データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ

[場所] 札幌
[年月日] 2023年4月16日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々、G7の気候・エネルギー・環境大臣は、2023年4月15日-16日、札幌で会合を開催した。我々は、ロシアによるウクライナに対する違法で、不当で、いわれのない侵略戦争、国連憲章の違反、及びロシアの戦争が世界中の人々に与えている影響の軽視を非難する。我々は、エネルギー並びに食料を地政学的な威圧の手段として利用しようとするロシアの試みを非難し、ロシアがエネルギー並びに食料を武器として利用することによって最も影響を受ける人々を支援するという我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、高いエネルギー価格、市場の変動及びエネルギー供給の混乱に特徴付けられる前例のない世界的なエネルギー危機、人々の生活に現実に経済的影響を与えるインフレ、食料不安と栄養不良を増大させる世界の穀物及び肥料価格の高騰を引き起こしている、ロシアのウクライナに対する侵略戦争が及ぼす、環境も含めた破滅的な影響を、深く憂慮する。我々は、戦争に関連する瓦礫や汚染の管理、生態系や水システムの回復、森林やシェルターベルトの再植樹、森林や土地における地雷除去、戦争によって影響を受けた海洋保護地域の回復に関する我々の経験、知識、専門知識を共有することを含め、ウクライナの持続可能でレジリエントな回復とグリーンな復興を支援する用意がある。我々は、ロシアによって意図的に破壊されたウクライナの重要なエネルギー・環境インフラの修復・復元を引き続き支援し、ウクライナにおけるクリーンで強靭なエネルギーインフラの構築に対する我々の強い支持を強調する。

I. 気候、エネルギー及び環境の合同セッション

1. 我々が直面する地球規模課題:我々は、気候変動、生物多様性の損失、汚染という、相互に補強し合い、本質的に結びついている未曾有の三つの世界的危機に加え、ロシアによるウクライナに対する侵略によって引き起こされた、あるいは悪化したものを含む経済及び社会の混乱、健康への脅威及び環境破壊を悪化させている未曾有の規模の世界的なエネルギー危機に直面している。これらの課題は、既に多くの地域や国々に悪影響を及ぼしている。多国間協力を通じてこれらの課題に対処するため、我々は、この決定的に重要な10年間に行動を拡大することにより世界の気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるパリ協定、及び、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させることを使命とする生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)で採択された歴史的な昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の完全、迅速かつ効果的な実施へのコミットメントを堅持し、また国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する画期的な法的拘束力のある国際文書を歓迎する。現在の世界的なエネルギー危機と経済の混乱を認識し、我々は、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)のネット・ゼロ排出に向けてクリーンエネルギーへの移行を加速させるというコミットメントを再確認し、エネルギー安全保障とエネルギー低廉性を高めるために供給源の効率的多様化を促進することの重要性を認識する。我々は、この決定的に重要な10年に、即時、短期・中期の行動を実施するというコミットメントを強調する。

2. グリーン・トランスフォーメーション:我々は、包摂的かつ社会・環境面で持続可能な経済成長と開発、及びエネルギー安全保障を確保しながらグリーン・トランスフォーメーションを世界的に推進及び促進し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるべく、また気候変動に強靭で、循環型で、汚染のない、ネイチャーポジティブな経済を可能とすべく、遅くとも2050年までに温室効果ガス排出のネット・ゼロを達成するために我々の経済を変革すること、及び2030年までに生

3. シナジーの活用:我々は、気候変動、生物多様性の損失、汚染、土地劣化及びエネルギー危機に対処し、クリーンエネルギーへの移行、資源効率性、及び循環経済を加速させ、国連2030アジェンダとその持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための行動を加速するにあたり、シナジー(相乗効果)を強化し、トレードオフを阻止することにコミットする。

4. すべてのレベルにおける緊急の行動:我々は、ネット・ゼロで、循環型で、ネイチャーポジティブな経済への転換を達成するために、すべてのセクター、すべてのレベルでの緊急かつ強化された行動を求める。我々は、2050年までの世界的なネット・ゼロに向けてGHGの排出を廃棄物、農業、エネルギー部門からのメタンを含め削減すること、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させること、気候リスクや自然関連リスクを投資判断や意思決定において主流化すること、汚染を削減すること、及び持続可能な消費と生産を達成するために資源効率や循環性を高めることのポテンシャルの全てを実現するための、法制度、経済・財政政策、市場に基づくアプローチや自発的アプローチを含むあらゆる利用可能な措置や手段を動員し実施する必要性を認識する。また、G20議長国や他のメンバー及び国とともに、ファッションや観光を含む全ての関連する部門において消費と生産のパターンの変革を実現し、廃棄物の発生を大幅に削減するために、我々は、持続可能な選択を促進し奨励する。さらに我々は、この三つの危機及び現在進行している世界的なエネルギー危機に対処するため、全ての国、特にG20パートナーや途上国及び新興国とともに、全てのレベルにおける具体的なアクションを実施する。

5. 科学:我々は、政策立案において、利用可能な最良の科学と科学的証拠、及び先住民族の知見が重要であることを強調する。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とその第6次評価報告書(AR6)、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)、国連環境計画(UNEP)とその地球環境概況、国際資源パネル及びその他の関連する国際科学・政策パネルとその報告書の貢献を最大限の配慮をもって歓迎するとともに、これらの科学コミュニティ間の協力と交流を継続することを要求する。我々は、気候や環境に起きている変化を理解し、ネガティブな傾向を緊急に反転させるための解決策を特定する上で、科学が果たす非常に重要な役割を認識する。

6. イノベーション:我々は、三つの危機、エネルギー危機、その他の関連する問題に対処し、持続可能な開発を達成するために設計・統合された技術の研究、開発、実証(RD&D)の重要性及び既存のソリューションと新たなソリューションの双方を導入する必要性を強調する。我々は、気候及び環境に係る目標を達成するためにはイノベーションだけでは十分ではないことに留意する一方で、気候、クリーンエネルギーその他の環境に関するさらなる野心的な行動は、エネルギー・産業部門の技術革新のみならず、政府、企業、消費者の選択など、全ての分野のイノベーションを促進することによって実施可能であると認識する。

7. 持続可能なバリューチェーン:我々は、世界のバリューチェーンをネット・ゼロで、気候変動に対し強靭で、汚染がなく、より循環型で、ネイチャーポジティブなものへと変革し、同時に、経済協力開発機構(OECD)多国籍企業ガイドラインや国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの責任ある企業行動分野の関連する国際ガイドラインに沿って、その安全性と人権の尊重を確保するという我々のコミットメントを強調する。したがって、環境及び気候を保護し人権を尊重する方法で不安定または独占的なエネルギーサプライチェーンへの依存を減らすことなどにより、バリューチェーンの安全性、持続可能性、多様性、透明性及びトレーサビリティを世界的に向上させることが不可欠である。我々は、企業に対し、気候変動の緩和と適応、資源効率性と循環経済のアプローチ、2030年までの自然保護、生物多様性損失並びに森林の消失の阻止と反転及び汚染の削減と防止といった環境側面に関する、リスク分析、GBFの実施、情報開示、並びに目標や計画の実施を含め、バリューチェーン全体で2030アジェンダとSDGsの達成に貢献するよう促す。この目的のため、中小企業に対する不均衡な負担やコストを回避する必要性を考慮しつつ、必要に応じて効果的な国内のデュー・ディリジェンス規制、サプライチェーン全体の透明性及び報告の強化、及びグリーンな公共調達の強化を通じて、我々はバリューチェーンにおける持続可能性と強靭性にインセンティブを与える拘束力のある及び拘束力のない効果的な政策手段を組み合わせて実施・促進する努力を強化することにコミットする。我々は、優良事例の共有やバリューチェーンにおけるステークホルダーの参画の促進などを通じて、ビジネス、特に中小企業(SMEs)を支援することにコミットする。我々はまた、気候変動や環境の悪化へのレジリエンスを高めることを目的として、温室効果ガスやその他の環境影響に関するガバナンスの測定と開示システムの構築を含む、開発途上国の能力構築を支援することにコミットする。

8. 重要鉱物及び原材料:我々は、ネット・ゼロ経済の実現に向けて重要鉱物及び原材料の供給を強化し、重要鉱物及び原材料のサプライチェーンが、人権を十分に尊重した上で、可能な限り最も高い環境、社会、ガバナンスの基準に従うことを確保することが極めて重要であることを強調する。環境と社会へのフットプリントを最小化し、一次資源利用への圧力を緩和し、サプライチェーンにおける供給と循環性を強化するために、我々は、重要鉱物及び原材料を含む製品をできるだけ長く経済内に維持することに全面的にコミットする。また、我々は、人の健康及び環境を守る観点から、国の回収・リサイクル能力が、厳しい環境基準に適合し、経済的に効率的で安全な回収・リサイクルが達成されるような場合において、電子機器、尾鉱、その他の回収・リサイクル可能な材料から重要鉱物及び原材料の国内及び国際的な回収・リサイクルの増加にコミットする。我々は、生物多様性の損失を防ぎ、自然保護を促進し、自然環境にプラスの利益をもたらすことを目的とした、ネイチャー・ポジティブ・アプローチを採用する。このような目的を達成するため、我々は、回収・リサイクルに関する環境フットプリントを最小化するために特に開発途上国における透明性を持った形での環境規制の枠組みや能力開発の強化を含む環境整備を促進しつつ、円滑で環境的に優れ効率的な国際的な回収・リサイクルを確保するための議論を促進する。我々は、効率性を高め、より持続性のある代替物質に置き換えることを可能にすることを含め、重要鉱物及び原材料への依存を減らすために重要鉱物及び原材料に関する研究開発を支援する。

9. 自然を活用した解決策:我々は、多国間で合意された自然を活用した解決策(Nature based Solutions: NbS)の定義を決定した、持続可能な開発のためのNbSに関する国連環境総会(UNEA)5/5決議を歓迎・支持し、UNEAの下、NbSに関してUNEP事務局長によって招集された政府間協議への完全かつ建設的な関与にコミットする。土地や森林、陸上、淡水及びブルーカーボンを含む沿岸・海洋生態系の保全、保護、回復及び持続可能な利用と管理が、生物多様性の損失の阻止と反転、炭素吸収源の保全と強化という気候変動の緩和と適応、災害リスクの軽減、その他人々への重要な貢献に寄与することを認識しつつ、我々は、気候、生物多様性及び人間の幸福などの複数の恩恵をもたらす、都市部におけるものも含めたNbSの重要性を強調する。したがって、我々は、研究と能力構築を通じてNbSの展開と実施を強化すること、及びNbSの具体的な実施のためのガイドラインといった効果的な手段を共有することにコミットするとともに、災害リスク軽減や人間の幸福などの関連課題との効果的なシナジーを追求する。この文脈で、我々は、2025年にかけてNbSのための資金貢献を増加させるというG7・2030年「自然協約」におけるコミットメントを再確認する。また、我々は、炭素を貯蔵し、レジリエンスを可能にし、海洋生物の生息地を提供する、海洋・沿岸生態系のより良い測定と監視、管理及び回復を促進することにコミットする。

10. 森林及び土地劣化:我々は、森林減少・劣化、及び生態系の転換は、我々の気候、生物多様性、食料安全保障及び人間生活に対する地球規模の脅威であることを認識し、2030年までに森林の消失と土地の劣化を阻止し反転させるというコミットメントを再度表明する。農業の拡大は、世界の森林減少の約90%の要因となっている。我々は、ネット・ゼロで、気候変動に対し強靭で、循環型で、ネイチャーポジティブな経済の実現に向けて、森林をはじめとする陸域生態系の保全とその回復を加速させるとともに、違法伐採対策を含む持続可能な森林経営と木材利用を促進することにコミットし、また、持続可能な森林経営と木材利用の促進のために、国連食糧農業機関、国連森林フォーラム、国際熱帯木材機関等の関連国際機関と協働する。我々は、必要に応じて各国がパッケージを打ち出すことも含め、森林を中心とした炭素貯蔵量が多く生物多様性に富む生態系の保全、保護、回復を支援する統合的な解決策を提供するために協働し、高い野心を持つパートナーとも協働する。我々はまた、需要者側の対策の重要性を認識し、農業生産を森林減少や森林及び土地の劣化から切り離す持続可能なサプライチェーンに向けた支援を強化することにコミットする。我々は、関連商品の生産に関する森林減少や森林及び土地の劣化のリスクを低減し、この問題に対する様々なステークホルダーとの協力を強化する努力を継続することにコミットする。我々は、適切な場合には、森林減少・劣化のリスクに関連する商品に対するデュー・ディリジェンス要件の導入を含む可能性のある、更なる規制の枠組み又は政策を策定する。我々は、土地劣化の中立性を達成するというコミットメントを再確認し、SDG15.3及びG20土地イニシアティブでの我々の共通の目的に沿って、土地劣化、砂漠化及び干ばつに取り組むための行動を取る。

11. 水:国連水会議の成功を歓迎するとともに、関連する場合には、持続可能で気候変動に強い水資源の利用と再利用、災害リスクの軽減、水関連生態系とその多様なサービスの保全と回復、汚染防止、食料安全保障と栄養、水、衛生と全ての人の安全な水へのアクセスに寄与する国境を越えた協力を含め、我々はあらゆるレベルにおける、淡水資源の統合的、セクター横断的、利害関係者参加型かつ完全に透明な管理及びガバナンスに向けて取り組むことにコミットする。我々は、河川流域、帯水層、湖沼を含む水関連生態系の保全、保護及び回復の重要性並びに適応への取組に水関連の視点を統合する必要性を強調する。

12. 海洋:我々は、G7オーシャンディールの実施に向けた行動をとることに引き続きコミットし、地球上の全ての生命にとって不可欠であり、SDGsに沿った気候変動への対応、生物多様性の損失の阻止と反転、汚染への対処にとって不可欠な、強靭な海洋・沿岸生態系を有する、クリーンで健全かつ生産的な海洋と海に向けて断固として行動するとともに緊急に取り組む。我々は、持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030年)へのコミットメントを再確認し、2022年に開催された国連海洋会議で採択されたリスボン宣言を歓迎する。海洋と気候のネクサスが明白であることを認識しつつ、我々は、UNFCCCの下行われる2023年に向けた対話のより体系的なフォローアップを行うことを推奨し、海洋と気候変動に関する対話へのコミットメントを再確認する。

