データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7デジタル技術大臣会合閣僚宣言

[場所] 
[年月日] 2023年4月30日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 我々G7デジタル担当大臣は、2023年4月29日及び30日に、河野太郎デジタル大臣、松本剛明総務大臣、西村康稔経済産業大臣の議長の下、デジタル社会における現在及び未来の課題に取り組むための会合を開催した。また、インド共和国、インドネシア共和国、ウクライナを会合に招待し、ASEAN・東アジア経済研究所、国際電気通信連合、経済協力開発機構、国際連合、世界銀行グループの国際機関からも代表者が参加した。

2. 我々は改めて、国連憲章を含め容認しがたい国際法違反であるロシアのウクライナ侵攻を、最も厳しい言葉で非難する。ロシアは、ウクライナからすべての軍と装備の撤収を即時かつ無条件に行わなければならない。

3. 我々は、昨年ドイツで開催されたG7デジタル大臣会合でのウクライナ支援についてのコミットメントを再確認し、ロシアによるウクライナ侵略がデジタルインフラに与える影響を引き続き注視していく。2022年4月1日の第49回人権理事会会合で採択された「人権の享有と実現に対する偽情報による悪影響に対抗する上での国家の役割」に関するウクライナ主導の国連人権理事会決議(A/HRC/49/L.31/Rev.1)を強く支持する。

4. 我々は、民主主義のためのサミット宣言に概説された我々のコミットメントを再確認する。これには、AI、バイオテクノロジー、量子テクノロジーなどの新興技術を含むテクノロジーの設計、開発、維持、統治、取得、資金提供、販売、そして使用方法は、平等、包括、持続可能性、透明性、説明責任、多様性、プライバシーを含む人権の尊重など民主主義の原則へのコミットメントによって形成されるべきであることが含まれる。我々は、テクノロジー企業が責任ある行動を取り、ビジネスと人権に関する国連指導原則へのコミットメントを強化し、人権侵害から保護する必要性を強調する。

5. デジタル化とデジタルインフラは現代社会を支え、日本国政府が掲げるSociety5.0のビジョンなど、新興技術やAIを含むデジタル技術の恩恵を最大限に生かした包括的な経済成長に貢献する。

6. 特に、経済成長、開発、社会福祉の実現にデータが果たす重要な役割を認識し、DFFT(Data Free Flow with Trust)の下、データの越境移転の可能性を最大限に活用するための国際政策議論を推進する。そのために、透明性が高く、データ保護のための様々な法的・自主的な枠組み、ガイドライン、基準、技術等を通じて信頼性を構築し、実現すべきとの見解を共有する。我々は、DFFTの具体化を加速する必要性があることを理解する。我々は、パンデミック対応を含む健康、気候変動、モビリティを含む様々なIoT活用の分野におけるDFFTの運用について、関係者が表明した関心に留意する。

7. 我々は、デジタル化の急速な拡大により、国内および国際レベルでのデジタルデバイドに対処する必要性が生じていることを認識している。新興技術は、デジタルジェンダーデバイドを含むデジタルデバイドの低減に貢献することができる。我々は、デジタル技術やデジタルコネクティビティに関する取組を支援するなど、デジタルジェンダーデバイドを含むデジタルデバイドを解消する観点から、途上国や新興国を含む同志国との協力強化に向けたコミットメントを確認する。

我々は、G20デジタルエコノミー作業部会と協力し、デジタル化が進む世界をナビゲートし、デジタル格差を埋めるために、あらゆる年齢と背景を持つ人々が基本的なデジタルスキルを必要としていると認識している。我々は、関連するフォーラムでのこれまでの議論に基づき、あらゆる規模の都市やコミュニティにおけるデジタルデバイドを解消するためのコネクティビティを促進する上で、スマートシティ・イニシアティブが新たな役割を果たすことを認識しており、G7都市大臣会合の成果に期待する。

8. これらの背景と過去のG7デジタル・技術大臣会合の成果を踏まえ、越境データ流通及び信頼性のあるデータの自由な流通の促進、安全で強靭なデジタルインフラ、インターネットガバナンス、経済社会のイノベーションと新興技術の推進、責任あるAIとAIガバナンスの推進、デジタル競争について議論した。

