データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスのためのG7広島ビジョン

[場所] 
[年月日] 2023年5月21日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

G7メンバーは、健康危機における感染症危機対応医薬品等(Medical Countermeasures (MCM))への公平なアクセスに向けて取り組むというコミットメントを確認する。我々は、この確固たるビジョンに向けた我々の共同の取組が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックという世界的な惨事から立ち上がる中で生まれたことを想起する。我々は、MCMの開発が大きく進展してきたことを認識する一方で、また、安全で有効、品質が保証された負担可能なMCMへの公平なアクセスの改善のために、特に、過去に不公平なアクセスを経験した国・地域において、これらの国・地域が自らの対応を策定する上での主導的役割を認識しつつ、国際社会による調整と投資の機会を特定することの重要性に留意する。

新型コロナのパンデミックからの教訓に基づき、将来のパンデミックや公衆衛生危機に対処するために、世界は、自発的な協力に基づく、強化された、持続可能で、公平、効果的かつ効率的な「エンド・ツー・エンド」の世界的なMCMのエコシステムを必要としている。このようなエコシステムは、研究開発から資金調達、薬事承認、地域的な多様化を含む製造の分権化、市場形成、調達、ラスト・マイルの配送物流を含む国内でのデリバリーや、必要とする人々(特に低・中所得国や脆弱・人道的な環境における人々)への実際の使用まで、関連する機能が可能となるようにするべきである。

これらの取組は、グローバルヘルス・アーキテクチャーを強化するための、より広範なパンデミックへの備えと対応のプロセスに関する現在進行中の議論と整合し、一貫したものであるべきである。この観点から、我々は、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書(WHO CA+)の交渉に関する進行中の作業、パンデミック基金、関連する地域的な取組及びプロセス並びに、パンデミックの予防、備え、対応(PPR)の強化を可能にするものとして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成し維持するための、強靭なプライマリ・ヘルスケア・システムと医療従事者の強化を含む国内及び各国の対策に留意する。この強化されたエコシステムは、主導役及び責任が明確化された実施主体及びその他の関係者間の連携の向上や、次のパンデミック発生当初から必要不可欠なMCMをデリバリーを含め迅速に拡大するために急拡大できる緊急対応の資金供給において重要な役割を果たすべきである。

G7メンバーは、エンド・ツー・エンドの世界的なエコシステムの強化を通じ、MCMへの公平なアクセスを促進するための具体的な行動につながる、世界保健総会、国連総会、G20、WHO CA+及び他の関連するフォーラムにおける更なる議論を支持する。多様な関係者との関連する協議*1*を活用して、我々は、以下を含む指針となるべき原則を、鋭意、推し進める。

①公平性

②包摂性

③効率性

④負担可能性

⑤質

⑥説明責任

⑦機動性

⑧迅速性

我々は共に、持続可能で公平な未来を支持し、パンデミックにおけるMCMへの公平なアクセスのための本ビジョンを実現するために、連携してかつ幅広いパートナーと共に取り組むことにコミットする。新型コロナ対応のMCMへの公平なアクセスを改善するために達成されたこれまでの進展に基づき、我々は、人命を救い、社会的・経済的影響を軽減し、経済回復を加速かつ持続させ、国際保健に資するために、安全で有効、品質が保証され負担可能な、地域における生産とMCMへの公平なアクセスに向け協力する必要性を認識する。我々は、また、それぞれの国民の健康と安全に対する確固たるコミットメントとともに、全ての人が安全でない限り、誰も安全にはなり得ないことを認識する。これらの目標に向かって前進するため、我々は、MCMのエコシステムを強化し、将来のパンデミックや公衆衛生危機の際に全人類に貢献できるように、解決策を見出す我々のコミットメントを一層強化する。

{*1* このような協議には、次のパンデミックに向けたMCMプラットフォームの合意形成に関する高級技術者協議(公平で持続可能なMCMプラットフォームのガバナンスと資金調達)(2023年2月23日及び24日、南アフリカ・ヨハネスブルグ)、ACTアクセラレータの後継に係る議論及びG20保健専門家会合が含まれ、またこれらに限定されるものではない。}