データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アントニオ・タヤーニ伊外務・国際協力大臣による国連総会ハイレベルウィークでのG7外相会合議長としての声明

[場所] 
[年月日] 2024年9月23日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 冒頭

ニューヨークにおける本日の会合において、未来サミットを受け、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国及び米国のG7外相並びにEU上級代表は、法の支配、人道的原則及び国連憲章を含む国際法を遵守すること、並びに、人権及び全ての個人の尊厳を守ることに対するコミットメントを強調した。

G7メンバーは、平和と安定を維持し、気候危機といったグローバルな課題に対処し、持続可能な開発のための2030アジェンダ及び持続可能な開発目標(SDGs)の達成を前進させるために、共同の行動を強化するとの決意を再強調した。

そうする上で、G7メンバーは全ての人々が自由に権利と自由を行使できる、自由な社会及び民主主義の原則を推進するとの彼らのコミットメントを新たにした。

2. 未来サミット

未来サミットにおいて、世界のリーダーによって採択された「未来のための約束」に反映されているように、国連憲章の原則に基づく多国間システムを強化するとの新たな決意の精神の下、G7メンバーは、多国間システムが今日の世界をよりよく反映し、将来の複雑なグローバル課題に対応するにふさわしいよう、多国間システムを堅持し、改革することを目的とし、共通の解決策を模索するために、対話、相互理解及び尊重を通じて、国連システムの加盟国及び全ての関係するステークホルダーと引き続き協力することにコミットした。G7メンバーは、国連事務総長及び国連総会の役割を強化するために全ての加盟国と共に取り組むことにコミットすることを再確認した。G7メンバーはまた、国連安保理改革に再びコミットした。

3. ウクライナへの確固たる支援

G7メンバーは、ロシアによる残酷で不当な侵略戦争に対して、ウクライナが自由、主権、独立及び領土一体性を守る中、ウクライナへの揺るぎない支持を再確認した。G7メンバーは、ロシアによる、国連憲章を含む国際法、及び国際秩序を支える基本原則のあからさまな違反を強く非難した。G7メンバーは、ウクライナにおけるロシア軍による深刻な国際人道法の違反を強く非難した。これは一般市民に対して、破壊的な影響を及ぼしている。女性、子供を含む市民及び戦争捕虜に対する暴力は許されない。

G7メンバーは、ロシアによる、重要なインフラに対する繰り返しの攻撃に憤りを表明し、いかなる民間の建物、及び病院までをも標的としていることを可能な限り最も強い言葉で非難した。ウクライナのエネルギー網及びその発電能力の保護並びに強靱性を確保することは、冬が近づく中、引き続き基本的かつ喫緊の優先事項である。G7メンバーは、8月22日に開かれた、エネルギー安全保障に係る国際会議及びG7エネルギー・グループの現在行われている調整を歓迎した。G7メンバーは、ウクライナの緊急の短期的な資金ニーズを満たす支援並びに長期的な復旧及び復興の優先事項の支援に対するコミットメントを改めて表明した。

ロシアはその侵略戦争を終結させ、自らがウクライナにもたらしている損害への支払いを行わなければならない。G7メンバーは、ロシアにこれらの義務を果たさせるための全ての可能で合法的な方策を模索し用いるとのコミットメントを改めて表明した。

G7首脳から委任された、「ウクライナのための特別収益前倒し(ERA)融資」の立上げは、欧州連合及びその他の関係する管轄下にあるロシアの国家が有する資産が動かせないようになっていることに起因する特別な収益の将来のフローにより利払いされ返済される約500億米ドルをウクライナへの追加的な資金として利用可能とする。

G7外相及び上級代表は、財務相と共に、G7首脳のコミットメントを今年末までに実行するために取り組んでいる。G7メンバーは、ウクライナにこの支援を提供するとのコミットメントにおいて、連帯を維持する。G7メンバーは、ロシアが侵略をやめ、ウクライナにもたらした損害をロシアが支払うまで、全ての適用可能な法令及びそれぞれの法制度と整合的な形で、彼らの管轄下にあるロシアの国家が有する資産を、引き続き動かせないようにしておくことを確認した。

G7メンバーはまた、資金の拠出を調整することを助け、これらがウクライナが効果的に吸収できるペースでウクライナの最優先のニーズに沿った形で支援がなされることを確保するため、ウクライナドナープラットフォームの強化にコミットした。これは、欧州への道に沿ったウクライナの改革を前進させるための及び2025年にイタリアで開かれるウクライナ復興会議の成功に貢献するための鍵となる役割を果たす。

