データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 気候、環境、平和及び安全に関する声明(G7外相会談)

[場所] ヴァイセンハウス
[年月日] 2022年5月13日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国のG7外相及びEU上級代表は、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れる目標を維持し、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ、今世紀半ばまでに世界全体でネット・ゼロ排出を達成する決意において結束し:

気候及び生物多様性の危機の影響は、国際的な平和と安定を脅かし、それにより人類と生態系が存亡の危機に直面し、発展途上国、低所得国、脆弱国、及び紛争の影響を受けた国々における個々人に偏った形で特に影響が及び、また、我々が知る国際秩序が一層試練にさらされていることを認識し、

我々が気候及び生態系を共有しているため、各国の安全保障は他国の安全保障と不可分に結びついていること、また、気候変動や環境悪化(陸及び海洋の両方)がもたらす影響には国境はないことを理解し、

これらの課題は、気候変動と環境悪化の平和と安全保障上の影響を理解し対処するための、(異なる分野の権限を超えた)一体となった行動、及び多国間協力の機会を提供するものであることを強調し、

気候変動、生物多様性の損失、環境悪化の影響が大きくなるほど、特に既に脆弱な国家においては、平和と安定に対するリスクが大きくなるという悪循環が存在し、ひいては温室効果ガス排出、生物多様性の損失、森林破壊に影響を与え、政府がこれらの課題に効果的に対処することを妨げる可能性があることを警告し、

気候・環境対策が持続可能な平和の非常に重要な側面であるのと同様に、気候変動と環境悪化の影響の緩和、適応、及び気候変動による損失と損害の軽減において、平和と安定がしばしば決定的であることを強調する。

地球安全保障に関するハーグ宣言、気候と安全保障に関するベルリン行動要請、及びニューヨークにおける気候と安全保障フレンズグループの作業を踏まえ、我々は、志を同じくするパートナーと協働し、「気候、環境、平和及び安全保障イニシアティブ」を設立する考えである。このグループは、世界の平和と安定へ向け、気候及び環境リスクへの対応に貢献するため、具体的かつ運用可能な行動、アプローチ、及び解決策を提唱し、実施する。そのために、この宣言は、気候変動及び環境悪化が安定と平和にもたらすリスクに対する、適時かつ効果的な対応を推進するための以下の7項目の行動アジェンダを掲げる。

1. 我々の政策と行動を、政府全体の対応として、気候変動の平和と安全保障への影響をよりよく理解・対処し、パリ協定とグラスゴー気候合意を含むその成果物及び環境関係の国際的コミットメントを履行し、2030年までに、陸水域及び内水面並びに沿岸及び海域を含め、自国の陸地及び海洋の少なくとも30%を保全又は保護し、特に気温上昇を1.5度に抑え、生物多様性の損失を止めて、反転させることに整合させる。

2. 気候及び環境関連のリスクによって、安定と平和において最も影響を受けている国や地域を支援する。また、影響を受けている地域の強靭性、ジェンダー平等、紛争予防、平和、及び能力構築を促進しつつ、気候及び生物多様性資金を動員する。これには、パリ協定第9条4項を想起し、規模を拡大した資金提供において、緩和及び適応のバランスを達成するという観点から、適応資金の供与を全体で2025年までに2019年の水準から少なくとも2倍にするというグラスゴーにおける合意に基づき、適応のための資金を拡大することが含まれる。

3. 気候・環境変動(及びそれがもたらすより広範な安全保障、経済、人道、環境、及び社会的課題)に世界中が直面する中、緩和策、及びデータ主導の科学に基づく、包括的な多分野にわたるアプローチ/分析的な洞察を活用することに加え、気候安全保障及び環境リスク評価、気候変動への適応、防災、及び自然に基づく解決策を活動の中心に据え、強靭性と適応力を向上させる。

4. 気候変動、環境悪化及びこれらの影響を、早期警戒、調停、平和維持、及びその他の平和支援活動にしっかりと組み入れることで、安定と平和を支援するための運用可能な対応を改善するために協力し、また、強靭性の促進及び気候変動と環境悪化が紛争の要因を悪化させ、ひいては気候変動及び環境悪化の影響に対する脆弱性が増大するという悪循環を避けるために協力する。

5. 経験や専門知識を(国際的に、また国家及び地方政府間で)共有し、包摂的で、状況や紛争に配慮し、かつジェンダーに対応し、地域の状況やステークホルダーのニーズに応じた、調整された政策及び行動を具体化し、実践する。

6. 例えばベルリン気候・安全保障会議など、政府及び国際機関から市民社会及び民間セクターのアクターまでを支援するための定期的な会合を通じて、気候、環境、平和と安全保障に関する、一貫し、かつ補完的なアプローチを進展させ、多国間協力を促進する。

7. 気候変動、生物多様性の損失と環境悪化がもたらす安定と平和へのリスク、及び気候変動の緩和と適応について、政府の最上層部に提起されることを保証する。