13. 食料:世界の農業及び食料システムに対する圧力をさらに強めるロシアのウクライナに対する侵略戦争に深い懸念を抱きつつ、我々は、SDGs、世界の食料安全保障と栄養、そして生物多様性と気候の目標を達成するために、食品ロスや食品廃棄物の削減、持続可能な農業生産性の増加の促進、有機農業、アグロエコロジーやその他の革新的なアプローチの活用を含め、持続可能で強靭、かつ生産的な農業及び食料システムへの変革を国内外で継続することにコミットする。

14. 資金:我々が直面している三つの危機に対処するために膨大な資源が必要であることを留意し、我々は、民間及び公的、国内及び国際的なあらゆる資金源から資金を動員することの重要性を強調する。この点で、我々は、公的資金に関する既存のコミットメントを再確認し、民間投資、ブレンデッド・ファイナンス、及び革新的金融手段を促進すること、気候変動、生物多様性の損失と汚染に取り組み、資源効率性と循環経済を促進するという我々の目標に国内外の資金の流れを整合させること、及び疎外された人々や少数派のグループが資金にアクセスする際に直面する障壁に対処することの重要性を強調する。我々は、資金動員における国際開発金融機関(MDBs)を含む国際金融機関(IFIs)の重要な役割を強調し、それらの政策、投資、運営及びガバナンスにおいて気候及び環境問題を主流化することを求める。気候変動、生物多様性の損失及び汚染は本質的に関連していることを認識し、我々はまた、資金の質を高め、既存の資金やファシリティを効率的かつ効果的に使用することの重要性を強調する。我々は、サステナビリティ報告基準のためのグローバルベースラインを開発する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の作業プログラムと、自然や生物多様性への拡張を含み得る、気候以外の将来の作業を引き続き支持する。我々は、脆弱な国の気候変動や環境悪化に対するレジリエンスを強化し、途上国や新興国のグリーンな移行を奨励する仏主催「新たな国際的開発資金調達取決めのための首脳会合」が6月にパリで開催されることを歓迎する。

15. 国際的な支援と協調:気候、エネルギー、環境及び災害リスク軽減における我々の国際協力に関し、我々は、誰一人取り残さないという、持続可能な開発のための2030アジェンダの下、開発途上国における、気候変動に強靭性のある、ネイチャーポジティブで持続可能な開発の優先事項及び展望を達成するための移行を促進するためのG7諸国間の調整の方法を更に検討する。我々は、開発援助を国際的な気候及び生物多様性の目標に整合させることにコミットする。

16. 政府の行動:我々の行動を通じて模範を示し経済全体の変化を促すという政府の重要な役割を認識し、我々は、遅くとも2050年までに政府事業からのネット・ゼロ排出を達成し、公共調達をグリーン化することを含め、政府の行動を気候、エネルギー、生物多様性、汚染削減及びその他の環境目標に整合させる努力を世界的に主導することにコミットする。

17. 地方の主体の行動:ネット・ゼロで、気候変動に強靭で、循環型で、ネイチャーポジティブな経済への転換を実現し、地域の能力、ニーズ及び個々の環境条件に基づく社会経済的機会を促進する上での地方の主体の極めて重要な役割を認識し、我々は、地方の主体による行動への支援を促進し、成功事例の共有を奨励し、都市間連携を促進することを決意する。

18. 環境犯罪:我々は、野生生物の違法取引、木材及び木材製品、有害廃棄物やその他の廃棄物、貴金属・宝石などの鉱物の違法取引、違法採掘、違法伐採、違法・無報告・無規制(IUU)漁業に係る犯罪等の環境犯罪を、効果的に防止し対処するための国際及び越境協力を強化する努力を継続することにコミットする。我々は、多国間環境フォーラムにおいてこれらの犯罪に関する認識を高め、世界的な対応を発展させ続けることを再確認する。

19. 包摂:我々は、ネット・ゼロで、循環型で、ネイチャー・ポジティブな経済への移行には、労働者や地域社会を含む社会のすべての構成員が関与することを認識し、この移行が誰一人取り残さない、公正かつ包摂的であることを確保するという我々のコミットメントを確認する。我々は、企業や産業、労働者や労働組合、若者やこども、障害者、女性や女児、先住民族、人種的・民族的マイノリティ及び疎外された人々を含む社会のすべての人々が、変革を促進する上で果たす役割の重要性を強調する。また、我々は、2030アジェンダとそのSDGsに沿った環境正義と社会的・経済的持続可能性を達成するためには、市民の強固な関与及び参加が不可欠であることに留意する。したがって、我々は、社会のすべてのセグメントと緊密に協力し、意思決定や指導的役割への積極的な関与、協議、リーダーシップ、意味のある参加を支援することにコミットする。我々は、「クリーンで健康的で持続可能な環境の享受に係る人権」に関する国連総会決議76/300を想起する。

20. 先住民族:「先住民族の権利に関する国連宣言」で示された先住民族の権利と先住民族の独自の知識と経験を尊重し、我々は、気候変動、クリーンエネルギーへの移行、生物多様性の損失、汚染、自然保護及びその他の環境問題への取組において、先住民族のリーダーシップと関与の重要性を強調する。

21. ジェンダー平等:我々は、ジェンダーとLGBTQIA+の公正を、三つの危機への取組とクリーンエネルギーへの移行を加速するための我々の努力の中心に据える。我々は、女性と女児が三つの危機によってしばしば不均衡に影響を受けているという懸念を認め、そのリーダーと変革の担い手としての重要な役割を認識する。我々は、これらの影響についてさらなる知見を蓄積し、女性及び女児とのパートナーシップのもと対処することにコミットし、これを支援するためより詳細な性別データの収集と利用を求める。我々は、三つの危機とクリーンエネルギーへの移行において、必要な知識と技能を備えた革新的かつ包摂的な労働力の創出に女性及び女児、LGBTQIA+の人々のエンパワーメントのためにあらゆる適切な措置を講じることが、この移行の取組に寄与することを認識する。我々は、気候・エネルギー・環境問題に関連する行動、参画、政策と意思決定のあらゆるレベルにおける、完全かつ平等で意義ある参加とリーダーシップにコミットする。

22. 公正な移行:我々は、三つの危機に対処する努力の中で、労働力の国レベルでの公正な移行を支援し、すべての人に働きがいのある人間らしい仕事と質の高い雇用を創出する必要性を強調する。この点で、我々は、少数派で脆弱なグループを含む、社会のすべてのグループを支援する活動も支持する。そのため、我々は、国際労働機関(ILO)の2015年の「公正な移行を達成するための指針」に沿って、地方、地域及び国レベルで、包摂的な社会対話、技能開発・移転、社会保護、教育、スキルアップ及び訓練などを通じ、労働者とコミュニティを支援し、準備させる継続的な取組をさらに推進する。公正な移行は、国レベルでの気候、エネルギー、及び環境行動における向上された野心にとって重要な要素であることを認識し、全ての国にとってのGHGネット・ゼロ経済への移行の一環として、労働者と影響を受けるコミュニティを支援し社会経済的利益を最大化する重要性を強調し気候野心及び行動を促進する、公正な移行に関する作業計画に係るUNFCCC-COP28における決定に向けて、我々は建設的に活動する。

II. 環境

(1) 生物多様性

23. 昆明・モントリオール生物多様性枠組:2022年12月の生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)における昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択という歴史的成果を強く歓迎する。GBFは、持続可能な経済発展と人間の健康と福利を脅やかしている、かつてなく憂慮すべき速さで進行する生物多様性の損失に対処するための野心的な道筋を提供するものである。我々は、女性、若者及び先住民族を含む、全政府的及び全社会的アプローチを通じた、枠組の迅速かつ完全な実施にコミットする。我々は、全てのセクターにまたがって生物多様性を主流化する。この観点からCBD締約国であるG7メンバーについては、我々はGBFの迅速かつ効果的な実施に向けて、2023年内又はCBD-COP16に十分先んじて、生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)を速やかに改定、更新及び提出し、又はGBFの該当する全てのゴール及びターゲットを反映した国別目標を伝達することをコミットする。我々は、他のすべてのCBD締約国にもそうすることを求め、そのような努力を支援するための国内資源動員の重要性を再確認する。国際機関等と連携し、統合的アプローチを取り入れるためのマニュアル等の効果的なツールを提供するとともに、資源動員や他の実施手段の強化の途上国への支援に向けた共同のコミットメントを通じ、150以上の途上国の生物多様性国家戦略の改定・更新や生物多様性国家財政計画の策定を支援する。我々は、モニタリング枠組の指標群を含む、計画、モニタリング、報告及び、レビューのメカニズムの最終化に向けて、CBD締約国と取り組む。

24. ネイチャーポジティブな経済:自然と生物多様性が我々の経済、生活、そして幸福と健康を支えているという認識のもと、我々は、2021年に採択されたG7・2030年「自然協約」で決定した、社会変革の実現を含むネイチャーポジティブな経済への移行を推進することの重要性を再確認する。我々は、事業者が生物多様性への負の影響削減と正の影響の増大、生物多様性に関連するリスクの低減及び持続可能な生産パターンの確保を継続的に進めることを求める。政府として、GBFのターゲット15(a)に沿った適切な行動を取る。G7・2030年「自然協約」やその他の関連するコミットメントに基づき、ネイチャーポジティブな経済への移行を支援・促進するためのアクションを議論・特定する。我々はそのため、民間セクター及び市民社会、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)、既に情報開示要件を設けている国又は地域並びに関連国際機関及び関連パートナーと自発的に協力して、知識の共有や情報ネットワークの構築の場として、附属書に記載する、G7ネイチャーポジティブ経済アライアンスを設立する。同アライアンスは、すべてのセクターにおける生物多様性の主流化を重視する。我々は、2023年9月に発表予定のTNFDの最終版の枠組みに期待しており、GBFターゲット15の達成に重要な役割を果たすことができるその開発を支援するよう、市場参加者、政府、規制当局に強く要請する。我々は、セントラルフレームワークと生態系勘定を含む国連環境経済会計システムおよびその他の関連ツールに基づき、国家の環境経済勘定を定期的に公表することをコミットし、関連するデータ、指標、モニタリング枠組みにそった、経済・財務上の意思決定におけるその利用を促進する。我々は、環境経済統計及び自然資本勘定を中核的な国民経済統計に含めていく。

25. 30 by 30:我々は、2030年までに陸域及び内陸水域の少なくとも30%、海洋及び沿岸域の少なくとも30%を効果的に保全・管理するという目標(30by30)を国内及び世界で達成するというコミットメントを再確認する。個々の生態系間の連結性を考慮しつつ、保護地域や保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)の指定を各国の状況に応じて推進する。GBFの30by30目標を達成するため、保護区やOECMのベストプラクティスを他国と共有する。我々は、30by30目標の実施を支援するための協力・運用プラットフォームを目指す「自然と人々のための高い野心連合」の発展を支持する。2030年までに少なくとも30%という数値目標を達成しつつ、保全活動の影響のモニタリングや評価など、保護地域やOECMの管理を強化することで、生物多様性の保全と保護の質を向上させる。さらに、我々は、生物多様性と生態系の機能及びサービス、生態学的健全性及び連結性を向上させるために、2030年までに、劣化した陸域、内陸水域、沿岸域及び海域の生態系の少なくとも30%の地域を効果的な回復下におくという世界的な目標にコミットする。我々は、2050年までに自然生態系の面積を世界的に大幅に増加させることにコミットする。

26. 侵略的外来種:侵略的外来種(IAS)は、IPBES地球規模評価報告書において、世界的な生物多様性損失の5つの直接要因の1つとされており、その負の影響は地球規模で増加している。GBFのターゲット6の実施を加速するため、我々はIPBES-10で最終決定されるIPBES侵略的外来種評価報告書から提供される主要な知見と有用な科学情報をもとに行動する。国境を越えた侵略的外来種の意図的・非意図的な移動の増加に対処するための国際協力強化の必要性を認識し、侵略的外来種に関するG7ワークショップを開催し、国・地域レベルでの情報共有、技術開発、民間参画を含む必要な措置を議論し、一連の推奨事項を作成する。

27. データ・情報・知識:我々は、自然環境保全と生物多様性の持続可能な利用を促進するために、自由意思による情報に基づく事前の合意を得た地域社会や先住民族の伝統知識を含む、入手可能な最善のデータ、情報、証拠、知識の取得の重要性を認識し、GBFや他の環境協定をより効果的に実施するためにこれらのデータ、情報、証拠、知識を活用し共有する。

28. 資源動員:我々は、自然に対する国内及び国際的な資金を2025年までに大幅に増加させるというコミットメントを改めて表明する。GBFを実施するため、特に2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという我々の共同の野心の達成に向け、我々は、国内、国際、公共及び民間の資源を含む、効果的、適時かつ容易にアクセスできる方法で、あらゆる資金源からの資金の水準を大幅かつ段階的に増加させ、民間資金を活用し、革新的スキームを刺激し、気候資金との共通便益及び相乗効果を最適化し、全てのステークホルダーによる協調行動の役割を強化し、資源の提供及び利用における有効性、効率性及び透明性を高めることをコミットするとともに、他者に対しても同様のことを行うよう求める。特に、我々は、開発援助委員会(DAC)非メンバー国および南南協力に参加している国に対し、国際生物多様性資金の取り組みに貢献し、これをOECDDACに報告するよう求め、既にそうしている国の貢献に留意し歓迎する。我々は、2025年までに我々の国際開発援助が自然を害することなく、人々、気候及び自然に対して全体としてポジティブな成果を与え、GBFと整合することを確実にする。我々はまた、すべての関連する財政及び資金の流れをGBFに整合させることをコミットし、すべての国および金融機関、特にMDBs及び、適切な場合はIFIsに対し、同様のことを行うよう求める。我々は、生物多様性に有害な補助金を含むインセンティブについて懸念しており、すべての関係機関が、こうしたインセンティブの特定の支援等により、我々に協力することを求める。CBD締約国であるG7メンバーは、そのようなインセンティブを2025年までに特定することにコミットする。CBD締約国であるG7メンバーはまた、遅くとも2030年までに、それらのインセンティブを廃止、段階的廃止または改革し、生物多様性の保全と持続可能な利用のために有益なインセンティブを拡大することをコミットし、遅滞なく第一歩を踏み出し、すべての国と金融機関、特にMDBsに同様のことを行うよう求める。我々は、自然を活用した解決策が気候変動緩和に役立ち、気候変動適応に顕著な利益があることを認識しつつ、気候資金のうち顕著な金額を、適宜、気候変動危機と生物多様性危機への対処との共通便益や相乗効果を最大化するために提供する。また、他者にも同様ことを行うよう奨励する。我々はまた、地球環境ファシリティ(GEF)内の昆明-モントリオール生物多様性枠組基金(GBF基金)の設立を含む、資源動員に関するCBD-COP15決定事項の実施を支援することにコミットする。我々は、GEFに対し、容易かつ効果的な資金アクセス手続きの確立を含め、資金の充実性、予測可能性及び時宜を得た流れを確保するために、その運営を更に改革することを求める。我々はまた、新しい基金へのあらゆる資金源からの拠出の重要性に留意し、2023年8月にバンクーバーで開催されるGEF総会におけるGBF基金の立ち上げの成功に向けて協力する。我々は、MDBs、及び適切な場合にはIFIと慈善団体に対し、自然・人・地球に関するMDB共同声明に沿って、できるだけ早く、それらのポートフォリオにおいて生物多様性条約の目的およびGBFのゴールとターゲットの達成に貢献する投資を特定し報告し、それらのポートフォリオと資金の流れを条約の目的に合わせ、2030年までにGBFのゴールとターゲットの達成を支援し、あらゆる資金源の活用や新しい革新的なアプローチを含む一連の手段の展開を通じ生物多様性資金を増加させ、生物多様性のための資金へのアクセスを簡素化することを求める。

