データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2022年 強じんな民主主義声明

[場所] エルマウ
[年月日] 2022年6月27日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 我々、ドイツ、アルゼンチン、カナダ、フランス、インド、インドネシア、イタリア、日本、セネガル、南アフリカ、英国、米国及び欧州連合の首脳は、我々の民主主義の強じん性を強化し、気候変動及び新型コロナウイルスのパンデミックを含む地球規模の課題に対する公平で、包摂的で、持続可能な解決に向けて取り組む我々のコミットメントを確認し、ルールに基づく国際秩序に対する我々のコミットメントを再確認する。

 2021年カービスベイ「開かれた社会声明」に留意し、また、それ以降の地政学的状況の劇的な変化及び世界中の民主的システムに対する重大な脅威を認識し、我々は、国連憲章を含む国際法によって認識されている、平和、人権、法の支配、人間の安全保障及びジェンダー平等を守ることに対する我々のコミットメントにおいて引き続き不動であり、我々の国際的なパートナーに対し、これらの取組に参加することを求める。我々は、民主主義の原則及び価値を推進するため、各国で定められている国内法令の重要性を認識する。我々は、抑圧と暴力に反対する民主的システムの全ての勇気ある擁護者を称賛し、世界的に民主的社会の強じん性を向上させるための国際協力を強化する。我々は、平和と繁栄のためにパートナーと国際的に連携することにコミットし、公平な世界に向けた前進のために取り組む。なぜなら、我々は共にいることでより強くなるからである。

グローバルな責任:信頼できるパートナーとしての民主主義国

 民主主義国として、我々は、ルールに基づく国際秩序を促進し、他国の領土一体性及び主権を尊重し、国連憲章に定められている原則を尊重及び擁護し、紛争の平和的解決を支持し、国際法を遵守しないいかなる武力による威嚇又は武力の行使にも反対し、人権を保護し、地球規模の課題に対処するため多国間機関を強化し、人類の利益のために民主的原則に従って技術を開発・利用することを追求する。これらの価値を共有する上で、我々は共により強くなり、以下にコミットする。

・選挙支援を通じたものを含め、世界の民主主義及び自由かつ公正な選挙を支持する。

・パートナーシップの精神で、気候変動と闘い、環境の悪化及び生物多様性の損失を防止し、気候資金を動員し、公正かつ公平で社会包摂的な変換の議題を支持し、秩序立った公正かつ公平なエネルギー移行を確保し、エネルギー安全保障、国家開発の優先事項及び実行可能で安価な技術を考慮し、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に向け緊密に協力する。

・飢餓を防ぐために食料安全保障を向上し、また、強じんなエネルギー・サプライ・チェーンを確保することにより、エネルギー安全保障のために努力し、この文脈の中で国連グローバル危機対応グループのイニシアティブに留意する。

・新型コロナウイルスのパンデミックを克服し、ワクチンの配分及び生産並びに将来の健康危機のためのグローバルヘルス・アーキテクャー(国際保健の枠組み)を改善するため、世界保健機関(WHO)を中心として協調的な取組を追求する。

・実質的支配についての透明性の向上によるものを含め、腐敗、不法な資金の流れ、組織犯罪、サイバー犯罪及びその他の不法な活動と闘う。

・自由で、公正で、無差別で、ルールに基づく持続可能な貿易を提唱し、世界的な不平等を緩和し、生活水準を向上させ、開かれた強じんな経済を維持し、世界貿易機関(WTO)を改革することによるものを含め、多角的貿易体制を強化する。

・中所得国を含め、脆弱な国々に対する更なる解決策を引き続き探求しつつ、特に、必要な債務国へのG20の「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)後の債務措置に係る共通枠組」の中で、増大する世界的な公的債務への持続可能な解決策を推し進める取組を支持する。

