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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中央銀行デジタル通貨(CBDCs)とデジタル・ペイメントに関するG7 財務大臣・中央銀行総裁声明

[場所] アメリカ,ワシントン D.C.
[年月日] 2021年10月13日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. デジタルマネー及びデジタル・ペイメントのイノベーションは大きな利益をもたらし得る一方、公共政策及び規制上の大きな課題も提起する。これらの問題に関する強固な国際協調と協働は、公的部門と民間部門のイノベーションが、利用者と広範な金融システムにとって安全でありながら、国内及び国際的な便益をもたらすことを確保する一助となる。

2. 我々は、それぞれの法域においてデジタル・イノベーションがどのように中央銀行デジタル通貨(CBDCs)の形での中央銀行マネーへのアクセスを維持し、効用を高めるのか検討してきた。CBDCは発行された場合、現金を補完するほか、流動性のある安全な決済資産として、また、決済システムのアンカーとして機能しうる。英国議長下において、我々は、家計やビジネスの使用に向けて設計されたリテールCBDCがもたらす公共政策上の幅広いインプリケーションを検証するために協働してきた。この声明とともに、G7の財務省と中央銀行は、G7内外における各国内の政策と設計の検討を支援し、情報を提供するため、リテールCBDCに関する公共政策上の原則を公表する。この取組は、CBDCの設計、運用、及び通貨並びに金融の安定へのインプリケーションを探求するために、中央銀行のグループと国際決済銀行によって最近公表された取組を補完するものである*1*。CBDCの発行についてどのG7当局も未だに主権に基づく決定をしておらず、潜在的な政策上のインプリケーションについて注意深い検討が続くだろう。

3. 我々は、いかなるCBDCも、透明性、法の支配、健全な経済ガバナンスに対する、公的部門の長年のコミットメントに基づくべきであると再確認する。いかなるCBDCも、通貨と金融の安定に関して中央銀行がマンデートを満たすための能力を支えなければならず、また、侵害してはならない。我々は、利用者の信頼と信認を得る上での、厳格なプライバシー基準、ユーザーデータの保護に対する説明責任、情報の保護・使用方法に関する透明性の重要性を強調する。いかなるCBDCのエコシステムも、サイバーリスク、不正リスク、その他のオペレーショナル・リスクに対して安全かつ強靱でなくてはならず、不正な資金に関する懸念に対処し、エネルギー効率が高いものでなければならない。CBDCは、決済の選択肢、包摂性、多様性を促進する、オープンで、透明性のある、競争的な環境で運営されなければならない。我々は、潜在的にCBDCがクロスボーダー決済の改善について役割を果たしうることを踏まえ、クロスボーダーでの相互運用性を考慮することの重要性に留意する。同時に、我々は、国際通貨金融システムへの有害な波及効果を最小化する共通の責任を認識する。

4. 我々は、これらの公共政策上のインプリケーションに関する我々の分析を深化させるため、関連する国際機関と基準設定主体との連携も含め、引き続き協働する。我々は、CBDCの潜在的な影響を分析し、公共政策上の目的を達成するための設計における検討事項を探求する、中央銀行と関係当局のさらなる取組を歓迎する。我々は、CBDCの導入が国際通貨金融システムにもたらす潜在的な影響についてのIMFのさらなる取組を歓迎する。

5. 我々は、民間デジタルマネーと決済に係るイノベーションが、責任ある、安全で、我々の共通の政策目標と一致するものとなるよう、引き続き協調・協働することにコミットしている。我々は、いかなるグローバル・ステーブルコインのプロジェクトも、適切な設計と適用基準の遵守を通じて関連する法律・規制・監督上の要件に十分対処するまではサービスを開始すべきではないことを再確認する。価値保蔵あるいは支払手段として広く用いられるステーブルコインは、適切な規制がなければ、金融の安定に重大なリスクをもたらす。ステーブルコインは、我々の経済において一般に使用される他の形態のマネーと同様に、同じ活動・同じリスクには同じ規制を適用するとの原則に従って、高い規制基準に服する必要がある。広く用いられる支払手段として採用されるためには、決済資産が安定的な価値を有する必要がある。裏付資産を持たない暗号資産の高い価値変動性は、こうした経済的な機能を果たすことができないことを意味している。

6. 我々はステーブルコインの規制に係る共通の基準を確保するための国際的な協力にコミットする。我々は、決済システムのための共通の国際基準である金融市場インフラのための原則が、決済に用いられる、あらゆるシステミックなステーブルコインの取組に適用されることを確認し、その新しい機能への対処に関する指針を提供する、国際決済銀行決済・市場インフラ委員会と証券監督者国際機構の市中協議案を歓迎する*2*。我々はまた、グローバル・ステーブルコインに係るハイレベル勧告の実施についての金融安定理事会の進捗報告書を歓迎する*3*。我々は、ステーブルコインの取組に関係し又はそれを支える形で関連機能を担う全ての主体が対象に含まれるよう、関連基準と提言のあらゆる潜在的なギャップ又はオーバーラップを特定しこれに対処するため、金融安定理事会が他の基準設定主体と協働しつつ調整し進めている作業を支持する。

7. 我々は、クロスボーダー決済を改善するG20ロードマップの野心的な実施にコミットし、2027年までにコスト、スピード、透明性、アクセスに関する課題に対処するために先般設定されたグローバルな定量目標を歓迎する*4*。我々は、既存のシステムに必要な改善を行い、適切な場合には革新的な解決策を活用し、クロスボーダーでの相互運用性により焦点を当て、公的部門と民間部門の効果的な連携を確保することにコミットする。


{*1* https://www.bis.org/press/p210930.htm}

{*2* https://www.bis.org/cpmi/publ/d198.htm}

{*3* https://www.fsb.org/2021/10/regulation-supervision-and-oversight-of-global-stablecoin- arrangements-progress-report-on-the-implementation-of-the-fsb-high-level-recommendations/ }

{*4* https://www.fsb.org/2021/10/targets-for-addressing-the-four-challenges-of-cross-border- payments-final-report/}