[文書名] ジェンダー平等と全ての女性と女児のエンパワーメントに関するG7ジェンダー平等大臣共同声明:「日光声明」
我々、G7ジェンダー平等大臣は、ジェンダー平等と全ての女性と女児のエンパワーメントに対する我々のコミットメントを再確認し強化するため、日本の栃木県日光市に集まった。
ジェンダー平等は、人権の基本であり、平和で豊かで持続可能な世界のために必要な基盤である。あらゆる多様性を持つ女性と女児の安全と社会のあらゆる分野における完全、平等かつ意義ある参加、全ての人権の完全かつ平等な享受を達成することは、社会の活力と結束、民主的安定に寄与する。
G7は、ジェンダー平等を実現し、あらゆる多様性を持つ女性と女児、そしてLGBTQIA+の人々の社会のあらゆる分野における完全、平等かつ意義ある参加を確保することに努めてきた。また、G7は、多様性、人権及び尊厳が、尊重、推進そして保護され、全ての人が、ジェンダー、性別、年齢、民族、障害、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、性表現などの交差する特性に関わらず、あらゆる形態の暴力や差別から解放された活力ある生活を享受できる社会の実現を目指してきた。
しかし、2023年現在、完全なジェンダー平等を実現した国はない。さらに、戦争や紛争、気候変動や生物多様性の喪失、民主主義制度の弱体化、グローバルな不平等の拡大、新型コロナウイルス感染症の長期的な健康・経済・社会面での影響など、近年の複合的な危機により、ジェンダー平等社会の実現に向けた課題はより一層困難さを増している。
女性と女児の権利と生活は、世界中で脅威にさらされている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどの危機は、あらゆる多様性を持つ女性と女児に不均衡な悪影響を及ぼした。ウクライナでは、現在も続いているロシアの違法な侵略戦争により、紛争に関連した性的・ジェンダーに基づく暴力が急増した。イランでは、女性と女児に対する人権侵害が増加している。アフガニスタンでは、タリバーンが女性と女児を公的生活から排除している。スーダンでは、医療施設の破壊や紛争に関連した性的暴力の増加が報告されており、女性と女児に長く続く影響を与えることになるだろう。LGBTQIA+の人々の権利と安全は、多くの国々で脅威にさらされている。さらに、テクノロジーによって促進されるジェンダーに基づく暴力は、多くの女性と女児、そしてLGBTQIA+の人々の安全と幸福を脅かし続けている。世界中で、ジェンダー平等と全ての女性と女児のエンパワーメントに対するバックラッシュの潮流が高まっている。
このような状況の中、議長国の日本は、2023年のG7のアジェンダにおいてジェンダー平等を高く位置付けている。サミットや大臣会合で行われた議論では、ジェンダー平等とあらゆる多様性を持つ女性と女児のエンパワーメントに向けた進展を加速させるため、交差性を持つジェンダーの視点が取り入れられてきている。
G7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合は、我々のジェンダー主流化の取組の中核として位置付けられるものである。この会合において、我々、G7ジェンダー平等大臣は、W7及びGEACの代表とともに、ジェンダー平等と全ての女性と女児のエンパワーメントについて、分野横断的に議論した。我々は、完全なジェンダー平等と全ての女性と女児のさらなるエンパワーメントに向けた努力を加速させるというコミットメントを再確認した。
新型コロナウイルス感染症パンデミックからの教訓
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、社会のあらゆる分野に大きな影響を及ぼしたが、その影響はジェンダーにより異なっていた。多くの分野で女性と女児、LGBTQIA+の人々に不均衡な悪影響を及ぼし、既存のジェンダー不平等を悪化させた。特に、ジェンダー、性別、年齢、民族、障害、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、性表現などの交差する特性により疎外されてきた人々は、深刻な影響を受けた。パンデミックの発生から3年以上が経過し、その影響を振り返り、対応と成果を見直す時期に来ている。ジェンダー平等をさらに推進し、全ての女性と女児をエンパワーするために、我々は経験から学ばなければならない。
パンデミックは、女性の雇用と仕事に大きな影響を与えた。サービス業やケア・健康などの分野の女性が深刻な影響を受けた。学校や保育施設、長期介護サービスの運営に支障をきたし、通常、無償のケア・家事労働の主な責任を担っている多くの女性が、子供や他の家族の世話をするために、労働市場から退出したり、労働時間を短縮したりすることになった。パンデミックは、有償・無償を問わず、ケアワークが我々の社会と経済が機能するために不可欠な役割を果たすと同時に、その不均等な分配がジェンダー不平等の主要な原因であることを浮き彫りにした。