29. ワンヘルス・アプローチ:我々は、人、動物及び生態系の健康の持続的なバランスと最適化を図り、特に気候変動、生物多様性の損失及びその要因、特に例えば土地利用変化等(だがそれに限ることなく)から生じる健康への脅威、特に人獣共通感染症の波及を低減するために、関連機関の関連決定及びイニシアティブを通じて、また、清潔な水、エネルギー及び空気、安全で栄養のある食料、気候変動に対する集団的な要求に対処しつつ、統合的ワンヘルス・アプローチの実施に係る関係省庁間の協力を強化・醸成することをコミットする。我々はまた、ワンヘルスハイレベル専門家パネルと四者会議の活動、特にワンヘルスに関する共同行動計画の実施を引き続き奨励する。我々は、ワンヘルス・アプローチに沿って、必要に応じて、適宜政府から独立した保健、食品・農業、医薬品の規制当局に責任を有する関係閣僚とともに、薬剤耐性に対処し、2024年の薬剤耐性(AMR)に関する国連ハイレベル会合に向けて、国際規格の策定と合意、知識のギャップを埋める努力を続ける。

30. 海洋:我々は、海洋生態系及び海洋の保護、保全、回復及び持続可能な利用が世界的に非常に重要であることを認識する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の下での、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する国際的な法的拘束力を有する文書の交渉が妥結したことを歓迎する。我々は、国家管轄権外区域のガバナンスを強化するための、この国際的な法的拘束力を有する文書の重要性を強調する。我々は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用のために、その早期発効と実施を呼びかける。我々は、海洋生物多様性を効果的に保全・管理し、持続的な形で利用するために、海洋保護区(MPAs)を含む区域型管理ツール(ABMTs)を実施し、ABMTsの利用における協力と調整を強化し、海洋生物多様性と生態系の保護、保全、回復及び維持を図る。これにより、2030年までに海洋の少なくとも30%を、十分に連結され衡平に管理され、かつ生態学的な代表性を確保した海洋保護区とその他の生物多様性保全に資する地域のネットワークによって、効果的に保全、管理、又は保護することに貢献する。我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、世界の海洋生物多様性を保全・保護し、その資源を持続的に利用することをコミットする。この文脈で、我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、東南極、ウェッデル海及び南極半島西岸において海洋保護区を設置する提案を緊急に採択するという南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の下での我々のコミットメントを再確認する。我々は、国際海底機構(ISA)の下で行われている、深海底鉱物の開発に関する規制の枠組みの策定に積極的に関与し続け、UNCLOSの下で求められているように、当該活動により生ずる有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を確保する。我々は、深海底における海洋鉱物の採掘の可能性について、予防的アプローチをとることを再確認する。環境が深刻な被害を受けないことを示し得る、深海の海洋環境と深海鉱業活動のリスクと潜在的影響に関する確固たる知見の基盤は、環境が深刻な被害を受けないことを証明できるものであり、ISA理事会において我々の支持を検討する上で不可欠であり、将来の採掘許可の前提条件となるものである。我々は、G7メンバーによる漁業補助金に関する世界貿易機関(WTO)協定の迅速な受け入れを促進することを含め、IUU漁業の終結に対する我々のコミットメントを再確認し、全てのWTOメンバーに対し、その早期発効に努めるとともに、未決事項に関する交渉に建設的に関与するよう要請する。また、国連食糧農業機関(FAO)の違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の世界的な批准と効果的な実施を要請する。また、違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の非締約国にも同協定への加入を奨励する。我々は、最近採択された「FAO転載自主的ガイドライン」との整合性を考慮し、転載活動を効果的にモニタリングすることの重要性を強調する。また、水産資源の持続可能な管理を促進することにコミットし、漁業が海洋生物多様性(生息地と種の両方を含む)の保全の目標に適合することを確保する。

(2) 循環経済・資源効率性

31. 循環性及び資源効率性の強化を通じた三つの地球規模の危機への対処:経済成長と環境劣化や一次資源の利用とのデカップリングの重要性を強調し、科学的データと知見に導かれたバリューチェーン全体における資源効率性及び循環性の向上が、一次資源の利用を減じ、三つの地球規模の危機に取り組む我々の努力を支援することを強調する。我々は、ライフサイクル・アプローチを踏まえた製品設計の強化、ライフサイクル評価、適切な場合には拡大生産者責任のスキーム等を含み得る様々なアプローチを通じ、バリューチェーンにおける循環性を高めるための幅広い政策措置と民間セクターとの協力を強化することによって我々の経済がより循環性及び資源効率性の高いものとなるよう努力する。我々は、野心的な気候や環境目標の実現のために資源効率性や循環経済の可能性を活用するべく協力する。

32. G7資源効率性アライアンスの下の協力:G7資源効率性アライアンスによる関連会合及びワークショップの開催を含む活動を評価する。我々は、アライアンスが、ベルリン・ロードマップを基礎とし、特定された影響が大きいバリューチェーンにおける資源効率性と循環性の向上を通じた気候・生物多様性・汚染にかかる便益など、ロードマップに挙げられた特定の活動において、G7メンバー間の協力と行動を強化するよう要請する。我々は、一次資源の使用量削減と廃棄物の最小化へのコミットメントを再確認し、食品ロスや廃棄物を含む廃棄物部門から2050年までのネット・ゼロに向けた努力を強化し、アライアンスによる関連ワークショップに期待する。

33. 循環経済・資源効率性原則:企業は、そのバリューチェーンを通じて、資源効率性及び循環経済アプローチの推進に重要な役割を果たすことができる。その重要な役割を認識し、我々は、企業が循環経済に関するイニシアティブの確立と行動の強化を招請し、政府および金融セクターとの協力を促進し、レジリエンスと競争力を強化し、循環経済及び資源効率性の自主行動を促進し、持続可能で包括的な経済成長と雇用創出を支援するため、添付された循環経済・資源効率性原則(CEREP)を採択する。我々は、本原則の活用と官民連携の促進のため、B7や他の民間ステークホルダーの関与及び協力を期待する。

34. バリューチェーン全体の循環性に関する透明性の向上:我々は、経済のレジリエンスと自律性に資する、資源効率及び循環性を高め環境への悪影響を最小限に抑える努力を続け、一次資源の利用削減が急務である旨を認識し、製造業者とリサイクル業者を始めとする主体間の連携を進め、3R(リデュース、リユース、リサイクル)及びその他の経済価値を維持するプロセスの強化に向け、循環性及び環境影響を測定し、バリューチェーン全体でデータを共有・活用する重要性を強調する。G7メンバー間のより良い連携がこのようなシステムの有効性を高めることを認識し、我々は、G7資源効率性アライアンスを通じた協力により、循環性の計測、バリューチェーン全体における循環性に関する情報の共有と活用、及び比較可能な指標に関する議論と調整を促進する。

35. 国際協力:我々は、G20資源効率性対話を含む二国間・多国間における国際協力を拡大し、気候変動、生物多様性の損失及び汚染に対応するため、G7内外の経済における資源効率性及び循環性向上のために連携を促進する。我々は、中低所得国が彼らの経済の資源効率性と循環性を向上させるとともに、環境上適正な材料・化学物質・廃棄物管理の喫緊のニーズに対応するため、ファイナンス・技術協力や民間投資を通じた支援の必要性を認識する。我々は、環境目標を達成するための手段として資源効率性と循環経済を強化するための資金を動員し、このアジェンダを主流化する上での、MDBs及びその他の金融機関が果たす重要な役割を認識し、一貫した行動を確保し相乗効果を高めるため、資源効率性及び循環経済のアプローチをそのポートフォリオに統合することを求める。

(3) 汚染

36. 汚染対策に取り組む決意:三つの地球規模の危機のひとつである汚染への対応は、持続可能な開発を実現するための重要な要素である。我々は、人々と環境の健康と幸福のために、汚染のない地球に向けて努力することをコミットする。このため、我々は、汚染のリスク及びあらゆる発生源からの汚染の悪影響を自然と人々に有害でない水準まで削減することをコミットする。特に、生物多様性条約の締約国であるG7各国は、GBFのターゲット7を2030年までに実施することをコミットしている。

i. プラスチック汚染

37. プラスチック汚染に関するG7目標:我々は、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることにコミットしている。これを念頭に、我々は、包括的なライフサイクル・アプローチ、プラスチックの持続可能な消費及び生産の推進、経済におけるプラスチック循環の増加及び環境上適正な廃棄物管理を踏まえ、我々の行動を継続し、発展させることを決意する。これらの行動は、適切な形で、可能な場合のフェーズアウト及び生産・消費の削減等の措置を通じた使い捨てプラスチック、リサイクル不可能なプラスチック及び有害な添加物を含むプラスチックへの対応、プラスチック汚染由来のコストの内部化のためのツールの適用並びにマイクロプラスチックの排出源や流出経路及び影響への対策を含む。こうした取組を通じ、我々はパートナーやステークホルダーと強固に関与し、彼らを参加させ続ける。こうした取組について、G7オーシャンディール、大阪ブルー・オーシャン・ビジョン、G20海洋プラスチックごみに関する実施枠組み、海洋プラスチック憲章、G20海洋ごみ対策行動計画、G7海洋ごみ対策行動計画を踏まえつつ、他の国々にも同様の取組を促し、支援していく。陸域由来及び遺棄・放棄された漁具(ALDFG)を含む海域由来の不適切な予防と管理等が主要な汚染要因であることを認識し、国際海事機関(IMO)による漁具のマーキング及びALDFGの報告に関する交渉を引き続き支援する。我々は、報告及びモニタリングを含む、プラスチック汚染に関する科学的・技術的な知識を強化し、プラスチック汚染を終わらせることに貢献するプラスチックのライフサイクル全体にわたる既存及び革新的な技術やアプローチを促進する。関連する地域及び国際的な条約や文書間での協力、調整、補完性の重要性を再確認し、地域海洋協定および行動計画の下で海洋におけるプラスチック汚染を防止し、削減する現行の取組を強調する。主要な経済国やステークホルダーと、既存のフォーラムやイニシアティブを通じてベストプラクティスや教訓を共有することで緊密に連携する。

38. プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書に向けて:我々は、政府間交渉委員会(INC)の最初の会合が2022年11月に開催され、海洋環境等におけるプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を策定するための交渉が開始されたことを歓迎する。我々は、政府、パートナー及びステークホルダー(地方自治体、事業者、学術界、科学者、NGO、市民、地域社会及び先住民族を含む)の包括的で効果的な参画の必要性を強調し、こうした参画が効果的な国際文書の作成に資するものであることを認識する。我々は、このプロセス全体で、特に2023年5月にパリで開催される第2回会合において、建設的かつ包摂的な対話と協力を行うことにコミットしている。こうした観点から、我々は、交渉において重要な進展を遂げるために率先的かつ建設的な役割を果たすことにコミットし、プラスチックのライフサイクル全体に対する包括的なアプローチに基づき、拘束力のある及び任意のアプローチのいずれも含む、野心的な法的拘束力のある国際文書の重要な条文の明確化に近づくよう取り組んでいく。文書の目的達成を支援するため、我々は、プラスチック汚染の環境および経済への負の影響、人の健康に対する関連するリスク及び社会におけるプラスチックの重要な役割を認識しながら、INCがとりわけ義務、措置及び任意のアプローチの組み合わせ、バリューチェーン上の透明性の強化、モニタリング及び報告、定期的評価について検討することを期待する。我々は、法的拘束力のある国際文書の最終テキストが2024年末までに完成することを期待する。我々は、公的及び民間、国内及び国際的に、幅広いソースからの資金支援を動員することの必要性を認識しつつ、世界的にプラスチック汚染を終わらせるための国際的な協力の強化に向けて取り組む。

ii. 大気環境

39. より広範な国際協力による大気汚染への取組:我々は、大気汚染が人間の健康にとって主要な環境リスク要因であり、生態系への悪影響に寄与していること、大気汚染への対処が経済、生態系、気候及び人間の健康に複数の利益をもたらすことを認識する。我々は、大気汚染は国境の中にとどまらず、さまざまな形で地域に影響を与える可能性があることを認識し、世界中の大気質に関する地域協力を含む、より広範な協力を強化することにコミットする。