越境データ流通及び信頼性のあるデータの自由な流通の促進

9. 2019年のG20大阪首脳宣言、2021年英国議長国下で合意された「信頼性のあるデータ流通に関する協力に向けたG7ロードマップ」、2022年ドイツ議長国下で合意された「信頼性のあるデータ流通を促進するためにG7アクションプラン」に従い、我々は、「信頼性のあるデータ流通(DFFT)」を具体化すること、及び、将来の相互運用性を促進するため、DFFTを可能にする既存の規制アプローチと手段の間の共通性、補完性及び収斂の要素を構築することにコミットすることとする。

10. 我々はまた、データガバナンスに対する様々なアプローチがあることを認識しつつ、越境データ流通の機会を活用し、特にセキュリティ、プライバシー保護、データ保護、知的財産権の保護について生じる課題に対処するために協力することを再確認する。我々はデジタル・エコシステム全体の信頼を高め、権威主義的アプローチの影響に対抗することを目指す。この点について、我々は、国家安全保障や法的執行機関が既存の枠組みの下で個人情報にアクセスする際に適用されるセーフガードを特定することにより、越境データ流通における信頼性を高めるための重要なツールとして、「OECDの民間が保有するデータへの政府のアクセスに関する宣言」を歓迎する。

11. 我々は、DFFTを具体的に進捗させる必要があることを強調するとともに、特にその分野横断的な性質から、DFFTを具体化するための国際的ガバナンスに潜在的なギャップがあり、個人情報及び非個人情報の越境データ流通を促進するための協力を政府とステークホルダーが共に進めるための新たな仕組みが必要であることを認識する。この目的のために、我々は、新たなパートナーシップのための組織的なアレンジメントを通じて、DFFTを具体化することをコミットメントする。

12. 我々は、規制及び技術協力を強化することを決意するとともに、OECDや、G7データ保護及びプライシーのラウンドテーブル、DFFTに関連する専門家グループ及びマルチステークホルダーフォーラムなどでの、知識共有についての更なる協力を目指す。また、我々は政策的な取組を進めていく上で、多くのステークホルダーの多様な視座を得ることが必要とされていることを認識する。この点について、ビジネスの観点から捉えた、越境データ流通のためのプライバシーやデータ保護要件の適用にかかる課題について、OECDレポート「信頼性のあるデータ流通の前進︓ビジネス経験の新たな証拠及び分析」を歓迎する。

13. DFFT具体化という目標を実現するため、我々は、関連する原則に基づき、課題解決型かつ、証拠に基づく、マルチステークホルダー及び分野横断的な協力を通じ、DFFTを具体化するために、政府やステークホルダーが集い協力する場として、DFFT具体化に向けたパートナーシップのための制度的アレンジメント(theInstitutionalArrangementforPartnership:IAP)の設立を承認する。そして、我々はIAPを数か月内に立ち上げるよう努めるとともに、[附属書1]で承認された共通のビジョンをIAP下で達成するための手段について更なる議論を行う。また、国際機関や地域機関と連携し、イニシアティブを補完的にサポートすることにコミットする。DFFTの具体化を目に見える形で前進させるコミットメントを確認し、その成果や次のステップについて、今後のG7首脳や関連閣僚会合に報告することとする。

安全で強靭なデジタルインフラ

14. 2021年英国のG7デジタル・技術閣僚宣言と2022年ドイツのG7デジタル閣僚宣言に基づき、我々は安全で強靭なデジタルインフラに関する議論を継続し、深化させた。我々は、気候変動、パンデミック、脆弱性などのグローバルな課題に取り組む上で、デジタルインフラが果たす役割が重要であると認識する。

15. 我々は、デジタルインフラの安全性と強靱性を高めるための取組と議論を継続することの重要性を認識する。社会全体の急速なデジタル化により、デジタルインフラには、高速化、大容量、低消費電力、低遅延、ユビキタス接続に加えて、より高度な安全性と強靭性が求められるようになっている。安全で強靭なデジタルインフラは、経済成長、雇用創出、オープンで民主的な社会の実現に向けた高い潜在力を持つ活力ある経済の重要な基盤である。我々は、安全性と冗長性を強化し、相互運用性を促進するネットワーク構成は、デジタルインフラの強靱性を高めることができることを認識する。

