データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エリザベス・トラス英外務・英連邦・開発大臣によるG7とASEANの議論に関するG7外務・開発大臣会合議長声明

[場所] イギリス,リバプール
[年月日] 2021年12月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 2021年12月12日、リバプールにおいて、またテレビ会議を通じて、G7の外務大臣・開発大臣及びASEAN諸国の間での初めての会合が行われた。G7とASEANの閣僚は、G7とASEANの関与の増大を歓迎し、また、本年英国がASEANの対話国として承認されたことを受け、全てのG7メンバーが今やASEANの戦略的パートナー、対話パートナー又は開発パートナーであることに留意した。今次会合は、2021年5月に英国で行われたG7外務・開発大臣会合におけるASEAN議長国との議論を基礎とするものであった。

2. 我々は、インド太平洋地域全域及びそれを越えた地域における、開かれた市場、持続可能かつ質の高いインフラ、地域の安定及び持続可能な開発を含む、多くの共通の利益について議論した。我々は、ASEAN中心性、自由で包摂的かつルールに基づく地域のアーキテクチャー並びに東南アジアにおいて平和、安定、繁栄及び国際法の遵守を確保することの重要性への支持を再確認した。我々は、ASEAN中心性をインド太平洋における協力促進のための根本原則と位置づける「インド太平洋に関するASEANアウトルック」への支持を再確認した。我々は、包摂性や国際法の尊重を始めとしたAOIPの擁する諸原則に従って、自由で開かれたインド太平洋を維持することの共通の利益を再確認した。新型コロナのパンデミックが継続し、新たなサイバーセキュリティ上の脅威が増大し、気候変動の破壊的な影響が増加している中で、我々の協力はより一層重要となっている。

3. 我々は、世界のインフラ開発需要を満たすため、G7とASEANが協力し、民間部門、国際金融機関及び多国間開発銀行から資金を動員することの重要性を強調した。また、我々は、ASEAN諸国における不可欠なインフラ需要を満たすために民間部門とのパートナーシップの下でプロジェクトを連続して形成していくことの重要性について議論した。これらは、経済成長及び持続可能な開発を支援し、未来の産業における雇用を創出しながら、同時にインフラが持続可能かつ強靱であることを確保すべきである。我々は、国際的なルールに基づくシステムの中における各国毎のコミットメントに従って、市場を貿易及び投資に対して開かれたものとし続けることで世界的なサプライチェーンを維持し、また世界の経済回復を支えることの重要性を認識した。我々は、G7とASEANがジェンダー平等を推進するために協力することの重要性を強調した。

4. 我々は、ワクチン供給を加速し、新型コロナ及び将来の健康上の脅威に対するより有効なワクチンを開発するための更なるイノベーションを支援することへのG7の継続的なコミットメントを歓迎した。我々は、ワクチンの共有、強化され開かれたサプライチェーン、自発的なライセンス供与を通じたワクチン製造能力の拡大、技術移転、ASEAN諸国への新型コロナのワクチンの透明性ある展開等を通じて、ASEAN主導のメカニズムを通じたものを含め、いかにG7のASEANとの協力が地域のパンデミックへの対応を強化できるか議論した。

5. 我々は、新型コロナウイルスのパンデミックへの喫緊の対応や、パンデミックからの包括的な回復に向けた取組にデジタル、技術及びサイバーが果たす役割に示された、これら分野における協力の重要性を認識した。我々は、デジタル、技術及びサイバーセキュリティが有する、共通の原則を遵守しつつ世界の繁栄及び安全を実現する大きな潜在性を開花させるために協力すること、またサイバーの脅威に対応するための能力構築と強靱性を支援すべくG7諸国がASEAN諸国と協力することの重要性を強調した。

6. 我々は、国際法の適用可能性、自発的で非拘束的な規範の実施の支援、信頼醸成措置及びサイバー能力構築支援を含め、サイバー空間における責任ある国家の行動に関する国連の枠組みへの共通のコミットメントを再確認した。我々は、この枠組みを実施すること、そしてこの論点についての各国の立場の共有等も通じて既存の国際法がどのようにサイバー空間における国家の行動に適用されるかについてのより良い理解に向けて取り組むことの重要性を強調した。

7. 我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法を堅持することの重要性を再確認した。我々は、UNCLOSは海洋における全ての活動が従わなければならない法的枠組みを規定したものであり、海洋部門における国家的、地域的及び世界的な行動並びに協力の基礎としての戦略的重要性を有するものであることを再確認した。

8. 我々は、南シナ海情勢について議論し、その中で、海洋環境への損害を含め、この地域において信用と信頼を損ない、緊張を高め、また、平和、安全及び安定を損ない得る、地域における埋め立て、活動及び深刻な事案について懸念が表明された。我々は、UNCLOSを含む国際法に従った、実効的かつ実質的な南シナ海における行動規範(COC)の重要性を強調した。

9. 我々は、G7メンバーとASEAN諸国の間での海洋に関する協力を歓迎し、海洋安全保障、海上安全、航行及び上空飛行の自由、海における国境を越える犯罪への対応、紛争の平和的解決に資する環境の醸成、海で遭難した人や船舶への人道支援の供与、違法・無報告・無規制(IUU)漁業との闘い、海洋の連結性及び商業の促進並びに海洋の科学的調査の強化における協力を強化するよう奨励した。これは、UNCLOS及び国際海事機関(IMO)の関連する諸協定や、国際民間航空機関(ICAO)の関連する国際標準・勧告方式(SARPs)を含む国際法に従って行われるべきである。

10. 我々は、ミャンマーにおける情勢に深い懸念を表明した。我々は、ミャンマーにおける暴力の即時停止及び全ての当事者が最大限自制すること、ミャンマー国民の利益に即した平和的解決を模索し始めるための全ての当事者による建設的な対話、ASEAN議長国特使が対話プロセスの仲介を促進すること、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を通じてASEANが人道支援を供与すること、そして全ての当事者と面会するために特使がミャンマーを訪問すること、を含むASEANの5つのコンセンサスの即時かつ完全な実施への支持を強調した。我々は、最近のミャンマーにおける情勢に対する深い懸念を表明し、外国人を含む全ての政治的被拘束者の即時解放を求めた。我々は、全ての国にミャンマーへの武器の流入を防止するよう求めた6月18日の国連総会決議を想起した。我々は、前向きかつ建設的にミャンマーが持続的かつ平和的な解決を見出すことを助けるためのASEANの取組をG7として支援する用意があることを再確認した。我々は、ミャンマー全土における不安定及び暴力への深い懸念を表明した。

11. 我々は、自発的で、安全で、かつ尊厳ある形でのロヒンギャのラカイン州の出身地への帰還を可能とする状況をラカインに作り出すことの重要性を強調した。我々は、AHAセンター、国連及び国際社会の、人道支援の供与、帰還プロセスの開始に資する環境の促進及び醸成、またラカイン州の持続可能な開発の促進によりミャンマーを支援する、より可視的で強化された役割への共同の支持を改めて表明した。

12. 我々は、このようなG7とASEANの間の関与と協力を、共通の世界的及び地域的課題に取り組む上で重要なものとして歓迎し、既存のASEAN主導のメカニズムを通じたものを含め、G7とASEANの間のより緊密な協力を期待した。

(了)