[文書名] エリザベス・トラス英外務・英連邦・開発大臣によるG7外務・開発大臣会合議長声明
1. 2021年12月11-12日、リバプールにおいて、G7の外務大臣及び開発大臣は会合を行った。我々は、共通の利益及び価値について、また経済及び安全保障のパートナーとしての我々の協力について議論した。我々は、不安定な状態の気候及び劣化した生態系が全ての国、特に最も貧しく脆弱な国々に対してもたらす深刻な安全保障上の脅威を認識し、COP26において採択されたグラスゴー気候合意を歓迎した。我々は、来年のCOP27に先立ち、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けるための行動を加速し強化すべく協力することへの我々のコミットメントを確認した。
2. 世界は新型コロナウイルスのオミクロン株による新たな、懸念すべき脅威に直面している。11月29日のG7保健大臣による声明に沿って、我々は、特に中低所得国において生命を救いパンデミックの急性期を終わらせるため、2022年の世界中でのワクチン接種に向けて貢献するとの我々のコミットメントを再確認するとともに、6月の首脳会合以来、G7により計6億5700万回分のワクチンが共有されたことを確認した。また、我々は、オミクロン株を検知するとともに国際社会に警告を発した南アフリカの模範的な功績を賞賛した。我々は、WHOの世界ワクチン接種戦略を承認し、ACTアクセラレータの全ての柱を支持することを改めて表明し、またグローバル・ヘルス・サミット・ローマの宣言へのコミットメントを再確認した。我々は、開かれたサプライチェーンを維持し、地域のワクチン製造・規制能力を拡大し、保健システムを強化し、質の高いワクチン、治療薬並びに検査薬及びその他の必要な健康製品の公平で、適時な、透明性のある提供及び配布を可能とするために協力することにコミットした。我々は、オミクロン等の変異株や現在及び将来のその他の健康上の脅威に対処するための新たなワクチンを支援すべく、英国が2022年3月に感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)の増資会合を主催すること、また米国が来年世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバル・ファンド)第7次増資会合を主催することを歓迎した。
3. 中国について、我々は、香港、新疆及び東シナ海・南シナ海の情勢、また台湾海峡の平和と安定の重要性といった様々な課題について議論した。また、我々は、威圧的な経済政策への懸念を表明した。我々は、5月5日のG7外務・開発大臣会合コミュニケ及び6月12日のG7首脳コミュニケに示されたコミットメント及び立場を強く再確認した。
4. 我々は、ロシアによるウクライナへの侵攻に関する一致した立場を別途表明した。我々は、ベラルーシ当局による市民の権利を抑圧する行動に対して懸念を表明し、政治的目的での同政権による通常ではない移住の企てを非難した。我々は、ルカシェンコ政権に対して、早期の方針転換を求める最近の声明を再確認した。我々は、西バルカンの欧州的視点を支持することの重要性、同地域の安定及び安全保障の重要性を強調した。我々は、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける分断をもたらすような全ての無責任なレトリックと行動を非難するとともに、対話が迅速に再開され、同国が建設的なアジェンダに集中し直すことを求めた。我々は、同国の領土一体性、主権及び統一並びにEU特別代表及びEUボスニア・ヘルツェゴビナ部隊「アルテア」の活動への、そしてシュミット上級代表及びサラエボのNATO本部への断固たる支持を表明した。我々は、コソボ及びセルビアに対して、EUが仲介する関係正常化のための対話に建設的に関与し、遅滞なく進展を得るよう求める。
5. 我々は、ウィーンにおける包括的共同作業計画(JCPOA)の回復に関する交渉の再開を歓迎し、またイランは核活動の拡大を止め、交渉妥結が実現可能である間に、直ちにその機会を捉えなければならない旨改めて表明した。我々は、北朝鮮に対し、挑発的な行動を控え、国連安保理決議に従った、北朝鮮の全ての違法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄という明確な目標を持って外交プロセスに関与することを改めて求めた。我々は、その関連で取組を続ける米国の意欲を歓迎し、支援を提供することに引き続きコミットする。我々は、北朝鮮に対し、全ての人々の人権を尊重し、拉致問題を即時に解決するよう求める。我々は、アフガニスタンにおける人道危機の悪化について議論し、特に国連やNGO等の非国家チャネルを通じて、基本的サービスを支援する方法を見出し流動性の課題に対処するなど、対応を更に強化する必要性について一致した。我々は、人道危機への国際的対応を促進するための国連及びその他の場所における取組を歓迎した。我々は、包摂的かつ代表性のある政治、特に女性、女児及び少数派の人権の尊重、テロ対策、及びアフガニスタンからの出国を希望する者の安全な移動を可能とすることの重要性を強調した。G7は、タリバーンとのいかなる関与においても、これらの優先事項を中核に置くことで一致した。我々は、引き続きタリバーンを、言葉ではなく行動によって評価する。
