データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 外相コミュニケ(G7 外相コミュニケ)

[場所] ヴァイセンハウス
[年月日] 2022年5月14日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

前文

我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国のG7外相及びEU上級代表は、戦略環境及び安全保障環境が根本的に変質する中、本日会談した。ロシアのウクライナに対する侵略戦争は、21世紀の重要な分岐点であり、欧州のみにとどまらず、広く劇的な影響をもたらす。我々、G7は、我々全ての国が平和、繁栄、安全及び安定のために依って立つ国際的なルールブックを一部の国があからさまに軽視している中、ただ座視していることはできないことを完全に明確にしたい。

我々は、ロシアの不当な、いわれのない、不法なウクライナに対する侵略戦争を、可能な限り最も強い言葉で非難する。ロシアはルールに基づく国際秩序、国際法及び人道的原則に露骨に違反し、平和的協力、主権、自決権及び領土の一体性といった、普遍的に合意され法的拘束力を有する基本的原則を侵害した。我々は、国連憲章や諸条約及び国際合意を含む国際法によって認められた平和、人権、法の支配、人間の安全保障及びジェンダー平等を擁護する我々のコミットメントを引き続き堅持し、我々のパートナーに対し、我々と共にこれらに取り組むことを求める。我々の成功は、より強力な防衛、経済安全保障及び友好国やパートナーとのより緊密な世界的な連携にかかっている。

ロシアの侵略戦争は、近年の歴史において最も深刻な食料危機とエネルギー危機の一つを引き起こし、今、世界で最も弱い立場の人々を脅かしている。このような行動は看過されるべきではない。我々の地球はすでに重大な課題に直面しており、ロシアのウクライナに対する侵略戦争は、これらの課題に対処するための進展を損ない、後退させるものである。現下の危機については、G7はウクライナへの短期的及び長期的支援にコミットしている。我々は、世界の食料安全保障を維持するため、多国間による連携した対応を加速させ、この点で最も脆弱なパートナーたちに寄り添うことを決意する。

我々の社会を支える民主的統治とその基本的価値は、軍隊、経済的威圧、偽情報及び他のハイブリッドな手段を含む情報操作及び介入によって攻撃され、損なわれている。G7は、人々が妨げられることなく人権と自由を行使し、人々の利益を代表するリーダーを選出できるような平和的で繁栄した社会を確保するためには、民主主義が、21世紀においても最良であることを引き続き確信している。我々は、切望された、世界の変革的な変化のための、世界中の市民社会によってなされ、また、なされ続けている貢献を高く評価する。

気候危機は加速しており、人類の存続そのものを脅かしている。国際社会と共に、我々は断固として、緊急の行動をとらなければならない。我々は、国際的な連帯への信頼と、この人類によって生み出された存続の危機を緩和し、乗り越える必要性を改めて確認する。

新型コロナウイルス感染症及びその世界的な影響との戦いは終わりにはほど遠い。パンデミックに対応する更なる取組と、同様の脅威が再度発生することを予防することへの我々のコミットメントを改めて確認することは最も重要である。ワクチン、治療及び診断への公平なアクセスとそれらの提供は、特に、重要な「ラスト・ワン・マイル」の文脈において、迅速な支援と一体で実施され、また、人道的取組、及び、新型コロナウイルス感染症からの環境に配慮した、包摂的かつ持続可能な回復のための機会に焦点を当てつつ進められなければならない。

我々の地球の現在、そして未来は危機にさらされている。我々、G7は、強い結束に基づき、我々の価値を堅持し、利益を擁護することを決意している。我々は、強く、活気ある、革新的な社会を維持し、最も脆弱な立場にある人々を含む全ての人の権利を保護するための、ルールに基づく国際秩序を支持することにコミットする。我々は、平和的で、繁栄し、持続可能な世界のために、パートナーと、また多数間で協力すること及び経済安全保障に関する連携を強化することにコミットする。

I.)外交・安全保障政策

1.ロシアのウクライナに対する侵略戦争

我々は、ロシアによる不当な、いわれのない、不法な侵略戦争に対して防衛を行うウクライナへの支持を堅持し、ロシアに対し、我々が継続的に要請してきたとおり、自らが始めた戦争に終止符を打ち、戦争により続いている苦難と人命の喪失を終わらせるよう再度求める。我々は、5月14日のロシアによるウクライナに対する戦争に関するG7外相声明で示した我々の立場を再確認する。

2.西バルカン

我々は、西バルカン地域の安全、安定及び繁栄を確保するため、西バルカン6国がとる欧州統合に向けた我々のコミットメントを再確認する。我々は、西バルカン諸国が、特に国連総会において、ロシアのウクライナに対する侵略を一致して非難していることを歓迎する。我々は、アルバニア、コソボ、モンテネグロ及び北マケドニアが、制裁とその実施を含む外交政策をEUと完全に整合させたことを称賛する。我々は、セルビアも同様の対応をとるよう要請する。我々は、ボスニア・ヘルツェゴビナがEUの対ロシア制限措置と整合的な措置を行い、コソボが単独でそれらの措置と整合的な措置を実施していることを歓迎する。我々は、西バルカン諸国がロシアの化石燃料への依存と経済的威圧に対する脆弱性を軽減するための支援を継続する必要がある。

我々は、アルバニアと北マケドニアとのEU加盟交渉の速やかな開始を強く支持する。我々は、この地域の国々に対し、特に法の支配に関する国内改革を進め、国内政治空間を拡大し、市民社会及び独立メディアの環境を改善し、暴力への過激化を防止する取組を追求し、和解を支援し、大量虐殺に関する偽情報及び戦争犯罪並びに有罪となった戦争犯罪者への称賛に抗うことを要請する。

我々は、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける政治危機の深化を懸念し、同国の統一性、主権及び領土の一体性を損なおうとするいかなる試みも非難する。我々は、ボスニア・ヘルツェゴビナの未来と地域の安定を危険にさらすスルプスカ共和国の分離主義的な政策は許容しないことを強調する。我々は、分断を生じる言説及び扇動的な言説を控え、ボスニア・ヘルツェゴビナを不安定化し得るいかなる行為も避け、あらゆるレベルで政府が完全に機能を回復し業務遂行を再開することを強く要請する。我々は、同国の全ての政党に対し、10月に予見されたとおりに総選挙が実施されることを確保するよう求める。我々は、クリスチャン・シュミット上級代表のマンデートを全面的に支持する。我々は、同国における安全かつ確実な環境を維持するためのEUFORによるアルテア作戦の執行権限を全面的に支持する。我々は、コソボとセルビアに対し、EUが促進する対話に建設的に関与し、過去の全ての合意を遅滞なく履行し、包括的かつ法的拘束力のある合意を通じて関係を正常化するよう促す。そうすることは、それぞれの欧州的立場の実現を可能にし、地域の安定に寄与し、地域の全ての人々の利益となるものである。我々は、特にベルリン・プロセスの枠組みにおける西バルカンのための地域共通市場及びグリーン・アジェンダを通じた包摂的地域協力及びエネルギー移行に関する進展を支持する。

3.インド太平洋

我々は、法の支配、人権及び基本的自由の保護、民主主義の原則、透明性、領土の一体性、並びに紛争の平和的かつ包摂的な解決に基づく、自由で開かれた包摂的なインド太平洋を維持することの重要性を改めて表明する。我々は、ルールに基づく国際秩序の保護と促進、質の高いインフラ投資による地域の連結性の向上、自由貿易の強化、国家の強靱性の向上、包摂的な経済成長の支援、気候変動と生物多様性の喪失への対処等を通じ、このような目標に向けて取り組むことにコミットしている。我々は、地域の志を同じくする国々と協力する意図を表明し、ASEANの一体性と中心性への支持を再確認するとともに、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に沿った具体的な協力を追求することにコミットする。

4.東シナ海・南シナ海

我々は、東シナ海及び南シナ海並びにその周辺における状況を引き続き深刻に懸念する。我々は、緊張を高め、地域の安定とルールに基づく国際秩序を損なう可能性のあるいかなる一方的な行動にも強く反対することを改めて表明し、この地域における軍事化、威圧及び威嚇の報告について深刻な懸念を表明する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の普遍的かつ統一的な性質を強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、全ての当事者に対し、海洋権益の主張に関する紛争は国際法と整合的な平和的手段により解決するよう求め、UNCLOSにより設置された紛争解決メカニズムを使うことを支持する。我々は、航行の自由、領海における無害通航権に関するUNCLOSに定める規定の重要性を再確認する。我々は、南シナ海における中国の広範な海洋権益の主張には法的根拠がないことを強調する。この観点から、我々は、UNCLOS付属書VIIの下で仲裁裁判所により下された2016年7月12日付けの仲裁判断は、南シナ海における紛争の平和的解決に向けた重要なマイルストーンであり、有用な基盤であることを改めて表明する。我々は、中国が同判断を完全に遵守し、UNCLOSに規定された航行の権利及び自由を尊重することを求める。

5.中国

我々は引き続き、中国が、ルールに基づく国際秩序におけるコミットメントを遵守し、国際安全保障に貢献し、世界健康安全保障の推進や、気候変動、生物多様性、ジェンダー平等を含む国際公共財の提供において協力することを促す。我々は、中国に対し、紛争の平和的解決に関する国連憲章の原則を堅持し、脅迫、威圧、威嚇手段の使用、武力の行使を控える必要性を想起させる。

ロシアのウクライナに対する侵略戦争について、我々は中国に対し、国際法に沿って、ウクライナの主権と独立、及び国際的に認められた国境の一体性を支持し、ウクライナに対する軍事侵略を停止するようロシアに断固として求めるよう慫慂する。我々は中国に対し、ロシアのウクライナに対する侵略戦争を支援しないこと、ウクライナの主権と領土の一体性に対する攻撃に対してロシアに科された制裁を損なうことをしないこと、ウクライナにおけるロシアの行動を正当化しないこと、情報操作、偽情報及びロシアのウクライナに対する侵略戦争を正当化するその他の手段への関与を控えることを要請する。

我々は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸の問題の平和的解決を促す。我々はまた、我々は、世界保健機関(WHO)世界保健総会及びWHOの技術会合への台湾の意義ある参加を支持する。国際社会は、全てのパートナーの経験から恩恵を得られるべきである。

我々は、恣意的で威圧的な経済政策及び慣行による圧力を前に、グローバルな経済的強靱性を助長するために、共に取り組んでいく。我々は中国に対し、商業的利益のためにサイバー分野での知的財産の窃取を行うこと又は窃取を幇助することを慎むことを含め、サイバー空間において責任ある行動をとるとのコミットメントを堅持するよう慫慂する。

