データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] コーンウォール・コンセンサス より良い未来を築く

[場所] 
[年月日] 2021年6月13日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 戦後の世界経済システムの統合は、生活水準の大いなる改善に寄与したが、あまりに多くの人々及び諸国を取り残し、「一世代に一度」の打撃が常態になりかねない状況にある。金融危機及び新型コロナウイルスの危機は、特に不利な立場に置かれた集団に対する急性の打撃による過酷な経済的及び社会的影響を際立たせた。パンデミック以前においてさえ、慢性的かつ有害な市場歪曲は自然に、また、直接の政策的介入により発生していた。加えて、世界経済のガバナンスは、イノベーションの速度に追いついていない。G7は新たなコンセンサスへの合意を主導し、ルールに基づく自由で公正かつ開かれた経済システムへの人々の信頼を回復すべきである。この新たなコンセンサスは、経済成長がグリーンで包摂的であり、我々を環境リスク、経済的リスク及び地政学的リスクに対し強靭にすることを確実にするものである。

 経済の強靭性はそれぞれの国から始まるとともに、それ自体が適切かつ包摂的で持続可能な国内政策にまず依拠するが、より強力な共同行動もまた必要である。これは、一層の意図をもった投資及びイノベーション、また、パンデミックの教訓を踏まえて、経済の強靭性を国際公共財として打ち立てるための政府と企業との協働に基づくものでなければならない。

 したがって、国際社会が持続可能な開発目標の実施、気候変動への適応及び拡大する繁栄による利益の全ての市民による共有の確保に取り組むに当たり、G7は、国際市場及び国際制度を強化し、また必要な場合には改革するための行動を主導すべきである。G7はそれゆえ、以下のことを誓約する。

 ●連帯:共通善を促進し、各国の経済政策がお互いの利益を尊重するだけでなく共通の目標を進めるものとなるよう確保し、経済危機、強制及び市場歪曲に対し共同で対応するため、世界経済のガバナンスの改革を加速する。

 ●より良いリスク管理:新たな経済的、環境的又は地政学的リスクへの対処において監視、評価及び投資の共同のメカニズムを築く。

 ●持続可能で目的を持った供給:国家安全保障、経済安全保障又は人間の安全保障を左右する重要部門における自然発生的又は意図的な混乱に対し強靭性を持つ、開かれた、イノベーションにとって好ましい市場システムを構想するため、企業と協働する。

 ●より良いガバナンス:我々の価値となじみ、持続可能性を高め、労働基準を堅持し、我々全体の経済の強靭性を強化する国内規則及び国際規則を促すような、新たな経済のための共通の世界基準、ルール及び規範を促進する。

 ●包摂:不平等に対処し、女性や少数派等伝統的に適切に代表されていなかった集団を支える国内政策に沿って、持続可能な開発目標への投資を加速し、デジタルへの包摂性を促進し、課税逃れを排し、開発途上国による世界市場への完全なアクセスを促す。

 G7はまた、より幅広い国際社会、特に新興及び開発途上の国と地域の利益を考慮する責務を認識すべきである。我々が共に21世紀中葉の課題と機会に取り組むに当たり、G7首脳は、他の諸国に対しても、より広い国際的なコミットメントからコーンウォール・コンセンサスに至るこれら誓約に参加するよう促すべきである。