データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7グローバル・インフラ投資パートナーシップに関するファクトシート

[場所] 広島
[年月日] 2023年5月20日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)は、持続可能で包摂的、かつ強靭で質の高いインフラへの公的及び民間投資を促進するためのG7の共通のコミットメントである。このパートナーシップを通じて、G7は、パートナー国におけるインフラ投資のギャップを縮小するために、2027年までに最大6,000億米ドルを動員することを目指している。G7エルマウ・サミットでの発足以来、PGIIは、気候変動とエネルギー危機、サプライチェーンの強靭化、デジタルインフラと交通網による連結性、持続可能な保健システム、ジェンダー平等と公平性など、一連の喫緊の優先事項への投資を実現してきた。これらの取組の一環として、G7は、PGIIとの相乗効果を活用し、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)を引き続き推進する。

 PGIIは、G7や志を同じくするパートナー国の政府、民間セクター、金融機関とのパートナーシップを通じて、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」などの、透明性、良好なガバナンス、腐敗防止、労働、環境、気候、財務及び債務の持続可能性に関する国際スタンダードや原則をも促進する質の高いインフラを提供している。G7は、実施、モニタリング、遵守確保のための国の能力の支援を含め、これらのスタンダードや原則の実施に関するギャップに対処するため、協働する。

 2023年G7広島サミットの機会に、G7及びパートナー国の首脳、民間セクター幹部、世界銀行が参加する、パートナー国における民間資金の動員を目的としたPGIIイベントが開催された。

 G7は、民間投資を促進し、リスクを軽減し、民間投資が可能となる環境を構築するために、国際開発金融機関(MDBs)や開発金融機関(DFIs)の機能を最大限に活用しつつ、パートナー国政府と緊密に連携していく。

 G7は、国主導のパートナーシップ、持続可能なインフラ開発のための環境整備への投資、民間セクター、国際機関及びパートナー国との関与を含め、PGIIを運用するため、作業部会を通じてさらに連携していく。また、G7は、指定された政府高官を通じ、適切な場合には民間投資家も含むパートナーとともに投資を促進する戦略的な方向性について示す。

 G7は、パートナー国の包摂的な成長を支え、パートナーの経済的安定に寄与する質の高いインフラ投資のための変革をもたらすエコシステムの発展に向けて、パートナー国と共に取り組んでいくというG7のコミットメントを示すものとして、以下の象徴的な案件を強調する。

持続可能なエネルギーの推進

1. [持続可能な原材料と再生可能な水素に関するチーム・ヨーロッパとナミビアのパートナーシップ]この欧州連合(EU)グローバル・ゲートウェイの象徴的な案件の目的は、2022年11月の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で発表されたEUとナミビアの戦略的パートナーシップの一環として、グリーン水素(GH2)及び重要原材料の持続可能なバリューチェーンを創出または強化することである。この構想は、マプト-ハボローネ-ウォルビスベイを結ぶ戦略的地域輸送回廊への投資によって強化される。さらに、ロッテルダム港とアントワープ港は、ナミビアのウォルビスベイ港とリューデリッツ港を改良することによって貿易を拡大するため、ナミビア港湾公社と追加覚書を締結した。グリーン水素に関しては、EUとその加盟国は、少なくとも1億2,000万米ドルの無償拠出を行う。これと並行して、欧州投資銀行(EIB)は、再生可能エネルギーと水素への投資に向けて、5億4,790万米ドルの枠組み融資の共同宣言をナミビア政府と署名した。また、EIBは欧州企業と提携し、ナミビアにおける2つの大型再生可能エネルギー/水素プロジェクトに1億950万米ドルの共同融資を行う予定である。これらの取り組みは、ナミビアにおける包摂的なグリーン成長に関するチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの一環で実施されるものである。

2. [ベトナムとエジプトにおける風力発電所]国際協力機構(JICA)は、ベトナムのニントゥアン省における88メガワットの風力発電所の建設のため、2,500万米ドルを融資した。この融資は、アジア開発銀行(ADB)と連携して、民間銀行や企業からの資金動員を支援したものである。本プロジェクトは、ベトナムにおけるJETPsを支援するものである。

国際協力銀行(JBIC)は、エジプトのラス・ガレブにおける2つの500メガワットの陸上風力発電所の建設のため、融資(それぞれ2億8,100万米ドル及び2億4,000万米ドル)を行った。この融資は、国際金融公社(IFC)及び欧州復興開発銀行(EBRD)と連携して、民間銀行や企業からの資金調達を支援するものである。日本貿易保険(NEXI)は、2つのプロジェクトに対して保険(それぞれ2億米ドル及び1億6,300万米ドル)を提供し、民間銀行による融資を支援した。