我々は、中国における人権状況、特に新疆とチベットにおける状況について引き続き深く懸念する。我々は中国に対し、国際法及び国内法の下での義務に従い、人権を完全に尊重するよう求める。我々は中国に対し、ILO第29号条約及び第105号条約の批准を完了し、その完全な履行及び強制労働慣行に対する効果的な行動を求める。我々は、我々のビジネス・コミュニティに対する意識向上や助言・支援の提供を含む、我々自身の利用可能な国内手段等を通じて、強制労働の事例に取り組む意図を有する。

我々は中国当局に対し、国連人権高等弁務官を含む独立したオブザーバーに、中国訪問を含め、新疆およびチベットへの有意義かつ自由なアクセスを直ちに認めるよう要請する。我々は中国に対し、難民の北朝鮮への強制送還を控えるよう求める。

我々は、香港における多元性の衰退と市民権・政治権の制限に遺憾の意を表明し、香港当局に対し、人権、法の支配、司法制度の独立、民主主義の原則を尊重するよう求める。我々は中国に対し、英中共同声明及び香港基本法に規定されたものを含む、自国の国際的なコミットメント及び法的義務に従い行動し、香港の高度の自治並びに権利及び自由を尊重するよう求める。

6.ミャンマー

我々は、ミャンマーにおける軍事クーデターを引き続き最も強い言葉で非難し、武装・治安部隊による、ロヒンギャ、その他の民族的宗教的少数派に対する性的暴力や虐待を含む、国際法上の犯罪や甚大な人権侵害及び虐待の責任を有する全ての者の責任を追及することの重要性を強調する。我々は国軍に対し、直ちに暴力を停止し、恣意的に拘束された全ての人々を解放し、ミャンマーを包摂的な民主主義への道に回帰させるよう求める。我々は、あらゆる次元においてASEANの「5つのコンセンサス」に基づき、特に全ての当事者との対話において、危機の平和的解決を見出すためのASEAN及びASEAN議長特使の取組を引き続き支持する。我々はまた、国連事務総長特使の取組も支持する。我々は人権状況の悪化を引き続き深く懸念し、同国のあらゆる場所で支援を必要とする全ての人に対する、即時、安全かつ阻害されない人道アクセス及び新型コロナウイルスワクチンへのアクセスの確保を要求する。我々は、状況が許す限り、ロヒンギャ難民を含む全ての避難民の自発的、安全、尊厳ある、かつ持続可能な帰還の必要性を強調する。我々は、ミャンマー国軍への、武器、軍事装備品・物品、あるいは汎用装備品の売却や移転の阻止に引き続き完全にコミットするとともに、全ての国に対し、同様の措置をとるよう求める。

7.アフガニスタン

我々は、タリバーンによる強制的な権力掌握以降のアフガニスタンの動向を深く懸念している。我々は、特に女性と女児、民族的・宗教的少数派のメンバーに対する組織的な人権侵害、及び、基本的自由の否定の広がりに危機感を募らせている。我々は、アフガニスタンにおいて、政治的包摂性と統治の代表性の恒常的な欠如、深刻な経済的・人道的・社会的状況及び、テロリスト集団の存在を引き続き懸念している。我々は、とりわけ民族的・宗教的少数派、特にシーア派のハザラコミュニティのメンバーを標的とした累次のテロ攻撃を含めた現在も続く暴力、及びアフガニスタンを発生源とする近隣諸国及びその他の国に対するテロの脅威に対し、結束して強く非難する。

我々は、3月31日のハイレベル・プレッジング会合におけるコミットメントで示したとおり、アフガニスタンの人々の人道ニーズ及び人間の基本的ニーズ(BHN)への取組を引き続き支援することを、アフガニスタンの人々に対し再確認する。人道的原則に則り人道支援を迅速かつ完全に流通させるためには、妨害されない人道的アクセスが不可欠である。援助の流用防止は、あらゆる援助にとって重要である。我々はタリバーンに対し、長期にわたる社会・経済・政治の安定に不可欠な基礎を確保するよう緊急に要請する。こうした基礎の確保は、包摂的かつ代表的な統治、法の支配及び市民社会に向けた有意義な取組、女性、女児及び少数派メンバーに対するものも含めた政治的・社会的・経済的・文化的・教育的権利の完全な尊重、ドーハ合意におけるコミットメントの遵守、及びアフガニスタンの人々への安全の提供を伴わなければならない。我々はタリバーンに対し、アフガニスタンの女児の中等教育への平等なアクセスを否定する決定を緊急に撤回するよう再度要求するとともに、公共の場における女性の外見に関する最近の発表と、これらの制限の遵守を強いるための家族に対する新たな罰則を撤回することを断固として呼びかける。これは、女性と女児の基本的自由に対する更なる深刻な制限の再来を意味する。我々は、アヘン栽培を禁止するタリバーンの決定の迅速かつ完全な実施を注視しており、これは違法麻薬取引及びテロ資金の不正調達に対処するための具体的な取組へと繋がるべきである。我々は、タリバーンがアフガニスタンの国境を越える外国人及びアフガニスタン国民の安全な移動を許可するよう期待していることを再度想起する。我々は、アフガニスタンに対する人道面を超える関与及びタリバーンとの関係の性質と度合いが、これらの事項に関するタリバーンのコミットメント、行動、成果及び国際社会が広く共有する期待を勘案しつつ、大部分が決定されることを強調する。我々は、国際パートナー、特にアフガニスタンの近隣諸国に対し、こうした基準に沿ってタリバーンとの関与を定義することを要請する。国際社会の結束は、平和で安定し繁栄するアフガニスタンを確保するための鍵である。

8.リビア

我々は、リビアの全てのステークホルダーに対し、法的根拠を速やかに定義した上で、自由で、公正で、包摂的な大統領選挙及び議会選挙をできるだけ早く実施することにより、リビア国民の民主主義への希求が認められることを確保することを求める。我々は、全ての当事者に対し、暴力を控え、国家と制度の統一性を維持するよう求める。我々は、公的、政治的役割を担う女性に対する報復を引き続き懸念する。我々は、国連安全保障理事会決議第2571号(2021年)、及びリビアの平和、安定、安全を脅かす行為に従事する、あるいはその行為を支援する個人または団体は、制裁の対象に指定され得ると改めて想起する同決議の規定を想起する。

我々は、ステファニー・ウィリアムズ国連事務総長特別顧問による調停のための仲介を改めて支持し、全ての国際的パートナーとリビアのステークホルダーの全面的な協力を奨励する。この点において、我々は、国連リビア支援ミッション(UNSMIL)を再編する国連安全保障理事会決議2629(2022年)の採択に留意し、事務総長に対し、特別代表を速やかに任命するよう要請する。我々は、リビア人から多額の収入を奪い、価格上昇の負担を負わせ、停電、水供給問題、及び燃料不足のリスクを負わせている、油田閉鎖の継続を深く懸念している。我々は、リビア産の石油生産の完全な再開を求め、全ての関係者が、石油を政治的対立の手段として利用しないよう要請する。我々は、全てのリビア国民の利益のために、石油収入が透明性をもって管理され、明確な予算プロセスを通じて公的支出が決定、実行されることの必要性を引き続き強調する。リビア国営石油公社の統一性、完全性、非政治性は維持されなければならない。我々は、国連安全保障理事会決議第2570号と2571号(2021年)にあるとおり、2020年10月23日の停戦の完全な実施、全てのリビア人の移動の自由、武器禁輸の遵守、及び全ての外国軍勢力と傭兵のリビアからの遅滞なき完全な撤退を引き続き要求する。我々は、リビアの全当局に対し、リビア国民への基本的サービスの提供を確保し、市民社会を迫害から守り、市民対話の権利を擁護し、人権を尊重し、人権侵害と虐待に対する説明責任を促進し、難民と移民の保護を確保することを求める。我々は、リビアに対する国連による武器禁輸措置の効果的な実施を確保する国連安全保障理事会決議第2292号(2016年)による授権の更新を支持する。この点に関し、我々は、EUのイリニ(IRINI)作戦を通じた継続的な取組を歓迎する。

9.シリア

我々は、国連安全保障理事会決議第2254号に基づく包摂的な政治的解決の代替はないことを再確認する。我々は、全ての当事者、特にシリア・アラブ共和国に対し、国連が仲介する政治プロセスへの意味ある関与を求める。我々は、アサド政権との関係を正常化する取組を支持せず、政治的解決に向けた不可逆的な進展があるまで、我々自身もアサド政権との関係を正常化せず、制裁を解除せず、復興のための資金提供も行わない。我々は、アサド政権及びその支持者による、特にシリア国民に対する継続的な組織的残虐行為及び人道支援を迂回させ、シリアへの及び同国内における定期的かつ持続的な人道アクセスを阻害しようとする政権の試みを非難するとともに、支援のアクセス及び提供の政治化に対して強い異議を申し立てる。我々は、性暴力犯罪の横行を非難するとともに、本年後半においてもクロスボーダー人道支援のマンデートが継続されることを強く支持する。

我々は、シリア及び地域の将来に関する第6回ブリュッセル会議を、シリアの人々、シリアの市民社会及び国連安保理決議第2254号に沿ったシリア紛争の包摂的政治的解決への継続的関与と支持の強い現れとして歓迎する。我々は、いかなる将来の政治的解決にも女性の意味ある参画が含まれることを確保する重要性を強調する。我々は、アサド政権が、化学兵器禁止機関(OPCW)に全面的に協力する義務を含む、国連安保理決議第2118号の義務を遵守することを要請する。我々はまた、シリアが2020年7月9日のOPCW執行理事会決定で示された措置を完了するまで、化学兵器禁止条約の下でのシリアの権利と特権の一部を停止するというOPCW締約国の決定を引き続き全面的に支持する。我々は、化学兵器の使用及び、国際人道法や国際人権法を含む、国際法違反に対する説明責任に固くコミットしている。化学兵器の使用への不処罰は認められない。我々は、化学兵器使用不処罰に反対する国際パートナーシップの参加国として、OPCWの使用者調査・特定チーム(IIT)の活動及びシリアにおける化学兵器攻撃の責任の所在を明らかにするための継続的な取組を歓迎する。我々は、解放された地域の安定化のために、対ISILグローバル連合の取組を引き続き支援する。

我々は、強制的に失踪させられた、あるいは恣意的に拘束された数万人のシリア人の運命と所在に関する進展の喫緊の必要性を強調する。我々は、シリアで行われた国際犯罪行為を訴追する、管轄権を有する国内裁判所による継続的な取組を歓迎し、これらの取組と、シリア国際公平独立メカニズムや国際調査委員会のような、適切な国際刑事司法、調査メカニズム及び移行期の司法メカニズムの活動を支持することを約束する。