16. 2021年デジタル・技術大臣会合の閣僚宣言に沿って、安全で強靭、競争的で透明かつ持続可能で多様なデジタル、テレコム、ICTインフラのサプライチェーンを引き続き推進する。我々は、安全で強靱な革新的で競争力のあるデジタルなエコシステムを支持する。我々は、ICTSサプライチェーンにおけるサプライヤーの多様化の取組を歓迎し、安全、強靱で確立された構成とともに、オープンで相互運用可能なアプローチに向けた市場動向について、技術的に中立な立場で引き続き議論していく。G7日本議長国下で、OpenRANの初期の導入が進んでいることに鑑み、我々は、オープンな構成及び関連するセキュリティ面と可能性について意見交換を行った。安全で強靭なデジタルインフラに関するG7の優先事項をさらに強化するため、我々は、G7内及び産業界並びにその他のステークホルダーとの協力関係を継続することを約束する。

17. デジタルインフラの冗長性を高めるためには、地上系ネットワーク、海底ケーブルネットワーク、非地上系ネットワークからなる様々な複層的なネットワークを開発、展開、維持することが重要である。我々は、海底ケーブルの安全なルートの延長などの手段により、ネットワークの強靱性を支援、強化するために、G7内や同志国との協力を深化することを約束する。また、ネットワークの相互運用性も重要である。緊急時に事業者間のローミングを可能にするために、様々なネットワーク間の相互運用性を確保することは、ネットワークの強靱性を高めることに貢献する。

18. また、発展途上国や新興国を含む同志国に、安全で強靭性のあるデジタルインフラを広げていくことも重要である。安全で強靱なデジタルインフラをグローバルに展開するには、ネットワークセキュリティ、データ保護、クラウドの強靭性に関する意識の向上が必要であり、そのためには、キャパシティビルディングを含め、ネットワークセキュリティを推進する途上国を支援するために、共同の取組を強化することが重要である。

19. また、海底ケーブルネットワークの役割とその世界的な発展と維持について、特にセキュリティと強靭性の観点から議論することの重要性を認識する。現在の地政学的状況を考慮すると、G7は国際通信インフラの安全かつ強靱なルートを確保することにより、グローバルな接続性を強化するために、発展途上国や新興国を含む他の同志国と協力することが緊要である。

20. 現在のデジタルインフラの安全性と強靱性を向上させるこれらの取組に加えて、我々は、Beyond5G/6G時代の次世代ネットワークのビジョンを共有することの重要性に留意し、Beyond5G/6G時代の将来のネットワークに関するG7ビジョンを承認する。我々は、2030年代以降のデジタルインフラの構築に向けて、研究開発及び国際標準化に関する協力を強化することを約束する。[附属書2]

21. 我々は、安全で強靱性のあるデジタルインフラを構築するための上記の取組をまとめた安全で強靭なデジタルインフラの構築に向けたG7アクションプランを承認する。発展途上国における安全で強靱なデジタルインフラを支援するために、我々は世界銀行やITUなどの国際機関や開発機関と協力することを目指す。[附属書3]

自由でオープンなインターネットの維持推進

22. 我々は、イノベーションを支援し、民主主義的価値と人権の尊重を強化する、自由でオープンかつ、グローバルで分断がなく、信頼性があり相互運用可能なインターネットの推進に対するコミットメントを再確認する。また、我々は、一つのグローバルで分断のないインターネットの遵守と推進へのコミットメントを確認し、こうしたインターネットの分断に向けたいかなる意図や行動にも反対する。

23. 我々は、インターネットガバナンスにおける包摂的なマルチステークホルダーアプローチを強く支持し、推進する。我々は、インターネット政策を議論するための主要なマルチステークホルダーフォーラムとして、国連インターネットガバナンスフォーラム(IGF)への支持を強化する。我々は、日本国京都市で開催されるIGF2023の成功に向けて、国内、地域、世界のステークホルダーとの連携強化を含め、総力を挙げて取り組むことを約束する。