3. [フィジーのカリワナ水力発電所及びバトゥトコトコ水力発電所]大洋州のためのグリーン・ブルー同盟に関するEUグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの取組では、気候変動対策、強靭性、天然資源の持続的利用に重点を置いている。このプロジェクトは、カリワナ水力発電所(22メガワット)とバトゥトコトコ水力発電所(31メガワット)の建設を通じて、フィジーの水力発電能力の向上を支援する予定である。これにより、フィジーの化石燃料への依存度と温室効果ガス排出量の削減に貢献し、経済成長と運輸交通分野の電化に伴う電力需要の増加に対応することができる。EU、EIB及びJBICは、民間セクターとの連携をする。

4. [モロッコの水素発電所]アフリカとのグリーン・エネルギーに関するEUグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの取組の一環として、将来性のある分野である水素分野におけるモロッコの地位を強化するため、官民連携(PPP)によるパワー・トゥ・エックス(Power-to-X(P2X))水素発電所の建設の準備を進めている。その第一歩として、入札の準備をしている。このプロジェクトは、欧州とドイツの水素戦略に完全に合致しており、ドイツの関与を通じて促進していく。プロジェクトの規模は、最大1億1,000万米ドル(1億ユーロ)の無償で、PPP方式によるリスク回避と促進を図り、民間投資の誘致とモロッコにおけるグリーン水素経済の創出を支援する。

5. [インド再生可能エネルギー事業会社]ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)は、1億米ドルの直接エクイティ出資により、アヤナ再生可能エネルギー発電(Ayana Renewable Power Ltd.)を設立した。その後、インドの国家インフラ投資ファンド(NIIF)とグリーン成長エクイティファンド(GGEF)(オランダのDFIであるオランダ起業開発銀行(FMO)が出資)が同社に1億7,000万米ドルを投資し、株式の51%を取得している。同社は、世界的な二酸化炭素排出削減を支援し、インドのエネルギー転換計画及び2030年までに500ギガワットの再生可能エネルギー容量を持つという目標に貢献する。このプロジェクトは約2000人の雇用を創出し、140万人の最終顧客のエネルギー需要を満たし、623万トンの年間CO2排出を回避することに20年以上貢献している。2023年1月現在、アヤナ再生可能エネルギー発電は1.3ギガワットの託送容量を運用しており、2.5ギガワット相当の今後整備される資産を有している。

6. [アルゼンチンにおけるグリーンフィールド再生可能エネルギープロジェクト]2023年2月、カナダの開発金融機関(フィンデブ・カナダ(FinDev Canada))は、アルゼンチンの大手再生可能エネルギー発電会社ヘネイア(Genneia)に対する4,000万米ドルの融資を締結した。この10年間の融資により、ヘネイアは、太陽光と風力の2つのグリーンフィールド再生可能エネルギー発電所を建設することで、アルゼンチンにおける200メガワットの再生可能エネルギー発電能力の増強に貢献する。カナダ開発金融機関と連携し、オランダ起業開発銀行(FMO)は、4,500万米ドルの融資を提供する。

7. [ドミニカ共和国の太陽光発電所]カナダ開発金融機関は、マラナタ・エネルギー投資(Maranatha Energy Investment S.R.L)に対し、ドミニカ共和国で24メガワットの太陽光発電所の第1段階(10メガワット)を建設・運営するため、770万米ドルを融資する。この融資は、ドミニカ共和国の再生可能エネルギー分野の拡大を支援するもので、島国である同国の化石燃料への依存度を低下させる上で重要な役割を果たす。オランダのトリオドス投資管理(Triodos Investment Management B.V.)の参加により、最大250万米ドルの民間資金が動員される予定である。

8. [SDGsの達成を支援する投資ソリューション]英国の「モビリスト(Mobilising Institutional Capital Through Listed Product Structures(MOBILIST))」プログラムは、公開市場との連携を通じて、持続可能な開発目標の達成を支援する投資ソリューションを支援する。このプログラムは、ロンドン、シンガポール、ブラジル、南アフリカ、メキシコの証券取引所と提携している。