10.イラク

我々は、イラクの安定、主権、及び民主主義に対する我々のコミットメントを改めて表明する。2021年10月の選挙の実施の成功を受け、我々は、イラクが、必要不可欠な経済改革、地域協力、安定化を含めた、全ての国民のニーズに応え、国民への責任を負う、新しい政権を緊急に樹立することを要求する我々は、シリア北東部のキャンプから自国民が帰還するためのイラクの取組を評価しつつ、イラク政府が主導し、対ISILグローバル連合が支援する、ISILとの戦い、イラクの安定と安全の確立、強化に向けた取組を引き続き支持する。また、我々は、イラク政府の要請に基づく、文民治安部門改革を支援するイラクにある欧州連合諮問ミッションの活動と、治安部隊と制度の強化を支援するNATOイラク・ミッションの活動を歓迎する。我々は、120万人のイラク人の人道的状況、及び長期化する避難生活を引き続き懸念するとともに、イラクが、恒久的解決促進へのコミットメントを実現することを奨励する。我々は、イラクがグリーン経済への移行という野望を実現することを求め、この移行のために支援する用意がある。

11.イスラエル・パレスチナ紛争

我々はまた、イスラエル・パレスチナ紛争を取り上げ、イスラエルと自立可能なパレスチナ国家の双方が平和と安全、及び相互承認の下に共存することを想定した、交渉による二国家解決へのコミットメントを再確認した。最近の出来事に鑑み、我々は、テロ、市民に対する無差別の暴力及び暴力の扇動を強く非難する。また、ガザの武装勢力によるイスラエルに向けたロケット弾の発射も非難する。我々は、最近双方がとった前向きな措置を歓迎するとともに、信頼を取り戻し、パレスチナ経済を改善し、できるだけ早期に政治プロセスを再開する道筋を定めるために、経済面での協力の深化を含む当事者間の更なる関与を奨励する。我々は、歴史的なエルサレムにおける現状、及びヨルダンの特別な役割に対する支持を改めて表明する。我々は、全ての当事者に対し、暴力の扇動や入植地の拡大を含め、緊張を悪化させ、あるいは二国家解決を脅かす、いかなる一方的な行動も全て控えるよう求める。我々は、地域の安定のための国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の重要性を強調し、国際社会に対し、同機関が確実にサービスを提供できるよう、支援を拡大及び維持するよう求める。

12.イエメン

我々は、ハンス・グランドバーグ国連事務総長特使が仲介した2か月間の休戦と、ホデイダ港を通じた燃料の輸入、及びサヌア空港の開港を含む、関連する信頼醸成措置を歓迎する。我々は、大統領指導評議会の設立を含むイエメンの政府改革を、イエメンの平和と安定に向けた重要な一歩として高く評価する。我々は、全ての紛争当事者に対し、休戦を尊重し、イエメン国民の利益のために信頼醸成措置を実施し、タイズ-ハウバーン間の道路を開くための協議に建設的に関与することを要請する。我々は、紛争当事者に対し、この休戦を持続的な停戦に転換し、女性や市民社会のリーダー、疎外されたコミュニティーのメンバーからの有意義な意見を取り入れ、最終的には永続的な平和に到達するため、国連主導の下、建設的な協議に関与するよう求める。我々は、人権侵害や虐待、及び国際人道法の違反に対する説明責任を求める。全ての紛争当事者は、人道的アクセスの迅速かつ妨害されない通行を許可し、促進しなければならない。全ての紛争当事者は、市民と民生インフラの保護を確保するため、人権擁護団体、ジャーナリスト、人権侵害や違反の記録を行う市民社会職員を含む人々によるアクセスを提供すべきである。人道的支援と物資、特に燃料は、同国内へ、及び同国全域で阻害されることなく流通しなければならない。我々は、国際社会、特にこの地域の国々に対し、現在30億ドルが不足している人道的対応に多額の資金援助を行い、また、危惧されるタンカーFSO「サーフィル」を解決し、この地域の環境及び人道上の悲劇を防ぐよう要請する。

13.G7アフリカ・パートナーシップ

我々は、より包摂的で持続可能かつ強靭な経済を構築し、世界の保健及び食料安全保障を推進し、気候変動と生物多様性の喪失に立ち向かい、並びに女性及び女児をエンパワーしつつ、多国間主義及びルールに基づく国際秩序の精神に則り、アフリカ諸国、地域機関及びアフリカ連合とのパートナーシップを深化させることを決意する。我々の協力は、アフリカ連合(AU)アジェンダ2063、2030アジェンダ及びパリ協定の目的によって導かれる。我々は、2030年に向けたEU・AU共同ビジョン等、この協力を推進するための更なる取組を歓迎する。

気候変動及び新型コロナウイルスのパンデミックが及ぼす重大な影響に加え、アフリカの経済は、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争により、エネルギー、食料及び肥料の価格上昇、並びに借入コストの上昇を通じて、多大な影響を受けている。我々は、インフラ及び投資のためのG7パートナーシップ、EU・アフリカ・グローバル・ゲートウェイ投資パッケージ、G20アフリカとのコンパクト等、様々な方法でアフリカのパートナーとの経済協力を更に強化する。また、我々はエジプトが主催するCOP27の成功に向けて取り組むとともに、AUのグリーン復興アクションプラン等の関連するアフリカのイニシアティブを歓迎する。

我々は、アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)及びAUのアフリカ・ワクチン入手トラスト(AVAT)による、新型コロナウイルスのパンデミックに対するアフリカの強力な対応の調整における並外れた取組を称賛するとともに、新型コロナウイルスやその他の疾病と戦う上でのアフリカの目標達成に向けて支援を続けることを決意する。更に、我々はアフリカCDC及びその他のアフリカのパートナーによる大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG7主導のグローバル・パートナーシップ(GP)が先導する、アフリカにおける生物学的脅威を軽減するための固有のイニシアティブに対する重要な貢献を認識する。

我々は、国際法の尊重及び影響を受ける国々の政治的意思に基づき、グローバルなアプローチを展開しながら、アフリカ全域におけるテロとその拡散に立ち向かうことを引き続き決意する。アフリカの問題にはアフリカの解決策をとの原則を前提に、我々は平和、安全保障及びガバナンスの課題に対するアフリカ大陸の対応への支持を強調する。

14.アフリカの角

G7は、アフリカの角における平和、安全保障及び人道上の課題について引き続き懸念する。政情不安、脆弱なガバナンス、武力紛争、民兵及びテロリスト集団、並びにアフリカの角及び紅海の軍事化の進行は、近年の民主主義の成果と経済改革を脅かしている。その結果、この地域全体において食料不足を含む人道的圧力が高まっており、この圧力は、気候変動、前例のない干ばつ及び自然災害、並びにロシアによるウクライナに対する侵略戦争の影響を受けて更に悪化している。50万人近くが影響を受けている、エチオピア及びソマリアにおける飢饉に似た状況の発生は非常に懸念される。情勢不安であり、アクセスの政治化は、人道支援機関が何百万人もの人々の救命に必要な援助を届けることを妨げている。アフリカの角における最も貧しく弱い立場にある人々が、こうした圧力の矢面に立たされている。我々は、避難民の増加及び人権状況の悪化、特に性的及びジェンダーに基づく暴力の蔓延を深く懸念する。我々は、平和と安全保障、民主的かつ包摂的なガバナンス、アフリカの角及びより広範な近隣地域における経済開発及び資源の持続可能かつ公平な利用の促進、並びに人々及び経済の強靭性の強化のために、この地域の国々及び機関と協力するという我々のコミットメントを強調する。

15.ソマリア

我々は、ソマリアの指導者に対し、ソマリアの新たな大統領及び政府に正統性及び信頼性を与えるような、包摂的かつ透明性のある方法で進行中の選挙プロセスを終了させるよう強く求める。我々は、議会選挙のプロセスを完了させるためにこれまでに成し遂げられた大きな進展を歓迎する一方で、議会における女性議員比率30%のクオータが達成されていないことに落胆する。我々は、悪化している干ばつ及び進行中の人道的危機を深く懸念している。性的及びジェンダーに基づく暴力の継続的な報告は遺憾である。我々は、これらの危機の壊滅的な悪化を防ぎ、強靭性を高めるために、国際社会による緊急かつ協調的な行動の必要性を認識する。我々は、ソマリアにおける暴力的過激主義に対抗する継続的な努力の必要性を強調するとともに、ソマリアが自身の国家安全保障に対する責任を担うことを可能にするための能力構築の効果的な実施を強く求める。したがって、我々は国連安全保障理事会(UNSC)によるAUソマリア暫定ミッション(ATMIS)へのマンデート付与を歓迎する。

16.スーダン

我々は、2021年10月25日の軍事的政権奪取後の、包摂的な民主主義及び平和に向けた文民主導の移行への復帰を引き続き求める。スーダンの経済危機解決の支援に向けた経済支援及び国際的な債務救済の再開を可能にするためには、信頼できる文民主導の政府の回復が極めて重要である。我々は、性的及びジェンダーに基づく暴力を含む抗議活動の参加者に対する暴力の停止、不当に拘束された全ての人々の即時解放、並びに全ての恣意的な逮捕及び拘束の停止を強く求める。我々はこれらの行為を最も強い言葉で非難し、和解の実現には被害者と生存者のための正義が重要であることを主張する。我々はまた、緊急事態宣言の即時解除を求める。軍は、平和的かつ民主的なスーダンの実現に実際にコミットしていることを行動で示す必要がある。また、文民勢力も、文民主導の政府の主導権を取り戻すために、重要な交渉事項について共通認識を見出す必要がある。我々は、スーダン人主導の政治プロセスを共に促進している国連、AU及びIGADの協力を歓迎し、危機の解決並びに平和的、民主的、かつ文民主導のスーダンに向けたプロセスの次の段階への関与を継続するよう全ての関係者に奨励する。

17.エチオピア

我々は、無期限の人道的停戦の発表を歓迎し、全ての紛争当事者に対し、全ての紛争地域への、完全で、安全で、妨害されない、かつ持続的な人道支援の提供を確保するよう強く求める。我々は全ての紛争当事者に対し、永続的な停戦を交渉すること、及び持続的な平和の基礎を築き、真に包摂的な国民対話に向けた条件を整えるような、危機の政治的解決策に向けて行動するよう求める。我々はエリトリア政府に対し、エチオピア北部から自国の部隊を撤退させるよう強く求める。

