データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 気候問題に関するG7財務大臣・中央銀行総裁声明

[場所] 米国・ワシントンD.C.
[年月日] 2022年10月12日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

気候経済に関する我々の会議において、我々は、野心的な気候に関する行動と、温室効果ガス排出ネットゼロに向けた秩序ある公正な世界的な移行の促進というコミットメントを強調した。我々は、ニコラス・スターン氏、アマール・バタチャリヤ氏、ハンス・ペーター・ランケス氏の議論への参加を大いに喜んでいる。

1. 本日別途発出された声明で言及されているように、ロシアのウクライナに対する侵略戦争は、世界経済を引き続き混乱させ、エネルギー及び食料を含む、一次産品の価格のさらなる大幅な上昇を引き起こしている。また、それは、世界的にエネルギー市場や供給に深刻な影響を与えており、エネルギー安全保障を脅かし、食料不安を増大させ、世界中の多くの国で社会的及び経済的な影響を引き起こしている。

2. これらの課題に直面しながらも、我々は妥協せず、むしろエネルギー安全保障も強化する、クリーンで、公正かつ持続可能なエネルギー移行を加速することも含め、我々の気候の目標を達成するための努力を強化する。多くの国が最近数ヶ月で、気候変動に関連する深刻な自然災害に見舞われており、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるとともに、気候変動の最悪の結果を避けるために、この10年間に行動する緊急性を示した気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の見解を強調する。そのため、我々は、パリ協定の完全かつ効果的な実施と2050年までのネットゼロ排出実現に向けた揺るぎないコミットメントを再確認する。

3. エネルギー市場における大きな変動や価格上昇を踏まえると、我々は、省エネルギー及びエネルギー効率やクリーンエネルギー移行への投資を更に奨励するための十分な価格シグナルを維持しながら、同時にエネルギー価格の上昇によって最も影響を受ける人々に対して、効果的で、一時的かつ的を絞った支援を続ける。

4. ネットゼロ世界に向けた経済の効果的で秩序ある、公正な移行は、持続可能で長期的な世界の経済成長の中核である。我々は、国際的な協調メカニズムがどのように国際社会によるそのような前向きな成長アジェンダの実現への助けとなるかに関する価値のある分析を提供する、G7議長により依頼されたニコラス・スターン氏らによる「気候クラブを通じた気候活動に関する協力と実現」という独立報告書に感謝する。我々は、気候変動が福利に与える影響を緩和することによる大幅なネットポジティブな影響を強調し、国内及びグローバルの両面で、雇用、成長、公平性及び環境に前向きに影響を与えるネットゼロに向けた移行を促進する努力を強化するというコミットメントを再確認する。

5. 我々は、高い十全性のある炭素市場及び炭素の価格付けが、炭素の価格付けのための様々な政策手段の最適な活用を通じ、費用効率の高い排出レベルの削減を促進し、イノベーションを推進し、ネットゼロへの転換を可能にする潜在力を有することを再確認する。炭素漏洩のリスクが、気候政策の野心と行動の多様化に伴い増大し得ることを認識し、我々は、このリスクを軽減し、貿易関係を支援するために、WTOと適合し得るメカニズムについて協力するというコミットメントを再確認する。秩序ある世界的な移行は、世界のGDPを何兆ドルも保全する潜在性を有する。我々は、OECDの「炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)」の進展を歓迎する。