英国外務・連邦・開発省(FCDO)は、ヘリオス投資パートナーズ(Helios Investment Partners)及び民間インフラ開発グループ(Private Infrastructure Development Group(PIDG))のインフラ・アフリカ(InfraCo Africa)と提携し、初のアフリカ専用気候基金ポートフォリオを設立した。モビリストを通じて、FCDOは700万米ドルを気候エネルギーアクセス・レジリエンスファンド(CLEAR)に投資した。このファンドは、アフリカで脱炭素化を加速し、気候変動に対する強靭性を構築するために、気候変動と調和した持続可能な企業や資産の開発を支援する。民間インフラ開発グループは気候エネルギーアクセス・レジリエンスファンドへの投資を通じて、そのバランスシートからファンドへと資産を移行させ、新たな投資のための資本の余地を確保していく。これは、開発金融機関がクリーンでグリーンなインフラのために大規模に資金を動員する新しい方法を提供するものである。

気候変動への適応と緩和の加速

9. [ベトナムにおける公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)]155億米ドル規模のベトナムJETPは、途上国政府とG7が主導する国別プラットフォームの一つであり、化石燃料からの野心的な公正なエネルギー転換のための投資を実現するために官民資金を結集する一方、コミュニティの再教育と再スキルを支援し、生計の維持と新しいグリーン雇用を創出する。ベトナムJETPでは、EUは英国とともに、国際パートナーズグループ(International Partners Group)(G7及びG7以外の加盟国を含む)の共同リーダーを務め、JETP事務局の設立に向けてベトナム政府と緊密に協力してきた。EUとEIBは、ベトナムのエネルギー転換を支援するため、ベトナムJETPに対し、無償と融資の両方で資金を提供する予定である。官民資金の総額は、77億5,000万米ドルの公的資金と77億5,000万米ドルの民間資金で均等に分けられる。

 英国、フランス(フランス開発庁(AFD))、カナダ(グローバル連携省Global Affairs Canada (GAC))が拠出する民間インフラ開発グループの支援を受けるガラント・コ(GuarantCo)は、ベトナムの一流ノンバンク金融機関であるベトナム金融証券公社(EVN Finance Joint Stock Company)による7,500万米ドル(1兆7250億ベトナムドン)の債券発行に対し5,000万米ドル(1兆1500億ベトナムドン)の部分信用保証を行った。この取引は、ベトナム初のオンショア及び現地通貨建てで、国際的に検証されたグリーンボンドである。また、ベトナムの機関投資家を誘引する初の部分保証社債でもある。この債券は、ベトナムのグリーンインフラ、特にエネルギー分野の開発に使用される予定である。ガラント・コは、現地の貯蓄資金のポテンシャルを活用し、現地通貨建て商品を通じてリスクを軽減することで、新興国においてグリーンインフラに多くの資金を動員できるようにする。

10. [インドでの保証]民間インフラ開発グループのガラント・コとアクシスバンク(AxisBank)は、後者に2億インドルピー相当の保証を提供し、インドにおけるe-モビリティ促進のための資金として現地通貨で3~4億米ドルを動員できる枠組み保証契約を締結した(2022年5月)。

11. [インドにおける投資資本]ニーブ(NeevII)プログラムは、投資資本と専門知識の提供を通じて、インドにおけるスタートアップを支援する。インド政府と共同でファンドを設立し、雇用創出や技術主導のスタートアップに資金を提供している。特に気候や持続可能性に重点を置いている。950万米ドルの拠出を含む英国の支援に支えられ、ファンドは現在1億6,400万米ドルに拡大している。JICAやEIB(各2,500万米ドル)などの投資家から、ファンドへの出資が行われた。このファンド

 は、クリーンテックに特化したインド最大級のファンドとなる。

12. [小島嶼国への能力開発支援]英国、米国、イタリア、日本、フランス、ドイツ、カナダは、インドが常任共同議長を務める災害に強靱なインフラのためのコアリション(CDRI)に参加している。CDRIが展開する最初のグローバルプログラムである「災害に強い小島嶼国インフラ(IRIS)」は、小島嶼開発途上国(太平洋諸島やコモロを含む)に対して専門知識や能力開発支援を提供する。英国、オーストラリア、EUはいずれもこのプログラムに資金を拠出している(それぞれ900万米ドル、550万米ドル、675万米ドルを拠出)。

13. [気候変動に脆弱な国々における気候変動対策のためのファシリティ]JICAは、太平洋地域を含む気候変動に脆弱な国々において、適応と緩和の両面から気候変動対策を加速するインフラプロジェクトや企業への融資を目的とした、最大15億米ドルのファシリティ(融資枠)としてアクセス