ウクライナに対する侵略戦争の文脈における、ロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない。したがって、G7メンバーは、ロシアによる無責任かつ脅迫的な核のレトリック及び戦略的威嚇の態勢を可能な限り最も強い言葉で非難した。G7メンバーはまた、報告されているロシアによるウクライナにおける化学兵器及び戦争の方法としての暴動鎮圧剤の使用に最も深い懸念を表明する。

G7メンバーは、国際法に沿って、ウクライナにおける残虐行為に責任を有する者の責任を追及することに引き続きコミットした。G7メンバーはまた、外国企業の接収を非難し、ロシアに対し、これらの措置を撤回し、彼らに標的にされている企業との間で受入可能な解決策を追求するよう求めた。

G7メンバーは、潜在的に国際社会全体への影響を及ぼすような、原子力安全及び核セキュリティの深刻なリスクに晒している、ロシアによるザポリッジャ原子力発電所の占拠並びに継続的支配及び軍事化を非難した。G7メンバーは、このようなリスクを軽減することに向けられた国際原子力機関(IAEA)の取組を支持することを改めて表明した。

G7メンバーは、2024年7月11日のワシントンにおけるウクライナ・コンパクトの立ち上げを想起しつつ、ウクライナの自衛権への支持を改めて強調し、ウクライナの長期的な安全保障に対する彼らのコミットメントを改めて表明した。G7メンバーは、ウクライナの自衛を支援するため、産業生産及び輸送の能力を増加させる意図を再確認した。G7メンバーは、ウクライナが自国の軍を近代化し、自国の防衛産業を強化する取組に対する支持を強調した。G7メンバーは、人命を救い、重要なインフラを保護するために、ウクライナの防空能力を強化する決意を表明した。

G7メンバーは、既に実施されている包括的な制裁パッケージ及び経済的措置を基礎として、ロシアによる侵略戦争のコストを引き上げることに引き続きコミットした。既存の措置は、ロシアの軍事機構及び侵略に資金を投入する能力に重大な影響を与えてきたが、ロシア軍は、引き続きウクライナのみならず国際的な安全保障に対して脅威を与えている。

G7メンバーは、金融機関を含む、中国及び第三国に所在する、ロシアの軍事機構を実質的に支援する主体、並びにロシアによる防衛産業基盤のための品目の獲得を促進する他の団体に対して、彼らの法制度と整合的に、適切な措置をとり続ける意図を表明した。

G7メンバーは、エネルギー及びその他の商品からのロシアの収入に、大きな圧力をかけ続ける意図を表明した。これは、市場の安定性の維持に取り組みつつ、ロシアのシャドーフリートに対するものを含め、石油のプライス・キャップ政策の遵守及び執行を強化する更なる措置を講ずることにより、その効率を改善することを含む

G7メンバーは、G7+(プラス)エネルギー調整グループを通じた国際的な支援の調整によるものを含め、ウクライナのエネルギー安全保障に対する支援を行う緊急性を特に強調した。G7メンバーは、ウクライナドナープラットフォームを通じ、また、民間投資の動員及び市民社会の参加の促進により、ウクライナ当局及び国際金融機関と協働し続けることの重要性を強調した。

G7メンバーは、国内で退去させられた何百万人ものウクライナ人という現実、障害のある退役軍人及び市民の社会への再復帰を含む、包摂的で権利に基づくジェンダーに配慮した復興の重要性、並びに女性、子供、及びその他のロシアによる侵略戦争から不均衡に影響を受けている人々の集団のニーズに対処することを強調した。G7メンバーは、ロシアによるウクライナの子供たちの不法な追放に対する彼らの非難を改めて表明し、子供たちの安全な帰還を確保するための協調した取組を歓迎した。G7メンバーは、ロシアに対し、ロシアが不法に拘束した全ての者を解放し、不法に移送または追放した全ての民間人について、まず子供たちから、安全に帰還させるよう求めた。G7メンバーは、10月30日から31日にカナダが主催する、ウクライナの10項目の平和フォーミュラの「人道的側面に関する閣僚級会合」を歓迎した。

G7メンバーは、世界の食料供給、特に最も脆弱な国にとって不可欠な、ウクライナの農業部門への支援の必要性を改めて表明し、ウクライナからの穀物、食料品、肥料及び投入物の阻害されない輸出を求めた。