・パンデミックの最中に深まった世界的な不平等及び排除と闘い、回復を確保するための包摂的な政策を追求し、また、2030アジェンダの持続可能な開発目標を達成するための我々の取組を強化し、インフラ投資に関するG7の取組にも留意しつつ、G20「アフリカとのコンパクト」を通じた対等なパートナーシップの促進を含め、実施手段を強化し、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを再活性化する。

情報環境:開かれた多元的議論を守る民主主義国

 民主主義国は、開かれた公の場での議論、独立し多元的なメディア、そしてオンライン及びオフラインでの自由な情報の流れを可能にし、市民及び選出された代表者同様にそのための正統性、透明性、責任及び説明責任を促進する。我々は、これらの原則を擁護する用意があり、以下を決意する。

・オンライン及びオフラインでの表現及び意見の自由を保護し、関連する国際イニシアティブとの我々の取組を通じて、メディアが自由で独立した状況であることを確保する。

・開かれ、自由で、グローバルで、相互運用性があり、信頼でき、安全なインターネットを確保する。

・サイバー脅威に対する認識を向上及び共有することやサイバー・レスポンスの協力を拡大することによるものを含め、デジタル・インフラのサイバー・レジリエンスを向上させる。

・ハイブリッドな脅威、特に偽情報を含む情報操作及び干渉に対抗する。

・情報操作に対抗し、正確な情報を促進し、我々の共通の価値を世界に提唱するために協力する。

・マルチステークホルダー・アプローチを通じたものや、デジタル・スキル及びデジタル・リテラシーを強化することによるものを含め、オンライン及びオフラインでの信頼・信用できる多様な情報源及びデータ源への入手可能な価格でのアクセスを促進する。

・クライストチャーチ・コール宣言に沿って、オンライン上の暴力的、過激主義的及び扇動的なコンテンツと闘うためのオンライン・プラットフォームの行動に関する透明性を強化する。

市民社会:開放的かつ多元的な市民空間を保護・促進する民主主義国

 民主主義国は、市民参加と政治参加を可能とし及び奨励する自由で活力のある市民空間の基盤を築き及び保護し、これは、有意義な正統性、創造性、イノベーション、社会的説明責任及び責任を活発にする。我々は以下にコミットする。

・市民社会活動家の自由、独立及び多様性を保護し、市民空間への脅威に対して声を上げ、結社及び平和的な集会の自由を尊重する。

・政府、社会及びメディアへの信頼を損ない、市民空間を狭め、批判的な声を封じ込めようとする悪意ある外国の干渉及び国境を越えた抑圧行為に対する強じん性を構築する。

・人権擁護者及び全ての腐敗摘発者の保護のためのプログラムを推進する。

・学問の自由を促進し、民主的議論における科学的証拠及び研究の役割を強化する。

・市民空間を保護し、市民・政治生活における女性の完全で平等で有意義な参加及びリーダーシップを促進することによるものを含め、透明性があり、説明可能な、包摂的で参加型のガバナンスを堅持する。

包摂及び平等:平等な代表性を促進する民主主義国

 民主主義国は、連帯及び非差別的で、多様で、公平で、アクセス可能で包摂的な環境を促進し、公正な代表性及び政治参加を可能にする。我々は以下にコミットする。

・思想・良心・宗教・信条の自由を保護し、信仰間の対話を促進する。

・あらゆる形態の差別及び暴力を糾弾しつつ、オンライン及びオフラインで社会の結束、連帯及び社会の全ての構成員の包摂性を促進する。

・女児の教育へのアクセスを支援することを通じたものや我々のあらゆる政策にわたりジェンダー主流化を実施することを含め、ジェンダー平等並びに全ての女性及び女児のエンパワーメントを促進する。

・脆弱な立場にある全ての人々の完全、平等かつ意味のある参加と代表性を確保する。

 我々は、本声明の精神の下、民主主義国の強じん性を更に強化するためのG7の議長国であるドイツ及びパートナーによる取組及びイニシアティブを歓迎する。