データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7 首脳声明

[場所] 
[年月日] 2024年2月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 我々G7首脳は、ウクライナに対する我々の揺るぎない支持を再確認するため、また、ウクライナの自由及び民主的な未来のために休みなく戦いを続けてきたウクライナの人々の勇気及び強靱性に改めて敬意を表するため、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と共に、本日会合を実施した。

 彼らは、国連憲章のあからさまな違反である、ロシアによる違法で、不当で、いわれのない全面的な侵攻に2年間抵抗してきた。彼らは、プーチン大統領の軍事機構を打ち負かし、彼らの国家の領土一体性を回復し、ウクライナの主権及び独立を守る意思を証明してきた。

 プーチン大統領は、ウクライナを服従させるという戦略的目標を達成することに失敗した。代わりに、彼は、自国民に政府の無謀な行動による重い代償を日々支払わせている。彼は不必要な戦争の費用を調達するためにロシアの資源を枯渇させ、ロシアの家族を引き裂き、何十万人ものロシア人の命を奪った。

 我々は、我々がウクライナの人々が彼らの未来のための戦いに勝利することを確実にし、包括的、公正かつ恒久的な平和を築くことを支援することができると引き続き確信している。

 この機会に、我々はまた、アレクセイ・ナヴァリヌィ氏の並外れた勇気に敬意を払い、彼の妻、子どもたち、愛する人々と共にある。彼は、クレムリンの腐敗との闘いやロシアにおける自由で公正な選挙のための闘いに人生を捧げた。我々は、ロシア政府に対し、彼の死をめぐる状況を完全に明らかにするよう求める。我々は同様に、ロシア政府に対し、不当に拘束されている全ての囚人を解放し、政治的反対派に対する迫害とロシア人の権利と自由に対する組織的弾圧を止めるよう求める。我々は、ロシアにおける人権侵害に対する制限的な措置を課し続けることやその他の行動を取ることによるものを含め、ナヴァリヌィ氏の死に関して責められるべき者の責任を追及する。

 1.我々は、ウクライナの自衛権を引き続き支持し、昨年7月にビリニュスで承認したウクライナ支援に関する共同宣言に基づき、二国間の安全保障上のコミットメント及び取決めを作成し、実施することによるものを含め、ウクライナの長期的な安全保障に対する我々のコミットメントを改めて表明する。我々は、ウクライナに対する安全保障上の支援を向上させ、ウクライナを支援するため、我々の生産及び輸送能力を強化している。

 マイダンでの抗議活動から10年、我々は、特に司法制度及び法の支配の強化並びに汚職対策における重要な改革を通じて民主主義国の基盤を強化しているウクライナの政府及び人々とともにある。これらの努力は、ウクライナの欧州・大西洋統合への道の一部である。我々は、ウクライナのこれまでの成果を称賛し、ウクライナとの加盟交渉を開始するとの昨年12月の欧州理事会による決定を歓迎する。我々は、IMFの拡大信用供与措置プログラムのコンディショナリティを満たすことに向けたウクライナの進展を歓迎する。

 ロシアは、戦場での失敗を埋め合わせるために、ウクライナ経済を破壊することに成功してはならない。我々は、ウクライナが緊急の資金ニーズを満たすことを支援し、ロシアの戦争のインパクトによって深刻に影響を受けている他の脆弱な国々を支援する。我々は、EUの500億ユーロのウクライナ・ファシリティの承認を強く歓迎する。これは、2027年までウクライナに極めて重要な財政支援を提供するものである。我々はまた、我々がウクライナの残りの資金ギャップを埋めようとする中で、他のメンバーが承認した追加的な経済支援、2024年第1四半期における日本の迅速な財政支援の提供及びカナダの新たな資金提供を歓迎する。我々は、2024年のウクライナの残りの財政ギャップを埋めるための追加的な支援の承認を要請する。