G7メンバーは、ウクライナの持続可能な経済復興に民間部門を関与させることの重要性を認識した。G7メンバーは、特に汚職対策、司法制度改革、地方分権化及び法の支配の推進の分野において、ウクライナ自身が国内改革の取組を実施し続けることを歓迎し、その重要性を強調した。これらの努力は、ウクライナの抱く欧州・大西洋への道に沿ったものである。G7メンバーは、これらの努力におけるウクライナの政府及び人々の取組を支援し続ける必要性について全会一致した。

G7メンバーは、ロシアが、違法に占拠したウクライナのクリミア自治共和国及びセヴァストーポリ市において不当な「選挙」を実施したことを断固として非難した。ロシアの行動は、またしても、ウクライナの領土一体性、主権及び独立、並びに国連憲章を露骨に無視していることを示している。G7メンバーは国際社会の全てのメンバーに対し、ロシアの不当な行動を認めることを控えるよう求めた。

G7メンバーは、6月15日及び16日にスイスで開催された「ウクライナの平和に関するサミット」を歓迎し、このサミットが、国連憲章及びその原則を含む国際法並びにウクライナの主権及び領土一体性の尊重に基づき、平和のための枠組を構築するために必要となる主要な優先事項に焦点を当てたことを歓迎した。G7メンバーは、包括的で公正かつ永続的な平和に到達するため、全ての国際的なパートナーの建設的な関与を通じて、会議のフォローアップを行うことに引き続きコミットした。

G7メンバーは、ロシアが外国からの情報操作及び干渉(FIMI)キャンペーンを拡大し続けていることを認識した。G7メンバーは、ウクライナに対する侵略戦争を支援するために、ロシアがFIMIを用いていることを非難した。G7メンバーは、民主主義に対する外国の脅威に対抗するための共同の対応の枠組を設けることにより、G7即応メカニズムを補強する決意を改めて表明した。

4. 中東情勢

G7メンバーは、2023年10月7日のハマスによる恐ろしい攻撃に対する彼らの非難を強調した。101人の人質が依然としてハマスに拘束されている。G7メンバーは、中東におけるエスカレートする暴力の傾向並びに、地域の安定及びガザ地区からイスラエル・レバノンのブルー・ラインに至るまで、この紛争によって打ち砕かれた市民の生活に対する余波を、深い懸念とともに留意した。行動と反動は、この危険な暴力の連鎖を拡大させ、中東地域全体を、想像できない結果を伴うより広範な地域紛争に引きずり込むリスクがある。G7メンバーは、いかなる国も中東における更なるエスカレーションから得るものはないことを強調しつつ、現在の破壊的なサイクルを止めることを求めた。

G7メンバーは、ブルー・ライン沿いの情勢に対する深い懸念を表明した。G7メンバーは、そうしたリスクを軽減する上でのレバノン国軍(LAF)及び国連レバノン暫定隊(UNIFIL)による不可欠な安定化の役割を認識した。G7メンバーは、国連安保理決議(UNSCR)1701(2006年)の完全な履行を要求し、全ての関係者に対し、沈静化に向けた即時の措置の実施を要請した。

G7メンバーは、米国、エジプト、カタールによって行われている、ガザにおける紛争の当事者間の解決策に達するための、進行中の仲介努力への強力な支持を再確認した。G7メンバーは、国連安保理決議2735(2024年)の履行並びに、ガザにおける即時停戦、全ての人質の解放、ガザ全域での人道支援の大幅かつ持続的な増加、及び安全なイスラエルと主権を持ったパレスチナ国家とが共存する二国家解決への道の確保のための恒久的な危機の終結につながる、バイデン大統領により5月に概説された包括的なディール案に対する完全なコミットメントを強調した。G7メンバーは、当事者に対して直接的に影響を与えることのできる立場にいる国々が調停努力を強化する必要を強調しつつ、紛争当事者に対し、停戦提案を明確に受け入れるよう要請した。G7メンバーは、遅滞なく、また無条件での停戦提案の条件の完全な履行を求めた。

G7メンバーは、全ての当事者に対し、国際人道法を含む国際法を完全に遵守することを求めた。G7メンバーは、全ての市民の犠牲を等しく憂慮し、1年近く続く敵対行為及び地域の不安定の末に、最も高い代償はほとんどが女性や子供どもを含む市民によって支払われていることを、重大な懸念をもって留意しつつ、この紛争が市民にもたらした重い犠牲に対する深い警鐘を表明した。市民の保護は、常に、全ての当事者の絶対的な優先事項でなければならない。