40. 地域間及び地域内の協力を促進するための行動:我々は、地上のオゾン、粒子状物質及び生態系の酸性化と富栄養化の要因になっている汚染物質等の健康と環境に影響を及ぼす汚染物質の排出を削減するための戦略の実施に関わる、大気質モニタリング、データ及び情報の共有並びに能力強化の促進に引き続き関与していく。我々は、大気汚染に関する国際協力タスクフォース(TFICAP)、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の大気汚染に関する地域行動計画及び国連欧州経済委員会(UNECE)の長距離越境大気汚染条約(LRTAP)等の国際的枠組みに基づいた活動を歓迎する。

iii. 化学物質

41. 化学物質や廃棄物の適正管理:我々は、地球規模の汚染の危機に対処するに当たって、化学物質と廃棄物の不適切な管理による生物多様性への影響を含む人の健康及び環境への悪影響の可能性を大幅に低減する観点から、化学物質と廃棄物の適正管理を実現する必要性を認識する。この文脈で、我々は、2023年9月にボンで開催される第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)において、2020年以降の化学物質と廃棄物の適正管理に対処する、野心的な文書を採択するよう期待している。我々は、UNEA決議5/8の下で招集された特別公開作業部会による提案の策定を受け、化学物質と廃棄物の適正管理に更に貢献し汚染を防止するため、関連する多国間協定及び国際機関と緊密に協力し、科学・-政策パネルを設立することに引き続きコミットする。我々は、例えば内分泌かく乱化学物質の放出及び重大な懸念のあるペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)等の環境中での残留性が特に懸念される物質等によって引き起こされる化学物質汚染をより積極的に防止し、不可能な場合には最小化することをコミットする。我々は鉛汚染について大きな懸念を有している。我々は、環境中の鉛を削減するために、国内での対策と諸外国との協働を継続する。

42. バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約及び水俣条約の実施:各条約の締約国であるG7メンバーは、バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約及び水俣条約のそれぞれについて、国際的及び国内レベルでの実施及び各条約の下での措置を講じることに対する我々の継続的コミットメントを強調する。さらに、我々は、水銀に関する水俣条約の第1回有効性評価のプロセスが開始されたことを歓迎し、同評価を支援するための科学的データ及び情報を提供することにより、同プロセスに貢献することをコミットする。

43. 鉛の汚染と暴露を含む途上国の化学物質汚染への対応:我々は、多国間資金メカニズム、地域及び二国間技術支援を通じて、化学物質及び廃棄物の適正管理のための能力構築を支援することにより、途上国における汚染への対処に貢献するというコミットメントを再確認する。このような支援は、2022年11月の鉛に関するG7ワークショップの報告書の関連する要素を考慮しつつ、地域的及び世界的に、人間の曝露を含む鉛の汚染と曝露を最小化するための行動と主要な発生源に対する国際協力を強化するための行動を含み得る。そのため、昨年の我々のコミットメントを繰り返し、我々は、鉛の汚染と暴露を低減するための具体的な行動を更に検討するため、ドイツ、米国及びEUが共催する第2回専門家会合を歓迎するとともに、既存の国際的イニシアティブ及び文書との間で鉛に関する国際協力を強化する方法を引き続き特定する。


III. 気候変動及びエネルギー

気候・エネルギー危機の現状、行動の加速化

44. 気候の危機:我々は、IPCCの第6次評価報告書(AR6)の最新の見解によって詳述された気候変動の加速化及び激甚化する影響に対する強い懸念を強調する。世界の温室効果ガス(GHG)排出の即時、大幅、迅速かつ持続可能な削減を達成し、全ての人にとって住みやすく持続可能な未来を確保するためには、全てのセクターとシステムにおける迅速かつ広範囲な移行が必要である。現在実行可能で有効な適応の選択肢は、地球温暖化が進むにつれ、制約を受け、効果は低下する。我々G7は、科学的知見に基づき、我々の指導的役割を継続し、全てのコミットしたパートナーとともに、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために排出量を削減し、気候の影響に対する強靱性を世界全体で構築するための即時かつ具体的な行動をとることをコミットする。我々は、この決定的に重要な10年間において、現時点の世界の排出量の軌跡及び現在のNDCと、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために必要な野心と実施のレベルの間の大きなギャップを埋め、遅くとも2025年までに世界の温室効果ガス排出量(GHG)をできるだけ早くピークにし、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出を達成するために、全てのレベルの主体が一丸となり、全ての部門を通じて我々の経済を変革するために協働することを求める。我々はIPCCの最新の見解を踏まえ、世界のGHG排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに60%削減することの緊急性が高まっていることを強調する。

45. パリ協定の実施:我々は、グラスゴー気候合意及びシャルム・エル・シェイク実施計画で定められたコミットメントの実施を含む、パリ協定の実施を強化するための揺るぎないコミットメントを再確認する。この目的のため、我々は、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために排出量を大幅に削減し、気候変動の影響に対する強靭性と適応能力を強化し、資金の流れをパリ協定の目標に整合させるために、この10年間に緊急かつ野心的で包摂的な行動を拡大する我々のコミットメントを再確認する。我々は、更に、締約国以外のステークホルダーがパリ協定の長期目標の達成に向けた行動を強化することを奨励し、それが可能となるよう努力する。また、締約国と非締約国のステークホルダーとの間の国際協力や協調的なイニシアティブを強化するよう努める。

46. 緩和:我々は、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるため、自ら模範を示し、この決定的に重要な10年に、強力で野心的かつ効果的な緩和行動を実施し、強化する。我々は、NDCの目標達成に向けた国内の緩和策を早急に実施し、例えば、セクター別目標の設定又は強化、二酸化炭素以外の温室効果ガスに係る副次的目標の策定、厳格な実施措置の採用によるものを含め、我々の野心を高めるために昨年ベルリンで行ったコミットメントを再確認する。我々は、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC-COP28)に向け、我々の進捗を年間を通じて継続して発信していく。我々は、セクター別イニシアティブに反映されたものを含め、これまでのコミットメント及び目標を堅持し、UNFCCC-COP28の成功に向けて努力する。我々は、G7としての指導的役割を意識しつつ、この決定的に重要な10年及びその後数十年間における世界の気温上昇を抑える上で、全ての主要経済国が果たすべき重要な役割を認識し、この観点で、全ての主要経済国が、パリ協定以降、NDCの野心を大幅に強化し、既にGHG排出量のピークを迎えたか、遅くとも2025年までに迎えることを示し、特にNDCにおいて全ての温室効果ガスを対象とする経済全体の排出削減目標を含めるべきであったことを強調する。この観点で、我々は、2030年NDC目標又は長期低GHG排出発展戦略(LTS)が1.5℃の道筋と2050年までのネット・ゼロ目標に整合していない全ての締約国、特に主要経済国に対し、可及的速やかに、かつUNFCCC-COP28より十分に先立って2030年NDC目標を再検討及び強化し、LTSを更新し、2050年までのネット・ゼロ目標にコミットするよう求める。我々は、さらに、全ての締約国に対し、UNFCCC-COP28において、世界のGHG排出量を直ちに、かつ遅くとも2025年までにピークアウトすることにコミットするよう求める。グローバル・ストックテイク(GST)に関し、緩和に関する成果は、2025年までに通報される次期NDCに明確な方針を示すため、この10年間とそれ以降の締約国のNDCとLTSに情報を与えるべきである。また、次期NDCは、全ての温室効果ガス、セクター及び分類を含む経済全体の排出削減目標と、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けることと整合すべく大幅に強化された野心が反映された形で、UNFCCC-COP30より十分前に提出されるべきであり、また、再検討され強化された2030年目標を含むべきである。シャルム・エル・シェイク緩和野心実施作業計画に関し、我々は、緩和ポテンシャルの高いセクター、排出源及びガスを優先し、変革を可能にする明確な成果をもたらすことで、この決定的に重要な10年における野心と投資戦略を強化するための具体的行動を導き出す、解決策に焦点を当てた主要なステークホルダーとの議論が重要であることを強調する。我々は、緩和作業計画の年次報告書を通じ、2030年までの野心に関するハイレベル・ラウンドテーブルへのインプットとして機能する、拡大した緩和行動の選択肢の重要性を強調し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために、この決定的に重要な10年における全体としての更なる行動に関する野心的なUNFCCC-COP28決定を採択することを目指す。我々は、締約国に対し、1.5℃とのギャップを埋めるため、UNFCCC-COP26及びUNFCCC-COP27で誓約されたセクターコミットメントについて、緩和作業計画等を通じた明確なフォローアップを求めると共に、セクター毎の行動強化を奨励する。

47. グローバル・ストックテイク:GSTは、パリ協定の5年間の野心サイクルにおける重要な機会であり、パリ協定の長期目標の達成に向けた全体としての行動と支援の野心を強化しなければならない。我々は、第1回GSTにおける野心的な成果物を確保し、この決定的に重要な10年間及び、それ以降において、世界が気候行動を強化する必要性についての政治的な機運を構築するために、積極的に貢献することにコミットし、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC-COP28)議長国とハイレベル委員会に対し、この目的のために政治プロセスを推進することを求める。さらに、GSTの成果物は、COP28において、温室効果ガスについて低排出であり、かつ気候にレジリエントな開発に向けた経路に資金の流れを整合させることも含め、緩和、適応、実施手段と支援にまたがる強化された、即時かつ野心的な行動を含む決定になるべきである。これには、パリ協定の目標に向けて全体として軌道に乗ることを確実にすべく、地方、国、地域レベルでの機会、優良事例及び解決策を特定することが含まれる。

48. エネルギー危機:我々は、ロシアのウクライナ対する侵略戦争により引き起こされているエネルギー価格の高騰、市場の変動及びエネルギーサプライチェーンの混乱によって特徴づけられる現在のエネルギー危機が、全ての経済に影響を与え、全ての国々のより貧しいコミュニティに不均衡な損害を生み出していることを、懸念を持って強調する。この危機は、クリーンエネルギーへの移行を加速すること及び我々のエネルギーシステムをより包摂的で、持続可能で、クリーンで、安全で、低廉なものに転換することの緊急性を強調し、化石燃料への依存を低下させること、2050年までのネット・ゼロ排出の目標と気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けることに整合的な形で、エネルギー部門における追加で必要な投資の動員と多様化をすること及びエネルギー市場の安定化を目的として、生産国と消費国の対話と連携の場を強化することが極めて重要であることを強調する。また、エネルギー危機は、政策、持続可能な技術及び資金調達を含め、広範な対策を推進することが極めて重要であることを強調する。

49. エネルギー安全保障とクリーンエネルギー移行:現在のエネルギー危機に対処し、2050年までにネット・ゼロ排出という共通目標を達成するために、我々は、クリーンで安全で持続可能で低廉なエネルギーを迅速に展開し、エネルギー効率を大幅に向上させることを含め、供給、資金源及びルートを多様化することにより、エネルギーセキュリティの向上とクリーンエネルギー移行の加速を同時に進めるための現実的かつ緊急な必要性と機会を強調する。我々は、ネット・ゼロに向けて加速されたクリーンエネルギー移行が、世界のエネルギー供給の安全保障、安定性及び低廉さを改善するための鍵であることを強調する。我々は、世界規模での取組みの一環として、世界全体の平均気温の上昇を産業革命化以前の水準よりも1.5℃に抑えるために必要な軌道に沿って、遅くとも2050年までにエネルギーシステムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して同様の行動を取るために我々に加わることを要請する。1.5℃への道筋に向けた変革において、ネット・ゼロ及び循環型産業サプライチェーンの新たな必要性の観点から、我々は、脱炭素化され、持続可能で、責任のある形で生産された非燃焼原料に関連する機会を認識し、この変革における、我々の労働者とコミュニティへの支援にコミットする。各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、それらがネット・ゼロという共通目標に繋がることを強調する。この点において、我々は、安全性、エネルギー安全保障、経済効率性及び環境(S+3E)を同時に実現することの重要性を再確認する。これに加えて、クリーンエネルギー移行のため、重要鉱物を含む地政学的リスクへの対応の重要性を強調する。このため、我々は、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体的に取り組むことにコミットする。

排出削減と経済成長を実現するシステム変革

50. グリーン市場の実現:我々は、技術の進展を考慮しつつ、グリーンな製品やサービスの普及を支援するため、国際的に相互に合意されているルール、基準、及びベストプラクティスと整合的な、正確な排出量と経済データに基づいた政策アプローチを適切に計画し、実施する必要があることを強調する。我々は、市場に基づく施策、炭素価格付け、規制的手法、クリーンで持続可能な技術への投資、及びグリーン調達など、効果的に排出量を削減する、供給側及び需要側両方の措置を組み合わせることが重要であることを認識する。このような施策の推進において、我々は、民間及び公的主体両方が重要な役割を果たすことを強調する。

51. バリューチェーン全体での排出削減を実現する視点:我々は、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために、様々な主体による、即時、迅速かつ持続的に自らの及びバリューチェーン全体におけるGHG排出を削減するための継続的な努力の重要性を強調し、優先する。我々は、民間セクター含めポジティブな気候行動を更に奨励し、事業者が、自らの及びバリューチェーン全体におけるGHG排出のネット・ゼロへの道にコミットすることを奨励する。我々は、特に民間のネット・ゼロ・プレッジの信頼性を含め、非国家主体のネット・ゼロ排出コミットメントに関する国連ハイレベル専門家グループの作業を認識する。また、ある系における脱炭素ソリューション提供による、ある事業者による他の事業者の排出削減への貢献、すなわち、「削減貢献量」を認識することも価値がある(参照:附属文書「産業の脱炭素化アジェンダに関する結論」パートB)。我々は、削減貢献量に関する信頼できるメカニズムが、ソリューションの展開を加速するための資金を動員し得ることに注目し、持続可能な開発のための経済人会議(World Business Council For Sustainable Development)が、3月に発表した削減貢献量に関するガイダンスの初版を、削減貢献量の主張に関する議論への民間セクターの貢献として注目する。G7産業脱炭素化アジェンダ(IDA)に関する結論で示された原則に沿って、消費者及び企業、投資家に効率的な排出削減を加速化するための力を与え、また、不適切に用いられるリスクを低減するため、我々は、様々な主体による環境パフォーマンスに関する主張が、信頼性、比較可能性、検証可能性を有するべきであることを強調する。

52. 炭素市場及び炭素価格付け:我々は、ネット・ゼロへの転換を促進し、費用効率の高い排出削減を推進し、資金フローとパリ協定の長期目標との整合性を高め、持続可能な経済成長を促進するための重要な措置として、炭素市場及び炭素価格付けが極めて重要な役割を果たすことを再確認する。我々は、ネット・ゼロへの転換において、誰一人取り残さないような形で、こうした施策を設計・実施することの重要性を強調する。IPCC報告書では、炭素税や排出権取引から生まれる収益を低所得世帯の支援に利用する等のアプローチにより、炭素価格付けという手段の公平性や分配への影響に対処することができると言及されている。我々は、G7を超えたパートナーと、炭素市場と炭素価格の野心的な活用を拡大することに取り組む。