24. 我々は、未来のインターネットに関する宣言(DFI)とその原則に対する我々のコミットメントを再確認し、その実践に協力することを約束する。また、我々は、今日のオープンで自由なインターネットを支えるDFIの重要な原則の世界的な遵守を目指し、民主主義的価値を支持する国々からなるグローバル・ファミリーの中でこのコミットメントを拡大する努力を続けていく。我々は、DFIが発展途上国や新興国を含む地理的・経済的多様性を持つことを歓迎し、国際社会に参加を呼びかける。この観点から、我々は、DFIとその原則を実践する上で、世界中のステークホルダーとの連携を強化することを目指す。

25. 我々は、政府によるインターネットシャットダウンやネットワーク制限を非難する。我々は、デジタル権威主義国の戦術を可視化し、対策を行うために協力することを決意し、フリーダム・オンライン連合やそのインターネットシャットダウンタスクフォースなど他のイニシアティブとの協力を含め、国際人権法に違反するインターネットシャットダウン、ネットワーク制限、デジタル監視社会などの活動に対処するための協力を強化することを求める。我々は、インターネットの一般的な利用可能性または完全性にとって不可欠な技術インフラを保護することを約束する。

26. 我々は、自由でオープンかつ、グローバルで分断がなく、信頼性があり相互運用可能なインターネットの維持・推進に向けたG7アクションプラン[附属書4]を承認する。

27. 我々は、G7即応メカニズム(RRM)、G7内務・安全担当大臣会合、OECDMIS/DIS情報資源ハブなどの既存の取組と同様に、民主主義と開かれた社会の依拠する理念を損なおうとする外国の情報操作や干渉、偽情報、その他悪意ある活動などの外国の脅威から民主主義的な制度と価値を守るために引き続き尽力する。

28. 情報の完全性は、より広い社会的意味を有するデジタル経済の信頼強化の課題である。我々は、人権、特に表現の自由に対する権利を尊重しつつ、オンラインの情報操作や干渉、偽情報に対処するために、ソーシャルメディアプラットフォーム、市民社会、インターネット技術コミュニティ、学術界を含む幅広いステークホルダーがとる行動の重要性を認識している。我々は、オンラインの偽情報に対処するための様々なステークホルダーによる既存のプラクティスを「偽情報対策既存プラクティス集

(EPaD)」として収集・編集することに協力し、この報告書を京都で開催される国連IGF2023で公表・発表することを予定している。これらのプラクティスには、偽情報コンテンツの資金化の停止、デジタルプラットフォームのアカウンタビリティの強化、偽情報を理解し報告する手段をユーザーに提供することなどが含まれる。また、偽情報を含む意図的なオンライン情報操作や干渉に対抗するために、企業が事業を展開する地域の言語や文化の多様性を反映した適切なリソースを割り当てることを奨励する。

29. 我々は、人権に基づく、ジェンダーに対応したアプローチを推進する観点から、イノベーションとテクノロジーにおけるジェンダー平等に関する第67回国連女性の地位委員会の合意された結論などの既存の成果文書や、ジェンダー平等との関連を含む国際人権法のコミットメントを参考に、すべてのステークホルダーと協力して国連グローバルデジタルコンパクト(GDC)に貢献することを約束する。我々は、GDCの強固な前進とIGFとWSISプロセスの成功に貢献することを奨励する。また、マルチステークホルダーシステムへのコミットメントに基づき、我々は、2025年のWSIS+20レビュープロセスにおいて来るべき議論に備え、マルチステークホルダーの参加とエンゲージメントを強化することを含め、協力することを決意する。

経済社会のイノベーションと新興技術の推進

30. 我々は、新興技術と革新的なガバナンスモデルにより加速化するデジタル・イノベーションが、包摂的な経済成長や人々の幸福につながる持続可能な社会を実現する力があることを認識する。我々は、また経済全体のサイバーやデジタルスキル開発の重要性を確認する。サイバー・フィジカル・システムの統合やIoT技術を含むその主要コンポーネントなどの新興技術の恩恵を十分に活用するため、新興技術の社会実装や、技術自体へのセキュリティの組み込み、デジタルインフラを構成する技術の国内及び国際的な相互運用性の確保に取り組む。

