データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 上川外務大臣臨時会見記録

[場所] 飯倉公館
[年月日] 2023年11月7日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

冒頭発言

【上川外務大臣】まず、私から申し上げます。

 先ほど、G7外相会合の皮切りとなります、中東に関するワーキング・ディナーを、予定を大幅に超える二時間以上実施いたしました。事態が刻一刻と動き、緊張が日増しに高まる中、また、世界の分断が深まる中で、中東情勢について、G7外相間で非常に率直かつ突っ込んだ議論を行うことができました。

 先月にテロ攻撃が発生して以来、G7外相は活発に中東外交に取り組んでおり、私自身、10月のエジプト・カイロへの訪問に続き、先週末にイスラエル、パレスチナ、ヨルダンを訪問しました。同様に、ブリンケン米国務長官は中東・トルコから、またコロンナ仏外相はUAEから訪日され、こうしたG7メンバーの外交的取組を踏まえた議論を行うことができました。

 私からは、直近の危機への対応について、我が国の立場に基づき発言する中で、人質の即時解放とガザの人道状況の改善が最優先であり、人道支援の十分かつ継続的な供給とともに、その前提となる人道的休止・人道アクセスの確保について、関係国に協力を働きかけていく必要がある旨述べました。

 ガザを中心とする人道支援に関しましては、日本は、当初の1000万ドルの緊急無償資金協力に加え、約6500万ドルのパッケージを実施していく旨紹介をいたしました。

 また、ガザの将来や中東和平プロセスの再活性化について検討することが重要であり、今後、あらゆるレベルで、G7間で議論をしていきたい旨述べました。

 本日の議論を踏まえ、現在G7間で調整中のG7外相声明の中で、中東情勢に関するG7の一致した立場をお示しできるようにしたいと考えております。

 また、本日、英国とは、対面では約6年ぶりとなる日英外務・防衛閣僚会合、いわゆる2+2を実施し、今後の安全保障・防衛協力の方向性について4閣僚間で認識を擦り合わせることができました。

 さらに、ブリンケン国務長官との会談では、特に、イスラエル・パレスチナ情勢について率直な意見交換を行い、ガザ地区の人道状況の改善とそれに資する人道的休止及び「二国家解決」の実現に向け、引き続き緊密に連携していくこと、今回の衝突が中東地域全体に波及することを防ぐべく外交努力を継続していくことで一致しました。

 明日もインド太平洋やウクライナ、国際的なパートナーとの協力といった喫緊の課題につきまして、G7外相間で議論を深めたいと思います。

質疑応答

【記者】ワーキングディーナーでは、イスラエル・パレスチナ情勢についてどのような意見交換があったのか。具体的には、議長国日本として何を主張したのか。人道目的の一時的な戦闘の休止など、事態の沈静化に向けてG7外相間で一致した点はあるのか。また、イスラエル・パレスチナ情勢に関して成果文書にはどのような内容を盛り込みたいか。あわせて、明日はどのような議論を行いたいか、伺います。

【上川外務大臣】まず、議長国日本として主張した点について申し上げたいと思います。

 私からは、このワーキング・ディナーにおいて、直近の危機への対応について、我が国の立場に基づき発言をする中で、人質の即時解放とガザの人道状況の改善が最優先であり、人道支援の十分かつ継続的な供給とともに、その前提となる人道的休止・人道アクセスの確保について、関係国に協力を働きかけていく必要がある旨述べました。

 ガザを中心とする人道支援に関しましては、日本は、当初の1000万ドルの緊急無償資金協力に加え、約6500万ドルの追加的な人道支援を行うべく取り組んでいく旨紹介をいたしました。

 また、ガザの将来や中東和平プロセスの再活性化について検討することが重要であり、今後、あらゆるレベルで、G7間で議論をしていきたい旨述べたところであります。

 御質問の外相間で一致した点、また成果文書で何を盛り込むかという御質問でありますが、まずG7としての一致した立場につきましては、G7外相声明の中でお示したいと考えているところで、現時点でのお答えは差し控えさせて頂きます。

 明日は、インド太平洋またウクライナ、国際的なパートナーとの協力といった課題につきまして、G7外相間で議論を深めたいと考えております。

【記者】最初に一点確認させて頂きたいんですけども、冒頭でご発言のあったガザの人道状況の改善が最優先であり、人道的休止が必要だという大臣ご自身の提起に対して概ね合意を得られたということでよろしいでしょうか。異論はなかったでしょうか。また、イスラエル軍による攻撃が強まるにつれて、イスラエル支持の米国などに対し批判的な国際世論が高まっている状況にありますけども、G7として中東情勢について世界にどのようなメッセージを発信したいか、その意義もあわせて伺います。

【上川外務大臣】まず繰り返しになるところでありますが、G7としての一致した立場につきましては、G7外相声明の中でお示したいと考えております。現時点でのお答えについては差し控えさせて頂きます。

 その上で、ワーキング・ディナーにおきましては、私から、人質の即時解放とガザの人道状況の改善が最優先であり、人道支援の十分かつ継続的な供給とともに、その前提となる人道的休止・人道アクセスの確保について、関係国に協力を働きかけていく必要がある旨述べたところでございます。

 また、ガザの将来や中東和平プロセスの再活性化について検討することが重要であり、今後、あらゆるレベルで、G7間で議論していきたい旨述べたところでございます。

【記者】ガザ情勢について伺います。G7は、ウクライナに侵攻するロシアに対してはですね、病院や民間インフラへの攻撃のエスカレーションを強く非難し、無差別かつ意図的な攻撃は戦争犯罪を構成すると明確な態度をとってきましたが、多くの女性や子供が巻き添えになっているイスラエル軍の軍事作戦に対しては明確でないように見受けられます。いわゆるダブルスタンダード論の批判がG7の立場を危うくしているように思いますが、大臣の考えをお伺いします。

【上川外務大臣】今回のイスラエルの行動はハマス等によるテロ攻撃に対するものであり、イスラエルは、こうしたテロ攻撃に対し、主権国家同様に国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有するものと考えます。

 同時に、全ての行動は国際人道法を含む国際法に従って行われるべきであります。イスラエルに対しましても、一般市民の保護の重要性や国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきているところであります。

 こうした点に関する我が国の立場は一貫しております。引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえ、G7を含む各国・国際機関等との間で意思疎通を行い、事態の早期沈静化や、人道状況の改善等に向けた外交努力を粘り強く続けて参ります。