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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 抗生物質の開発を促進するための取組に関するG7財務大臣文書

[場所] オンライン
[年月日] 2021年12月13日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 新型コロナウイルスは、薬剤耐性(AMR)の「サイレント・パンデミック」を含む国際保健の脅威に対する備えを強化することの重要性を示した。AMRは、既に我々の経済や保健システムに大きな影響を与えており、薬剤耐性感染症による死亡者数は世界全体で年間推定70万人に達する。

2. このようなAMRの脅威にも関わらず、市場の失敗を含む様々な要因により、新しい抗生物質の開発が進まず、30年以上もの間新しい抗生物質が市場に投入されていない。また、ワン・ヘルス分野において官民の投資を行う際には、抗生物質の適切な使用とスチュワードシップを確保することやAMRの影響を考慮することを含め、人、動物、環境の健康というワン・ヘルス分野におけるAMRの拡大にも対処する必要がある。

3. AMRが保健と経済に長期的な影響を与えることを認識した上で、全てのG7メンバーは、各国が自国の「AMR対策アクションプラン」や関連戦略に示されている既存の戦略の実施を促進すること、及び特定された公衆衛生上のニーズに合致する場合に、抗生物質の市場の失敗に対処し、重要な既存の抗生物質を保護した上でそれへのアクセスを確保し、AMRに関する抗生物質の研究・開発を強化し、新薬を市場に投入するための適切な経済状況を創出するため、具体的かつ適切な追加措置を講じることにコミットする(G7の取組事例については別添Aを参照)。各国固有の状況と各国毎の能力を認識した上で、考え得る措置として、関連するプル型インセンティブの支援に特に重点を置きつつ市場インセンティブの幅広いオプションの検討、新たなパイロットプロジェクトの実施、抗生物質の開発を強化する経済戦略を策定するための新たな国家のガバナンス組織への貢献、法律上及び規制上の措置の検討が含まれる。G7間の一貫性をより促進し、我々の保健システム、経済、社会にとっての抗菌薬の価値を認識するため、これらの取組は、11月17日にG7保健大臣によって採択された「抗菌薬治療の評価に関するG7共有原則」によって支えられる(別添を参照)。

4. また、我々は、2030年までに最大4種類の新規の抗生物質を市場に投入するために製薬業界が設立した10億ドルの「AMRアクションファンド」、GARDP、BARDA、CARB-X、IMI、SECURE等の低中所得国を含む抗生物質の開発、アクセス、スチュワードシップを促進するための様々な国際機関やパートナーシップによる活動、及び投資や金融戦略においてAMRのリスクや影響をよりよく評価し、緩和するための「AMRに関する投資家イニシアティブ」や開発銀行、金融機関を含む多くの官民投資家による取組を歓迎する。

5. 我々は、G7を通じて我々の取組を強化することにコミットする。この取組が複数年にわたる様々な関係者による取組であることを認識した上で、我々は、我々の財務・保健当局担当者に対し、関連する技術機関、国際機関、産業界、投資家と協力して、この対話を継続し、ベストプラクティスを共有することを要請する。我々は、国際薬剤耐性研究開発ハブと世界保健機関(WHO)に、この作業を支援し、2022年にG7財務・保健大臣への進捗状況の報告を準備することを求める。我々はまた、パンデミックへの備えを強化するための取組を含め、G20におけるAMR関連の取組を活性化するための努力を支援する。

<別添:原文参照>