データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ロシアのウクライナに対する侵略戦争の世界経済への影響とウクライナに対するG7の支援に関するG7財務大臣・中央銀行総裁声明

[場所] 米国・ワシントンD.C.
[年月日] 2022年10月12日
[出典] 財務省
[備考] 仮訳
[全文] 

我々、G7財務大臣・中央銀行総裁は、ワシントンD.C.にて会合した。我々は、ウクライナの財務大臣による参加を得たことを光栄に思う。我々はまた、国際通貨基金、世界銀行グループ、経済協力開発機構及び金融安定理事会の長の参加も得た。

1. 我々は、ウクライナへの支援と同国との連帯を引き続き堅持する。同様に、我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争と戦争に起因する悲劇的な人命の損失に対する非難について結束を続け、我々の首脳による2022年10月11日の声明を再確認する。

2. ロシアの侵略戦争は、世界経済の重大な混乱を引き起こし、パンデミックから回復し供給と需要の不一致を乗り越え始めたばかりの世界経済にストレスを与えている。我々は、ロシアに対し、不当で野蛮な戦争を即時に終えるよう求める。これは道徳的に不可欠であるとともに、この困難な局面において世界経済の見通しを改善するための最も重要な第一の優先事項である。ロシアの戦争は、エネルギーや食料を含む、一次産品価格の大幅な更なる上昇を引き起こしており、世界中の多くの国々におけるインフレ水準の上昇を悪化させ、低・中所得国に偏って影響を与えている。

3. G7の中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに強くコミットしている。このために、中央銀行は、インフレ圧力がインフレ予想に与える影響を注意深くモニタリングしており、経済活動への影響や各国間の波及効果の抑制に配慮しつつ、インフレ予想の安定維持を確保するよう、データを踏まえて明確なコミュニケーションを行いながら、引き続き、金融政策の引き締めペースを適切に調整する。

4. 我々はまた、最近のボラティリティを踏まえ、国際的な市場を注意深く監視し続け、金融安定理事会によるモニタリングと分析を歓迎する。我々は、今年多くの通貨がボラティリティの増加を伴って大幅に変化したことを認識しつつ、2017年5月に詳述された我々の為替相場のコミットメントを再確認する。

5. 我々は、一時的かつ的を絞った手法で必要な支援を提供することで、戦争の世界的な影響、とりわけ低・中所得国に対する影響、及び自国の経済及び国民に対する影響を緩和するために引き続き協働する。我々は、この文脈において、我々の財政政策のスタンスを調整しながら、財政の中期的な持続可能性と強じんな金融セクターへの明確な道筋に我々を位置づける、安定及び成長を志向する中期的なマクロ経済政策に引き続きコミットしている。

6. ロシアの侵略戦争による世界の食料安全保障と栄養へのとりわけ壊滅的な影響という文脈において、我々は、特に脆弱国における、食料不安に関連した国際収支上の緊急のニーズへの対応を支援するための、国際通貨基金による新たな食料ショックウィンドウを強く歓迎する。我々は、国際金融機関による更なる対応を全面的に支持し、また、持続可能な基準に沿った食料及び肥料生産の奨励、食料システムとその強靭性の強化、不当な貿易制限の撤廃、脆弱な家計及び生産者への支援のための取組を含め、食料安全保障のための、300億米ドルを提供するとの世界銀行のコミットメントと、60億米ドルを提供するとの国際金融公社のコミットメントを歓迎する。

7. G7は必要な限りウクライナとともにあり続け、引き続き、同国の緊急の短期的資金需要への対応を支援することに強くコミットしている。この野蛮で不当な戦争が始まって以来、G7は国際社会とともに、ウクライナに多額の支援を提供しており、ウクライナの緊急の人道的、物資的及び資金的需要への対応において固い結束と強さを示してきた。2022年に、我々は、ウクライナが資金ギャップを解消し、ウクライナ国民への基本的サービスの提供を引き続き確保できるよう支援するため、直近に米国より表明された追加的なグラントの45億米ドルを含め、333億米ドルの財政支援を動員した。追加的に計画されている、欧州復興開発銀行や国際金融公社を通じた、ウクライナ国有企業及び民間部門に対する支援は計34億米ドルに達する。先述の支援は、現在行われているG7の軍事的、人道的及び初期の復旧支援に追加されるものである。