G7メンバーは、ガザ地区の人口のほとんどに影響を与えている、かつてないレベルの食料不足に対する懸念を表明した。完全で、迅速で、安全で、妨げられないあらゆる形態かつ全ての関連する検問所を通じた人道アクセスを確保することは、引き続き絶対的な優先事項である。G7メンバーは、全ての当事者に対し、妨害されない支援の提供を可能にし、衝突回避措置を適切に実施することによって人道支援従事者の保護を確保することを要請した。G7メンバーは、ポリオ予防接種キャンペーンに関するものを含む、特に最も脆弱な立場にある人々への医療支援において、国連機関やその他の人道支援関係者の果たしている不可欠な役割を認識した。G7メンバーは、UNRWAがそのマンデートを効果的に遂行することへの支持を表明し、当該国連機関が果たす重要な役割を強調した。

G7メンバーは、中東和平プロセスにおける再活性化された取組を通じ、イスラエルとパレスチナという二つの民主主義国家が、国際法及び関連する国連決議と整合的に、安全かつ承認された国境の中で平和的に共存する二国家解決のビジョンへの揺るぎないコミットメントを再確認し、この点に関し、パレスチナ自治政府の下でガザ地区が西岸と一体となることの重要性を強調した。G7メンバーは、パレスチナ国家の承認を含め、適切な時期における相互承認がその政治プロセスの不可欠な要素となることに留意する。G7メンバーは、パレスチナ自治政府の弱体化のリスクについての懸念を表明し、西岸の経済的安定を維持することの重要性を強調した。G7メンバーは、EUによるパレスチナ自治政府に対する4億ドルのユーロ緊急パッケージを歓迎した。全ての当事者は、イスラエルによる入植地拡大及び入植拠点の「合法化」を含め、二国家解決の見通しを損なう可能性のある一方的な行動や分断を生む発言を控えなければならない。G7メンバーは、西岸の安全と安定を損ない、永続的な平和の見通しを脅かす、パレスチナ人に対する過激な入植者による暴力の増加を非難した。G7メンバーは、西岸における治安情勢の悪化について深い懸念を表明した。

G7メンバーは、市民社会による平和構築の取組が、交渉され永続的なイスラエルとパレスチナの和平に必要な基盤を築くためのより大きな戦略の一部となるよう確保しつつ、そのような取組に対する彼らの支援を緊密に調整し、組織化するために共に行働し、また他の国際的なパートナーと共に取り組むという彼らのコミットメントを改めて表明した。G7メンバーは、イランに対し、地域の緊張の沈静化に貢献するよう呼びかけた。G7メンバーは、イランに対して、中東における不安定化させる行動を止めるよう要求した。G7メンバーは、更なる不安定化をもたらす取組に応じて、更なる制裁を課す又はその他の措置をとる用意があることを強調した。

G7メンバーは、イランが決して核兵器を開発も獲得もしてはならないとの決意、また、イランの核エスカレーションに対処していくために、G7は今後も協力し、また他の国際的パートナーとも連携していくとの決意を改めて表明した。外交的解決がこの問題を解決する最善の方法であることに変わりはない。IAEAがイランの核計画が専ら平和的であることを検証できないため、G7メンバーは、イランの指導者に対して、信頼に足る民生上の正当性がない核活動を停止し、反転させること、また、法的拘束力のある保障措置協定と国連安保理決議2231(2015年)の下でのコミットメントを完全に実施するために、更なる遅滞なくIAEAと協力することを強く求めた。

G7メンバーは、イランによるイランの弾道ミサイルの輸出及びロシアによるその調達を、可能な限り最も強い言葉で非難した。イランが国際社会による繰り返しの停止の呼びかけにもかかわらず、ロシアに兵器を移転し続けている証拠は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争への、イランによる軍事支援の更なるエスカレーションを意味する。ロシアは、ウクライナの市民を殺害し、重要インフラを攻撃するために無人航空機などのイランの兵器を使用している。

G7メンバーは、イランは、ロシアによる違法で不当なウクライナに対する戦争への全ての支援を即時に停止し、このような弾道ミサイル、無人航空機及び関連技術の移転を止めなければならず、これらは、ウクライナの人々だけでなく、より広い欧州及び国際社会への直接的な脅威であると強調した。