性的及びジェンダーに基づく暴力を含む人権侵害及び説明責任の欠如は引き続き主要な懸念事項である。我々は、合同調査報告書の勧告に対するエチオピア政府の関与及び省庁間タスクフォースの設立を歓迎し、不処罰を避け、更なる残虐な行為を防止し、正義及び和解への道筋を整えるため、全ての紛争当事者がエチオピアに関する人権専門家国際委員会と協力することを強く求める。我々は紛争当事者に対し、性的及びジェンダーに基づく暴力の生存者の声がいかなる政治的解決にも考慮されることを確保するよう奨励する。

我々は、800万人以上の人々が影響を受けて、南部及び東部地域において悪化している干ばつを深く懸念する。我々は、人道的取組を支援することにコミットし、他の国際的なパートナーにも同様の行動をとるよう強く求める。

18.サヘル

我々は、西アフリカでの一連のクーデター及び軍事的政権奪取を懸念している。我々は、マリ、チャド、ギニア及びブルキナファソにおける自由で公正な選挙及び憲法秩序回復の必要性を強調する。我々は、この地域での政治的移行を仲介し支援するECOWAS、AU及び国連の取組を支持する。我々は、悪化する人道状況を懸念し、拡大する人道上のニーズに対処するために人道支援関係者と引き続き協働することにコミットする。この地域で活動する全ての治安部隊により、人道上のアクセスが維持され、国際法が尊重される必要がある。我々は、マリ暫定当局による多数の妨害及びロシアに関連のある部隊の存在により、いくつかのパートナーが下した、マリからの軍事的能力撤退の決定に留意する。

我々は、マリ暫定当局が、アフリカ連合が支持する、大統領選挙及び国民議会選挙を実施するというECOWASに対するコミットメントを未だ果たしていないことを遺憾に思う。我々は、マリの安定化におけるMINUSMAの役割を称賛する。我々は、ロシアから支援を受けているワグナーグループ部隊のマリにおけるプレゼンスの高まり及び地域全体を不安定化させ得る影響について深い懸念を表明する。我々はまた、ロシア関連部隊を伴いマリ国軍分子が同国で行い、市民数百人の死をもたらしたとされる深刻な人権侵害及び蹂躙に関する信憑性の高い申し立てについて重大な懸念を表明する。テロとの闘いを口実に行われたこれらの侵害・蹂躙行為は、民族間の緊張を悪化させ、テロ組織を長期にわたり利することになる。こうした侵害行為は公平に調査され、責任者は責任を追及されなければならない。MINUSMAは、国連安全保障理事会からのマンデートに従い調査を行うため、侵害・蹂躙行為が行われたとされる現場への立ち入りを許可されなければならない。

我々は、サヘル諸国による自立と、持続可能な平和、安定及び開発の実現に向けた取組を引き続き支援していく。我々は、サヘル地域において紛争の根本原因に対処するとともに、並行してテロの脅威と闘う必要性に留意する。サヘルのための連合、P3S(サヘル地域の安全及び安定のためのパートナーシップ)、サヘル同盟といった国際支援調整メカニズムは重要な役割を担っている。我々は、ウンジャメナ首脳会合参加国が求めたサヘルにおける民生的・政治的強化を支援するというコミットメントを再確認する。我々は、テロリストによる脅威がサヘルからギニア湾沿岸諸国へと拡散していることを懸念する。我々は、これら国々の強靭性を包括的に強化する必要性を強調し、ECOWAS及びアクラ・イニシアティブを通じたものを含む、サヘル及びギニア湾沿岸諸国間の協力関係の改善を求める。

19.ギニア湾(海洋安全保障及び海上安全、海上不法行為への対処)

我々は、海洋のための国際的なカバナンスの協力的な制度を推進し、国際法、特にUNCLOSに則った、ルールに基づく海洋秩序を維持することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、ギニア湾に面する国々が、ヤウンデ海洋安全保障アーキテクチャの履行、特に海賊行為及びその他の海上における不法行為の防止及び撲滅において達成した進展と、ギニア湾における調整海洋プレゼンス構想(CMP)を通じた欧州連合の支援の継続を歓迎する。我々は、地域各国並びに関係する各国及び国際組織に対し、G7++ギニア湾フレンズ・グループ(FOGG)の調整枠組みにおける対処を含む、海賊行為の根本原因、防止及び訴追に更に対処することを奨励する。このような枠組みの中で、我々は海洋安全保障、海洋資源と生物多様性の保護及び地域のオーナーシップの強化、並びにヤウンデ海洋安全保障アーキテクチャの取組の強化を追求する。

20.ベネズエラ

我々は、ベネズエラの継続する人道状況の悪化、及び避難民の増加を非常に懸念している。こうした状況は、地域最大の移民危機を引き起こしている。我々はマドゥーロ政権による人権侵害を強く非難し、引き続き人権侵害の停止を強く求める。我々は、責任を有する者にその責任を負わせ、ベネズエラにおける人権状況を向上させるため、国連人権高等弁務官と国連事実調査団の作業を支持する。2021年11月に実施された地方選挙において、重要な構造的欠陥が見られた。我々はマドゥーロ政権に対し、基本的な民主的原則を尊重し、EU選挙監視団がまとめた勧告に従い行動することを要求する。全ての政治的及び市民的権利を尊重すること、及び全ての政治犯の釈放を改めて要求する。この危機から脱する唯一の方法は、ベネズエラ人自身による交渉によって自由で公正な大統領選挙及び議会選挙実施をもたらすことにある。全当事者に対し、速やかに交渉を再開し、ベネズエラ国民の利益のため、誠実に行動することを求める。

21.ハイチ

我々は、ハイチにおける深刻な人道的及び経済的状況、並びに暴力的な犯罪組織が治安及び政治状況に与える影響がもたらす深刻な結果につき、引き続き深く懸念している。我々は国際社会に対し、ハイチを支援するよう求める。我々は現場の国際機関が果たす役割と行動の重要性を強調する。我々の優先事項は、治安と市民の平和を回復するためにハイチ国家警察の能力強化を支援することである。我々は司法の実効性の回復と不処罰との闘いの重要性を強調する。我々は全ての政治関係者及び市民社会の関係者に対し、民主的制度の機能を回復し、事情が許す場合には自由で公正な選挙を実施することを可能にするため、互いの相違を克服し、意味のある対話に関与することを求める。

22.紛争予防・管理、国連の取組・改革への支援、平和維持ミッション、ジェンダー平等戦略

我々は、紛争を予防し平和を持続させる重要な手段である紛争分析、早期警戒、危機予防、平和構築及び戦略的洞察に対する強い支持を再確認し、これらの相乗効果の検討を行うことにコミットする。我々は、国連平和構築基金を含む、平和構築のための財政基盤を確保する方途を追求する意欲を有している。そのための手段として、革新的資金調達メカニズムを含む、平和構築のためのあらゆる資金調達オプションを検討する。本年4月に行われた平和構築資金調達に係る国連総会ハイレベル会合から引き続き、平和資金調達に関するG7のプロセスの策定を目指す。国連平和維持活動が、引き続き、国際の平和及び安全の維持という国連の任務の中核的な要素であることは、我々の確固たる信念である。我々は、事務総長によって進められている「PKOのための行動(A4P)・PKOのための行動プラス(A4P+)」による改革のためのイニシアティブを引き続き支持する。我々の見解では、国連平和維持活動は、紛争予防、調停及び平和構築と同様に、紛争の永続的解決を達成するための包括的なアプローチの一つの要素である。我々は、一部の平和活動が直面する多様な問題、特に武装主体及び偽情報キャンペーンに対処するための多面的なアプローチを追求する。

我々は、より機動的で、統合され、結束した国連のための国連改革に向けた、国連とグテーレス事務総長による方針を支持することを再確認する。我々は「我々のコモン・アジェンダ」報告書における事務総長のイニシアティブ、特に女性の完全、平等、実効的及び有意義な参画と、若者及び市民社会組織の包摂に関するイニシアティブを歓迎し、その目標を達成するために共に貢献する。我々は、安保理改革に改めてコミットする。我々は、特にウクライナに対する侵略の文脈において、ロシアが国連安保理の常任理事国としての地位を濫用していることについて深く憂慮している。

我々は、国連安保理決議第1325号及びフォローアップ関連決議に記された「女性・平和・安全保障」アジェンダ、並びに国連のジェンダー平等戦略及び軍人のジェンダー平等戦略の完全な履行につき、引き続きコミットしている。紛争予防、平和構築及び平和維持の全ての段階及びレベルにおける、ジェンダー平等とあらゆる多様性を有する女性、女性平和構築者、女性平和維持要員、女性人権擁護者、女性が主導する団体による完全、平等及び有意義な参画は、持続可能で包摂的な平和プロセスの確保に不可欠である。

我々は、紛争に関連するものを含む、性的暴力及びジェンダーに基づく暴力を非難し、そのような行為が人道に対する罪や戦争犯罪に当たり得ることを強調する。我々は、紛争に関連した性的暴力への取組に関する国際的な体系の履行強化の必要性を認識し、2021年カービス・ベイにおいて発出されたG7首脳による外務・開発大臣への要請への回答として、共通の見解を提示することにコミットする。我々は、ジェンダーに関する社会変革を含む主流化アプローチの重要性を再確認する。紛争に関連するものを含む性的暴力及びジェンダーに基づく暴力に対処する際は生存者を中心に据えたアプローチが採用されるべきである。生存者の司法、補償及び支援サービスへのアクセスは、尊厳ある人生を送る機会を得る上で、生存者にとってきわめて重要である。この観点から、我々は、紛争関連性的暴力生存者のためのグローバル基金や、紛争下の法の支配と性的暴力担当国連専門家チームによるものを含む取組を促進する。我々は、性的及びジェンダーに基づく暴力といった人権侵害に対する説明責任をいかに向上させるかについてのアイディアを模索している。それには、常設の独立した調査メカニズムの利点に関する研究を通じたものも含まれる。

23.核兵器不拡散条約(NPT)

我々は、より安全で安定した世界のため、不拡散と軍縮の努力を強化することにコミットしている。我々は、2022年5月9日のG7不拡散局長級会合声明を支持する。同声明は、不拡散及び軍縮のための我々のコミットメントを示している。

我々は、核兵器不拡散条約を包括的に強化し、その普遍化を促進し、過去のNPT運用検討会議におけるコミットメントの重要性を再強化し、NPTによる互いに強化し合う三つの柱の全てにおいてNPTの履行を前進させることを決意する。我々は、核不拡散体制の代替不可能な礎石として、また、核軍縮と原子力技術の平和利用を追求するための基盤として、NPTの権威と優越性を強調する。