31. 我々は、デジタル・アイデンティティ・システムやデータ共有における信頼やセキュリティ構築のためのその他の手段についての政策的な議論を発展させることの重要性を共有する。また、デジタル・アイデンティティやデジタル証明書についてのベストプラクティスを共有し加速させるとともに、現在行われているデジタル・アイデンティティのガバナンスに関するOECDの勧告案の進展にかかる議論を支持する。我々は、トレーサビリティの向上やデータの可制御性、データの共有相手の検証性の向上などの論点を含む、信頼できる形でのデータ交換のための互換性ある政策的アプローチと技術について、2023年3月29日の「信頼確保のためのデジタル技術の活用に関するG7ステークホルダーカンファレンス」における議論に留意する。

32. 我々は、分野や国境を越えて、ハードウエアやソフトウエアがシステムとして複雑に接続し、このために、デジタル製品やサービスのグローバルバリューチェーンを通じて、デジタル経済において、信頼やセキュリティを実現するための協力の必要性を認識する。この点について、ソフトウエアやIoT製品の信頼性に基づく相互運用性が、既存の潜在的脆弱性を管理することに貢献することを認識する。我々はソフトウエア・コンポーネントの透明性を高めることなどを通して、脆弱性に適切に対応し、よくセキュリティが確保されたアプリやソフトウエアを開発、設計、開発、そして利用することの重要性を認識する。

33. 我々はまた、半導体などの経済の基盤となるデジタル技術の重要性や、サプライチェーンの混乱がもたらす影響を最大限に抑制できる技術標準の価値を探ることの重要性を確認する。我々は関連する大臣トラックと協力して、IoT製品の相互運用性など、新興技術に関連するフォーラムにおいて、G7や価値観を共有する国々のステークホルダーと継続して取り組むことの必要性を認識する。

34. 我々は、破壊的な新興技術の急速なイノベーションは、経済を成長させ、気候変動やパンデミック、高齢化の影響といった様々な社会課題に対応できる一方で、そのようなデジタル技術のガバナンスや、誤用への対処を含む社会的影響の検討を必要とすることを共有する。この点について、我々はイノベーションの機会を活用しながら、法の支配、適正手続き、民主主義、人権尊重の原則を運用できる、機動的かつ柔軟で、より分散化した、マルチステークホルダーが参加するアジャイルガバナンスやその法的フレームワークの必要性を承認する。我々は人間中心の、持続可能で、強靭な社会を実現することを目指し、デジタル化社会のためのガバナンスに関するタスクフォースからのインプットに基づき、このアジェンダについての共通アプローチの必要性を承認する。

35. 我々はまた、マルチステークホルダーコミュニティがG7閣僚と2023年4月28日のG7デジタルトランスフォーメーションサミットで、AI、デジタルインフラ、またタスクフォースが取りまとめた「ガバナンス原則」の成果に基づくアジャイルガバナンスの議論を含む、デジタルトランスフォーメーションに係る重要な課題について行った討議とそれに基づく要請を承認する。我々は、デジタル技術トラックの関連作業において、ステ―クホルダーからの提案を考慮する必要性を認識する。我々は、また新興技術の影響と機会に関して、重要かつ新たなマルチステークホルダーフォーラムであるOECDの技術に関するグローバルフォーラムの設立を歓迎する。

36. 我々は、持続可能な社会を達成するためにデジタル技術をよりよく活用するという長期的なコミットメントを改めて表明するとともに、デジタル分野自身がもたらす環境影響を軽減しながら、デジタル化社会におけるグリーントランジションや、エネルギー・資源効率、循環経済、気候変動に関して継続的に取り組む。

それらの取組とは、以下の通り。

- ハードウエアの循環性やデータセンターのエネルギー効率、計算の速度や能率の改善によるソフトウエア技術を含む次世代コンピューティングの向上

- リサイクル能力や「修理する権利」を含むデジタル技術の活用、開発、導入におけるライフサイクルアプローチを活用する機会を協力して探求

- 「サステナブル・バイ・デザイン」による製品における資源消費を減少させ、リサイクル元素の使用を増加させるために、デジタル装置や製品の「サステナブル・バイ・デザイン」の取組の推進、ベストプラクティスの交換