 早期復旧措置から始まるウクライナの復興は、引き続き主要な優先課題である。我々は、ウクライナ復興ドナー調整プラットフォームを通じてウクライナ当局及び国際金融機関とともに、また、民間投資を活用することによって、引き続き取り組んでいく。我々は、同プラットフォームが韓国、ノルウェー、スウェーデン及びオランダを含む形で拡大したことを歓迎する。我々は、日・ウクライナ経済復興推進会議の成功に続き、2024年にベルリン、2025年にローマで開催されるウクライナ復興会議に期待する。

 2.我々はロシアに対し、侵略戦争を直ちに停止し、国際的に認められたウクライナの領土から、完全かつ無条件に自国の軍を撤退させることを求める。我々は、全ての国に対し、国際法を堅持し、ロシアの武力による領土取得の試みを決して正当化又は許容しないよう求める。我々は、ロシアがウクライナの領土で実施する「選挙」と呼ばれるものも、その結果も、過去及び未来において、決して承認しない。ロシアが表明した、大統領選挙の投票をウクライナの地域で実施するという意図は、ウクライナの主権の言語道断の侵害である。

 我々は、民間人及び重要な民間インフラに対するロシアによる継続的かつ残酷な攻撃並びにウクライナにおいてロシア軍によって行われた性的暴力を含む戦争犯罪を強く非難する。我々は、ロシアが占拠している領域におけるロシアの人権侵害を強く非難する。我々は、国際法に沿って、ウクライナの人々に対する残虐行為に責任を有する者の責任を追及することに引き続きコミットしている。我々は、国際刑事裁判所の検察官、ウクライナ検事総長及びそれぞれの管轄下におけるその他の各国の検察官による捜査を支持する。我々は、ウクライナに対する侵略犯罪に関する法廷の設置を模索する、コアグループにおける進行中の議論を歓迎する。我々は、ロシアに対し、不法に拘束した全ての者を解放し、不法に移送または追放した全ての民間人について、まず何千人もの子どもから、安全に帰還させるよう求める。我々は、ウクライナ及びカナダにより立ち上げられたウクライナの子どもたちの帰還のための国際コアリションを歓迎する。我々はまた、全ての戦争捕虜の交換に向けて前進することの重要性を強調し、この点に関する他のパートナー国及び主体による取組を歓迎する。最後に、我々は引き続きウクライナの避難民及び難民を支援し、支援を必要とする人々を保護する。我々は、欧州評議会の「ウクライナの損害を登録する機関」に対する我々の支持を改めて表明する。

 ロシアのウクライナに対する侵略戦争が、グローバルな食料安全保障を引き続き損なう中、我々は、世界への食料供給に資する、黒海を通じた食料輸出を大幅に拡大したウクライナの成功を祝福する。ウクライナの海洋回廊及びEUの連帯レーンによって、ロシアによるウクライナの港への攻撃及び黒海穀物イニシアティブからの離脱にもかかわらず、ウクライナは2023年の収穫で得た全ての穀物を輸出する過程にある。我々は、ウクライナが本年主導する穀物検証スキームの実施を通じたものを含め、ウクライナが最も脆弱な国々に穀物や農産物を輸出できるよう引き続き支援する。我々はロシアに対し、食料供給を武器化する取組を停止し、黒海の安全な商業航行を支持するよう求める。

 ロシアの無責任な核のレトリック、戦略的威嚇の態勢及び軍備管理体制の毀損は受け入れられない。ロシアのウクライナに対する侵略戦争の文脈における、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない。

 3.最近承認された我々の制裁パッケージによって示されるように、我々は、引き続きロシアの戦争のコストを引き上げ、ロシアの収入源を低下させ、軍事機構を構築するロシアの取組を阻害する。我々は、ロシアに対する制裁を完全に実施及び執行し、必要に応じて新たな措置を講じることに引き続きコミットしている。我々は、我々の制裁や輸出管理措置を回避し、迂回しようとするあらゆる試みに対して、第三国と緊密に協力し、引き続き対抗する。我々は、ロシアが兵器又は兵器のための主要な投入物を獲得することを支援する第三国の企業及び個人に対して、追加的な制裁を科す。我々はまた、ロシアの兵器生産又は軍事産業の発展を支える機械及びその他の装置をロシアが獲得することを支援する者に制裁を科す。