 (ACCESS (Facility for Accelerating Climate Change Resilient and Sustainable Society) )を立ち上げた。このファシリティは、MDBs、DFIs、G7各国の民間銀行などのパートナー金融機関と連携し、JICAが現地企業への直接融資や現地金融機関を通じて、民間資金動員を促進するものである。

14. [気候変動対策に関する高いインパクト・パートナーシップ(HIPCA)]カナダは、HIPCAに対し、2億890万米ドル(2億8,312万5,000カナダドル)を拠出し、最大のドナーとなっている。HIPCAは、欧州復興開発銀行(EBRD)のパートナーシップであり、気候変動と戦い、強靭性を高め、環境を保護するための投資と解決策を推進するものである。カナダの拠出は、再生可能エネルギー、持続可能な交通インフラ、デジタルインフラなど、さまざまなインフラシステムにわたる投資を支援するものである。カナダのこの基金への拠出は、ジェンダーと経済的包摂を促進しながら、EBRDが活動する新興国や発展途上国を支援することになる。

15. [都市による気候変動対策]英国は、ドイツ、フランス、米国と連携し、都市が気候変動対策計画を実行するための投資を呼び込むことを支援している。これは、シーフォーティ・シティズ(C40 Cities(気候危機に立ち向かうことを約束する主要都市の市長による世界的なネットワーク))を通じて行われる。ドイツ国際協力公社(GIZ)は、このプログラムのうち気候金融ファシリティ(CFF)を実施し、インド、インドネシア、マレーシア、ガーナ、セネガル、シエラレオネ、南アフリカ、ブラジル、コロンビア及びペルーの15都市で活動している。気候金融ファシリティは、融資可能な低炭素投資プロジェクトを形成するために、各都市に専門家による支援を提供している。英国は、都市気候対応プログラム(Urban Climate Action program (UCAP))に3,400万米ドルの拠出を約束することを表明した。合計1億3,000万米ドルの投資機会の創出が期待される。

サプライチェーンの強靭化及び運輸交通とデジタル分野における連結性の強化

16. [アンゴラのロビト回廊]経済回廊の整備・強化は、主要な運輸交通インフラを通じて経済的な連結性を高め、地域の食料安全保障を強化し、クリーンエネルギー、デジタルサービス、保健・医療サービスへのアクセスを向上させる。サハラ以南のアフリカでは、米国はロビト回廊の開発を支援しており、コンゴ民主共和国(DRC)とザンビアをアンゴラ経由で世界市場につなぐ主要な公共交通機関インフラとなる可能性のある鉄道拡張に初期投資している。現在検討中の初期投資には、鉄道路線に対する米国際開発金融公社(DFC)からの2億5000万米ドルの融資と、アンゴラで500メガワット以上の再生可能エネルギーを発電する2つの太陽光発電プロジェクトに対する米国輸出入銀行からの9億米ドルの初期融資がある。

17. [タンザニア東部アフリカ回廊]米国は、米国際開発金融公社(DFC)によるエクイティ投資を受け、ライフゾーンメタル(Life Zone Metals)社と重要鉱物のリーディングカンパニーであるテクメット(TechMet)社との戦略的パートナーシップを促進した。ライフゾーンメタル社は、タンザニアで採掘されるニッケルやその他の重要鉱物を革新的な低排出技術で処理する新しいマルチメタル処理施設を開設するため、タンザニア政府と枠組み協定を締結し、早ければ2026年に電池用ニッケルを世界市場に供給することを目指している。また、このパートナーシップは、新施設に投入される重要な鉱物について、地域全体でさらなる機会を特定することにも取り組む。これらの取組は、クリーンエネルギー技術のための強靱で透明性のあるサプライチェーンを構築・拡大することを目的としており、広範な現地関係者の関与、環境と保全の尊重、安全で公正な労働慣行に基づいている。

18. [フィリピン、インド、バングラデシュの運輸交通ネットワーク]JICAは、持続可能な経済成長のため、人やモノの移動の効率化を促す運輸交通インフラの整備と地域レベルでの運輸交通のネットワーク化を推進している。代替運輸交通手段の導入による交通渋滞の緩和を通じて、温室効果ガスの排出削減や大気環境の改善など、環境問題に対するパートナー国の取組に貢献することも重要である。最近では、ADBと連携してフィリピン・マニラ首都圏における南北通勤鉄道(28億米ドル)、インドにおけるムンバイ・アーメダバード間高速鉄道(22億米ドル)やパトナ・メトロ(7億2,000万米ドル)、ムンバイ湾横断道路(2億2,400万米ドル)などに対して融資した。また、バングラデシュでは、ADBと連携してダッカの都市鉄道(MRT5号線)(9億7,400万米ドル)、チョットグラム-コックスバザール間の幹線道路(4億700万米ドル)、ジョイデプール-イシュルディ間の鉄道の複線化(3,100万米ドル)、マタバリ港の開発(7億6,900万米ドル)などを支援している。