37. 我々はまた、持続可能なサプライチェーンの構築を求めるとともに、その潜在的な影響を検討していく。この点について、我々は、以下のような対応を行う。

- IoT、半導体、その他デジタル機器の生産に使用される有害な物質や化合物の使用、再利用、廃棄及び可能性のある代替手段に関する情報共有

- それらのサプライチェーンの循環性や環境影響のポテンシャルの向上

38. 我々は、メタバースなどの没入型技術に対する我々共通のアプローチについて議論を重ねている。没入型技術のポテンシャルは、様々な分野やユースケースに数多くの革新的な機会を与え、相互運用性やポータビリティ、持続可能性及びそれらを支える標準に関する政策議論及び、自由でオープンかつ公正なグローバル経済構造を維持しながら、民主的価値に基づく信頼できる安全で安心な技術の使用を促進する必要があることを認識する。この点において、国際機関の果たす役割を確認し、OECDなどの関連するマルチフォーラムにおける継続的な議論に貢献し続けることを求める。

責任あるAIとAIガバナンスの推進

39. 2016年、我々はAI原則に関する国際的な議論を開始した。この議論は、2019年のOECDAI勧告(OECDAI原則)、OECDAI政策に関するオブザーバトリー及び専門家ネットワークの立ち上げに関連する作業への道を開いた。我々は、2020年には、AIに関するグローバルパートナーシップ(GPAI)の発足を支援した。

40. OECDのAI原則は、人権と民主主義の価値観に基づいたAIの開発と展開のためのオープンで実現可能な環境を確保するための信頼できるAIのガイダンスを提供している。この原則を採択して以来、OECDは世界のAIコミュニティと関わりを持ち、その実施を支援するために取り組んできた。

41. AIの急速な発展は、OECDのAI原則に沿った信頼できるAIの開発と展開を確保するために、国際標準開発機関(SDO)によって開発された技術標準やその他のツールの開発を含む、新たな又は中期的な政策課題への注意と協力を要請している。このような観点から、これらのテーマに関する既存のイニシアティブの貢献を歓迎する。

42. 我々は、OECDのAI原則に基づき、人間中心で信頼できるAIを推進し、AI技術がもたらす全ての人の利益を最大化するために協力を促進するとのコミットメントを再確認する。我々は、民主主義の価値を損ない、表現の自由を抑圧し、人権の享受を脅かすようなAIの誤用・濫用に反対する。

43. 我々は、AIガバナンスに関する国際的な議論と、AIガバナンスの枠組み間の相互運用性の重要性を強調する一方、信頼できるAIという共通のビジョンと目標を達成するためのアプローチと政策手段は、G7メンバー間で異なる場合があることを認識している。規制・非規制の枠組み、技術基準、保証技術などの信頼できるAIのためのツールは、信頼性を促進し、AIシステムの比較可能な査定や評価を実現することができる。我々は、マルチステークホルダー型の国際機関を通じて、信頼できるAIのためのツール開発を支援し、民間主導のマルチステークホルダープロセスを通じて、SDOにおける国際技術標準の開発・採用を奨励する。我々は、OECDにおける信頼できるAI枠組み間の共通点と相違点のマッピングに関するこれまでの作業を評価し、相互運用性を支援するこのような作業を支援するために協力する意向である。

44. 我々は、分野を超えた全てのステークホルダーのSDOへの参加を支援し、中小企業、スタートアップ、学術界、より広い社会からの参加に特に重点を置いた包括的な参画を促進することにコミットしている。我々は、信頼できるAIのための相互運用可能なツールを支援するための国際技術標準を推進することを決意する。

45. 我々は、AI政策と規制が人間中心であり、人権と基本的自由の保護、プライバシーと個人データの保護を含む民主主義的価値観に基づくべきであることを再確認する。また我々は、AIの政策と規制は、リスクを軽減しつつ、人や地球にとっての技術による利益を最大化するAIの開発と実装のためのオープンで利用可能な環境を維持するために、リスクベースで将来指向でなければならないことを再確認する。

46. 我々は、AIの開発が急速に進んでおり、社会に大きな影響を与える可能性があることを認識している。我々は、AIが私たちの社会に与える潜在的な影響に留意しつつ、AIの政策や規制は、技術的・制度的特性だけでなく、地理的・分野的・倫理的側面を含む社会的・文化的影響に配慮した形で、適用の状況に適合させる必要があると認識している。