53. 需要サイドの行動:IPCCの第6次評価報告書(AR6)統合報告書の見解知見によれば、需要サイドの対策と新たな最終用途のサービスの対策提供により、最終用途分野部門における世界のGHG排出量をベースラインシナリオと比較して2050年までに40~70%削減することができ、また、政策、インフラ、及び技術に支えられた社会文化的な選択肢、行動やライフスタイルの変化は、最終ユーザーが複数の相互利益を伴う低排出量集約型が低い消費への移行を支援することができる。インフラの利用、設計、建築物の利用、最終使用技術の採用、及び消費者の選好などの需要サイドの変化を促進するためには、産業界やステークホルダーへの適切なガイダンス、及びより良い排出関連情報、適切な規制及び価格シグナルの提供を通じ、消費者の意識を高め、彼らの選択を支援することが重要である。我々は、デジタル化や消費者の選好に影響を与えるようなインセンティブの増加を含め、低炭素及びゼロ・エミッション製品やサービスの開発、及び省エネルギー達成を促進するための政策手段を拡充する。効果が高く、社会的に公正な施策を立案するためには、企業、地方自治体、社会団体、若者、及び市民と協力し、知識や経験を共有することが重要である。したがって、我々は「脱炭素で豊かな暮らし(ウェルビーイング)のためのG7プラットフォーム」を設立し、我々の気候目標に沿った持続可能な消費者の選好を奨励することに貢献するイノベーションのための官民パートナーシップの加速を目指す。我々は、低炭素及びゼロ・エミッション製品やサービス、及び需要サイドの政策に関する経験や優良事例を共有することで、他者を支援する。

54. イノベーション:国際エネルギー機関(IEA)は、世界のエネルギーセクターのための2050年ネット・ゼロ・ロードマップにおいて、2030年までの二酸化炭素排出量削減の大部分は、現在すでに市場に出ている技術によるものであるものの、2050年までに世界のネット・ゼロを達成するために必要な排出削減量のほぼ半量は、まだ大規模に商業化されていない技術によるものとなると推定している。従って、我々は、経済成長と高賃金の雇用創出を支援しながら脱炭素化を推進するために、技術の商業化とイノベーションを加速させる必要性を強調する。我々はまた、予測可能な政策、・規制環境の構築、リード市場の開発、その他の新興ネット・ゼロ製品の需要を刺激するメカニズム、及び研究、開発、実証(RD&D)事業への共同資金提供等を通じ、発展してきているネット・ゼロ製品に対する需要を刺激する仕組み、及びネット・ゼロ実証プロジェクトへの共同資金提供を通じて、移行に向けたイノベーションへの民間セクターの投資を促進し、リスクを軽減する上で、政府が果たすことのできる補助的な支援する役割を認識する。我々は、これらの投資が、大規模なゼロ・エミッション技術のコストを削減し、それにより、全ての国が遅くとも2050年までに温室効果ガスネット・ゼロ排出を追求することを可能にすることを認識する。また、我々は、ネット・ゼロに向けたイノベーションと技術に貢献する、スタートアップ企業や中小企業(SMEs)の重要な役割を強調する。

55. 資金の流れを整合させ、動員すること:我々は、引き続き、サステナブル・ファイナンスを拡大し、官民及び国内外の資金の流れをパリ協定第2条1項cに沿った、温室効果ガスについて低排出型で気候に対して強靱な発展に向けた方針に適合したものにさせるための努力を倍加する。我々は、企業が信頼性のある気候移行計画に基づき、パリ協定の気温目標に沿ったネット・ゼロ移行を実行する必要性を強調する。我々は、OECDのトランジション・ファイナンスに関するガイダンスや他のグローバルなベスト・プラクティスに記載されているように、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続け、カーボン・ロックインを回避し、効果的な排出削減に基づいている限り、トランジション・ファイナンスがそういった取組みを支援できることを認識する。さらに、我々は、強力な環境整備、サステナブル・ファイナンスに関する政策や規制、革新的金融枠組や手段、ブレンデッド・ファイナンスなどの官民協力を通じて、民間資金の動員を大幅に増加する必要性を認識する。我々は、気候変動目標に沿った投資判断を可能にするため、いくつかのG7メンバーが立ち上げるために作業をしているものを含む、サステナブル・ファイナンスに関するタクソノミー等の手段の開発を歓迎し奨励する。

56. 気候関連財務情報開示:サステナブル・ファイナンスを加速させるためには、自らの排出削減量に着目し、パリ協定目標に沿った移行計画を含む気候関連情報の開示を、拡充することが不可欠である。我々は、市場関係者に対して一貫した、意思決定に有用な情報を提供する気候関連財務情報開示の義務化を促し、G7を超えたより多くのパートナーに、本取組に参加するよう求める。我々は、より野心的な開示要件に組込み得る、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づく、実用的で柔軟かつ相互運用可能なグローバル・ベースラインを策定する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の作業の重要性を強調し、気候及びその他の持続可能性に関する開示規則を実行する際に、各法域がISSB基準を考慮することを支持する。

57. 炭素市場と6条:我々は、2050年までにネット・ゼロ排出量を達成し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるため、現在のレベルを超えることも含めた、2030年NDCの実施及び野心の強化に、十全性(質)の高い炭素市場が果たし得る役割を強調する。排出を回避、削減し、除去を増加させるための対策は依然として不可欠であり、炭素市場の活用は必要な排出量の削減の代替とはなり得ないことを強調しつつ、強固なセーフガードを備えた十全性(質)の高い炭素市場の活用・設計は、成果に基づく気候資金を含む官民セクター資金の動員、社会・環境の相互利益、クリーンで安全かつ持続可能な脱炭素技術の展開、さらには自然を活用した解決策(NbS)に対する投資において重要な役割を持つ。第6条4メカニズムのクレジット、承認、透明性、報告、レビューと追跡、及びインフラを含む第6条ガイダンスと規制の実施は、パリ協定に基づく炭素市場に、環境十全性を確保し持続可能な開発を促進する強固な枠組みを提供する。環境十全性を確保しつつ炭素市場の発展を促進させるため、我々は、添付のとおり「十全性(質)の高い炭素市場の原則」を採択し、炭素市場プラットフォームの議論を通じて経験を共有することを含め、カーボンクレジット市場において、その実施を促進する。第6条の強固で野心的な実施のための能力構築を強化するため、我々は、関心のある締約国に対し、報告を含む制度的取決めの策定、及び野心を支えるような協力的アプローチを確保する能力構築プログラムを実施するUNFCCC事務局の役割の重要性を強調する。我々は、第6条実施のための国家戦略を策定する際のホスト国を支援することの重要性を強調する。さらに、我々は、「パリ協定6条実施パートナーシップ」も含めて、能力構築に関連する様々なイニシアティブ間の国際協調の促進に協力する。パートナーシップにおける持続的な活動を提供するため、我々は、第6条に関する能力構築を支援するパートナーシップの事務局として、「6条実施パートナーシップセンター」を設立する日本のイニシアティブを歓迎する。

58. 共同の行動:我々は、国の状況を考慮して、多様かつ現実的な道筋を通じたネット・ゼロGHG排出への移行を支援することを含め、排出削減を加速するために、共同の行動、及び特にG20の途上国及び新興国の関与が極めて重要であることを再確認する。特に、我々は、イノベーションのための、クリーンで再生可能なエネルギー解決策の開発、実証、普及の取組やその他の取組を支援するものを含む、分野別、課題別及び地域別イニシアティブが、本移行に重要な役割を果たすことを認識する。我々は、ブレイクスルー・アジェンダ、気候クラブ、クリーンエネルギー閣僚会議(CEM)、ミッションイノベーション(MI)などの包括的なイニシアティブと、これらのイニシアティブによる成果を歓迎する。ブレイクスルー・アジェンダについては、署名国は電力、運輸、鉄鋼、水素、農業のブレークスルーにまたがる2023年の優先行動に関する考えを共有した。我々は、建築/セメントのブレークスルーの立ち上げに向けた進捗を認識する。クリーンエネルギー閣僚会合/ミッションイノベーションでは、昨年9月にピッツバーグで開催された第13回クリーンエネルギー閣僚会合と第7回ミッションイノベーション閣僚会議の共同開催であるグローバルクリーンエネルギーアクションフォーラム(GCEAF)で、クリーンエネルギーの研究開発促進に関する議論が行われ、本年インドで開催予定の第14回クリーンエネルギー閣僚会合と第8回ミッションイノベーション閣僚会議で議論を進めることを期待する。我々は、分野/課題別イニシアティブとして、グローバル・メタン・プレッジ、国際航空気候野心宣言、エネルギー効率化ハブ、国際水素・燃料電池パートナーシップ(IPHE),ゼロ・エミッション・ビークル移行協議会を歓迎し、また、都市気候金融リーダーシップ同盟(CCFLA)、気候投資基金の産業脱炭素化プログラム、エネルギー管理行動ネットワーク(EMAK)、ファースト・ムーバーズ・コアリション、建設・建築部門におけるグローバルアライアンス(Global ABC)、グローバル・カーボンプライシング・チャレンジ、産業高度脱炭素化イニシアティブ(IDDI)、国際メタンガス排出量観測所(IMEO)、化石燃料由来の温室効果ガス削減に関するエネルギー輸入者と輸出者の共同宣言、鉱物安全保障パートナーシップ、ゼロ・エミッション中・大型車に関するMOU、石油とガスに関するパートナーシップ2.0(OGMP2.0)、脱石炭同盟(PPCA)、Super-Efficient Equipment and Appliance(SEAD)、ネット・ゼロ政府イニシアティブ、Greening Government Initiativeを認識する。我々は、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)のような地域的及び世界的なアウトリーチを行うイニシアティブを歓迎し、南アフリカにおける投資計画の採択、及びそれぞれG20バリサミット及び2022年12月にそれぞれ立ち上げられたインドネシア及びベトナムにおけるJETPsの進展を歓迎する。我々は、JETPsの迅速な実施に向けた努力を継続することにコミットする。我々は、アジア・ゼロ・エミッション共同体(AZEC)構想、2050パスウェイ・プラットフォーム、ネットゼロ・ワールド(NZW)など、世界各国の脱炭素化とエネルギー移行を支援するために、単独で、あるいは他者とのパートナーシップで行う取組を認識し、1.5℃への道筋に整合したこれらのイニシアティブを通じた対応の重要性を強調する。

59. 気候クラブ:我々は、G7首脳が設立した開放的、強調的かつ包摂的な気候クラブを、国際的なパートナーと協力して進めることを期待する。気候クラブは、大幅なセクター別の産業の脱炭素化を実現するための条件を整備することで、経済の脱炭素化に向けた世界の努力を支援する。気候クラブの合意した範囲内で、我々は、特にリード市場を設立したり、自主的な協力とパートナーシップのためのプラットフォームを提供したりすること等により、時間をかけて、脱炭素化された産業生産を既定のビジネスケースとすることを期待する。

60. カーボンリーケージ:緩和政策の野心向上が急務である一方、他の要因の中でも気候変動政策の野心が一層多様になっていくにしたがって、カーボンリーケージのリスクが増大する可能性がある。我々は、排出集約度が、カーボンリーケージのリスクに対応する手段を実施するための重要な要素となっていることを認識する。また、我々は、そのような手段が、規制、税制、炭素市場及び炭素価格付けなど、各国が実施する多様な気候緩和政策アプローチを十分に考慮し、WTOルールや原則との整合性を維持し、貿易関係を支援し、世界の排出削減に貢献するべきものであることを強調する。また可能な限り、我々は、我々のリーケージ・リスクの評価とそれを軽減するための戦略を共有することも含め、潜在的な国際摩擦を軽減するよう努める。

61. メタン:我々は、2030年までにメタン排出量を削減するための更なる行動をとることの緊急性を強調する。我々は、グローバル・メタン・プレッジに沿って、共同で2030年までに世界の人為的メタン排出量を2020年比で少なくとも30%削減するために、国内での行動を起こしたり、他の国々と協働するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、特に廃棄物、農業及びエネルギー部門において漸進的な行動をとり、メタン排出を削減するための国家行動計画、政策及び規制を確立することの重要性と、世界レベルでの人為的メタン排出データの収集、調整及び検証を含む、国家排出インベントリを通知するための排出量の測定、報告及び検証の継続的改善の重要性に注目する。我々は、化石エネルギー部門が、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続け、また、気候の転換点に達する可能性を減らすために、最も急速で、最も大幅な排出削減を達成しなければならないことを認識する。我々は、石油、ガス、石炭のバリューチェーン全体でメタンやその他のGHG排出量の測定、監視、報告、検証のための国際的に整合性のあるアプローチを開発し、最小化、フレアリング、ベント、利用可能な最善の漏洩検出及び修復解決策と基準の採用など、GHG排出を最小限に抑える国際市場を創造するために関係者と協力する。この国際的に整合性のあるアプローチは、貨物、ポートフォリオ、オペレーター及び地域レベルで排出データの正確性、利用可能性、及び透明性を改善することを目的とし、強固なデータ収集と報告を支援する独立した検証等、認められたプロトコル、標準、及びツールの検討を含む。我々は、また、化石エネルギーの生産、消費、及び国際取引から排出されるメタンやその他のGHG排出を削減するための政策、施策、及び業界の取組の策定を支援する。我々は、開発金融パートナーと協力し、途上国におけるメタン削減への支援強化に努める。

62. HFCs及びその他の非CO2気候汚染物質:我々は、モントリオール議定書のキガリ改正を締結していない全ての国に対し、同改正を批准するよう求める。我々は、少なくともキガリ改正に沿って、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産量と消費量の段階的削減を継続する。我々は、モントリオール議定書多数国間基金を通じて、HFC消費量の削減とHFC段階的削減に向けたエネルギー効率の向上を促進するための早期行動のための強固な行動を支援する。我々は、HFC排出量のさらなる削減と、新たに導入される省エネルギー冷暖房システムの便益を最大限に活かすため、機器の安全性を確保しつつ、冷媒選択と機器のエネルギー効率に同時に対応する。モントリオール議定書とは別に、我々は、フルオロカーボンの適切なライフサイクル管理を進めること、特に機器に含まれる冷媒を含むフルオロカーボンバンクに対応することの重要性を強調する。我々は、更に、代替物や対策の適用可能性を考慮しつつ、低コストで利用可能な技術を導入することで、アジピン酸、硝酸、化石燃料の燃焼によるものなど産業からのN2O排出を削減するための努力をしたり、N2O排出を抑制し肥料不足に対処するために肥料の使用効率を高めたりする等、亜酸化窒素(N2O)の排出を軽減するための協調的な努力に注力する。我々は六フッ化硫黄(SF6)の排出・漏えいの削減のため、特にG7内外の電力部門において、その代替製品の利用可能性と適用可能性を考慮しながら、新たな機器におけるSF6の使用の削減やその廃止に向けた検討を行うこと、また、規制や標準化によって既存のSF6スイッチギアの適切な保守や廃棄管理を確保することなどの様々な措置をとる。我々は、SF6の更なる廃止を支援するための送配電技術の開発について、各国内で、及び各国間の協力において、その機会を追求する。我々はまた、ブラックカーボンを含むその他の温暖化物質についても、高い地球温暖化係数を有していること、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるためには、その緩和が重要であることから、排出・漏えいを削減する行動をとる。