19. [インドネシアにおける地域鉄道]この地域鉄道プロジェクトは、EUグローバル・ゲートウェイのイニシアティブの一環として、ドイツ政府に代わりドイツ復興開発金融公庫(KfW)が主たる融資を担い、インドネシア運輸省が実施するものである。このプロジェクトは、インドネシアにおける気候変動目標の達成と、人口約1,000万人のスラバヤ都市圏における都市公共交通状況の改善を目的としている。プロジェクト規模は約3億2,000万米ドル(2億9,000万ユーロ)で、ドイツからの資金供与は最大2億3,000万ユーロ(2億5,000万米ドル)の融資と600万ユーロ(約660万米ドル)の付随措置(無償)となる。

20. [カリブ海の海上域内輸送]カリブ海の域内輸送を改善する機運が高まっている。カリブ共同体(CARICOM)と東カリブ諸国機構(OECS)は、カリブ開発銀行に対し、海上を中心とした地域内輸送の課題を検討するよう委任している。選択肢としては、ガイアナとスリナムをトリニダード・トバゴ、バルバドス、OECS、フランス海外領土と結ぶマルチモーダルフェリーの航路の整備が挙げられている。この整備により、製造業者や貿易業者、そして市民のための貨物輸送能力を大幅に向上させることが期待される。EUは、グローバル・ゲートウェイを通じて、必要な調査と規制改革を支援する用意がある。また、関連調査の支援を含め、他のパートナーとともに、無償や複合的な金融方式を通じて、開発の後続段階にも貢献することができる。EUは、必要に応じて、EIBなど、この分野におけるさまざまなEUの機関や専門知識を利用することが期待されている。

21. [エクアドルの港]2023年5月、米国際開発金融公社(DFC)は、エクアドルのプエルト・ボリバル・コンテナ港の拡張と近代化のために、イルポート・ターミナル・オペレーション(Yilport Terminal Operation)社に1億5,000万米ドルの融資を約束したことを発表した。同港は、エクアドルの総農業生産量の50%以上を生産し、人口の10%近くを雇用する主要な農業地帯の近くに位置する。港の拡張と冷蔵倉庫への投資支援は、エクアドルの農業部門を強化し、世界の食料安全保障を多様化・強化し、現地の雇用を維持・創出する。

22. [エジプトのアレクサンドリア地域管制センター(ARCC)の近代化]「エジプトにおける連結した経済と社会」に関するEUグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの取組の一環として、AFDの理事会は5,470万米ドルを上限とする融資を承認した。アレクサンドリア地域管制センター(ARCC)の近代化には、以下のようなものが含まれる予定である:

 (1) 管制塔の設備(暖房、換気、空調、水道)及び必要に応じて既存棟の構造的改修/又は制御センター及び技術室を収容する新棟の建設(物理的・技術的制約に応じて実現可能性調査により決定される)

 (2) 送電網の変電所(約90箇所)と制御棟間の通信システム(鉄塔上部に取り付けられた光ファイバー、通信プロトコルなど)のアップグレード、交換、追加(サイバーセキュリティ防御の強化、新しい変電所への通信容量の増加など)。

23. [モロッコの路面電車]AFDは、EUグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの一環として、またラバト・レジオン・モビリテ(Rabat Région Mobilité(RRM)(旧名:Société du tramway de Rabat Salé、STRS))との長期パートナーシップの継続として、ラバト-サレ-テマラ密集地域における37kmの路面電車ネットワーク延長のために1億970万米ドルの融資承認を予定している。ラバト郊外のテマラからテクノポリスと呼ばれる遠方の大学キャンパスまでを結ぶことになる。「エジプトにおける連結した経済と社会」に関するチーム・ヨーロッパ・イニシアティブ一環として、フランスAFDの理事会は最大5,470万米ドルの融資を承認している。