我々は、本年中に開催されるNPT運用検討会議において意義のある成果を収めることが我々の優先事項であることを改めて表明する。我々は、全ての者にとって安全保障が損なわれることがなく、また、具体的で現実的な措置を通じて達成される、核兵器のない世界という究極の目標にコミットしていることを再確認する。50年以上に及ぶ核軍備管理と戦略的リスク低減の進展は継続しなければならず、また、世界の核兵器の全体的な減少は維持されなければならず、逆行してはならない。我々は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の目標及び目的を促進させることを決意する。我々は、同条約の発効の喫緊の必要性を強調する。我々は、核兵器の爆発実験及びその他のあらゆる核爆発に関するモラトリアムの宣言を行っていない全ての国に対し、同条約が発効するまでの間、新たにモラトリアムを宣言し、又は既存のモラトリアムを維持することを求める。

我々は、将来の軍備管理取決めに向けた基盤形成を目的とした米露戦略的安定性対話の停止につながったロシアによるウクライナに対する侵略を非難する。我々は、ロシアによる核に関するレトリック及びシグナリングの不当な使用を非難する。我々は、ロシアに対して責任ある行動と自制を求める。G7は、中国を巻き込んだ活発な軍備管理対話に向けたより幅広い取組を支持し、奨励する。我々は、NPTの下での軍縮の進展にとり極めて重要な効果的措置を推進するG7核兵器国の取組を歓迎し、また、その観点から積極的かつ誠実に関与する責任が全ての核兵器国にあることを強調する。我々は、大量破壊兵器及びその運搬手段の開発に使用され得る物質、技術及び研究に対する輸出管理を、国際輸出管理レジーム等を通じ、強化することにコミットする。我々はまた、他の国がそのような拡散に対抗することを支援するため、我々の知見を共有していく。

24.バイオセキュリティ及び大量破壊兵器の拡散に対するG7グローバル・パートナーシップの20年

我々は、大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG7主導の「グローバル・パートナーシップ(GP)」のユニークで価値のある貢献を再確認する。我々は、GPの枠組みの下で、生物学的脅威に対処するため更なる取組を行う。我々は、疾病を武器として利用することに対抗する取組を、特に世界中の脆弱なパートナー国を支援する31か国からなるGPの枠組み及び予定される生物兵器禁止条約の運用検討会議において強化する。我々は、同会議において、我々は、より効果的な実施、透明性の向上、条約遵守及び信頼醸成措置の強化に向けた進展を促すことにより、条約の実施の強化に取り組む。我々は、化学兵器又は生物兵器の使用の疑いについて調査するための国連事務総長メカニズムを引き続き支持する。我々は、アフリカにおける生物学的脅威を軽減するためのGP署名イニシアティブの発展実施のため、アフリカのバイオセキュリティ・パートナーとの協力を更に深化させる意図を有する。

我々は、GPの20周年を称賛する。G7は、GPが大量破壊兵器及び物質によってもたらされる継続的な脅威及び新たに生じる脅威に対抗するための主要な貢献者であり続けることを確保することにコミットしている。

25.イラン

我々は、イランが決して核兵器を開発しないよう確保することにコミットしている。我々は、包括的共同作業計画(JCPOA)の回復及び完全な履行に対する我々の支持を再確認する。外交的解決が、引き続きイランの核計画を制限する最善の方法である。我々は、JCPOAの完全な回復を達成するための継続的な取組を支持する。イランは、この機会を捉え、ウィーンで11か月以上前に開始した交渉の成功裏の妥結に至るべき時である。我々はイランに対し、核活動の更なる拡大を控えるよう求める。過去18か月以上にわたり行われた活動拡大は、非常に重大な展開であり、深く懸念すべき事項である。これらには信ずべき民政上の必要性が見当たらず、特に重大な示唆を持つ。

G7は、IAEAの極めて重要な検証及び監視権限への強い支持を表明する。我々は、イランに対し、特にNPTに基づくIAEAとの保障措置協定における全ての義務及びコミットメントを支持し完全に履行すること、及びこれ以上遅延なく必要な全ての情報を提供し、IAEAが未解決の保障措置問題を明確にし、解決できるようにすることを求める。

我々は、中東及びその周辺を不安定化させるイランの活動に対する深刻な懸念を改めて明言する。これらの活動は、ミサイル及びミサイル技術の移転を含む、弾道ミサイル及び巡航ミサイルに関連する活動、並びに無人航空機及び通常兵器の国家及び非国家主体への移転を含む。このような武器の拡散は、地域を不安定にし、既に高まっている緊張を高めるものである。我々はイランに対し、代理団体に対する政治的・軍事的支援を停止し、関連する全ての国連安全保障理事会決議、特に国連安全保障理事会決議第2231号(2015)を完全に遵守することを求める。

我々は、平和的な集会の自由、結社の自由、信教又は信条の自由及び表現の自由に関する権利の行使に影響を与えるものを含む、イランにおいて継続する人権の侵害を深く懸念する。外国籍の者及び二重国籍者並びに人権擁護者は、恣意的な逮捕、拘束及び長期の懲役刑に直面しており、解放されるべきである。

26.北朝鮮

我々は、2022年3月24日に行われた大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を含め、北朝鮮による継続的な弾道ミサイル実験を強く非難する。同日のICBMの発射は、北朝鮮の核及びミサイル能力を更に開発する意図を改めて確認するものである。我々は、北朝鮮が直近の発射をもって、自ら宣言したICBM発射モラトリアムを放棄したことを深く懸念する。これらの無謀な行為は、国連安保理による更なる重大な重要な措置を含む、国際社会による結束した断固たる対応を要するものである。

我々は、北朝鮮が核兵器及び既存の核計画、並びにその他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、全ての関連する国連安保理決議に従い放棄するといった我々の要求を改めて表明する。我々は北朝鮮に対し、これらの国連安全保障理事会決議に従い、核兵器不拡散条約(NPT)及びIAEA保障措置に早期に復帰し、完全に遵守するよう求める。我々は、北朝鮮がNPT上の核兵器国の地位を有することはできないことを改めて表明する。我々は北朝鮮に対し、米国、韓国及び日本を含む全ての関係者が繰り返し提示している対話の申し出に応じるよう求める。我々は、朝鮮半島の平和という目標に向け、関連する全てのパートナーと共に取り組むことに引き続きコミットしている。

我々は、北朝鮮の計画が存在する間、北朝鮮の違法な兵器開発及び関連する活動を対象とする制裁が維持されることが極めて重要であるとみなす。我々は、全ての国に対し、関連する全ての国連安全保理決議を完全に、かつ、効果的に履行し、制裁回避行動を注意深く監視するよう求める。我々は、国連安全保理決議第1874号(2009年)に従い設置された専門家パネルによる、違法な「瀬取り」が引き続き行われているとの報告書に懸念を持って留意し、これらの「瀬取り」に対処する取組を歓迎する。我々は、効果的な制裁の履行に向け、その支援及び能力強化を行う用意がある。新型コロナウイルスのパンデミックの文脈においては、我々は、北朝鮮への人道支援のために全ての新型コロナウイルス関連の制裁免除要請を迅速に承認した北朝鮮制裁委員会(1718委員会)の取組を称賛する。

我々は、北朝鮮の組織的な、広範なかつ深刻な人権侵害を引き続き非難し、北朝鮮に対し、北朝鮮の全ての人々の人権を尊重し、関連する全ての国連機関と協力し、拉致問題を即時に解決することを求める。我々は、北朝鮮の人々の福祉よりも違法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を優先するとの北朝鮮の選択の結果もたらされた北朝鮮の人道状況について、引き続き重大な懸念を有している。我々は、北朝鮮に対し、可能な限り早期に、食糧や医薬品など緊急に必要とされる人道物資の輸送のため、また人道上のニーズに関する独立の調査のための国際人道機関によるアクセスを促進するよう求める。人道支援は、国連安保理決議及び人道上の原則に整合的な形で提供されるべきである。

27.宇宙空間における軍備競争の防止-宇宙空間における責任ある行動

宇宙空間の安全、持続可能かつ平和的な利用に対する国家の脅威は深刻な懸念事項である。我々の社会が安全保障や繁栄について宇宙システムへの依存を強める中、我々は、誤解及び誤算のリスクを低減させるとともに、宇宙の脅威を低減させることを決意している。我々は、宇宙空間の探査及び利用における活動には、国際法が適用されるとの共通の理解を再確認する。全ての国が宇宙システム及び宇宙サービスへの依存を強める中、宇宙環境の安全と持続可能性は共通の関心事項である。宇宙空間における責任ある行動のための規範及び規則、原則の策定は、安全を強化し、宇宙システムへの脅威を低減するとともに、誤解、誤算及びエスカレーションのリスクを低減するための実践的な方法である。我々は、全ての国に対し、宇宙空間における責任ある行動に関する共通理解を構築し、それに関連する規範、規則及び原則の第一次案の検討を目的とした、国連オープン・エンド作業部会に積極的に関与することを奨励する。我々は、破壊的な地上発射型衛星破壊ミサイルの実験を実施しないという米国のコミットメントを歓迎する。

28.持続可能な宇宙環境

我々は、平和的、安全かつ持続可能な宇宙環境の維持を促進する。我々は、国連宇宙空間平和利用委員会の長期持続可能性ガイドライン及びスペースデブリ低減ガイドラインの重要性を強調する。我々は他の主体に対し、これらのガイドラインの実施に参加するよう要請する。我々は、宇宙交通の管理と調整のための協調的アプローチの必要性に則して、持続可能な宇宙活動に関する共通の基準、ベスト・プラクティス及びガイドラインを作成することの重要性を認識する。我々は、次世代のために平和的かつ持続可能な宇宙環境を保全すべく、全ての国が協働することを要請する。

29.国際テロリズム

我々は、あらゆる形態のテロを強くかつ明確に非難することを改めて表明する。我々は、テロを防止し、テロと闘うことを目的とした国際的な取組、特に世界規模で脅威を与え続けるISIL、アルカイダ及びその関連グループに対する我々の共同の取組に貢献するとのコミットメントを再確認する。我々は、全てのテロ対策措置が、適用可能な国際人権法、国際人道法及び国際難民法を含む国際法を完全に遵守して実施されなければならないことを強調する。我々は、政治的及び社会経済的不安定を含む、テロに寄与し得る要因に対処し、テロ対策における我々の取組において、政府全体、社会全体、及びジェンダーに配慮したアプローチをとることに引き続きコミットしている。我々は、テロ資金供与及び資金洗浄と闘うための国際的な行動及び協力を促進することにコミットしており、金融活動作業部会(FATF)の基準及び関連する国連安保理決議の完全な履行を要請する。我々は、「クライストチャーチ・コール」の枠組み及びテロ対策のための「グローバル・インターネット・フォーラム」等のマルチステークホルダーの取組における我々の共同の取組の維持を含め、暴力への過激化の防止及びオンラインでのテロリストのプロパガンダ拡散に対抗するために注力し続ける必要性を認識する。我々は、全ての国連加盟国による国連安全保障理事会決議第1540号の履行強化にコミットしている。来る決議の包括的な審査及び更新は、決議第1540号が、引き続き非国家主体による核兵器、生物兵器、化学兵器及び運搬手段並びに関連物資の取得を防止する最も重要な多国間の手段であることを改めて表明する貴重な機会を提供する。