47. 生成AI技術が国や分野を超えてますます顕著になっていることを踏まえ、これらの技術の持つ機会と課題を早急に把握し、これらの技術が発展する中で、安全性や信頼性を促進し続ける必要があると認識している。我々は、AIガバナンスや著作権を含む知的財産権の保護、透明性の促進、外国からの情報操作を含む偽情報への対処方法や、責任ある形での生成AIを活用する可能性といったテーマを含む生成AIに関するG7における議論を引き続き行うための場を設けることを計画している。これらの議論は、専門知識を活用し、政策展開の影響に関する分析を検討するOECDや、関連する実践的なプロジェクトを実施するGPAIなどの国際機関を活用する必要がある。

48. 我々は、信頼できるAIのためのツール間のグローバルな相互運用性を促進し、来るべきAIの機会と課題を予測し準備するために協力しAIガバナンスの相互運用性を促進等するためのアクションプランを承認する[附属書5]

デジタル競争

49. デジタル市場は、グローバルで、ダイナミックであり、新しいビジネスモデルや大量のデータを伴い得るものであるところ、我々の経済における競争とイノベーションに重要かつ不可欠な影響を与えている。迅速かつ効果的に、固定化した市場支配力に起因する問題に対処し、競争を促進し、イノベーションを活性化させるために、既存の競争執行手段を活用することと、既存の競争政策手段を補完し又は適合させ得る、新たな又はアップデートされた競争政策の取組又は競争の規制枠組を発展させ、実施することの両方がますます重要となっている。既存の手段を補完し又は適合させることは、公正さ及び競争可能性の促進と連携させる上で、特に重要となる可能性がある。我々は、これらの重要性を認識し、デジタル競争が、グローバルな問題であり、執行者と政策立案者の協力を必要とするものであることを認識する。

50. 我々は、フランス、英国及びドイツが議長となったG7で蓄積し共有された知見に基づき、協力を更に強化することを決意する。我々は、既存、新規及び今後導入されうる法律や規制手段の利用、執行、立案に当たり、デジタル競争の促進においてG7メンバーが共通して直面している問題や課題などについて、共有を図っていくこととする。

51. 我々は、競争的なデジタル市場を支えるため、更なる連携を促進することを目的とし、G7で直面する問題や課題を共有していく上で相互理解を促進すべく、デジタル競争におけるG7の各法域における法的アプローチのマッピングである「G7 inventory of new rules for digital markets」をアップデートすることも予定している。

52. 我々は、執行を含め、デジタル市場における競争に関してG7メンバーがそれぞれの法域で有する経験を共有し、G7の執行者と政策立案者がデジタル競争の監視に対するアプローチについてより良い理解のためにどのように協力ができるかを議論することを予定している。また、G7及びその他の法域における「Compendium of approaches to improving competition in digital markets」のアップデートも行う予定である。

53. 我々は、競争的な市場と効果的な競争法執行を促進するための国際的な努力が円滑になされるようにするため、競争当局と政策立案者によるデジタル競争に関するサミットを2023年の秋に開催することを予定している。

54. 我々は、2023年秋に執行者及び政策立案者のサミットを開催することに加え、年間を通じてG7の競争当局及び政策立案者間の緊密な情報及び知見の交換を促進するための連絡先グループを作ることも予定している。

今後に向けて

55. 我々は、専門知識と経験を提供してくれたパートナーであるERIA、ITU、OECD、国連、世界銀行に感謝の意を表し、我々が共有する民主的価値に基づく豊かなデジタル接続世界の実現に向けた継続的な協力を歓迎する。

56. 2023年5月19日から21日まで広島で開催されるG7サミットにおいて、G7首脳が我々の議論に留意するよう奨励する。

57. 我々は、ロシアの違法な侵略と国際法の侵害に鑑み、ウクライナへの継続的な支援と連携を表明する。

58. 我々は、デジタル技術がサステナビリティの課題に取り組む可能性について、デジタル分野自体が環境に与える影響の緩和を含めて議論した。今後、これらの課題についてG7で継続的に議論することを推奨する。

59. 我々は、2024年のイタリアのG7議長国に期待するとともに、G7が、日本の2023年のG7議長国の成果とその前向きで野心的なレガシーを継承し構築していくことを奨励する。