24. [フィリピンにおけるデジタル連結性]EUグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブのデジタル連結性に関する取組として、EUの地球観測プログラム「コペルニクス」による初の東南アジアの地球観測プログラム(コペルニクス・フィリピン)が2023年4月にフィリピン・マニラで開始される。EUは3,720万米ドルの無償資金を拠出し、欧州宇宙機関及びEU加盟国と協力する。このプログラムでは、衛星データをアーカイブするための国内サイトを設立し、フィリピン当局間のデータアクセス、保存、処理、交換を促進し、災害リスク管理及び気候変動に取り組む予定である。高速ブロードバンド、モバイル接続、新しいファイバー海底ケーブルなど、フィリピンのデータへの迅速なアクセスを確保することにも重点を置いている。また、教育、研究、イノベーションを促進し、データエコノミー市場を活性化することも目指す。これにより、国や地域レベルでデジタル経済の機会や科学的な恩恵を引き出す可能性がある。フィリピンは、東南アジア諸国連合(ASEAN)内でのコペルニクスの取り込みに協力するパイオニアとなる。

25. [中央アジアへの持続可能なデジタル及び運輸交通の連結性]EUは、中央アジアと欧州間のデジタル及び運輸交通の連結性に焦点を当てた持続可能なグローバル・ゲートウェイの連結性パッケージを開発中である。少なくとも4,390万米ドル相当のデジタル連結性に関するチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの下、チーム・ヨーロッパのパートナーの追加参加を得て、EUは衛星接続インフラへの投資と、EUの基準やベストプラクティスに基づくデジタルガバナンスの改革を推進する。運輸交通に関しては、EUは、欧州と中央アジアを結ぶ持続可能な輸送回廊に関する調査を実施しており、最も持続可能な回廊を特定し、物理的インフラと必要な実施環境の整備の双方において、その開発のための主要な行動を提案することを目指している。両分野において、EUは現在、大陸間接続への包括的なアプローチの観点から、連結性に関する投資がEU、東方パートナーシップ(コーカサスを含む)、中央アジアをどのように結びつけることができるかについての分析を行っている。

26. [デジタル・ジャマイカ-2030年までに島全体にブロードバンドネットワークを展開]ジャマイカのデジタル計画は、ジャマイカにブロードバンドへの幅広いアクセスを提供することを目的とし、農村部とのデジタルデバイドへの対応、教育へのアクセスの促進、民間部門の技術革新が含む。EUは、グローバル・ゲートウェイを通じて、1,042万米ドルの予算支援活動を行い、ジャマイカを「つなぐ」ことを支援する。これは、学校へのWi-Fiネットワークの設置を支援するものである。この文脈で、教師はデジタルスキルの訓練を受け、期待されるトリクルダウン効果により、技術の取り込みとデジタルツールの利用が拡大することになる。EUは、ジャマイカ領土内のこれまでサービスが行き届いていなかったり、接続されていなかったりする地域とのギャップを埋めるという目的をジャマイカが達成するために、融資のブレンドやリスク軽減を通じて、民間投資の促進やインセンティブを与える。

 27. [サブサハラ・アフリカにおける開発のためのデジタル(D4D)フレームワーク]「EU-アフリカ・グローバル・ゲートウェイ投資パッケージ-デジタル移行」に関するEUグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブの一環として、アフリカ連合(AU)委員会、地域経済共同体、及びその加盟国が、AUデータ政策枠組みに基づくデータ政策枠組みを開発するものである。また、データの価値を示すデータ活用事例を示し、民間セクターや金融機関とのパートナーシップを活用して、アフリカにおけるグリーンかつ安全なデータインフラへの投資の特定を支援する。データガバナンスは、欧州委員会と5つの加盟国(ベルギー、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ)の共同出資による6,600万米ドル(6,000万ユーロ)の活動である。ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)の支援を受け、ドイツ国際協力公社(GIZ)が1,200万米ドル(1,100万ユーロ)の規模で実施し、サブサハラ・アフリカのデータインフラに大きな付加価値を創出する。

28. [ガーナにおけるデータセンター]米国際開発金融公社(DFC)は、アフリカ最大のデータセンターネットワークであるアフリカデータセンター(ADCs)に対し、3億米ドルの融資枠を利用して、ガーナにとって初となるデータセンターを建設する。アフリカには、世界の総人口の17パーセントが居住しているにもかかわらず、アフリカのデータ量は、世界のデータセンター利用可能容量の1パーセント未満に過ぎない。この投資は、クラウドベースの技術へのアクセスを向上させることでアフリカ大陸のデジタル革命の基礎を作り、インターネットのコストを下げて女性によるアクセスを容易にするとともに、アフリカ大陸の産業競争力を高める。