G7メンバーは、世界の安全を更に損なわせるロシアのウクライナにおける違法な戦争への容認できない支援について、イランに責任を取らせるとの彼らの確固たるコミットメントを再確認した。本件に関する彼らのこれまでの声明に沿って、G7メンバーは、新規かつ重大な措置で既に対応していると強調した。

また、G7メンバーは、イランの人権侵害、特に女性や少数派グループに対する人権侵害に対する深い懸念を改めて表明した。G7メンバーは、イランに対して、関連する国連人権理事会特別手続のマンデートホルダーのイランへのアクセスを認めることに係る求めを改めて表明した。

また、この地域における沈静化の取組には、アデン湾、バブ・エル・マンデブ海峡、紅海を航行する国際的及び商業的な船舶に対するホーシー派によるあらゆる攻撃の即時かつ無条件の停止も含まれなければならない。G7メンバーは、これらの攻撃への強い非難と、自国の船舶を攻撃から防衛する各国の権利を改めて表明した。G7メンバーは、ホーシー派によるギャラクシー・リーダー号とその乗組員の即時解放を要求した。G7メンバーは、8月21日の商業船スーニオン号への攻撃及び、海難救助が続く中、環境への壊滅的な影響という進行中のリスクに対する強い懸念を表明した。G7メンバーは、EUの海上作戦「アスピデス」と、米国主導の「オペレーション・プロスペリティ・ガーディアン」(繁栄の守護者作戦)による死活的な海上交通路の保護に向けた取組を歓迎した。G7メンバーは、海上安全保障のみならず、国連安保理決議2722(2024年)に則り、国際法に従って航行及び貿易の自由を守ることにコミットしている各国の取組を評価した。

5. アフリカ諸国とのパートナーシップの促進

G7メンバーは、アフリカ諸国による持続可能な開発及び雇用の創出と成長の追求を支援するという彼らのコミットメントを再確認した。共有された原則、民主的価値観、現地のリーダーシップ及び具体的な取組に基づく公正なパートナーシップの促進に、引き続き焦点を当てる。

G7メンバーは、アフリカ連合の「アジェンダ2063」及び、現地及び地域の食糧安全保障、インフラ、貿易、農業生産性を改善させるための計画を含むアフリカ諸国の具体的なニーズに彼らの行動を整合させるという彼らの意図を改めて表明した。G7メンバーは、今後10年間のアフリカの成長のための重要な要素である、アフリカ大陸自由貿易圏の実施に向けた彼らの支援を表明した。

G7メンバーは、アフリカ諸国及び地域機関との互恵的な協力を強化する必要性を強調した。アフリカ諸国への財政支援を維持することに加え、G7メンバーは、国内資源を動員し、民間投資の増加を促進することで、G7の資源の調整及び効率性を向上させることへの決意を表明した。

G7メンバーは、アフリカ連合(AU)のG20への常任メンバーとしての参加及び11月の国際通貨基金(IMF)理事会におけるサブサハラ・アフリカのための追加の理事の設置を歓迎した。

G7メンバーは、民間部門での投資を増加させ、構造改革を促進し、現地の起業を支援し、特にエネルギー部門における協力を促進するための手段である、G20「アフリカとのコンパクト」へのコミットメントを再確認した。G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)及びEUグローバル・ゲートウェイのようなイニシアティブは、プロジェクト選定、調達及び金融における透明性を確保し、アフリカにおける持続可能で、強靱で、経済的に実行可能なインフラの促進に貢献しうる。この枠組みの中で、G7メンバーはイタリアのアフリカのためのマッテイ計画を歓迎した。

G7メンバーは、持続可能な開発、平和、安全及び民主主義は共に進むことを認識し、テロ、暴力的過激主義、不安定化を助長する状況に対処しながら、民主的統治及び人権の尊重を強化することにおいてアフリカ政府を支援するという彼らのコミットメントを再確認した。

G7メンバーは、クレムリンにより支援されているワグナー・グループ及びロシアにより支援されているその他の組織による不安定化させる活動についての彼らの深い懸念を表明した。G7メンバーは、人権侵害に責任のある全ての者のアカウンタビリティを求めた。

6. インド太平洋

G7メンバーは、包摂的で、繁栄し、安全で、主権、領土一体性、紛争の平和的解決、基本的自由及び人権を基礎とする、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントを改めて表明した。G7メンバーは、地域のパートナーや機関、とりわけ東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力することの重要性を再確認した。ASEANの中心性・一体性に対する全面的な支持を再確認した。G7メンバーはまた、「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」を通じて明確にされた太平洋島嶼国の優先事項を支援するために取り組む彼らの意図を再確認した。