8. 我々の取組の結果、2022年には、ウクライナに対する財政支援のディスバースメントは既に計207億米ドルに達している。今年の残り数か月間に予定されている追加的支援のディスバースメントとあわせて、2022年中のウクライナの最も緊急の資金需要はカバーされることが見込まれる。国際社会とともに、また、ウクライナ政府との緊密な協力の下、我々は今後数か月、数年の間、同国への支援に引き続きコミットする。ウクライナは、基本的サービスの提供を継続し、最も重大なインフラの欠乏に対処し、経済の安定を維持するため、2023年に多額の資金ギャップに直面する。我々は、IMFのウクライナ政府との緊密な関与を支持し、また、IMF理事会が同国に対する13億ドルの更なる緊急支援を承認したことを強く歓迎する。我々はまた、世界銀行グループの関与と動員された資金の迅速なディスバースメントを評価する。我々は、ウクライナ政府が一貫したマクロ経済フレームワークを策定して遵守し、資金需要を特定することで、今後可能な限り早く本格的なIMFプログラムへ進展できるよう支援するための、理事会による関与を伴うスタッフ・モニタリング・プログラムを同国が要請したことを歓迎する。また、我々は、ウクライナの復興のための実効的かつ包摂的なプラットフォームを設置するため、ドナーと国際金融機関がウクライナと行っている作業を支持する。

9. 我々は、2022年9月14日に、ウクライナによる民間債権者に対する要請を補完するために、公的債権者グループ*1*と同国政府が、2023年末まで債務支払猶予を実施するための覚書に締結したことを歓迎する。この措置は、ウクライナの流動性圧力を緩和し、ロシアの侵略戦争にもかかわらず、同国政府が重要な支出を維持することを可能とする。このイニシアティブは、また、ウクライナ政府と民間の国債保有者及びワラント債保有者との間の、2年間の債務支払を猶予する重要な合意を後押しした。我々は全ての他の公的二国間債権者が、ウクライナとの間で債務支払猶予に迅速に合意することを求める。

10. 我々は、ロシアの、主権国家としてのウクライナ領土の「併合」をしようとする不正な試みに対する最近の強力な諸措置を含め、ロシアの侵略戦争に対する我々の断固として協調した制裁への共通のコミットメントを再び強調する。我々は、我々の経済・金融制裁を完全に遂行し執行するとともに、制裁の回避、迂回及びバックフィルへの警戒を続けることに引き続きコミットする。我々は、我々の措置が食料を標的としていないことを再確認する。我々は農産品の自由な流通を許容し、第三国、とりわけ低・中所得国に対する潜在的な負の影響及び波及効果を最小化するためにあらゆる努力を傾注する。

11. 我々は、2022年9月2日のG7財務大臣声明を想起しつつ、ロシア産の原油及び石油製品の世界的な海上輸送を可能にするサービスの包括的禁止を最終化し実施するとの共通の政治的な意図を再確認する。そうしたサービスの提供は、当該石油及び石油製品が、上限価格以下で購入される場合のみ許容されることとなる。我々は、オーストラリアがこの上限価格を課す国々の連合に参加したことを歓迎する。我々は、当該連合が9月の立ち上げ以来、全ての主要な側面で顕著な進展をしてきたこと、EUの第6次制裁パッケージに含まれる関連措置のタイムラインと実施を一致させるべく取り組み続けていることを確認する。我々は、上限価格措置が、世界的な石油価格を安定させ、既にロシアの歳入に下方圧力を掛けていることにより、ロシアの侵略戦争によって悪化したエネルギー及び食料価格の高騰に苦しんでいる国々、とりわけ脆弱な低・中所得国にとって、特に有益となる可能性を有するであろうことを強調する。我々はそしてまた、全ての国の産業が、購入が上限価格かそれ以下であれば、その国の正式な連合への参加に関わらず、連合の海上サービスを利用し続けることができることを強調する。

12. エルマウでのG7首脳のコミットメントに沿って、我々は、エネルギー市場でのボラティリティを減らすために産油国が増産することを、引き続き奨励する。最近OPEC+諸国による残念な決定があったものの、我々は、タイト化する供給条件の中で、この重要な問題について彼らとの関与を続ける。


{*1* ウクライナの公的債権者グループ:カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、米国。グループのオブザーバーは、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、デンマーク、フィンランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、韓国、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスを含む。}