パンデミックの間、様々な種類や形態のジェンダーに基づく暴力がますます深刻化した。女性の経済的安定と自立に対する脅威の高まりや外出の制限などの障壁により、サバイバーや被害者が暴力を報告することがより難しくなった。さらに、オンライン上のジェンダーに基づく暴力や、あらゆる多様性を持つ女性と女児、LGBTQIA+の人々に対するヘイトスピーチは、世界的に悪化した。人工知能などの新しいテクノロジーの普及と悪用によって、ますます激化していることに留意する必要がある。
さらに、パンデミックは、全ての女性と女児が生活のあらゆる分野に完全、平等、かつ有意義に参加し、その権利を行使することを可能にする包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)に関するサービス、製品、情報へのアクセスを含む、良質、安全かつ包括的な教育と健康サービスへのアクセスをさらに制限した。
しかし、パンデミックはいくつかの分野で発展や進歩をもたらした。例えば、テレワークがより普及した。その弊害を抑える努力は必要だが、テレワークは通勤時間の短縮や男性の無償のケア・家事労働への参加拡大により、ジェンダーに関わらずワークライフバランスを実現する機会を提供する可能性を持っている。また、情報通信技術を利用して遠隔地から医療サービスを提供する「遠隔医療(テレヘルス)」が普及したが、アクセスが限られた人々の医療へのアクセスを拡大する可能性を持っている。
パンデミックの経験から、役員や管理職のジェンダーバランスを含め、多様な人材が働く組織は危機に対してより強靱であること、そして、職場の多様性が企業の成長にとって重要な要素であることが明らかになった。同様に、我々は、若い女性や障害を持つ女性など、多様な背景を持つ人々の視点を、政策立案プロセスや公的生活に取り入れることの重要性を認識する。対応策は、最も影響を受ける人々に対して交差的なアプローチを採用すると、最も効果的なものとなる。我々は、あらゆる多様性を持つ女性と女児の多様なニーズに対応した重点的な施策を発展させるためにジェンダー別のデータ収集を強化していく。
我々の社会はパンデミックによって大きな打撃を受け、我々のジェンダー平等社会への取組も大きく後退した。我々は皆、パンデミックにより多大な犠牲を被った。だからこそ、我々はここから得た教訓をさらなる飛躍のために生かすことが必要である。
ジェンダー平等と女性と女児のエンパワーメントの推進
経済的エンパワーメントの推進
パンデミックの間、女性の経済的自立を確保することの難しさとともに女性の経済的安定とジェンダーに基づく暴力の関連性がはっきりと明らかになった。全ての女性と女児の経済的安定は、その権利を完全に享受するための前提条件である。また、全ての女性を経済的にエンパワーし、仕事の世界におけるジェンダー格差を解消することは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を達成するための鍵でもある。全ての女性の労働市場と経済への完全、平等かつ意義ある参加を達成することは、あらゆる場所において喫緊の課題である。特に、少子化や生産年齢人口の減少に悩む国々では、全ての女性の完全、平等かつ意義ある参加は、社会の活力を維持する上でとりわけ重要な役割を担っている。
しかし、女性の経済的エンパワーメントには多くの構造的障壁が残っていること、女性の所得を低く抑えている要因は多岐にわたり、かつ、絡み合っていることを強調しなければならない。役員や管理職における女性の代表性の低さ、部門や職業による分離、無償のケア・家事労働の不平等な分配、あらゆる多様性を持つ女性に不利に働く人事・賃金制度などである。長年にわたる男女間賃金格差は、こうした構造的要因の複合的な産物であり、賃金格差を是正するためには包括的なアプローチが必要である。
役員及び管理職における女性の代表性は、拡大されるとともに、支援される必要がある。女性のリーダーシップのパイプラインを確立し改善するとともに、企業に女性の参加とリーダーシップの向上を奨励する措置を講じるべきである。柔軟な働き方や、パートタイムで役員や管理職として働く選択肢を促進することで、これらの役職に占める女性の割合を増やすことに貢献できる。給与の公平性と透明性に関する政策は、同一労働同一賃金または同一価値労働同一賃金を支援するための有効な解決策となり得る。