6. リビアについて、我々は、12月24日に、自由で、公正で、包摂的な、信頼性のある大統領選挙及び議会選挙が始まることへの我々の支持を改めて表明した。我々は、全てのリビアの政治的主体に対して、政治プロセスを損なう行動を控え、選挙結果に従うよう改めて求めた。我々は、全ての外国人戦闘員、外国軍事勢力及び傭兵のリビアからの遅滞ない撤退の重要性に合意した。我々は、エチオピアにおけるオバサンジョAU上級代表による仲介努力への強い支持を表明し、即時停戦と、エチオピア全域への包括的で妨害されない持続的な人道アクセスを遅滞なく認めるよう求めた。我々は、エチオピアにおいて、全ての紛争当事者により人権侵害が、その多くが、戦争犯罪及び人道に対する罪に相当する可能性があるしたの国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)及びエチオピア人権委員会の合同調査による評価に留意し、追加的な独立調査の勧告に同意した。我々は、2019年の革命以降の文民主導政権による進展を危険にさらした、スーダンにおける10月25日の軍による政権奪取を強く非難した。我々は、ハムドゥーク首相の解放及び復職に勇気付けられ、全ての政治的被拘束者の即時解放、人権侵害への説明責任、及び民主的移行を実現するための包摂的かつ協議に基づくアプローチを求めた。我々は、人道支援等を通じてスーダンの人々を引き続き支援することで一致した。その他の支援は、信頼性と持続性のある文民主導の移行プロセスへの回帰に関する移行政府による進展を反映する必要がある。ソマリアについて、我々は、平和裡かつ信頼できる選挙の迅速な完了、信頼性のある治安構築に向けた移行の進展、実効的な連邦体制の発展及び深刻な人道課題に対処する措置の必要性を強調した。我々は、G5サヘル諸国への支持を表明し、マリにおいて移行のコミットメントを堅持し、チャドにける更なる進展、また、人道アクセスの改善及び国際的な人権に関する義務と約束の遵守を支持することを強調した。我々は、アフリカを不安定化させるロシア傭兵グループであるワグナー社の役割、及び、特にマリにおいてワグナー社との交渉が報じられていることについて、重大な懸念を改めて表明した。我々は、サヘルからのテロの脅威の拡散に対処する地域の取組を支援することで一致した。我々は、次の5年間でアフリカの民間部門に800億ドル投資するとのG7首脳のコミットメントの重要性を再確認した。
7. G7の閣僚は、豪州及び韓国のカウンターパート、そして初めてASEANの外相の参加を得て、インド太平洋についての議論を行った。我々は、包摂的で、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を維持することの重要性について議論した。我々は、質の高いインフラ、グリーン移行、持続可能な経済発展及び技術に関するものを含め、地域における我々の強い関与と協力を再確認した。また、我々は、海洋協力及びサイバー空間における国家の行動に加え、地域情勢及び安全保障上の課題についても議論した。我々は、最近のアウン・サン・スー・チー氏及びその他の者への有罪判決を含め、ミャンマーにおける情勢について深い懸念を表明するとともに、ASEANの「5つのコンセンサス」への支持を強調し、恣意的に拘束された全ての者の即時かつ無条件の解放、暴力の終止、最大限の自制及びこの危機の平和的解決を呼びかけた。
8. 我々は、我々の国民、インフラ、経済及び価値を守るため、国家による脅威を検知し、抑止し、対応する我々の取組を強化する必要性について議論し、これを強調した。我々は、4月に発出されたG7不拡散局長級グループの声明を承認した。
9. 我々は、ジェンダー平等並びに女子教育、性と生殖に関する健康及び権利を前進させることを含む女性のエンパワーメント、及び女性及び女児に対する暴力を終わらせることへのコミットメントを再確認した。我々は、紛争関連の性的暴力について生存者中心のアプローチの重要性を認識し、紛争関連の性的暴力をめぐる国際的な体系の実施を強化する必要性について一致した。
10. 12月3日のG7首脳声明に基づき、我々は、持続可能で強靭な質の高いインフラ投資及び開発金融に関する共通の原則を再確認し、信頼性、透明性及び包摂性の重要性について議論した。我々は、既存の国際的な原則やスタンダード、特に「質の高いインフラ投資に関するG20原則」の実施を進めることを含め、繁栄を促進し、強靱性を高め、気候危機に立ち向かうことに合意した。この質の高い投資は、持続可能な開発のための2030アジェンダ及び最近のCOP26でなされたものを含む、気候及び環境に関する国際的なコミットメントを、気候変動、保健に加えて、デジタル・運輸及びエネルギーの連結性、並びに教育及びジェンダーの平等といった主要分野において支援するべきものであり、債務持続可能性を含む、強固な社会、労働、環境、透明性、財務に関するスタンダードに支えられたものであるべきであり、また、知的財産権や個人の自由を保護しつつ、開放的経済性があるべきものである。我々は、全ての関係者に、貸付及び投資に関するものを含む国際的に認められたルールとスタンダードの遵守を求めた。我々は、開発途上国とのパートナーシップの下、投資を活性化し、資源を動員するために、我々の個々の開発金融イニシアティブを強化する方法について議論した。
11. 米国主催の民主主義のためのサミットにおける議論を受け、我々は、国内及び世界中で開かれた社会を促進・擁護し、民主主義を支援するため、共にまたパートナーと取り組むことにコミットし、カービス・ベイでの「開かれた社会声明」へのコミットメントを再確認した。我々は、ジャーナリスト、特に女性ジャーナリストの保護等を通じてメディアの自由を守ることの重要性を強調した。我々は、国家間関係における外交的レバレッジを得るための恣意的拘束を抑止し、終わらせるG7の決意を改めて表明し、「二国間関係における恣意的拘束の利用に反対する宣言」の更なる承認を提唱した。我々は、既存の国際法を強固な土台とする、サイバー空間における責任ある国家の行動のための国連枠組みの重要性を強調した。我々は、サイバー空間における国家の行動にいかに国際法が適用されるかに関する我々の理解を前進させること及び悪意あるサイバー活動の増大する脅威への対処において協力することへのG7のコミットメントを再確認した。
12. G7外務・開発トラックの議長国を務めたことは光栄であり、全てのG7メンバー及び本年のG7に多大な貢献を行ったパートナー達に感謝する。2022年のドイツのG7議長年と、我々の共通の優先事項及び価値に基づいて協力を進めていくことを楽しみにしている。
(了)