データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ロシアのウクライナに対する侵略戦争とその世界経済への影響に関するG7財務大臣・中央銀行総裁声明

[場所] インド・ベンガルール
[年月日] 2023年2月23日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文] 

我々、G7の財務大臣・中央銀行総裁は、ベンガルールにて会合した。我々は、ウクライナのセルゲイ・マルチェンコ財務大臣の参加を得たことを光栄に思う。我々はまた、国際通貨基金、世界銀行グループ、経済協力開発機構及び金融安定理事会の長の参加も得た。我々は、トルコとシリアにおける壊滅的な地震により引き起こされた人命の損失と破壊を深く悼み、影響を受けた人々に対して継続的な支援を提供している。

1. 昨年2月24日、ロシアは、不法かつ不当で、いわれのないウクライナに対する侵略戦争を開始した。これは、法の支配と国連憲章の原則に対する攻撃でもある。戦争開始から1年を迎える前日に、我々は、ウクライナに対する我々の揺るぎない支援と、ロシアの侵略戦争並びにそれに起因する悲劇的な人命の損失及び財産の破壊を非難することへの結束を再確認する。我々は、多国間主義を堅持し、ロシアの戦争とロシアによる食料及びエネルギーの武器化に起因する、低・中所得国に偏って影響を与えている世界経済の困難に対処するために、引き続き、国際協力を促進する決意である。

2. 我々は、国際社会と共に、ウクライナの緊急の短期的な資金ニーズに対処することに引き続き強くコミットしている。我々は、2023年について、ウクライナ政府のニーズに基づいて、財政・経済支援のコミットメントを390億米ドルに増加させた。これらの重要なコミットメントと迅速なディスバースメントは、ウクライナに確実性を与え、当局が政府の機能を守り、基本的なサービスの提供を継続し、損害を受けたインフラの最も重要な修復を実行し、経済を安定させることを可能にするものである。これはウクライナが自国を防衛する取組への支援にもなる。この資金支援は、我々のウクライナ軍への極めて重要な軍事的支援と訓練、人道的支援及び開発協力に追加されるものである。

3. 我々は、IMFのウクライナ政府との緊密な関与への強い支持を再確認し、理事会による関与を伴うスタッフ・モニタリング・プログラムの下でのレビューの完了に向けた進展を歓迎する。この重要な進展を念頭に、我々は、IMFとウクライナに対し、2023年3月末までに、信頼性のある、野心的で、十分な資金供給と適切な条件を伴うIMFプログラムを実現するよう求める。

4. また、我々は、ウクライナ行政機能のための公共支出支援(PEACE)ファシリティやウクライナ復旧・復興支援基金(URTF)を通じたものを含め、ウクライナに対して多額の支援を行うための世界銀行グループ(WBG)による重要な取組を認識する。我々は、国際金融公社の業務と、多数国間保証機関によるウクライナにおける民間投資を支援するための新たな信託基金の立ち上げのイニシアティブを歓迎する。

5. 我々は、複数の機関から成るドナー調整プラットフォームを通じたものを含め、ウクライナの重要インフラの修復、復旧及び復興を支援し貢献するための共同の取組を継続する。また、我々は、世界銀行グループや欧州復興開発銀行、欧州投資銀行を含む関連する国際金融機関と緊密に連携する。

6. 我々は、ロシアの侵略戦争に対する我々の協調した経済的措置への共通のコミットメントを再び強調する。我々の制裁は、ロシアが不法な戦争を遂行する能力を顕著に低下させてきた。我々は引き続き、制裁の効果を注意深く監視し、必要に応じて更なる行動をとる。また、我々は、我々の制裁の遵守を確保し、制裁の回避あるいは迂回の試みを阻止するために、パートナーとともに引き続き緊密に連携して取り組む。この文脈で、我々は他の国々にも我々の対ロシア制裁に参加するよう呼び掛ける。

7. 我々は、制裁による食料及びエネルギー安全保障への波及効果についてのロシアの誤った言説を否定する。我々は、ロシアを対象にした我々の制裁措置は、世界的な石油価格の変化によってロシアが偶発的利益を得る能力を削減するように配慮されている一方で、エネルギー及び食料不安に寄与しないよう意図されていることを再確認する。昨年12月に実施されたロシア原産の海上輸送される原油への上限価格の導入に続き、今月、上限価格連合は更に、ロシア原産の石油製品に対し上限価格を課した。我々は、世界のエネルギー市場の安定を支援し、ロシアの侵略戦争による特に低・中所得国への負の経済的波及効果を抑えつつ、ロシアがウクライナに対する侵略戦争から利益を得ることを防止するという上限価格政策の目標に関して、既に進展しつつある。ロシアの月間の財政ギャップは過去最高水準に急拡大しており、これは不法な戦争のための戦費を賄う能力を大きく制約することになる。発展途上国は、市場実勢価格より割安な価格で原油及び石油製品へアクセスする機会を活用することができる。我々は、石油及び石油製品の上限価格を執行し、その回避又は迂回の試みを阻止するために、パートナーと共に、引き続き緊密に連携して取り組む。

8. ロシアの長期にわたる侵略戦争は、インフレ圧力を助長し、サプライチェーンを更に混乱させ、エネルギー及び食料不安を高めるなど、世界経済の課題を悪化させた。こうした戦争による負の影響に加え、インフレ圧力、金融安定に対する脅威、世界の金融環境の変化や潜在的な債務危機の中での特に途上国における資本流出などの更なる下方リスクに、引き続き警戒しなければならない。こうした背景の下、我々は、財政の持続可能性を確保し、金融の安定を維持しつつ、引き続き、マクロ経済政策において機動的かつ柔軟である。財政政策は、引き続き、特に脆弱なグループに対する必要な支援を一時的かつ的を絞った手法で提供し、グリーン及びデジタルへの移行に必要な投資を促進するべきである。中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしており、各国間の負の波及効果の抑制に資するよう、政策スタンスについて明確に意思疎通を行う。我々は国際的な市場を注意深く監視し続け、金融安定理事会による進行中のモニタリング及び分析と、脆弱性に対処するための同理事会の作業を歓迎する。また、我々は、為替相場のコミットメントを再確認する。

9. 低・中所得国がロシアの侵略戦争と関連するグローバルな課題から偏って影響を受けていることに留意しつつ、我々は、我々の取組を強化することにコミットし、こうした国を支援するためのG20のアジェンダに貢献する。これは、G20における債務の脆弱性に関する作業の支援;国際開発金融機関(MDBs)による、G20の「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組のレビュー」の勧告に基づくバランスシートの最も効率的な活用、及び、貧困削減への焦点を維持し全てのSDGsへの対処に関する進展を加速しつつ国境を越えた課題により良く対応するためのビジネスモデルの見直しにかかる取組の促進;世界で1,000億ドルという野心の下、特別引出権(SDR)の自発的な融通あるいは同等の貢献を通じた最も必要としている国々を支援するための国際的なパートナーとの共同の取組の前進と2023年の春会合に向けた更なる進展を含む。我々は、「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)後の債務措置に係る共通枠組」の下でのエチオピア、ガーナ、ザンビアといった個別国のケースを迅速に完了し、スリランカのような脆弱な中所得国の債務問題に対処するために全ての公的な二国間債権者間での協調を促進するよう、他のG20メンバーと引き続き緊密に連携する。我々は、債務データの正確性と透明性を改善させるための作業へのG7の支持と、将来の貸付について我々の債権者としての直接融資案件ごとの一覧を公表するという我々のコミットメントを再確認する。