6. 我々は、気候変動及びネットゼロへの移行が、マクロ経済上の成果や財政の持続可能性に重大な影響を及ぼすことを認識し、多くの低・中所得国と全ての国の脆弱層への不均等な影響を認識する。我々は、自らのマンデートに沿って、我々の分析にこれらの影響を反映させる作業を継続し、経済、財政及び金融政策の意思決定への影響を考慮する。我々は、緩和政策の有効性、それらの経済的な影響、及び異なる経済における異なる政策の組み合わせの影響に関する、国際機関や中央銀行を含む様々な機関による作業を歓迎する。我々は、異なる政策手段が、例えばクロスボーダーや波及効果を通じて、緩和政策の有効性への異なる影響や様々な経済的な影響を持つことを認識する。我々は、気候変動のマクロ経済的な影響の理解をさらに向上させ、気候リスクとその側面を、自らのマクロ経済分析及びモデルのツールキットに統合することに関して、特にG7の中央銀行間での集中的な技術協力を継続することにコミットする。我々は、またG20や気候変動対策に取り組む財務大臣連合(CFMCA)、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)など、他のパートナーの協力や支援のもと、これらの取組を追求することにコミットする。

7. 我々は、シャルム・エル・シェイクにおけるCOP27に期待し、エジプト議長国がパリ協定の目標達成に向けた実質的な進展を進めることを全面的に支持する。我々は、途上国のニーズと優先事項に対応するため、意味のある緩和と適応のための行動と実施の透明性の文脈において、可能な限り早期にまた2025年にかけて、様々な資金源から、毎年1,000億米ドルの気候資金を共同で動員する目標の達成に強くコミットする。また、我々は、開発途上国に対する適応のための気候資金の供与を2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも倍増させることを求めるCOP26の実施に向けて他者と共に取り組むとのコミットメントを再確認する。我々は、進行中の、適応に関する世界目標に関する2年間のグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画を歓迎し、気候のための資金と生物多様性のための資金の相乗効果を強化することにコミットする。我々は、「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」の進捗を歓迎する。

8. 我々は、全ての国際開発金融機関(MDBs)及びその他の開発金融機関(DFIs)に対し、資金及び業務を、2条1項cを含むパリ協定の目標に整合させ、その全ての業務、とりわけ間接及び政策ベースの融資について、可能な限り早期に、パリ協定の目標に整合させるための強固な手法を最終化し、公開することを求める。我々は、ネットゼロへの移行を加速するための民間資金動員が極めて重要なことを認識し、MDBsと他のDFIsに対し、民間資金動員比率を高めるために民間セクターとの協力を強化し、プロジェクトの準備や投資環境整備を推進するための改革支援といった民間資金の動員を促進する上流での介入を強化するよう求める。また、我々は、MDBsに対し、MDBの融資業務において、パートナー国における気候関連の政策改革を支援することを求める。

9. 我々は、国際的な作業の進展を歓迎し、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」及び「気候関連金融リスクに対処するための金融安定理事会(FSB)ロードマップ」の実施のための更なる行動を奨励し、適切な場合に、これらの提言及び原則を我々の法域において運用するための措置を取っていく。我々は、市場参加者に対して一貫した、意思決定に有用な情報を提供する気候関連財務開示の義務化へ向かうとのコミットメントを再確認し、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が現在策定中のサステナビリティ報告基準のグローバルなベースラインを歓迎する。グローバルベースラインへの支援は、特に新興国や途上国において、情報を改善し、もって必要とされる投資のための資金を動員する可能性があり、我々は、ISSBが地域の基準設定主体及び現地のステークホルダーと緊密に連携し、助言と能力支援を提供することを求める。我々は、ISSBの「法域別作業部会」を歓迎する。我々は、グローバルベースラインが気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組に基づいていることが不可欠であると考えており、全ての参加者が、より野心的な開示要件に組み込まれ得る、実用的で柔軟かつ相互運用可能なグローバルベースラインに向けたさらなる建設的な協力を追求することを奨励する。

10. 我々は、増大する頻度と規模で気候変動が及ぼす生命と生活へのリスクをすでに経験しており、これらのリスクは将来さらに増加すると認識している。我々は、気候・災害リスクファイナンス及び保険に関する作業を積極的に支援し、「気候変動に対す強じん性を取り入れた借入条項」や「気候リスクに対するグローバル・シールド」に関する進展に向けて取り組んでいく。