我々は、一部の政府には極右テロと呼ばれ、また、他の政府には人種的、民族的又はその他のイデオロギー的動機による暴力的過激主義又はテロと呼ばれる、暴力的過激主義又はテロによってもたらされる脅威が増大していることに懸念をもって留意する。我々は、関係するパートナーや機関との更なる関与及び国際的な情報共有の強化を要請し、この増大する脅威とその国境を越えた広がりに対処するために開始された取組を歓迎する。

30.国際的な組織犯罪

国際的な組織犯罪は、我々の国家及び国際安全保障の双方にとって引き続き重大な脅威であり、その不安定化の影響は、新型コロナウイルスのパンデミック及び最近のウクライナ危機の影響によって増幅されている。我々は、より的を絞った、協調的かつ持続的な行動を、紛争地域を含む犯罪ネットワーク、サイバー犯罪及び不正な資金の流れに対して、また、我々の能力構築の取組を更に調整し、国際協力を強化することによって要請する。我々は、世界の薬物問題が、国際社会が直面する主要な課題の一つであることを強調する。麻薬及び薬物前駆体の取引は、組織犯罪を助長し、市民及び社会に不安定化の影響を与え、公衆衛生を危険にさらし、また、場合によっては、テロ活動への資金提供の主要な原資として利用され得る。我々は、これらの課題に対し、違法な薬物の製造と取引を減少させるために、世界の他の地域との協力を強化する決意を再確認する。

我々は、世界中での、安全で、秩序があり、正規の移住に引き続きコミットし、移民の密入国や人身取引の防止と対策に継続的に取り組んでいく。我々のアプローチは引き続き、人権を重視し、生存者を中心とし、ジェンダーに配慮するものであり、最もリスクの高い人々の特定及び保護、加害者の訴追に重点を置く。我々は、野生動植物に対する犯罪を含む環境に影響を与える不正取引及び犯罪が、国際的な組織犯罪ネットワークとの関連性からも、重大かつ増大している脅威であることを認識する。我々は、国際的な法執行の強化及びこうした形態の犯罪に関連する腐敗への対策に共に取り組むことにコミットする。我々は、小型武器及び軽火器の違法取引が平和、安全、安定及び開発に対する主要な脅威であることを想起する。このような取引の防止と対策は、持続可能な開発のための2030アジェンダの一部でもある。我々は、テロ対策及び国境を越える組織犯罪との闘いにおける国際協力を促進する上で、G7ローマ・リヨン・グループが果たす役割の重要性を強調する。

II)予防及び変革

a)地球規模の気候と生物多様性の危機に対処し、持続可能で公正なエネルギー移行を推進する。

我々は、IPCCの最新の調査結果を含む科学を認識しつつ、気温上昇を1.5℃の限度内にとどめ、人々、生活及び生態系を保護し、平和と安定を維持するために、気候変動対策を強化することの緊急性を強調する。我々は、パリ協定の実施強化への我々の揺るぎないコミットメントを再確認する。我々は、この目的のため、排出量削減により温室効果ガス排出ネット・ゼロを可能な限り早期かつ遅くとも2050年までに実現し、気候変動の影響に対する強靱性と適応力を強化し、資金の流れをパリ協定の目標に沿ったものにするために、この10年間で早急かつ野心的で包摂的な行動をとることにコミットする。我々は、全ての国及び金融機関、特に国際開発金融機関に対し、同様の行動をとるよう要請する。我々は、気候資金の提供を含む、途上国への支援というコミットメントを堅持する。我々は、グラスゴー気候合意の早急な実施及び分野別の取組を含む、COP26での更なるコミットメントにおいて、我々の役割を十分に果たす。我々は、非国家主体と連携し、COP26における非国家主体のコミットメントの分野別実施を支援するとともに、気候変動への取組の適応策及び緩和策における進捗状況を包摂的かつ透明性をもって追跡することの必要性に留意する。

生物多様性の保全及び持続可能な利用は、人類の生活を維持するために不可欠であり、気候変動と密接に関連している。生物多様性の損失をもたらす主要な要因の1つは、気候変動である一方で、生物多様性は気候変動に対処するための解決策となる。生物多様性の損失は、政治、経済、健康、及び食糧の安全保障を脅かす。我々は、2030年までに、森林の損失を含め、生物多様性の損失を止めて、反転させることの緊急の必要性を再確認する。我々は、野心的かつ効果的なポスト2020生物多様性枠組が、強固な説明責任及び実施メカニズムを有し、生物多様性条約COP15において採択され、全ての締約国によって速やかに実施されることを要求する。

我々は、生物多様性に害を及ぼす補助金の特定、変更、廃止を含む全ての資金の流れを生物多様性の目的に合致させることにコミットするとともに、我々は、全ての国及び金融機関、特に国際開発金融機関に対し、同様の行動をとるよう要請する。2025年までに、生物多様性の資金を支援する我々の資金援助を大幅に増加させるために、全ての資金源から資源を動員することにコミットしており、これには強い環境・社会的配慮を伴う、自然を活用した解決策に対する資金の増加が含まれる。我々は、また、我々の経済及び金融の意思決定が持続可能性の目標に沿ったものであることを確保することにコミットしている。

31.新たな気候パートナーシップの構築

我々は、上記の目的を達成するために、世界的行動の必要性と全ての国、特に主要排出国と協力するG7の役割を認識する。我々はまた、首脳がG7以外の国々の参加を得た形で、国際ルールに沿った、開放的、協調的かつ国際的な気候クラブの設立を追求することを決定したことを認識する。我々は、野心的な気候変動対策が全ての経済にとって強固で持続可能な成長に資することを示すことにより、真のパラダイムシフトを達成することにコミットしている。

我々は、1.5℃を射程の範囲内とし続け、パリ協定の目標に沿った、ネット・ゼロに向けた道筋への移行を目指す途上国及び新興市場の努力を支援することにコミットする。我々は、上記の目標を達成するために、個々の状況に応じ、気候変動に対する野心を高めようとする途上国及び新興市場と共同で、途上国のリーダーシップに基づき、公正なエネルギー移行に向けたパートナーシップに関与する。これは、高い野心と移行を加速するために必要な手段を一致させることで達成されるものであり、例えば、融資、環境保全技術へのアクセス、技術支援、及びそれぞれの国内市場における公正な移行プロセスに基づく共有の交換などが挙げられる。

32.気候、平和と安全保障

我々は、気候変動と環境悪化、ジェンダー平等を含む人間、地域及び国際安全保障、並びに、平和、安定及び安全保障への悪影響の顕れの増加との複雑な関係を認識する。我々は、世界的で包摂的な取組に向けた第一歩として、気候・環境・平和と安全保障に関する宣言を採択する。同宣言は、気候・環境に起因するリスクを可能な限り防止し、避けられない場合には、それに効果的に対処できるように我々の対応全般を改善するため、リスク情報に基づく計画策定、及び行動能力の向上に向けた協力のための具体的提案を伴う。我々は、同程度の野心的な目標を持つ国や主体がこれらの取組に参加することを奨励する。

我々は、限界点を超えることは、現在既に顕在化している以上の気候変動の深刻な影響に加えて、生態系や気候系の物理的構成要素における突然、あるいは不可逆的な変化を引き起こす可能性があることを認識する。このような限界点を超えることは、特にその影響を受ける様々な地域の混乱や不安定化、ひいては地球生態系全体の不安定化に繋がる可能性がある。我々は同時に、「限界点」がもたらす影響をより深く理解するために、更なる科学的研究が必要であることを認識する。我々は、予防的かつ気候変動に配慮した外交・安全保障政策の重要な要素として、早急かつ包摂的なシナリオ計画の緊急性を強調するとともに、そのような事象が発生した場合にその結果に対応する能力を構築し、国連安全保障メカニズム及び他の国連・地域機関の活動を基礎とすることの緊急性を強調する。

33.国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用

我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)が、海洋における全ての活動が従わなければならない法的文書(海洋環境を保護及び保全する義務を含む。)を定めたものであることを再確認する。

我々は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関するUNCLOSの下にある野心的な法的拘束力を有する国際文書の交渉を2022年末までに迅速に妥結するよう努める。我々は、野心的、効果的、包摂的、公正かつ将来性のある条約を確保するための取組を増進し、共に誠意をもって作業を継続する。

34.南極大陸の海洋保護区

我々は、海洋保護区(MPAs)の生態学的に代表的で密接なネットワーク及びその他の効果的な地域をベースとする手段(OECMs)を通じ、海洋の少なくとも30%を2030年までに保護する取組への重要な貢献として、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)による利用可能な最良の科学的証拠並びに、東南極、ウェッデル海及び南極半島に新たな海洋保護区を設置するという提案に基づいて、条約水域における海洋保護区(MPAs)の代表システムを開発するためのコミットメントを全面的に支持する。

35.企業及び投資家の役割

グローバル・バリュー・チェーンにおける、人権及び環境デュー・ディリジェンスを含む責任ある企業行動は、企業の人権や環境への悪影響のリスクを軽減することが可能であり、強靱なサプライチェーンに資する。我々は、国家が国連ビジネスと人権に関する指導原則、OECD多国籍企業行動指針、多国籍企業及び社会政策に関するILO三者宣言(MNE宣言)の実施に向けた努力を強化することを奨励する。

36.持続可能な成長のための国際協力及びクリーンで、安全かつ公正なエネルギー移行

ロシアのウクライナに対する侵略戦争は、エネルギー安全保障を確保しつつ、エネルギー移行を加速させることの重要性を想起させる。この文脈で、我々のロシアのエネルギーへの依存度低下を目的として、我々は、液化天然ガス(LNG)プロジェクトを含む上流開発への投資を加速し、クリーンエネルギーの利用を促進することの重要性を認識する。