 我々は、エネルギー及びその他の商品からのロシアの収入に対し、引き続き大きな圧力をかける。我々は、石油の上限価格の遵守及び執行を厳格化するための措置を引き続き講じる。供給の安定性の維持に取り組む一方で、我々は、ロシアの石油の輸送中に詐欺的な行為に関与した者及び上限価格の違反から追加的な収入を得るためにロシアが発展させたネットワークに対して追加的な制裁措置を科すことによるものを含め、上限価格の違反に対応する。我々は、ロシアの将来のエネルギー収入を制限するための措置を引き続き講じる。我々は、引き続きロシアの将来のエネルギー事業の開発を妨げ、エネルギー輸送及びその他のサービスのための代替手段の開発を妨げる。我々は、金属からのロシアの収入を減らす取組を継続する。

 我々は、適切な場合に第三国における団体に追加的な措置を科すことによるものを含め、ロシアの戦争を実質的に支援する第三国の主体に対して引き続き行動をとる。我々は金融機関に対し、ロシアの軍事機構を支援することを控えるよう求め、このような行動を抑止するため、我々の法制度と整合的に、適切な措置を講じる。ロシアによる防衛産業基盤のための品目又は装置の獲得を促進する金融機関及びその他の団体は、ウクライナの領土一体性、主権及び独立を損なう行動を支援している。我々は、関連する国連安保理決議に直接違反する、北朝鮮の弾道ミサイルの北朝鮮による輸出及びロシアによる調達を強く非難し、北朝鮮及びロシアに対し、そのような活動を直ちに停止するよう求める。我々は、イランに対し、ロシア軍及びそのウクライナにおける戦争への支援を停止するよう求める。我々は、兵器及び軍事生産用装置のための軍民両用の資材及び部品の中華人民共和国における商取引からロシアへの移転について懸念を表明する。

 ウクライナで生じさせた損害について賠償をするか否か、またいつ行うかをロシアが決めるのは正しいことではない。世界銀行によれば、これらの損害は現在4860億米ドルを超えている。自らが生じさせている損害について支払を行うというロシアの国際法上の義務は明確である。我々は、時はロシアに味方している、インフラや生活を破壊することはロシアには何の結果ももたらさない、又は、ウクライナを経済的に破綻させることによりロシアが打ち勝つことができるといった、あらゆる誤った考えを払拭することを決意している。ロシアは自らが負う支払を無期限に遅らせられるべきではない。我々は、ウクライナの経済を破壊するロシアの試みと、ロシアの継続的な国際法上の義務の不履行を妨げることの緊急性を認識している。我々は、完全なアカウンタビリティを確保することを決意しており、ロシアの侵略による損失、負傷及び損害に対する賠償を得るためにウクライナを支援する。

 我々は、我々それぞれの法制度と整合的に、自らがウクライナに生じさせた損害に対してロシアが支払を行うまで、我々の管轄下にあるロシアの国家が有する資産を引き続き動かせないようにしておくことを再確認する。我々は、動かせないようになっているロシアの国家が有する資産から得られる証券集中保管機関の特別な収入に関するEUの法的措置の採択を歓迎し、適用可能な契約上の義務に整合的かつ適用可能な法令に従って、その使用を可能にするさらなる措置を奨励する。我々は、我々の閣僚に対し、それぞれの法制度及び国際法と整合的に、動かせないようになっているロシアの国家が有する資産を、ウクライナを支援するために活用し得る、全ての可能な方策に関して、作業を継続し、プーリア・サミットに先立ちアップデートするよう求める。

 4.我々が前進するに当たり、我々はゼレンスキー大統領の平和フォーミュラを更に発展させるために、我々のウクライナへの支援を継続するとともに、国連憲章の原則及び国際法と整合的に、また、ウクライナの主権及び領土一体性を尊重して、包括的で公正かつ永続的な平和を支持することにコミットする。ウクライナがこの容赦ない戦争の3年目を迎えるにあたり、ウクライナの政府と人々は、必要とされる限りG7の支援を期待することができる。