エネルギーセクターの移行

63. 省エネルギー:我々は、2050年の温室効果ガスのネット・ゼロ排出に向けた世界的なエネルギー転換における重要な柱として、「第一の燃料」としての省エネルギーの役割を強調する。我々は、エネルギーの安全保障、アクセス及び低廉性を強化しながら、温室効果ガス排出の削減と環境への影響の緩和、経済成長の創出とエネルギー貧困の削減において、あらゆる部門における省エネルギーとエネルギーの節減の価値を強調する。我々は、情報キャンペーン、消費者の嗜好への影響と対応、需要最適化措置、エネルギー効率の高い機器とソリューションの促進を含む、現在のエネルギー危機への対応として我々が既に行った、成功した措置を基に、起こりうる反動効果にも対処しつつ、エネルギー消費を削減するための需要側の取組の必要性を認識する。我々は、IEAに対し、ベストプラクティスを特定し、共有し、推奨するため、現在のプレッシャーに反応して需要の削減対策が既にもたらした影響を評価することを求める。さらに、我々は、効果的かつ効率的な規制の枠組みの重要性を認識し、技術的及び非技術的な解決策の両方を促進するために公的及び民間資金を活用する必要性を認識する。我々は、政策、計画及び投資の決定において、省エネルギーとエネルギーの節減が正当に考慮されることを確保するために、「省エネルギーファースト」が我々の行動の推進原理として認識される必要性を強調する。また、自動車燃費規制、建築基準、最小エネルギー性能基準、エネルギー性能証明書、大規模需要家のエネルギー報告制度などの省エネルギー規制が、引き続き勢いを増していることに留意する。これらの施策は、電化、燃料転換、系統柔軟化、エネルギー需要情報のデジタル化、エネルギー・気候関連情報の開示を含む戦略的アプローチによるエネルギー需要の脱炭素化に向けた更なる取組を活用していく。我々は、需要側の脱炭素化目標に沿った省エネルギー規制の枠組みの進化に関するIEAの分析を歓迎し、省エネルギー政策の強化を支援するために、新興国の政府を含む各国政府とこの情報を共有する予定である。この取組において、IEAのネット・ゼロシナリオと整合性を持たせるためには、2030年まで一次エネルギー原単位を世界的に年4%改善させる必要があるとIEAが予測していることに留意する。

64. 再生可能エネルギー:我々は、再生可能エネルギーの導入ペースと規模の大幅な増加は、エネルギー供給の多様化によるエネルギー安全保障の強化や化石燃料への依存度の低減により、経済の脱炭素化の効果的な手段として、遅くとも2050年にネット・ゼロの目標を達成し、さらに経済成長と雇用の創出のために重要であると改めて表明する。IEAが示すように、我々は、エネルギー危機がエネルギー安全保障と気候変動への野心を原動力に、再生可能エネルギーへの投資と展開を大きく加速させたことを認識する。我々は、再生可能エネルギーの発電量を大幅に増加させるとともに、冷暖房や運輸・産業分野での再生可能エネルギーの利用を促進し、消費者や市民エネルギーコミュニティにおける積極的な役割を推進する。我々は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)WorldEnergyTransitionOutlook2023の調査に懸念を持って留意し、1.5℃に抑えることを射程に入れるために更なる再生可能エネルギー導入率が必要であることに着目する。G7は、2030年までに洋上風力の容量を各国の既存目標に基づき合計で150GW増加させ、太陽光発電の容量を各国の既存目標や政策措置の手段を通じて、IEAやIRENAで推計された2030年までに合計で1TW以上に増加させることも含め、再生可能エネルギーの導入拡大とコスト引き下げに貢献する。太陽光、陸上・洋上風力、水力、地熱、持続可能バイオマス、バイオメタン、潮力などの再生可能エネルギーの導入を加速するとともに、次世代技術の開発・実装への投資や、安全で、持続可能で、強靭なサプライチェーンの整備を進める。具体的には、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電、波力発電などの革新的技術の開発や、新技術実装のための評価方法の国際標準化を国際協調のもとで推進する。我々はIRENAに、浮体式洋上風力のイノベーションと持続可能性に関する分析を依頼する予定である。また、系統増強、独立型システムやミニグリッド、蓄電池を含むエネルギー貯蔵システムの運用の近代化、需要側のマネジメントなど、システムの柔軟性を着実に向上させていく。我々は再生可能エネルギーの導入が大きく進む中で認識すべき、再生可能エネルギーの季節・年次変動の影響と対応策に着目したIEAの報告書を発表したことを歓迎する。

65. クリーンエネルギーサプライチェーン:国際的なエネルギーと気候の目標を達成するためには、クリーンエネルギーの世界的な導入が大幅に増加することが必要である。我々は、多様な製造工程や主要な原材料の生産を含むグローバルなクリーンエネルギーのサプライチェーンにおいて、エネルギー移行に脆弱性や潜在的な課題をもたらす可能性のある過度な依存を避けることの重要性を認識する。遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出という共通目標を達成するために、我々は、国際的に認められた労働基準に合致し、人権を尊重しつつ、電解槽、ヒートポンプ及び電池などのクリーンエネルギー技術の製造及び設置への投資を拡大すること及びそれらが強靭で低廉で持続可能であることを確保した形でクリーンエネルギーのサプライチェーンを多様化することの重要性を強調する。我々は、これらの取組が、投資や雇用創出のような経済的な機会や、エネルギーミックスで炭素密度が低い国における産業活動を通じて温室効果ガス排出量を削減する環境的な機会を提供することを認識する。クリーンエネルギー技術に関連する製品としてのライフサイクルが終了した製品の大幅な増加を認識し、我々は、供給の安定性への貢献として、クリーンエネルギー技術のバリューチェーンの循環性を高めるという観点から、製品設計の重要な役割を強調する。

66. 電力システム:この勝負の10年に温室効果ガス排出量を早急に削減する必要性を認識し、我々は、2022年のG7首脳コミュニケを想起し、2035年までに電力部門の完全又は大宗の脱炭素化の達成、及び気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けることに整合した形で、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速するという目標に向けた、具体的かつ適時の取組を重点的に行うというコミットメントを再確認し、他の国にも参画することを求める。このコミットメントを実行するため、必要なエネルギー移行政策の加速、関連するクリーン技術についての研究開発の促進、及び公正な移行を確保するための新たな雇用の創出や影響を受ける労働者の再訓練等の効果的措置を取ることを目指す。我々は、IEAの2022年の「ネット・ゼロ移行における石炭」報告書において、IEAの2050年までのネット・ゼロシナリオに沿った主要な取組の一つとして特定された、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設を終了する必要性を認識する。我々は、公正な方法でクリーンエネルギーへの移行を加速するため、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所のプロジェクトを世界全体で可及的速やかに終了することを他国に呼びかけ、協働する。その際、我々は、国家のエネルギー安全保障、低廉性、及び強靭性の重要性を再確認し、エネルギー貧困に取り組む必要性と、影響を受ける労働者、地域、及びコミュニティへの支援を提供することの重要性を強調する。我々は、IEAに対し、国際労働機関(ILO)等の関連機関の協力を得て公正な移行と整合する形で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速するための様々な行動を報告することを招請する。

67. 低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物:我々は、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物を開発すべきこと並びに産業及び運輸といった特に排出削減が困難なセクターにおいて、セクター及び産業全体の脱炭素化を進めるための効果的な排出削減ツールとして影響力がある場所で使用すべきであることを認識する。我々はまた、温室効果ガスであるN2Oと一般的には地域の大気汚染物質及び対流圏オゾンの前駆体であるNOxを回避しながら、1.5℃への道筋及び2035年までの電力部門の完全又は大宗の脱炭素化という我々の全体的な目標と一致する場合、ゼロ・エミッション火力発電に向けて取り組むために、電力セクターで低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物の使用を検討している国があることにも留意する。一部の国では、再生可能エネルギーからの余剰電力を変換するために水素を利用することも検討している。我々は、研究開発及び実証並びにインフラの有効化を含む、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物と化石燃料との間の価格差を減らす行動を取ることの重要性を認識する。我々は、信頼できる国際標準及び認証スキームに基づき、特に水利用競合に関する環境および社会的基準を順守しながら、液化水素および液体有機水素キャリアを含む様々な方法で、ルールに基づき透明性のあるグローバルサプライチェーンを開発すること、供給国と消費国の間の有機的な協力を促進してコストを削減することへの努力を強化していく。我々は、水素利用の促進及び排出削減を加速するために、関連規制、安全コード及び基準を普及し、水素の安全利用を促すための環境を構築していく。我々は、炭素集約度に基づく取引可能性、透明性、信頼性及び持続可能性のための水素製造の温室効果ガス算定方法および相互認証メカニズムを含む国際標準及び認証を開発する重要性を認識する。我々は、IEA報告書「排出集約度に基づく水素の定義に向けて」を低排出水素及びその派生物の普及のための信頼できる国際標準及び認証スキーム及び共通理解の促進に向けた議論への貢献として歓迎する。我々は、国際水素燃料電池パートナーシップ(IPHE)が水素の基準及び認証に関する活動の進展をもたらしたことに感謝の意を表する。我々はまた、輸出及び国内利用のために低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素を製造する国々が、その開発から十分な利益を得てその開発を前進させるべきであることを強調する。

68. カーボンマネジメント:温室効果ガス排出の即座かつ持続可能で急速な削減は、引き続き我々の最優先事項である。ネット・ゼロを達成するためには、自然吸収源の強化、二酸化炭素の回収・貯蔵を伴うバイオエネルギー(BECCS)、直接大気による二酸化炭素の回収・貯蔵(DACCS)など、強固な社会・環境面のセーフガードを備えた二酸化炭素除去(CDR)プロセスの展開が、完全な脱炭素化が困難なセクターにおける残余排出量を相殺する上で不可欠な役割を担っている。炭素回収技術の大規模な展開を促進することは、さらなる実践的学習効果によるコスト削減及び経済成長の向上につながる。我々は、社会受容とともに、地域の二酸化炭素回収(CCS)ハブの可能性を含む、地中貯留インフラや二酸化炭素輸送計画の可能性と開発をモニタリング及び分析する必要性を認識する。我々は、二酸化炭素の輸出入メカニズム整備を促進するために協力する。我々は、二酸化炭素の活用、及び活用を通じて二酸化炭素の価値を高めるシステム、もしくはインセンティブを整備する必要性を認識する。これらの技術の進化していく性質を考慮し、我々は、CCU/カーボンリサイクル及びCCSは、2050年までのネット・ゼロ排出達成のための脱炭素化解決策の幅広いポートフォリオの重要な要素になり得ることを認識しており、イーフューエルやイーメタンなどのカーボンリサイクル燃料(RCFs)を含むCCU/カーボンリサイクル技術は、化石由来の製品代替や二酸化炭素を活用することで、他の方法では回避できない産業由来の排出を、既存のインフラを活用しながら削減できることを認識する。IPCCは、CDRの実現には、研究、開発及び実証の加速、リスク評価及び管理用ツール改善、合意された炭素フローの測定、報告、検証(MRV)の対象を絞ったインセンティブと整備が含まれると報告している。我々は、CDRのMRVの調和を促進するための国際協力を加速し、RCFsなどのCCU/カーボンリサイクル技術に関する産学官の共同ワークショップを含めた交流を行う。

69. 天然ガス・LNG:我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争は、世界のエネルギー市場及びエネルギー供給の安全保障に影響を与え、資源確保における競争を激化させていることを認識する。エネルギー価格の高騰とインフレーションは、世界中の経済及び人々、特に発展途上国の人々が必要とする安価なエネルギー供給の確保を妨げ、肥料や食料の価格を上昇させることにより、世界中の経済と人々の生活、特に発展途上国において、環境、経済、社会的な悪影響を及ぼしている。このような特別な状況において、エネルギーの節減とガス需要の削減を通じてクリーンエネルギー移行を加速させることの主要な必要性を認識しつつ、明確に規定される各国の状況に応じて、例えば低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素の開発のための国家戦略にプロジェクトが統合されることを確保することにより、ガス部門への投資が、我々の気候目標と合致した形で、ロックイン効果を創出することなく実施されるなら、この危機により引き起こされる将来的なガス市場の不足に対応するため適切でありうる。我々は、2050年までに化石燃料の採掘・生産工程全体でネット・ゼロ排出を達成するというG7のコミットメントを再確認する。我々は、ロシアのガス輸出の予測不可能性に伴うリスクを軽減するための計画を調整する必要性を認識する。我々は、状況の監視を継続することの重要性に留意する。我々は、最近の需要削減策及び供給源の多様化の成功を認識する。我々は、2023年2月のガス市場と供給のセキュリティに関するIEA閣僚会合の結果を歓迎し、ガス生産国と消費国の間の対話を通じて、より長期的な展望を考慮しながら、ガスセキュリティにおけるIEAの機能と役割が、さらに強化されることを期待する。