我々は、2020年代を世界のエネルギーシステムの脱炭素化を加速するための行動の10年としなければならないと確信している。我々は、この目的のために、化石燃料への全体的な依存を低減させることを加速すると同時に、エネルギー消費を削減し、エネルギー移行を促進し、クリーンで安全かつ持続可能なエネルギーの発展を早急に進め、ロシアの石油への依存を低減するための取組を加速することにコミットする。我々は、この移行が公正かつ包摂的なものであることを確保し、世界的に公正かつ包摂的な移行を実現するための国際協力を強化する。アジェンダ2030及びパリ協定の目標に沿ったクリーンエネルギーへの移行の加速は、エネルギー安全保障に向けた最も重要な貢献の一つでもある。カーボンロックインを回避し、エネルギー源及びエネルギー構成のサプライチェーンを多様化することは、我々の気候変動に関する目標に沿った形で、エネルギー安全保障を強化し、特定の輸出国や化石燃料の輸入への過度な依存を減らすことになる。このようなエネルギー移行には、グリーンテクノロジーに不可欠なレアアースを含む重要鉱物の安全かつ持続可能な供給源の開発に特に焦点を当て、協力することも必要である。このような取組には、緊密な国際協力が中心的な役割を果たす。イノベーションは、効果的な気候変動の緩和と、持続可能な成長及び安全なエネルギー供給の両立を可能とする。

37.持続可能なインフラと連結性

我々は、低・中所得国、特にアフリカ及びインド太平洋地域におけるインフラ投資のギャップを早急に解消するという目的を共有する。我々は、インフラ資金に関する取組の段階的変革にコミットする。そのための手段として、戦略的パートナーシップの構築や、全ての関係者に対して、持続可能で質が高く透明性がある、G7伊勢志摩原則及び質の高いインフラ投資に関するG20原則に沿ったインフラ投資のため既存の国際スタンダードを遵守するよう促し、要請する。我々は、連結性に対する戦略地政学的及びグローバルなアプローチの重要性を強調する。そうしたアプローチは、バリューチェーンの多様化、重要な原材料及びエネルギー等の戦略物資への依存削減、カーボンロックインの回避、気候変動に対する強靱性の向上、安全で強靱な人間中心のデジタル・エコシステムの確保、我々の長期的な経済、外交、開発及び安全保障上の共通の利益の増進、債務持続可能性を含む環境・社会・金融・労働・ガバナンス、開放性、経済的効率性、透明性についてのスタンダードの確保、我々の価値の世界規模での促進に寄与する。我々は、ロシアのウクライナへの侵略戦争が世界の連結性に広範な影響を与え、多様で強靱なサプライチェーンの利点を改めて示したことを強調する。

我々は、G7開発大臣が「G7インフラ及び投資のためのパートナーシップ(G7PII)」運用のための具体的な提案を準備し、エルマウ・サミット前にG7首脳に提示することを歓迎する。同提案は、特に特定のパートナー国とのカントリー・パートナーシップのための基盤構築をすることにより持続可能なインフラ投資のための民間の資本及び知見を活用するための環境改善、融資可能プロジェクトの開発促進を目的として行われる。我々は、G7PIIをEUのグローバル・ゲートウェイ、米国のグローバル・インフラ投資、日本の質の高いインフラ・パートナーシップ、英国の国際投資イニシアティブを含むG7メンバーのイニシアティブと緊密に連携させる。

38.危機予測とデータによるリスクの早期発見

我々は、データ分析に支えられた危機予測と早期警戒が、より効果的な予防、備えと対応、人道・開発・平和及び気候の連携に沿ったより良い先行的行動に向けて大いに貢献できると確信する。ジェンダーに配慮した危機分析能力を構築し、質の高いデータとデータ分析のための資金を拡大し、分野、組織、地域を超えた横断的協力を可能とすることは、平和維持のための我々の共同の取組を強化する。我々は、複合的リスク分析基金(CRAF'd)がこれら目標を推進し、データとテクノロジーの潜在力を活用するパートナー間のエコシステムを促進する1つの重要な多国間の取組であると認識する。

39.人道上の先行的行動、飢饉防止、人道危機、及び食料不安

世界中で増え続ける人道的ニーズが警鐘を鳴らす中、我々は、新型コロナウイルスとロシアのウクライナへの侵略戦争の影響により悪化した、紛争並びに気候変動に起因する災害の増加が数百万人の生命と生活を脅かし、人々の苦しみを深刻化させていることに深い懸念を持って留意する。我々は、国連事務総長が開始した多国間の行動(食料・エネルギー・金融に関するグローバル危機対応グループ)を完全に支持し、G7予防と人道危機に関するワーキング・グループの作業を称賛し、危機が襲う前に行動するための、先行的かつ先見性のある人道支援へのパラダイムシフトを導く、人道支援における先行的行動の強化に関するG7声明を支持する。我々は、人道システムにおいて、先行的行動を提唱し、その実行を可能とし、それを体系的に組み込むという我々のコミットメントを再確認し、我々の関連する財政支援の大幅な拡大に努める。

我々は、新型コロナウイルスのパンデミックにより悪化し、また、ロシアのウクライナに対するいわれのない不当な侵略戦争によって激化したウクライナ国内及び世界中の食料不安と栄養不良が益々悪化していることに深い懸念を表明する。既に4500万人が飢饉の一歩手前の状態に置かれている中で、食料価格及び人道機関が最も必要とする人々に支援を届けるためのコストは共に上昇している。このため、我々は、ニーズに最も効果的に対応可能な人道支援主体への人道資金を増やす必要がある。我々は、そのような資金を可能な限り柔軟に提供するよう努める。

しかし、強靱で持続的に成長する経済への投資は、更に多くの財源を必要とする。我々は、G7農業・開発大臣とともに、G7内における緊密な協力、また、パートナー及び特にWTO、FAO、WFP及びIFADといった関連国際機関、並びに世界銀行及びアフリカ開発銀行のような多国間開発銀行及び国際金融機関との間で緊密な協力を継続する。

我々は、ウクライナ及び世界における食料安全保障と栄養に対する戦争の影響に対応するためにこれを行う。我々は、他の提案の要素を基にしたG7行動計画を通じ協力を継続する。我々は、G7開発トラックにおいて展開された志を同じくする「食料安全保障のためのグローバル・アライアンス」の立ち上げを支持する。

我々は、5月14日に合意された「ロシアによるウクライナに対する侵略戦争が世界の食料安全保障に及ぼす影響に関するG7外相のコミットメント」を支持する。我々は、政治的コミットメントを食糧・農業強靱化ミッション(FARM)や、まもなく開催される食料安全保障危機に関する地中海閣僚対話といったアフリカ及び地中海諸国へ向けたものを含む主要な地域的アウトリーチイニシアティブ等の様々な国際的イニシアティブにより計画された具体的な行動に転換することを目的に、G7を超えた国際的なパートナーや組織と緊密に協力する。我々は、国連事務総長提案の食料・エネルギー・資金に関するグローバル危機対応グループを積極的に支援する。我々は、この目的のため、G7を超えた全ての善意を有するパートナー並びに市民社会や民間部門と協働する用意があり、5月18日にニューヨークで開催されるグローバルな食料安全保障のための行動要請閣僚会合を歓迎する。我々は、多国間で危機に対処し、生産能力を向上させる必要がある一方で、我々の農業・食料システムをSDGsに則し持続可能なものとなるよう変革する重要性を認識する。我々は、国連食料システムサミットや東京栄養サミットなどの国際的なプロセスを基礎とし、あらゆる形態の栄養不良と闘う意思を再確認する。

b)パンデミックの課題への対応

40.ワクチンの供給から接種における公平性

我々は、世界健康安全保障が、国家安全保障、開発及び経済目標と密接に関係していることを認識し、パンデミックが全ての人々にとって終わるまでは、収束しないことを認識する。我々は、安全性、有効性、品質が保証された、入手可能な価格のワクチン・治療・診断への公平なグローバルアクセスを、避難民や人道的な支援を必要とするような状況にある人々を含め、可能にするという我々のコミットメントを再確認し、新型コロナウイルス感染症に対する大規模な予防接種の国際公共財としての役割に留意する。我々は、COVAXファシリティを含むACTアクセラレータ(ACT-A)の4つの全ての柱に対する支持を強調し、G7外相行動計画に示されたように、十分な資金提供を含むあらゆる方法によるACT-Aへの支援がパンデミックの急性期を収束させるための中核であることを認識する。G7メンバーはこれまでに、ACT-Aに183億ドルの資金提供をプレッジしている。

2022年にパンデミックの急性期を収束させるためには、各国のニーズや能力を考慮しつつ、迅速かつ柔軟なアプローチによって予防接種の取組を更に加速させるとともに、世界保健機関(WHO)の世界ワクチン接種戦略及び目標への継続的な支援が必要である。我々は、G7外相行動計画で詳述されているように、予防接種のための取組に残るあらゆる格差に対処し、持続的な地域での生産能力の拡大を可能とするために、全ての国々との協力が極めて重要と認識する。我々は、ワクチンが実際の接種に確実に繋がるよう、特に「ラスト・ワン・マイル」において物流課題の解決を支援することにコミットする。我々は、この点で、ACT-A等を含めた多国間の取組と連携し、二国間の取組を加速することにコミットする。

41.世界健康安全保障の枠組の強化とパンデミックへの予防、備え、対応の改善

我々は、パンデミックからの教訓を学び、それを適用することを決意し、この点に関するG7保健大臣及びG7開発大臣による取組を歓迎する。我々は、国際保健の取組におけるWHOの指導、調整上の役割の強化、及び政府間交渉会議(INB)により適当とみなされる、WHO憲章第19条又はその他の条項の下での採択を視野に、パンデミックに対する予防・備え・対応に関するWHOの条約、協定又はその他の新たな国際文書の起草及び交渉のためのINBへの支持に対する我々の強いコミットメントを再確認する。我々はまた、履行の強化、コンプライアンス遵守、及び潜在的な部分改正による国際保健規則の強化に関する議論、並びに新たな普遍的保健・準備審査(UHPR)の策定を支持する。