部門・職業分離については、女性が多く、かつ過小評価されている職業を正当に評価し公正に処遇することに加え、成長分野や伝統的に報酬の高い分野への女性の労働移動を促進することが重要である。女性の労働移動を促進するためには、教育や、アップスキリングやリスキリングを含むスキル習得の機会へのアクセスを改善する必要がある。社会経済が急速に変化しているため、女性が特定の産業でキャリアアップしたり、デジタル分野や気候分野などの成長分野に参入したりすることができるよう、スキルや能力を開発・向上させる機会を増やす必要がある。ジェンダーに関わらず、誰もが平等にデジタルの発展の恩恵を受けることができるよう、デジタル・ジェンダー格差を是正するための努力が必要であることに留意する必要がある。我々は、デジタル政策や新たな技術を設計・開発・導入するプロセスにおいてジェンダーの視点を取り入れるとともに、デジタル技術のあらゆる側面におけるガバナンスと意思決定において、女性が完全、平等かつ意義ある参加者となることを確保するよう努力すべきである。我々は、ジェンダーに基づく固定観念・偏見を取り除き、STEM分野における職業への一層の理解とアクセスを促進することで、あらゆる多様性を持つ女性と女児がSTEM分野での職業を検討することができるよう働きかけることにコミットする。
起業や個人事業に従事する女性の数は増えている。こうした働き方は、より伝統的な職場よりも柔軟な労働環境を提供することができる。女性の起業家精神の向上は、現代の緊急課題に対する革新的な解決策に貢献するものである。我々は、全ての女性と女児が起業家としてのリーダーシップに挑戦し成功するようエンパワーする女性の起業家精神に関するG7原則を再確認する。あらゆる多様性を持つ女性が自らの事業を起こし、成長させることを支援するため、知識、教育、訓練、ネットワーク、資本へのアクセスを大幅に改善する必要がある。
あらゆる多様性を持つ女性の仕事と雇用における安全・安心は、機会への平等なアクセスを確保するために不可欠である。我々は、職場におけるジェンダーに基づく暴力やハラスメントを防止し対応する施策を推進し、職場における差別を永続させる家父長的構造に対処することにコミットする。
無報酬のケア・家事労働の認識・削減・再分配とケアワーカーの支援
女性が不均衡に担っている無償のケア・家事労働は、あらゆる多様性を持つ女性が社会のあらゆる分野に、完全、平等、かつ有意義に参加するための大きな障害であり、フルタイムで働く能力や指導的地位に就く能力を損ない、女性の経済的エンパワーメントに悪影響を与える。仕事と家族・親の責任をよりジェンダーに平等に分担するよう支援することは、より柔軟な労働時間の実現と所得におけるジェンダー格差の是正に貢献し得る。無償のケア・家事
労働の認識・削減・再分配は、あらゆる多様性を持つ女性の経済的エンパワーメント、意思決定プロセスへの参加拡大、そして経済的安定と自立の強化に不可欠である。
我々は、子育てや高齢者・障害者のケアなど、無償のケア・家事労働の認識・削減・再分配が、社会全体で取り組むべき課題であることを認めなければならない。そのため、良質かつ安価なケアサービスへのアクセスを確保することで、家族や親に対する公的支援を強化するとともに、ジェンダーに関わらず従業員のワークライフバランスを確保するための勤務制度の導入・改善を企業に促す必要がある。
また、ケアの仕事には低賃金と厳しい労働条件、そして女性の割合が多いという特徴があることに留意し、ケアワーカーに公平な報酬を確保することが必要である。また、ケアワーカーは社会的対話と団体交渉に代表者として含まれる必要がある。
テクノロジーとイノベーション、特にデジタル分野のテクノロジーとイノベーションは、重要な役割を果たす。テクノロジーの活用は、労働生産性を高め、労働量を軽減する可能性がある。テレワークはそうしたテクノロジーの一例である。しかし、テクノロジーが害をもたらし、ジェンダー不平等を永続させるために使用される可能性があることに注意する必要がある。我々は、テクノロジーの適切な使用と発展に十分な注意を払うとともに、テクノロジーによって促進されるジェンダーに基づく暴力のリスクを最小限に抑えることによって、台頭するテクノロジーが誰にとっても有益であるように、また、ジェンダー平等に向けた我々の努力を損なうことがないように努力しなければならない。
さらに、無償のケア・家事労働を認識・削減・再分配するためには、あらゆる多様性を持つ男性と男児を含む全ての人のコミットメントが必要である。我々は、柔軟な労働時間・休暇制度を改善し、男性によるそれらの利用を可能にし、促進することに取り組む必要がある。また、あらゆる多様性を持つ男性と男児が無償のケア・家事労働にさらに参加できるよう、ジェンダーに基づく役割・固定観念・偏見を打破するための施策が必要である。
性的・ジェンダーに基づく暴力への対応
ジェンダーに基づく暴力は、個人の安全・安心を脅かし、尊厳を傷つけ、自由と自己決定権を奪う。権利を完全かつ平等に享受し、その可能性と機会を最大限に追求できるためには、全ての人は、暴力の恐怖から解放され、安全・安心に暮らすことができる必要がある。我々は、いかなる形態の性的・ジェンダーに基づく暴力も容認しない。
あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力をなくすため、暴力の予防、サバイバーと被害者の支援と保護、司法へのアクセスと加害者の責任の確保に焦点を当てた、切れ目がなく、かつ分野横断的なシステムを確立しなければならない。トラウマに配慮したサバイバー・被害者中心のアプローチに基づく、関係機関・団体間の効果的な協力が不可欠である。中長期的な計画に基づき、心身の健康ケア、司法制度へのアクセス、住居支援など、サバイバー・被害者をワンストップで支援するシステムが緊急に必要とされている。また、地域やコミュニティに根ざした組織、司法制度、法執行機関などの関連する主体や専門家の能力を、ジェンダーに対応し、かつ、サバイバー・被害者中心の観点から、開発・強化する必要がある。
オンライン上の暴力、ハラスメント、偽情報、女性差別者によるヘイトスピーチは、ここ数年激化している。サバイバー、被害者、サバイバーや被害者を支援する主体に対する報復や繰り返される被害は、特に重大かつ深刻なものとなっている。ジャーナリスト、人権擁護者、政治家、アドボケーターを含む、公的生活におけるあらゆる多様性を持つ女性と女児は、人工知能などの情報通信技術(ICT)やデジタル機器の使用によって助長されるジェンダーに基づく暴力である、「テクノロジーに助長されるジェンダーに基づく暴力」(TFGBV)を経験するリスクが高まっている。これらのテクノロジーの使用率が高いため、思春期の世代や若者も、テクノロジーに助長されるジェンダーに基づく暴力を経験するリスクが高くなっている。オンライン上のジェンダーに基づく暴力に対処するためには、法律に違反する内容を報告・削除する効果的なプロセスを確立し、適切な場合にはプラットフォーム企業を含む加害者に責任を負わせるなどの対策を検討する必要がある。あらゆる多様性を持つ女性と女児の孤独や孤立に注意を払い、対策を講じることも必要である。
我々は、ジェンダー平等に対する組織的なバックラッシュと、あらゆる多様性を持つ女性と女児、そしてLGBTQIA+の人々の権利の後退に対する懸念を繰り返し表明する。固定観念や偏見に対処・排除し、ジェンダーに基づく暴力を存続させる社会の態度や行動を積極的に変えていくことによって、バックラッシュや後退と戦うことへのコミットメントを表明する。
性と生殖に関する健康と権利の推進
我々は、ジェンダー平等と女性と女児のエンパワーメント、身体の自律、そして性的指向とジェンダーアイデンティティを含む多様性の支援において、包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)が不可欠で社会を変革させる役割を果たすことを認識する。我々は、安全かつ合法的な中絶及び中絶後のケアへのアクセスに取り組むことを含め、全ての人のための包括的なSRHRの実現に向けた我々の完全なコミットメントを再確認する。我々は、妊産婦と子供の死亡を減らし、有害な慣行を排除することへのコミットメントを強調する。
意思決定における女性の代表性を高める
あらゆるレベルの意思決定における女性の完全、平等かつ意義ある参加は、人権の問題であるとともに、より良い経済・社会・政治の結果に寄与することで、全ての人に恩恵をもたらすものでもある。より公平、包摂的かつ強靱な社会を構築するためには、社会のあらゆる分野における全ての女性の参加とリーダーシップを高める必要がある。
安全は、女性の完全、平等かつ意義ある参加のための前提条件である。女性やLGBTQIA+の活動家、政治家、人権擁護者、フェミニストや女性の権利のための主体や組織に対する攻撃の増加は、民主主義のプロセスに悪影響を与え、制度の正統性を損なう。
我々は、「女性・平和・安全保障(WPS)」アジェンダに対する我々が共有する確固たるコミットメントと、その平和、安全保障、防災(DRR)の達成への貢献を改めて表明する。我々は、女性が安全で、生活のあらゆる分野に完全、平等、かつ有意義に参加することができるということは、同時に我々全員がより安全・安心で、より良い生活を享受することができることであると認識する。安全保障上の課題の予防と解決、暴力的過激主義やテロリズムへの対抗、強靱なコミュニティの構築に女性や女性団体が貢献しているにも関わらず、紛争の予防と平和・安全保障の構築を目的とした意思決定機関やプロセスに、女性は常に十分には参加できていない。女性は変革の担い手である。あらゆるレベルにおける意思決定の役割への女性の完全、平等かつ意義ある参加を増やすことは、政府の正統性や、紛争や自然災害を効果的に管理する能力を高め、強靱な民主主義をもたらすことになる。我々は、あらゆる多様性を持つ女性の危機管理、紛争予防・解決、平和構築における完全、平等かつ意義ある参加とリーダーシップを引き続き促進する。