70. 原子力エネルギー:原子力エネルギーの使用を選択した国々は、化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、気候危機に対処し、及びベースロード電源や系統の柔軟性の源泉として世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。これらの国は、現在のエネルギー危機に対処するため、安全な長期運転を推進することを含め、既存の原子炉の安全、確実、かつ効率的な最大限の活用にコミットする。これらの国は、今後10年以内に小型モジュール炉を含む革新的な原子力技術の開発及び展開が、世界のより多くの国がクリーンで安全なエネルギーミックスの一部として原子力発電を採用することに貢献するだろうとの2022年の首脳の評価に留意する。これらの国は、第三国がこれらの技術のための規制及び金融の枠組みを開発することを可能にする国際機関のイニシアティブに貢献し、関連する金融ツールを強化するとともに、強固で互恵的なパートナーシップを支援することにコミットする。これらの国は、価値観を共有する同志国の協力の下、各国及び第三国において、IAEAの安全基準及び核セキュリティ・ガイダンスに沿った高度な安全システムを有する小型モジュール炉その他の革新炉の開発及び建設、核燃料を含む強固で強靭な原子力サプライチェーンの構築、原子力技術及び人材の維持・強化とともに、ロシアへの依存を減少させると共に供給多角化の努力を継続して行うことにより供給の安全を確保できるよう、信頼できるパートナーと共に協力することにコミットする。我々は、ロシアからの民生用原子力及び関連製品への依存を減少させるための措置及び供給の多角化を追求する国を支援するための措置を評価するとのG7首脳のコミットメントを想起する。これを念頭に、我々は、更なる協力を模索するための作業部会の設立を支持する。G7は、最高水準の原子力安全及び核セキュリティが、全ての国及びそれぞれの国民にとって重要であることを強調する。

71. 福島第一原子力発電所の事故対応:国際原子力機関(IAEA)が過去数年以上にわたって福島第一原子力発電所の状況に関する進捗について報告していることに留意し、我々は、同発電所の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づきIAEAとともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。我々は、また、日本がIAEAの専門家グループと連携し、除去土壌の再生利用と最終処分の課題を議論するために取り組んでおり、東京電力福島第一原子力発電所の敷地外における被災地の環境再生が一歩一歩進んでいることを認識する。我々は、オープンで透明性をもって、国際社会との緊密なコニュニケーションをとりながら進められているこれらの取組を継続するよう、日本に奨励する。

72. 重要鉱物:我々は、クリーンエネルギー移行における重要鉱物の重要性の高まり、並びに、脆弱なサプライチェーン、独占、重要鉱物の既存のサプライヤーの多様化の欠如に起因する経済上及び安全保障上のリスクを防止する必要性を再確認する。我々は、責任ある強靱な重要鉱物サプライチェーンを構築し、地域社会の利益を確保し、イノベーションと競争力を推進し、人間の尊厳と人権を尊重し、環境フットプリントを最小限に抑えるために、堅固な環境、社会、ガバナンス(ESG)基準が重要であることを確認する。我々はトレーサビリティを備えた重要鉱物のオープンで透明性のあるルール及び市場ベースの取引を支援し、重要鉱物に関する市場歪曲的な措置及び独占的政策に反対し、採掘国、生産国及び消費国間の対話を促進することにコミットする。我々の課題克服を実現させる主要なものとして、我々は、附属文書の「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」を実施することにコミットする。

73. 化石燃料補助金:我々は、化石燃料への補助金はパリ協定の目標と整合していないことを強調する。非効率な化石燃料補助金をフェーズアウトすることは、パリ協定2条1cを実現するための重要な要素である。我々は、2025年またはそれ以前に非効率な化石燃料補助金を廃止するという我々のコミットメントを再確認し、首脳が全ての国に同様に取り組むよう求めた呼びかけを再確認する。我々は、G20、国連、OECD及び.その補助金インベントリ、また、非効率な化石燃料補助金の透明性向上をグローバルに促進するためのその他の関連フォーラムにおいて進行中の取組を踏まえ、2023年に我々のコミットメント達成に向けた進捗を報告し、必要に応じて我々の行動を強化し、化石燃料補助金の共同公開インベントリを開発するための選択肢を検討する。我々は、非効率な化石燃料補助金の廃止及び透明性向上に関する協力、議論及び最良事例の共有を国際レベルで強化するための措置を講じる。

74. 国際的な化石燃料ファイナンス:我々は、国際的な公的資金を、2条1cに反映されたパリ協定の目標に整合させ、2020年代、更には2030年代及び2040年代における世界の大幅な排出削減を達成するという我々のコミットメントを想起する。国家安全保障と地政学的利益の促進が極めて重要であることを再確認し、国際的なクリーンエネルギーへの移行の加速と、排出削減対策が講じられていない化石燃料部門に対して世界的に継続している投資のフェーズアウトが、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために不可欠であることも再確認し、我々は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年末までに終了したこと、及び、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する1.5℃目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を2022年までに終了したことを強調する。我々はそれぞれ、2023年末までに実施に向けたアプローチについて、最新情報を提供する。したがって、我々は、他の主要経済国、MDBs及び二国間DFIs、多国間基金、公的銀行並びに関連機関にも、これらのコミットメントを採用するよう求める。我々は、特に化石燃料部門における、パリ協定に整合的でない取組を未だ支援している大規模な民間資金に、懸念をもって留意する。我々は、パリ協定に整合的な投資に向け、官民資本の国際的な流れの拡大を促進することにコミットする。

75. エネルギーセクターにおけるジェンダー平等と多様性:我々は、ネット・ゼロの未来に準備が整った部門が、女性や他の周縁化されたコミュニティーグループをエンパワーする意味があり、エネルギーセクター内での積極的な参加者のために必要な知見と技術が伴った革新的で包括的な労働力創出を認識する。我々は、2030年迄のクリーンエネルギー部門でのジェンダーの平等と多様性に向けて取り組み、2018年に発表された「30年迄に平等を実現させる運動(the Equal by 30 Campaign)」のコミットメントを再確認する。我々は、2021年のG7で採択された「Equalby 30」キャンペーンに関わる一連の強化されたコミットメントとG7議長により2022年に発出された進捗報告を強調し、その部門における平等と多様性と包摂性の野心に向け、取組と責任説明の維持、そしてthe Equalby 30プラットフォームをG7メンバーのリーダーシップを強調するために利用することを確実にする。我々の行動におけるジェンダーインパクトのより良く評価するために、より良いジェンダーを踏まえたデータを収集し、G7ジェンダー平等アドバイザリー評議会、クリーンエネルギー閣僚会合、IEA及びIRENAと協力し、進捗追跡の取組協力を増加する。

産業・運輸・建築部門の脱炭素化

76. 産業脱炭素化アジェンダ:2021年のG7産業脱炭素化アジェンダの立ち上げ、及び2022年にあり得べき政策手段のツールボックスを特定したことを踏まえ、我々は、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるための産業セクターの脱炭素化の重要性を強調する。我々は、国や産業サブセクターの特有の状況を考慮し、2050年までにネット・ゼロ排出に移行するための我々の努力は様々な道筋をたどることを認識し、産業の脱炭素化の重要性を再確認する。我々は、ライフサイクルベースで産業の脱炭素化を評価することの重要性を強調し、関連する測定基準やデータ収集が開発されるべきことを確認する。効果的なRD&Dを通じたイノベーションの加速と、ニア・ゼロ技術の拡大による展開の重要性を認識し、我々は、官民による低及びニア・ゼロ・エミッション素材の市場開発の加速を奨励する。我々は、産業の脱炭素化に関する国際的なイニシアティブの活動を強調し、G7を超えたこれらのイニシアティブとの協力及びグローバルなアウトリーチを歓迎する。

77. 鉄鋼セクターにおける産業脱炭素化アジェンダの進展:G7産業脱炭素化アジェンダ(IDA)の作業を通じて昨年取り組まれた共同行動を基礎とし、OECDによる「鉄鋼の脱炭素化経路の異質性」に関する報告書、及びIEAによる「ネット・ゼロ鉄鋼業のための排出量測定とデータ収集」に関する報告書を歓迎し、我々は、鉄鋼生産及び製品の排出に関する提案された新しい「グローバルデータ収集フレームワーク」の実施に向け、作業を開始することに合意する。これは、トラッキング、ベンチマーキング及び潜在的な基準の改善を通じて産業のトランジションを促進させる。我々は、生産レベル及び製品レベルでの鉄鋼の脱炭素化に関する排出量測定手法の初期作業に情報を提供するために、IEAの報告書にある5つの既存の方法論を認識する。(附属文書「産業脱炭素化アジェンダに関する結論」パートA参照)。我々は、2023年G7日本議長国のIDA枠組みの中で詳細について作業を継続し、IEAの産業脱炭素化に関する作業部会などの関連フォーラムにおいて、また更なる作業のために他のイニシアティブや機関と協議しながら積極的に関与し、この枠組みをG7を超えて拡大させていく。

78. バイオものづくり:我々は、バイオものづくりは、再生資源や二酸化炭素から材料、繊維、燃料など様々な製品を生産するために、改変された微生物を閉鎖系の環境下で利用する技術であり、一定の環境と適当な措置のもとで、気候変動や資源不足などの問題を解決する可能性を持つ新技術として注目されていることを認識する。我々はこれらの技術に関する協力を進めていく。

79. 道路部門:我々は、2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットを再確認する。世界全体での保有車両が新車販売の15倍超であることに留意し、世界全体の保有車両からの迅速かつ相当な温室効果ガス排出削減が極めて重要であることを認識する。我々は、この目標のためにG7及びG7以外のメンバーが採る多様な道筋を認識する。我々は、2050年までに道路部門でネット・ゼロ排出を達成する目標にコミットし、今後10年間にわたって、排出ゼロ交通を支えるインフラや車両、例えば排出ゼロ車両や関連するインフラ、持続可能なカーボンニュートラル燃料などを支えるインフラや保有車両に移行することが不可欠であることを強調する。我々は、この移行を達成するために多様な道筋を追求しているが、各国は、保有車両を脱炭素化する取組が気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために必要な軌跡に沿っていること及び環境及び気候十全性と整合的であることを確保するために政策や投資を追求することにコミットする。この文脈で、2035年までまたは2035年以降に小型車の新車販売の100%もしくは大宗を排出ゼロ車両にすることや2035年までに乗用車の新車販売の100%を電動車とすること、関連するインフラ及び持続可能なバイオ燃料や合成燃料を含む持続可能なカーボンニュートラル燃料を促進することを目的とする国内政策を含め、我々のそれぞれが保有車両を脱炭素化するために採る様々な行動を強調する。我々は、これらの政策が、2030年までにグローバルに販売されるゼロ排出の小型車のシェアが50%以上へ進展していくことを含め、2030年までに高度に脱炭素化された道路部門への貢献をもたらすという機会に留意する。2000年以降の全体的な政策を通じて効果的に削減した排出に関するIEAのETP2023の調査結果に留意し、ネット・ゼロ達成への中間点として2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも2000年比で共同で50%削減する可能性に留意し、我々の取組及び、ZEVや充電インフラ、持続可能なカーボンニュートラル燃料の普及だけではなく保有車両からの排出削減の進捗を年単位で追跡することに留意する。自動車のライフサイクルに沿った脱炭素化に向けて、我々は、バッテリーのライフサイクル全体でのGHG排出量の枠組みに関するルールの調和に向けて取り組み、バッテリー原材料のサプライチェーンの追跡可能性、持続可能性を確保するため及びバッテリーリサイクルを支援するための調和された方法を模索する。水素の利用や燃料の脱炭素化に向けて、我々は、燃料電池車やプラグインハイブリッド車、バイオ燃料や合成燃料を含む低炭素・カーボンニュートラル燃料などの技術開発を評価する。さらに、我々は、持続可能なモビリティのためのモーダルシフトを促進し、産業基盤の移行を支援し、研究への意欲的な投資を行い、急速に成長する持続可能なモビリティの世界市場を支えるために必要な技術をさらに開発しスケールアップすることにコミットする。これらの行動とそれぞれの状況を踏まえ、G7以外のメンバーも含めた迅速かつ着実なGHG削減に貢献する。

80. 国際海運:我々は、遅くとも2050年までに国際海運からのGHG排出をライフサイクル全体でゼロにすることを達成するための世界的な取組を強化することにコミットすることを再確認する。産業革命以前の水準よりも比べて気温上昇を1.5℃に抑えるための努力に沿って、国際海事機関(IMO)の第80回海洋環境保護委員会(MEPC80)におけるGHG削減戦略の改定において、我々は、この目標を支持し、並びに2030年及び2040年の中間目標を導入することを支持することにコミットする。我々は、誰一人取り残さない公正かつ衡平な移行の重要性を認識しつつ、これらの目標を達成するため、ゼロ・エミッション船の早期導入など海運分野の変革を加速させる規制的なシグナル及びインセンティブからなる中期対策を2025年までに策定及び採択することに向けて取り組むことにコミットする。その他の多国間協力の一環として、ゼロ及びニア・ゼロ排出の船舶及び燃料の導入並びに脱炭素化した港湾の整備を通じて、GHG排出の削減を促進するため、我々は、2020年代半ばまでにG7加盟国が関与する少なくとも14のグリーン海運回廊の設立を支援するとともに、世界中のグリーン回廊の設立を支援することを約束する。

81. 国際航空:我々は、国際航空からのCO2排出に適用される世界唯一の経済的手法である、ICAO(国際民間航空機関)のCORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)の推進を含め、2050年までに国際航空からのCO2排出実質ゼロを目指すICAOの長期目標(LTAG)の達成に向けた世界的な取り組みを加速することにコミットする。この目標の達成に向け、航空部門の脱炭素化を促進する、ICAOで近く開催される代替燃料に関するハイレベル会合(CAAF/3)を含む持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、機材・装備品・空港インフラ等への環境新技術の導入促進及び運航の改善に当たって業界の垣根を越えて協働する。また、ICAOにおけるCORSIAの実施とその定期レビューに貢献することにコミットするとともに、CORSIAに取り組む各国へのキャパシティビルディングの深化のための強化及びパリ協定の温度目標への貢献の強化に努めることにコミットする。

82. 建築物:我々は、気候変動への対応においてライフサイクルで建物の脱炭素化することの重要性に留意し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるために、建物のライフサイクル全体の排出量を削減する目標を推進することを推奨する。我々は、気候変動に適応した建築設計の改善、建築物の省エネルギー性能の向上、支援措置、規制、国際協力の必要性を強調し、ゼロ・エミッションに近い、気候変動に強い建築物の新築・改修が、2050年のネット・ゼロ目標達成への道筋となるようにする。省エネルギー性能の改善、燃料転換、電化、再生可能エネルギーによる冷暖房サービスの提供、持続可能な消費者の選択、建物のエネルギーマネジメントの柔軟性向上のためのデジタル化推進など、様々なアクションを実施する。我々は、ゼロ・カーボン対応/ゼロ・エミッションの新建築物を、理想的には2030年又はそれ以前に実現することを促進していく。我々は、新たな化石燃料による熱システムのフェーズアウトと、ヒートポンプを含むよりクリーンな技術への移行を加速させることを目指す。また、我々は、ライフサイクルを考慮した建物設計や、建物の改修・建設における循環性の考慮によって、木材を含む持続可能な低炭素材料や最終用途の機器の使用を向上させることや、従来型材料の生産を脱炭素化することが重要であると認識する。