29. [アルジェリア、エジプト、モロッコ、チュニジアとの海底光ファイバーケーブル]グローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブのもと、地中海に7,100kmの最新鋭の海底光ファイバーケーブルを敷設し、北アフリカ諸国とキプロス、フランス、イタリア、ポルトガル、スペインを結ぶメデューサ光ファイバープロジェクトは、北アフリカ諸国の大学のインターネット速度を200倍向上させることを目的としている。この投資により、アルジェリア、エジプト、モロッコ、チュニジアの500の大学や研究センターが「EUの重要なテラビット研究開発ネットワーク」に統合される。これらの大学は今後20年間、毎秒200ギガビットの接続を受けられることになる。中小企業もこの強化された接続性から利益を得ることができる。

30. [マダガスカルの農村部における電力供給]グローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブのマダガスカルにおける取組の一環として、AFDとEUは、民間セクターから1,750万米ドルを動員しつつ、3,610万米ドルを融資し、マダガスカル南部及び西部の農村部においてミニグリッドを導入するプロジェクトを実施する。これにより、3万5,000世帯(17万5,000人)が電気を利用できるようになる。

31. [バルカン半島横断電力回廊]バルカン半島横断電力回廊は、セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナの送電システムをクロアチア、ハンガリー、ルーマニア、イタリアの送電システムに相互接続するためのEUのグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブである。バルカン半島横断電力回廊が完成すれば、東南アジア地域で最も混雑している送電回廊のうち、重要な北東-南西、東-西の地域回廊と汎欧州回廊を大幅に強化することができる。セルビア西部(オブレノバク-バイナ・バシュタ(Obrenovac - Bajina Bašta))では現在、全長109kmの400キロボルトの2回線送電線が建設されており、モンテネグロとボスニア・ヘルツェゴビナを結ぶ全長84kmの新しい区間も準備中である。バルカン半島横断電力回廊は、ドイツとイタリアが支援するチーム・ヨーロッパのイニシアティブであり、プロジェクトは最大7,600万米ドル(7,000万ユーロ)の独の開発金融機関(KfW)の融資を受けている。

32. [チュニジアとの電力ケーブル]エルメド(ELMED)インターコネクターは、送電に関するEUのグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブで、海底高圧電力ケーブルによるイタリアとチュニジア間の最初の相互接続の建設を支援する。このプロジェクトは、双方の電力供給の安全性と持続可能性を高め、より良い再生可能エネルギーの統合とガス火力発電の代替を可能にし、EUの気候緩和目標や気候変動目標に貢献する。

食料安全保障の強化

 33. [農業サプライチェーンと食料安全保障の強化]JICAは、食料安全保障の強化のため、10億米ドルを上限とする融資枠としてセーフ(SAFE(Facility for Supporting Agricultural supply chain and Food security Enhancement))を設立した。このファシリティは、MDBs、DFIs、G7民間銀行などのパートナー金融機関と連携し、JICAが農業ビジネス企業への直接融資や金融機関を通じて、民間資金動員を促進するものである。

34. [サブサハラ・アフリカ全域の持続可能な農業]アグデブコ(AgDevCo)社は、投資資本と専門知識を通じて、強靭性、ジェンダー平等、より良質で栄養価の高い食品の生産を促進しようとする、アフリカのスタートアップステージにあるアグリビジネスへの専門投資会社である。2022年2月、ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)、ノルファンド(Norfund)、米国際開発金融公社

 (DFC)は、サブサハラ・アフリカ全域の持続可能な農業を支援するための9,000万米ドルの資金パッケージを発表した。これに加えて、アグデブコの技術施設に対して、BII、ノルファンド、英国外務・連邦・開発省(FCDO)が最大540万米ドルの補完的資金を提供する。

保健システムの強化

35. [アフリカにおけるワクチン、医薬品、医療技術への製造とアクセス(MAV+)に関するグローバル・ゲートウェイにおけるチーム・ヨーロッパ・イニシアティブ]このイニシアティブの主目的は、持続可能な開発目標(SDG)3.8(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成)に沿って、すべてのアフリカの人々の必須ワクチン、医薬品、医療技術への公平なアクセスを向上することである。現地での製造(供給)、需要側(市場形成)、環境整備を含む360度アプローチで行われる。MAV+は2年弱という短い期間で12億米ドル以上を動員し、主要なマイルストーンを達成した。チーム・ヨーロッパ、すなわち欧州委員会及びEU加盟国(ベルギー、フランス、ドイツ、オランダなど)並びに欧州の金融機関は、南アフリカ(ビオバック社(Biovac),アスペン社(Aspen))、ルワンダ(ビオンテック社(BioN Tech))、セネガル(パスツール研究所(Institut Pasteur))、ガーナ(デック社(DEK))において、主要パートナーとして、公衆衛生ニーズに応える持続可能なエコシステムを構築している。チーム・ヨーロッパは、アフリカ連合とその2つの公衆衛生機関であるアフリカ疾病管理予防センター(Africa CDC)及びアフリカ医薬品庁(AMA)の信頼できるパートナーであり、リード投資家としてWHOのmRNA技術移転プログラムを可能にしてきた。