我々は、四者機関(国際獣疫事務局(OIE)、国連食糧農業機関(FAO)、WHO、国連環境計画(UNEP))による作業、並びに「ワンヘルス・ハイレベル専門家パネル」及びワンヘルス・アプローチの実施を強化するための、その他の関連イニシアティブを奨励する。我々は、WHOによる次の段階の新型コロナウイルスの起源に関する調査のための、専門家主導による透明で独立したプロセスを引き続き支持し、新たな病原体の起源に関する科学諮問グループ(SAGO)の作業を歓迎する。我々は、様々な評価パネルの作業に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に貢献するため、WHO、及びより広く、パンデミック及び将来の健康危機への予防、備え、対応に関する世界健康安全保障の枠組みを強化するための持続的な政治指導力及び持続可能な資金調達の必要性を認識し、2023年のUHCに関する国連ハイレベル会合に向けて協力する。我々は、世界健康安全保障アジェンダ(GHSA)やパンデミック及び伝染病の情報、データ、監視、分析のイノベーションのためのグローバルハブ、WHOアカデミー等を通じ、中核的能力の構築を加速するための取組を引き続き支援し、推進する。我々は、薬剤耐性(AMR)が世界的に大きな脅威となっていることを認識し、「ワンヘルス」アプローチによりAMRと闘うとのコミットメントを改めて表明する。

c)民主主義の更なる強靱化

我々は、共通の価値に基づく共同体として、包摂的な民主主義、人権の尊重、効果的で責任ある統治、法の支配は、平和的でルールに基づく国際秩序の礎石であると信じる。そのような国際秩序において、全ての人は繁栄し、全ての個人は平等な権利を享受できる。世界中の民主主義国が、国内外からより強い圧力に直面している中、我々は、パートナーとともに、世界中の開かれた民主主義社会を保護し、擁護することにコミットしており、民主主義の強靱性と結束に関する強いシグナルを発出する。我々は、人権の尊重、民主的制度、経済安全保障、及びサイバー・ガバナンスを向上し、市民空間を保護し、ハイブリッドな脅威や偽情報と戦うことに引き続きコミットしていくための取組を改めて確認する。我々は特に、喫緊の人権問題、すなわち、気候と人権、人工知能と人権、人権侵害の責任追及、ジェンダー平等及び二国間関係における恣意的拘束に対処することにコミットしている。

42.民主的制度の強化

我々は、民主主義に対する権威主義的な脅威の高まりに世界的に直面する中、全ての人の権利と自由を保障するための包摂的な民主的制度の強化のため、共に取り組むことにコミットする。我々は、米国によって開始された民主主義サミット行動の年と11月17日から18日に開催される民主主義の強化に関するOECD閣僚会合に伴う民主主義の強靱性向上に向けたOECDによる現在進行中の作業を支持し、この目的に向けたイニシアティブの履行のため、個別的に、かつ共同で取り組んでいる。我々は、民主主義制度に対する悪意ある行動及び外国による敵対的な干渉に対処するための、市民社会、学術界、民間部門及びメディアを含む非政府組織のステークホルダーによる取組を評価する。偽情報の脅威の増加への対応の一貫として、メディアの自由を守り、世界の独立系メディアを支援するため、メディアの自由コアリションを通じて、引き続き共に取り組むことにコミットする。我々は、民主的制度、手続及び原則を強化するため、国内外、特に脆弱な民主主義国において、ステークホルダーと引き続き協働していく。我々は、法の支配を遵守し、腐敗に対処するため、腐敗した主体とその違法な収益が我々の各国の領域及び金融システムにアクセスできないよう努める。我々は、民主主義に対する国民の信頼を損なう腐敗の破壊的影響を認識し、我々の腐敗対応において、より強力で統一された声を集めることに引き続きコミットしていく。我々は、G7によってなされたものを含む、反腐敗に関する国際的な義務とコミットメントの効果的な履行を支持し、促進する。

43.ハイブリッドな脅威

我々は、外国の情報操作や偽情報等のハイブリッドな戦術と戦略によってもたらされる我々の国家、経済及び社会に対する脅威の高まりを懸念している。これら戦術と戦略は、我々の民主的手続に介入し、社会を不安定化し、共通の価値を損なうことを目的とするものである。我々は引き続き、協働して、また、パートナーと共に取り組むことにより、ハイブリッドな脅威を認識し、評価し、対処する能力を向上させる。我々は、民間部門や社会と共に、政府全体を通じて取り組む。NATO及びEUを含む、他の関連機関及びフォーラムとの連携の下、我々は引き続き、ベスト・プラクティスを共有し、ハイブリッドな脅威に対応するための共通のアプローチを進展させる。

44.地経学的課題と技術の地政学

世界経済と、それと共にあるルールに基づく国際秩序は、威圧的な政策からの挑戦をより一層受けている。これらの政策は、貿易、投資、開発金融、技術及びエネルギーを通じるなどして、第三国との経済的結びつきを利用し、外国政府による正当な主権的権利又は選択の行使に対して、恣意的な、濫用された、又は何らかを口実とする態様で、圧力をかけ、誘導し、又は影響を与えることを含む。我々の経済安全保障に対する地経学的挑戦の大幅な増加は、包括的で全体的な対応が求められる。我々は、我々が共有する価値を支持し、新たなスタンダード、ルール又は規範を設定することによりグローバルな経済体制の強化を通じたものを含め、これらの経済安全保障上の懸念への対処するため、多角的体制において、また、志を同じくする国際的なパートナーと共に関連する分野、特に重要・新興技術に関わる分野で取り組むことに今後もコミットする。これらの技術は、地政学的競争の原動力であり、民主主義国にとっての機会と課題の双方の源を意味するものである。

我々は、新興技術の破壊的な可能性を人権と民主的価値、包摂的な経済成長、及び我々共通の安全を促進し、開かれ、自由で、グローバルで、相互運用可能で、信頼性のある、かつ安全なインターネットを保護するために活用することに献身的に取り組む姿勢を強調する。我々は、実効的なガバナンスを通じ、技術発展が責任あるものに形成される必要性を認識する。我々は、また、責任ある、包摂的な、透明性のある、持続可能な技術の設計、開発及び利用を促進し、保護するための国際的な協働を引き続き強化していく。そうした技術は、人権と我々の共通の民主的価値に従って、プライバシーを尊重し、ユーザーの安全を可能にするものである。技術は、中立的であり続けるべきであり、不法な監視や抑圧など、悪意ある活動に誤用又は利用されてはならない。我々は、強靱なサプライチェーンのを構築や、重要インフラの保護強化に関する宇協力が重要であることを確認する。我々は、我々共通の価値を反映し、イノベーションを進める新興技術を支える、包摂的なマルチステークホルダー・アプローチに基づいた、開放的で、民間主導の、自主性的で、コンセンサスに基づくスタンダードの策定のための国際的な協力への強い支持を改めて表明する。

45.サイバー・ガバナンス、サイバー犯罪との戦い、サイバーに関する能力構築、インターネット遮断

我々は、経済成長と繁栄に不可欠である、開かれた、安定的で、相互運用性があり、平和かつ安全なサイバー空間を強く支持する。我々は、サイバー空間における、またそれに関する、国連憲章全体を含む既存の国際法の適用可能性に基づく、国際的なサイバーの安定のための戦略的枠組みの推進、地域的及び世界的な信頼醸成措置の履行、サイバー空間における責任ある国家の行動に関する国際的に受け入れられている自発的及び法的拘束力を持たない規範の推進にコミットする。我々は、悪意あるサイバー活動を非難し、そのような活動について防止し、抑止し、対抗し、及び争う措置を引き続き発展させることについて我々のコミットメントを改めて確認する。これは、悪意あるサイバー主体を抑止するという我々の連帯した決意を強化するものである。

我々は、オンラインにおける人権の完全な尊重と基本的自由の保護を促進する我々のコミットメントを改めて確認し、フリーダム・オンライン連合を通じて引き続き協働することにコミットする。人々がオフラインで享受するのと同じ権利がオンラインにおいても適用され、それゆえ、同等に保護されなければならない。我々はまた、インターネット・ガバナンスへのマルチステークホルダー・アプローチに対する我々のコミットメントを改めて確認し、全ての国・地域に対し、国際的な法的義務とコミットメントに従い、インターネットやモバイル・ネットワークのアクセスや利用ができなくなることにより、個人の権利や自由の行使を損なうこととなるような意図的な妨害を行わないよう求める。最近の事案も捜査、訴追及び国際協力の分野において、サイバー犯罪者に対するグローバルな行動を強化する必要性を改めて示した。我々は、ランサムウェア対策イニシアティブの文脈におけるものを含む、開かれた社会の基盤強化のために引き続き取り組む。

我々は、未来のインターネットに関する宣言を歓迎し、経済成長と繁栄を可能にし、人権と安全な連結性を促進する、開かれ、自由で、グローバルで、相互運用性があり、信頼でき、安全なインターネットへの強い支持を改めて確認する。悪意あるサイバー活動を防止し、影響を軽減する能力は世界中の国家間で大きく異なる中、我々は、UNIDIRサイバー・ポリシー・ポータル、また、サイバー空間における責任ある国家の行動を推進する国連行動計画の立ち上げの検討などを通じ、サイバーに関する能力構築協力と情報共有に引き続き優先的に取り組むことの必要性を認識する。我々は、民主主義サミットの文脈におけるものを含む、情報の一体性と偽情報に関する基準を発展させるために、マルチステークホルダー・パートナーと共に取り組むことにコミットする。

46.外国の偽情報に対するG7の取組

我々は、政治的又は金銭的目的をもって、人々を欺き、誤った方向に導くことを意図し、また、ルールに基づく国際秩序の基本構造を不安定化させる、偽情報を含む外国の情報操作及び介入に対して、情報環境を保護することにコミットする。我々は、ロシア政府、ロシア政府系メディア及びその代理主体がウクライナに対する軍事侵略を支援するために、偽情報を広範に使用していることを非難する。我々は、前例のない量の偽情報が、ロシアのウクライナ侵略戦争の準備のために用いられ、侵攻に付随して生じていることを目撃した。我々は、新型コロナウイルスのパンデミックや、人類によって引き起こされる気候変動に関する偽情報の拡散を深く懸念する。我々は、オンラインキャンペーンが民主的プロセスを損ない、また、公共の場への女性の参画を阻止するために使用されることが増えていることを懸念する。我々は、国内外において自由で独立したメディアを擁護し、オンライン技術が多元主義と表現の自由を促進するために使用されることにコミットする。

我々は、自由で開かれた情報環境、民主的制度及び開かれた社会を偽情報による損失的効果から保護することも含め、外国の脅威から民主主義を共同で守るために我々が現在実施している共通の取組の一環としての即応メカニズム(RRM)へのコミットメントを改めて確認する。

我々は、情報環境に介入する試みに対抗し、そのような活動に関与する主体に対してコストを課す。我々は、ロシアのウクライナ侵略戦争と大量の偽情報及び情報操作の使用に関し、情報領域における外国からの脅威に協調して対抗するためのG7即応メカニズムの能力強化にコミットする。我々は、偽情報に焦点を当てた第一回G7即応メカニズム年次報告書を歓迎する。同報告書は、脅威の展望と新たな傾向について有益な全体像を提供するとともに、国民の意識を向上させるG7による対応の選択肢を示唆している。