レジリエンスの強化、最も脆弱な人々等に対する気候行動の支援

83. 適応:我々は、IPCCの第6次評価報告書(AR6)における、適応の進捗は地域によって偏りがあり、そのほとんどが断片的で規模が小さいこと、また、温暖化が進むたびにリスクが増大しているとの見解を重大な懸念をもって認識する。我々は、パリ協定で定められた適応に関する世界全体の目標(GGA)の達成に向け、国別適応計画(NAPs)及び戦略の策定と実施、及び異なる自然・社会条件下における適応政策サイクルを通じた進捗のモニタリングと評価を通じた適応行動の効果的な実施を促進するための行動と支援を強化することの重要性を強調する。我々は、グラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画の下、GGA枠組みの策定を開始するというUNFCCC-COP27の成果を歓迎する。我々は、全てのレベルの政府に対し、豪雨や熱波などの異常気象に対する食糧、水、インフラ、公衆衛生システムの気候強靭性を構築する努力を含め、地域の優先事項に沿った地域及び地域の適応計画の策定及び実施を含む地域主導の適応(LLA)を、これらの影響に対してより脆弱な疎外されたグループに特に注意を払いながら、具体的、包摂的、及び体系的なアプローチでパートナーやステークホルダーと協力することを奨励する。この範囲においては、我々は、多様な各国の状況に適応した優れたマルチレベルのガバナンスの発展を促進する。我々は、LLAが、異なる地域の状況、知識、ニーズ、及び、優先事項を世界の適応行動に取り入れることで、GGA達成に向けた世界的なグローバルな取組に貢献することを特に強調する。我々は、特に、後発開発途上国(LDC)及び小島嶼開発途上国(SIDS)を含む最も脆弱な途上国に対し、NAPs及びより強い強靱性を促進する他の戦略の策定及び実施など、GGAの達成に寄与する進歩を強化するための支援を再度表明する。

84. 損失及び損害:我々は、気候変動の悪影響に伴い既に生じている経済的及び非経済的な損失及び損害、及び世界的に、特に最も脆弱な人々が感じているその影響の規模について、極めて懸念していることを強調する。我々は増加する危険、極端な事象及び緩やかに発生する事象双方に対する曝露及び脆弱性により損失と損害のリスクが増大していることに留意し、及び損失と損害を回避し、及び最小化し、これらに対処するための幅広い措置に対する支援を強化する必要性を認識する。災害リスク削減、応急対応、及び復旧・復興は、緊急に強化すべき優先事項の一つであることに留意し、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国を支援し、現在利用可能な支援へのアクセスを改善するため、我々は、損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための措置の一側面として我々の既存及びコミットした支援の事例集、すなわち「G7気候災害対策支援事例集」を添付として策定した。我々は、この事例集が、脆弱な国の支援へのアクセスへの助けとなり、インパクトの高いイニシアティブを拡大する機会を特定することに役立つことを確実にするよう取り組む。我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国において、地方、国、地域レベルで損失及び損害を回避し、最小化し、これらに対処するアプローチを実施するための技術支援を促進するためのサンティアゴ・ネットワークの完全な運用化を期待する。我々は、国連事務総長のイニシアティブである「全ての人々に早期警戒を(Early Warnings for All)」及び気象観測機器の設置及びデータの質の向上を支援する能力構築支援を通じ、5年以内に世界中の人々に早期警戒システムを提供することを目的とした世界気象機関が策定した行動計画を支援し、他のすべての主要経済国に対して支援を要請する。

85. パリ協定の実施に向けた支援:我々は、野心的な長期戦略(LTS)、国が決定する貢献(NDC)及び国別適応計画(NAP)を支援する必要性を認識し、途上国及び新興国がLTS、NDC及びNAPを更新・実施し、最初の隔年透明性報告書を適時に提出するための技術的及び能力開発支援を強化する。我々は、気候変動の影響、適応、緩やかに発生する事象や非経済的損失を含む損失と損害に関する科学的研究への支援、気候変動に関する観測データ及び影響評価データの共有、及び最も脆弱な途上国の政策立案者や技術職員の能力開発の支援を通じ、地域のパートナーや関係機関と協力し、途上国が気候リスクに基づいた意思決定を行う努力を支援する。

86. 地方の気候行動に関する国際連携:都市は、世界の温室効果ガス排出量の約70%を占めており、地方政府は、気候変動に対処し、その影響に適応する世界的な取組の最前線に位置している。最新の気候変動に関する政府官パネル報告書では、地方、中央及び国際レベルでの政府の行動は、市民社会及び民間セクターとともに、持続可能性及び気候に対して強靱な発展に向けた開発の道筋のシフトを可能にし、それを加速させる極めて重要な役割を担うと述べられている。従って、我々は、地域のニーズや環境条件に基づく気候・エネルギー行動を前進させるために、他のステークホルダーやパートナーと連携した地方政府の重要な役割を認識し、関連する国の気候・エネルギーデータへのアクセスを供与し、国際的な都市間連携及び知識共有を促進すること等を通じ、エネルギー移行を推進する地方政府と緊密に協働していく。我々は、G7メンバーが、地方の気候行動を促進する国内及び国境を越えた国の政策及びプログラムを共有し、コベネフィットを追求し、国際協力を模索するための「地方の気候行動に関するG7ラウンドテーブル」を添付のとおりここに設立する。我々は、G7の都市開発を所掌する大臣とネット・ゼロ及び強靱性の議題で引き続き連携する。我々は、ラウンドテーブルでU7との対話を促進し、その成果をG20に普及させることを期待する。

87. 気候資金:気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続け、気候変動に脆弱な人々を保護するために必要な投資ギャップを埋めるため、緊急な変革が求められてる。我々は、意味のある緩和行動と実施に関する透明性の文脈において、2020年から2025年にかけて年間1000億ドルの気候資金を合同で動員するという先進締約国の目標に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、2023年に目標を完全に達成するため、他の先進締約国とともに、気候資金実施計画進捗報告書の共同の行動及び勧告を実現するために取り組む。我々は、公的資金の重要な役割を認識し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるための野心的なNDC及び長期戦略(LTS)を支援し、気候変動の悪影響に適応する能力を強化し、気候強靱性を促進するため、すべての国の変革に必要な世界の投資規模を考慮して、民間を含む幅広い資金源、手段、チャンネルからの増加した気候資金の動員を強化する必要性を強調する。我々はまた、世界的な取組の一部として、官民を問わず、多様な資金源から、パリ協定第2条1cが掲げる目標を含むパリ協定の諸目標の達成に貢献する、野心的で目的に沿った新規合同気候資金数値目標に関する議論を歓迎する。我々は、気候変動に対処するために不可欠なステップとして、パリ協定第2条1cに従って、資金の流れを低排出で気候に対して強靱な発展への道筋に整合させる我々自身の努力を加速することにコミットする。我々は、我々自身が共同で、低排出型で気候に対して強靭な発展の軌道に乗るための最も重要な目標としてパリ協定第2条1cに反映されているとおり、資金流れをパリ協定の諸目標と整合的なものとし、より大きな効果を得るため、資金源をより効率的に活用する必要性を強調する。我々は、シャルム・エル・シェイク対話に基づき、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)及びパリ協定第5回締約国会合(CMA5)において、第2条1cにおける世界的な取組を推進するために締約国が本目標に継続的に取組む専用スペースを設けるような、第2条1cに関する実質的な成果を達成するため、全てのパートナーと引き続き協力することを期待し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)報告書にその実施に関する詳細な情報を含める。我々は、G7の重要な役割及び先進締約国が気候資金の動員を主導すべきであることを認識し、能力を有するがまだ国際気候資金の現在の提供一員ではない全ての国及びステークホルダーが、この世界的な取組に貢献する必要性を強調する。我々は、特に貧困国や脆弱な国、特に後開発発展途上国(LDC)や小島嶼開発途上国(SIDS)に焦点を当て、気候資金へのアクセスを改善することの重要性を強調する。

88. 緑の気候基金:我々は、現在進行中の緑の気候基金(GCF)の第2次増資プロセスを歓迎し、それが極めて重要であることを強調する。我々は、G7による資金拠出に関する強固なプレッジの必要性を再確認し、他国にも同様のプレッジを促すとともに、全ての潜在的な拠出者に対し野心的な第2次増資プロセスへの強い関与を奨励することによって、GCFのドナーベースの拡大の必要性を強調する。第2次増資プロセス及び2024年から2027年の新改訂戦略事業計画の策定を通じ、我々は、野心的で費用対効果が高く、変革的な気候投資を用いて、緩和及び適応両方への革新的ソリューション及び創始リスク回避を加速し、途上国のNDC、長期戦略(LTS)、国別適応計画(NAP)、その他の気候変動国家戦略、計画の改訂と実施、及び資金の流れのパリ協定の目標への整合化を支援することで、GCFが低排出型で気候に対して強靱な発展に向けた方針へのパラダイムシフトを促進し続けること、及び気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ続けるためにGCFが貢献することを確保するよう取り組む。

89. 適応資金:我々は、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にすることを先進締約国に求めるグラスゴー気候合意に対応するための努力を、引き続き加速する。我々はまた、国際開発金融機関(MDBs)に対し、改定され強化された2025年予測を発表し、野心的な適応資金目標にコミットすることを促す。我々は、適応資金へのアクセス及び有効性を向上させるために受益国パートナーと協働することを通じたもの含め、適応資金の供与、動員及び実施の拡大に、他の拠出者と共に取り組むこと、及び、民間資金を含む適応資金の供与と動員の拡大を、G7以外の国とその他の拠出者に奨励することにコミットする。我々は、パリ協定第9条4を想起しつつ、規模を拡大した資金源からの供与において緩和と適応の間の均衡を達成するという文脈においてで、共同拠出者とともに、OECDの方法論と報告メカニズムに沿い、気候資金実施計画進捗報告書に基づいて、2019年の200億ドルから2025年に400億ドルへ拡大に取り組んでいる。

90. 損失と損害に対応するための資金アレンジメント:気候変動の悪影響に伴う損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための努力を強化する緊急性が高まっていることに留意し、我々は、気候変動の悪影響に特に脆弱な途上国の損失と損害への対応を支援するため、基金を含む、新たな資金面での措置を設立する国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)及びパリ協定第4回締約国会合(CMA4)決定を成功裏に実施するため、積極的に取り組む。我々は、そのような措置が必要とされる規模と緊急性で提供されるため、基金を含む新たな資金面での措置の運用化に関する移行委員会の勧告に期待する。我々は、革新的なものを含む、多様なソースからの資金源を特定し、拡大する重要性を強調し、それらの措置が、機関の現況、現況におけるギャップ、優先事項及び有年事項のギャップに対応するための最も有効な方法、及び潜在的な資金源に関する情報に基づくことを確実にする必要があることを認識する。我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国に焦点を当て、国連機構変動枠組条約(UNFCCC)及びパリ協定の内外の既存の資金面での措置やイニシアティブとの協調、補完性を確保する。我々は、気候変動の悪影響に伴う損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための様々な資金面での措置の中の主要なイニシアティブとして、V20及びG7の共同イニシアティブである気候リスクに対するグローバル・シールドを強く支持する。

91. 適応ニーズを満たし、損失と損害の回避、及び最小源にし、並びにこれらに対処するために貢献する民間セクターの役割:我々は、公共セクターの努力と並行し、適応行動を強化し、損失と損害を回避、最小化、対処に投資する民間セクターの重要な役割を認識し、損失と損害への対応に利用可能な資金面での措置範囲を改善するために、その役割を強化する必要性を認識する。民間セクターの行動や投資は、インフラ及び世界のバリューチェーンの強靱性を高めることに貢献するとともに、農業生産、水質浄化及び保険など様々な分野における気候変動の悪影響に適応し、対応するために不可欠な製品やサービスを消費者に提供することに貢献する。我々は、インフラや投資の意思決定における物理的な気候リスクをよりよく管理するための環境整備、及び災害リスクファイナンス、早期行動や準備の活用及び効果を高めるための市場の取組を奨励し、脆弱な人々及び彼らが依存する生態系を保護する公共部門の取組を補完する、早期警戒システムへの投資、気候情報サービスの提供、及び生活必需品の世界のバリューチェーンの気候強靭性を向上することを含む、強靱性を強化するための民間セクターの行動に関与する。

92. MDBs:UNFCCC-COP27の成果を強調しつつ、我々はMDBs及び国際金融機関に対し、既存の気候変動に関するコミットメントをフォローアップし、野心的な気候行動を更に強化し、間接金融や政策に連動する金融を含む全ての金融活動がパリ協定の目標と完全に整合するために、資金供与の拡大、気候資金へのアクセスの簡素化、保証のような革新的金融手段の供与拡大、既存資金のより戦略的な活用を含む、MDBのプロセス、実務及び優先事項を変革することを求める。我々は、MDBの自己資本の十分性に関する枠組みのレビュー勧告を実施する重要性を強調し、この点に関するG7財務大臣による進行中の作業を歓迎する。我々は、MDBsが、地球規模の気候緊急事態に十分に対処する、目的に適合した新たなビジョンとそれに見合った運用モデル、経路及び手法を定めることを奨励する。我々は、MDBsに対し、そのマンデートに沿って、民間資金を動員し、適応資金を増加させ、各国主導のプロセスやプラットフォームを含め、民間セクターとリスクを共同負担する観点から、戦略的に投資リスクを除去する計画を直ちに策定するよう求める。我々は、MDBsが透明性のある包摂的な改革プロセスを確保することを強く求める。我々は、MDBs、国際金融機関及び民間セクターに対し、新興市場及び途上国経済における気候のための公的及び民間資金の動員を強化することを求める。我々は、MDBsが気候資金の大幅な増加を目指し、脆弱な国が直面している気候変動の影響と債務負担に係る課題を考慮し、贈与から保証、非債務手段まで、あらゆる手段を展開すること及びリスク選好に対応することを奨励する。これには、開発政策借款を通じた適切な規制改革への支援も含まれる。