データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 財務・保健の連携強化及びPPRファイナンスに関するG7共通理解

[場所] 日本 新潟・長崎
[年月日] 2023年5月13日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文] 

新型コロナウイルスのパンデミックは、国際社会に前例のない公衆衛生上、経済的、社会的な影響を及ぼし、前例のない範囲と規模の政策対応を世界的に促した。こうした影響を抑制し緩和するため、国、地域、世界レベルで共同の取組が要請された。ウイルスの拡散を抑制するためには公衆衛生上の対応策のみでは不十分であることが判明し、経済活動の制限等の追加的な社会・経済的政策介入が必要となった。甚大な社会・経済的費用に直面し、官民双方の全ての利用可能なファイナンスが模索された。

これらの前例のない対応とファイナンスは、財務・保健の連携強化の必要性と、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーの更なる強化の必要性を露わにした。公衆衛生及び経済的対応は、取り得る対応策のマトリックス全体にわたるギャップ分析に基づき、必要な行動を特定し資源を配分する調整メカニズムの欠如のため、複雑化した。資金需要が特定された分野においても、既存の多国間メカニズムやプールされた資金は十分でない、または、十分に迅速に発動できなかった。パンデミックPPR(予防、備え及び対応)の向上を含む、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーを強化する必要性の認識は、新型コロナウイルス対応ツールへのアクセス加速事業(ACT-A)、G20財務・保健合同タスクフォース(G20JFHTF)及びパンデミック基金(PF)の設立につながった。これらは大きな成果だが、財務・保健を含む連携強化やグローバル・ヘルス・アーキテクチャーを強化するための適切な資金の必要性への対処という更なる課題が残っている。

これまで学ばれた教訓と共同の取組を基礎とし、G7は、G20やその他適切なステークホルダーと協働し、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーのガバナンスとファイナンス双方に残された課題に、引き続き取り組むべきである。国際社会は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)へ向けた推進やワンヘルス・アプローチの促進を含め、将来のパンデミックや、その他の公衆衛生危機に対して、より良く備えるべきである。

こうした認識の下、我々、G7財務大臣及び保健大臣は、財務・保健の連携強化及びPPRファイナンスを通じグローバル・ヘルス・アーキテクチャーのガバナンスを更に強化するための我々の共通理解をここに提示する。

1. グローバル・ヘルス・アーキテクチャーのガバナンス:財務・保健の更なる連携強化

将来の公衆衛生危機により良く備えるためには、多分野にわたる統合されたアプローチが必要である。多分野にわたる性質を踏まえ、パンデミックのリスクへの効果的な予防、備え及び対応、並びに公衆衛生上、経済的、社会的な影響の緩和は、保健及び財務双方の知見を必要とする。グローバル・ヘルス・アーキテクチャーの効率性及び機能性を改善するため、財務及び保健の専門家は、国、地域、世界レベルにおいて、潜在的な脆弱性を特定し、あらゆる機能面及び資金面のギャップを評価し、これらに対処する既存のメカニズム及び関連する資金をマッピングするために協働する必要がある。これは、必要な場合における資金の再配分を含む、連携行動を可能とするであろう。

グローバル・ヘルス・アーキテクチャーにおける様々なステークホルダー間の連携は、更なる政治的な支持とともに強化される必要がある。PPRの成功には、継続的なギャップ評価が必要であり、これは特にリスク及び脆弱性の最新のモニタリングを可能とし、効果的な連携及び資源配分の舵取りに資するであろう。G20JFHTFは、幅広いメンバー構成及び初めてのギャップ評価と引き続くPFの設立支援といった具体的な成果を有し、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーにおける様々なステークホルダー間の連携を強化するための最適のプラットフォームである。

我々は、より強靱なグローバル・ヘルス・アーキテクチャーに向けた財務・保健連携を強化するため、G20JFHTFの更なる強化を求める。これは、世界保健機関(WHO)、世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)及びその他の国際機関(IOs)と協働する(G20JFHTFの)事務局の更なる補強により支えられるべきである。

