的な処理及び共有を促進すること。我々は、我々の科学協力を阻害し危機対応能力を遅らせる行政面、法制面及び規制面の障壁に対処するために協働する。緊急時におけるデータ共有に焦点を当てた個別の事例研究は、障壁を克服することにより、我々の強靭性を高めるであろう。

●知識、データ、ソフトウェア、コード及びその他の研究資源の迅速な共有の文化を推進するため、全ての学問分野及び課題において認定を促進し、協力へ報償する研究評価の強化を含め、インセンティブを探求すること。オープン・サイエンスの実践が、どのようにより強固で信頼でき、影響力の強い研究成果を達成することを助けるかについて調査すること。

●我々が引き続き、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応における国際協力から裨益しているのを目撃している中で、我々は、G7諸国間やその他における将来のシステミックな危機及び自然災害に対する迅速で学際的で証拠に基づく対応を促進する、より柔軟で機動的な研究協力に向けた共通の願望を有する。我々は、既存及び潜在的な新規のメカニズム及びイニシアティブが、どのようにこれらの出来事のリスク低減、予防及び対応を支援することができるかについて探求する。

●「研究エコシステムのセキュリティとインテグリティに関するG7作業部会」は共通の一連の原則を策定する。同原則は、これが適用される際は、開かれた相互主義的な研究協力に対するリスクからG7諸国間の研究・イノベーションのエコシステムを保護し、オープン・サイエンス並びに研究の自由及び独立性の原則を維持する助けとなるものである。同作業部会は、バーチャルなアカデミーとツールキットに向けた提案を策定し、研究のインテグリティ及びセキュリティについての共通の理解を発展させるために、あらゆる国からの研究者、イノベーター、ビジネス指導者及び政策立案者の技能と経験を集約し発展させる。これには、貴重な知識と技術資産を必要な場合に保護するために必要とされる行動、システム及びプロセスが組み込まれ、信頼をもって国際協力を継続することを可能にする。