36. [保健所・診療所向けエネルギーソリューション]2023年から2026年にかけて、英国外務・連邦・開発省(FCDO)は、エネルギーアクセス変革(Transforming Energy Access(TEA))プラットフォームを通じて、米国国際開発庁(USAID)パワーアフリカと共同で、万人のための持続可能なエネルギー(Sustainable Energy for All(SEforALL))主導のパワーイング・ヘルスケア・イニシアティブに220万米ドルを投資する。パワーイング・ヘルスケア・イニシアティブは、発展途上国の保健所や診療所への質の高いエネルギーソリューションの広範な展開を妨げる、セクター全体の体系的な障壁を解消することを目的としている。

ジェンダー平等と公平性の推進

37. [アフリカ全域に投資するプライベート・エクイティ・ファンド]アフリカン・ディベロップメント・パートナーズ(African Development Partners III(ADP III))は、アフリカ全域に投資するプライベート・エクイティ・ファンドである。英国の開発金融機関(ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII))、フランスの開発金融機関(プロパルコ(Proparco))、カナダの開発金融機関(フィンデブ・カナダ(FinDev Canada))、ドイツの開発金融機関(ドイツ開発公社(DEG))からの投資が含まれている。このファンドは、アフリカ全域の雇用創出、気候変動緩和、ジェンダーバランスに貢献する成長資本を企業に提供する。このファンドは、2Xフラッグシップ・ファンドとして認定されている。現在までに、このファンドはナイジェリア、チュニジア、エジプトの企業に投資している。

38. [女性や若者を含む脆弱な人々の金融アクセス改善]JICAは、中小零細企業や低所得者層、女性に金融サービスを提供する地方銀行に対し、最大15億米ドルの融資枠としてファフィ(FAFI(Facility for Accelerating Financial Inclusion))を立ち上げた。このファシリティは、MDBs、DFIs、G7民間銀行などのパートナー金融機関と協力し、脆弱な人々の金融アクセスを改善するためのパートナー国の国内資本動員を促進する。

39. [新興国・途上国の中小零細企業への融資]カナダがミローバ・ギガトン(Mirova Gigaton)基金に拠出する3,120万米ドル(4,200万カナダドル)は、主に新興国・途上国の中小零細企業への融資により、クリーンエネルギーや気候変動に配慮したプロジェクトへの投資を支援する。投資は、家庭、農業、企業向けの太陽光発電など、安価な再生可能エネルギーの利用を増やすプロジェクトを支援する。また、カナダの支援により、同基金が、公平で質の高い雇用機会など、ジェンダー視点を適用した投資を行えるようになる。

40. [ツーエックス(2X)チャレンジ]2Xチャレンジは、ジェンダーの視点を持った投資を促進するために2018年のG7サミットで初めて開始されて以来、世界中で幅広い成功を収めている。2Xのスタンダードは、ジェンダー平等を支援するG7融資の活性化に重要な役割を果たし、2021年から2022年にかけて150億米ドルを動員するというジェンダー視点を持った投資の目標額を上回った。


 G7は、規制環境の改善、プロジェクト準備の促進、民間資本のリスク軽減のために、世界銀行の官民インフラ諮問ファシリティ(PPIAF)、グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)、質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップ、世界銀行の保証プログラム、新興国気候変動対策インフラファンド、持続可能な開発プラスのための欧州基金(EFSD+)、債務管理ファシリティ(DMF)などのイニシアティブを通して他の多国間ファシリティをさらに活用する。

 また、G7は、ソース(SOURCE)(※インフラ関連のオンラインのデータベース)、G20の質の高いインフラ投資指標集(Compendium of Quality Infrastructure Investment Indicators)、債務管理・財務分析システム(Debt Management and Financial Analysis System(DMFAS))など、インフラプロジェクトの品質、基準、ガバナンスを改善する他の多国間ツールの重要な役割を確認した。