社会の意識を変える
ジェンダーに基づく固定観念・偏見や差別的で有害な社会制度・慣習は、相互に強化・再生産し合う。我々は、全ての女性と女児の安全と、完全、平等かつ意義ある参加を促進するために、社会規範を変え、差別的な社会慣習をなくすよう努めなければならない。ジェンダー不平等を永続させる有害な固定観念や偏見に挑戦するためには、ジェンダーに関わらず全ての人がジェンダー平等を推進し、ジェンダーに基づく暴力に対処し、阻止することに関与することが求められる。我々は、全ての男性と男児を味方、変革の担い手、共同受益者として関与させる努力する。これらの取組には、健全な態度と行動を促進し、全ての男性と男児が、有毒な男らしさなど、有害なジェンダーに基づく固定観念・偏見から自由になり、ジェンダー不平等を永続させる規範、態度、行動に挑戦し、変えるとともに、ジェンダーに基づく暴力を理解し行動を起こすよう促すことが含まれる。
G7のジェンダー平等へのコミットメントを促進する
ジェンダー平等は、政府の取組だけでは達成できない。ジェンダー平等と全ての女性と女児のエンパワーメントを進めるためには、我々の強い政治的コミットメントが、市民社会、学術界、民間・公的部門など全てのステークホルダーとの確固たる建設的な協力、そして効果的な実施メカニズムと連動することが必要である。この点で、G7は大きな前進を遂げてきた。
G7ジェンダー大臣会合は、2017年から開催されており、ジェンダー平等を分野横断的に議論する場となっている。G7ジェンダー大臣会合は、G7のジェンダー平等へのコミットメントと理解を再確認する場であり、その実施に向けた相互理解を形成する貴重な機会となっている。
2018年に第1回サミットを開催したWomen7(W7)は、世界中の多様な女性と女児の声をG7に届けてきた。我々は、今年のW7の平等で公正かつ平和な未来に向けた提言を歓迎する。さらに、2018年に設立されたジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)は、メンバーの卓越した知見を活かし、ジェンダー平等とジェンダーに基づく分析がG7プロセスの全ての成果物に組み込まれるように各国首脳や大臣を支援することで、多大な貢献をしている。我々は、今年のGEACの包摂的で平和で公正な社会に向けた見識ある活動を歓迎する。
さらに、G7のコミットメントの進捗を説明する枠組みが開発されつつある。ジェンダー・ギャップに関するG7ダッシュボードは、OECDの協力の下、2022年に初めて公表され、2023年に更新された。ダッシュボードは、ジェンダー平等の実現に向けたG7のコミットメントの現状と進捗の理解に貢献するとともに、相互学習のための媒体にもなっている。我々は、過去のG7のコミットメントの進捗を説明することを目的とした最初の実施報告書を今年発行するために努力を重ね、それがモニタリングと説明責任のもう一つの強力なツールを提供することを期待している。
我々は、重点的な対策を開発し、あらゆる多様性を持つ女性と女児の多様なニーズを支援するために必要となる、ジェンダーと他の交差する特性によって細分化されたデータ収集を強化することを通じて、引き続き、これらのメカニズムを改善し、活用する。そして、我々は、我々の取組を進めるため、関連するステークホルダーや市民社会のパートナーとの協力をさらに発展させる。
進むべき道
我々、G7ジェンダー平等大臣は、危機的状況下にいる女性と女児の権利の後退に強い懸念を表明するとともに、世界中の女性と女児の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する。我々は、紛争状況における性的暴力の使用を非難し、そのような行為が人道に対する犯罪や戦争犯罪になり得ることを強調する。我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争を最も強い言葉で非難し、ロシアがウクライナの領土から直ちに撤退することを強く求める。我々は、ウクライナとウクライナ国民、特に、あらゆる多様性を持つ女性と女児とともにある。我々は、ウクライナ当局との緊密な協力の下、ウクライナにおけるジェンダーに対応した復興計画を求める。
我々は、完全なジェンダー平等を達成するために努力するとともに、ジェンダー、性別、年齢、民族、障害、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、性表現など交差する特性を考慮しながら、あらゆる多様性を持つ女性と女児をさらにエンパワーすることにコミットする。我々は、全ての女性、女児、LGBTQIA+の人々の人権と尊厳が完全に尊重され、促進され、保護される社会の実現に向けた努力を継続する。我々は、ジェンダー平等に対するバックラッシュと戦うことにコミットする。