データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アウトリーチ国及び国際機関とのG7会合に係る議長サマリー

[場所] ボルゴ・エニャーツィア
[年月日] 2024年6月14日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

本日、G7首脳は、アルジェリア、アルゼンチン、ブラジル、インド、ヨルダン、ケニア、モーリタニア、チュニジア、トルコ及びアラブ首長国連邦の首脳と会合した。首脳は、アフリカ開発銀行、国際通貨基金、経済協力開発機構、国連、世界銀行の長と共に、国連憲章の目的と原則に基づく国際秩序が試練の時を迎えている今、グローバル・サウスの国々に不釣り合いな影響を与える国際的な課題について議論した。

これらの課題は、安全保障に対するかつてない脅威と相まって、誰一人取り残さない解決策を推進するため、連帯と責任の共有に基づく、断固とした公平な国際的対応をこれまで以上に必要としている。

<アフリカと地中海>

より広範な地中海地域と共に、アフリカは世界の未来を形成していく。アフリカは、人口動態の躍進を経験しており、人口の60%が25歳未満であり、最も若い大陸である。2050年までに、アフリカの人口は25億人に達し得る。アフリカはまた、豊富な天然資源を有し、人材の巨大なプールであり、経済成長のための十分な余地がある。

首脳は、国際機関における発言権の拡大を求めるアフリカ諸国の要請を支持した。また、昨年のインド議長国下で決定されたアフリカ連合を常任メンバーとして受け入れるというG20の決定や、理事会にサブサハラ・アフリカのための第3の議長を設けるというIMFの決定を歓迎した。

首脳はまた、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に沿って、同地域のインフラ、経済及び社会の開発を促進し、価値創造、安定、繁栄に向けて取り組む同地域の国々を支援することにコミットした。首脳は、「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」、「グローバル・ゲートウェイ」及びイタリアの「アフリカのためのマッテイ計画」といった、共有された原則、現地のオーナーシップ、目に見えた取組に根ざした対等なパートナーシップの必要性に焦点を当てた。

首脳は、マルチステークホルダーのパートナーシップを活用し、他の国際的取組との相乗効果を確立することにより、食料安全保障にとっての障壁を克服し、強靭な農業と食料システムを構築し、十分な食料を得る権利を実現することを目指す、「G7プーリア食料システム・イニシアティブ」を歓迎し、支持することにコミットした。

<人工知能>

首脳は、ローマ教皇フランシスコがG7サミットに前例のない形で参加したこと及び議論を深め、方向性を示した、人工知能(AI)に関する貴重な発言を行ったことに感謝した。

AIは、産業生産と生産性を高める潜在性を秘めた大きな技術である。同時に、それは制御されなければ、労働市場や社会構造を大きく破壊し得る。首脳は、透明性が高く、労働者の権利と人権を尊重し、より良いサービスの提供に資する、人間中心の倫理的なAIの重要性を強調した。

首脳は、全ての人のための開かれたAIのインフラと解決策を促進することによって、デジタル格差を解消し、デジタル包摂性を実現する必要性を強調した。この点に関して、首脳は、現地のAIデジタル・エコシステムを支援し、持続可能な開発のためのAIを推進する能力を強化するため、「持続可能な開発のためのAIハブ」を設立するというイタリアの提案を歓迎した。

首脳は、将来のスキルを予測し、労働者と雇用者がAIと共に働くために必要な能力を身につける必要性について議論した。この点、首脳は、デジタルコンピテンシーと有能な労働力に対する需要を満たすための教育、国際的な流動性及び生涯学習の重要性を強調した。

首脳はまた、ジェンダー間のデジタル格差を含むデジタル格差を解消し、デジタル包摂性を実現するため、途上国及び新興市場国との協力とガバナンスを推進することにコミットした。

<エネルギー>

パリ協定を完全に実施することが急務であることを再確認しつつ、首脳は、ネット・ゼロ経済への移行は包摂的であり、社会開発と経済成長の機会と見なされるべきだと強調した。そのためには、気候変動対策から生じる可能性のある社会的及び経済的な負の影響に対処しつつ、現地の経済にとっての利益を最大化する必要がある。

首脳は、クリーン・エネルギー移行が、アフリカにおける生産性、産業成長、経済発展の新時代を促進するためのまたとない機会を提供することについて一致した。このため、首脳は、アフリカ7か国との共同声明で承認され、さらに3か国から既に支持されている、アフリカ全域のクリーン・エネルギー投資を促進し、障壁とギャップに対処し、産業発展を推進することを図る「アフリカにおける成長のためのエネルギー・イニシアチブ」の立ち上げを歓迎した。

グローバルな課題には、連帯と国連憲章の目的及び原則に根ざした解決策の共有が必要であり、多国間の場におけるG7と外部のパートナー間の協力の強化がこれまで以上に不可欠であることを認識しつつ、首脳は、この時宜を得た有益な意見交換を行ったG7議長国イタリアに謝意を表明した。

首脳は、世界中の安全と繁栄に満ちた未来を確保することのできる前向きなアジェンダに取り組むことによって、これらの問題やその他の喫緊の問題に関与し続けることについて一致した。