2. PPRファイナンシング:パンデミック基金と補完的なサージ・ファイナンス

我々は、G20JFHTFによる継続的なギャップ評価に基づき、PPRの資金ギャップを埋めるための努力を継続する必要がある。重要な一里塚として、我々はPFの立ち上げを歓迎し、初回案件募集の成功裡の実施を期待し、より幅広いドナーからのPFへの積極的な参加と貢献を奨励する。

このような進展にもかかわらず、パンデミックへの「対応」のためのファイナンスへの取組みは依然として十分でなく、格別の配慮が求められる。新型コロナウイルスで見たように、パンデミックは、基本的なサービス及び設備並びに感染症危機対応医薬品等の研究開発からラスト・ワン・マイルの供給までの生産サイクルを含む保健ニーズに対処するため、迅速な資金の大規模かつ緊急な需要が生じる。一方、社会や経済への影響緩和などの国家により通常賄われるより広範な対応策や保健システムの強化にかかるより構造的な介入は、この演習の範囲外となる。

国内外の資金を含む様々な資金源からの「対応」のためのファイナンスは、パンデミックの影響を初期段階で抑制するために、効率的かつ迅速に動員されるべきである。「対応」のためのファイナンスの構造は多層から成ることを認識し、各層を強化する必要がある。第一層として、国内資金動員は、全ての対応策の初動の基盤として可能な限りその役割を果たすべきである。第二層として、パンデミック対応のための既存の多国間メカニズムや資金提供手段、例えば大災害債券(キャット・ボンド)、国際開発協会(IDA)の危機対応枠、国際復興開発銀行(IBRD)の危機準備金、WHOの緊急対応基金、その他の多国間や民間の資金は、適切に資金の提供がなされ、革新的かつ協調的な方法でより効率的に活用されるべきである*1*。

資金ニーズに対処するための前述の取組にもかかわらず、新型コロナウイルスのパンデミックは既存の機能の限界を露呈させた。その限界は、平時に資金を貯えておくことは大きな機会コストを伴うこと、市場ベースでの災害・緊急リスクファイナンスは不十分と示されたこと、パンデミック発生後に、新しい仕組みを構築または資金調達を呼びかけることは時間がかかり、事前に合意された対応の欠如のため、資金提供が遅すぎ、限定的であり、有意義な対応ができないことなどを含む。

この状況は、革新的な第三層、すなわち既存のメカニズムの調整改善を通じて補完し、未使用の資金を蓄積することなく、パンデミック発生時に必要な資金を迅速かつ効率的に供給できる、新たな専用の「サージ」ファイナンスの枠組みを検討する必要性を指し示している。WHOとWBによるマッピング作業の結果に基づき、希望するドナーは、各国の予算関係の規定及びプロセスに沿って、公衆衛生危機が発生し、ドナー及び保健専門家により確認される事前に合意された資金発動条件に合致した場合に将来の支出を行う事前コミットメントを行いうる。

我々は、国際社会に対し、パンデミック発生時に発動され得る革新的なサージ・ファイナンスの枠組みの検討を含め、「対応」のためのファイナンスの各層を最適化し、強化することを求める。この目的のために、我々は、WHOとWBが更に協力し、今夏のG20財務大臣・保健大臣合同会合までに、G20JFHTFや国際的なパートナーと協力し、既存の資金源、特に未活用の資金源をパンデミックへの対応に如何に活用しうるか、既存のメカニズムを如何にうまく調整しうるか、資金面・機能面のギャップが何処にありうるか、特定されたギャップを埋めるために我々が如何に協働できるかにつき、包括的で、一貫した、共同のマッピング作業を実施すること目指す。我々は、この作業を基礎とし、サージ・ファイナンスの強化についてのG20における更なる議論に引き続き貢献していく。


{*1* 世界銀行からの有用なインプットに感謝します。}