G7メンバーは、中国との建設的かつ安定的な関係を追求する中で、懸念を伝達し相違を管理するための直接的かつ率直な関与の重要性を認識した。G7メンバーは、グローバルな課題に対処するために中国と協力する用意があることを再確認した。彼らは、中国のロシアへの支援に対し、深刻な懸念を表明した。G7メンバーは、中国に対し、国際的な平和と安全を促進するための取組を強化し、また、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件にその軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけるよう求めた。G7メンバーは、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じたものを含め、領土一体性並びに国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促した。また、G7メンバーは、ロシアがウクライナにおける違法な戦争を継続することを可能にし、重大かつ広範な安全保障上の影響を及ぼす、ロシアの防衛産業基盤に対する中国の継続的な支援に深い懸念を表明した。G7メンバーは中国に対し、兵器部品及び装置を含め、ロシアの防衛部門への投入物となっている軍民両用の資材の移転を停止するよう求めた。

G7メンバーは世界貿易における中国の重要性を認識した。しかし、通貨に影響を与えるのみならず、我々の労働者、産業並びに経済的強靱性及び経済安全保障を損ないつつ、拡大する様々な分野における世界的な波及、市場の歪曲及び有害な過剰生産につながっている、中国の恒常的な産業の重点化並びに包括的な非市場的政策及び慣行に対して懸念を表明した。G7メンバーは、デカップリングはしておらず、又は内向き志向になっていない。G7メンバーは、必要かつ適当な場合に、デリスキング及びサプライチェーンの多様化を行い、経済的威圧に対する強靱性を促進している。G7メンバーは、中国に対し、特に重要鉱物について、サプライチェーンの重大な混乱につながり得る輸出管理措置をとることを控えるよう求めた。G7メンバーは、パートナーと共に、それぞれの産業能力の構築に投資し、多様で強靱なサプライチェーンを推進し、重大な依存関係及び脆弱性を低減する。

G7メンバーは、東シナ海と南シナ海における状況について引き続き深刻に懸念しており、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを改めて表明した。G7メンバーは、南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がないことを再確認し、また、G7メンバーは、南シナ海における中国の軍事化、威圧的かつ脅迫的な活動への反対を改めて表明した。G7メンバーは、国連海洋法条約(UNCLOS)の普遍的かつ統一的な性格を改めて強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認した。G7メンバーは、2016年7月12日の仲裁裁判所による仲裁判断が、仲裁手続の当事者を法的に拘束する重要なマイルストーンであり、当事者間の紛争を平和的に解決するための有用な基礎であることを改めて表明した。G7メンバーは、中国による、南シナ海における海上保安機関及び海上民兵の危険な使用並びに公海における航行の自由に対する度重なる妨害に改めて強く反対した。G7メンバーは、中国海警局及び海上民兵による、放水銃の使用や衝突を含む、フィリピン船舶に対する危険で妨害的な操船に深い懸念を表明した。

G7メンバーは、台湾海峡の平和と安定が国際社会全体の安全と繁栄にとって不可欠であることを再確認し、両岸問題の平和的解決を呼びかけた。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場に、表明された「一つの中国政策」を含め、変更はない。G7メンバーは、国家性が必須条件でない場合はメンバーとして、必須条件である場合はオブザーバー又はゲストとして、国際機関への台湾の意味ある参加を支持した。

G7メンバーは引き続き、新疆ウイグル及びチベットにおけるものを含む中国の人権状況に懸念を示した。G7メンバーはまた、香港の自治権及び独立機関に対する弾圧、並びに権利及び基本的自由の進行中の侵食を懸念している。G7メンバーは、中国及び香港当局に対し、国際的なコミットメント及び該当する法的義務に従って行動するよう強く求めた。G7メンバーは、北朝鮮による、複数の国連安保理決議に違反する、不法な核・弾道ミサイル計画の継続的拡大及び安定を損なう活動の継続を強く非難した。G7メンバーは、朝鮮半島の完全な非核化を改めて求め、北朝鮮が、全ての関連する国連安保理決議に従って、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、自らの全ての核兵器及び既存の核計画並びにその他のWMD(大量破壊兵器)及び弾道ミサイル計画を放棄するよう要求した。G7メンバーは北朝鮮に対し、朝鮮半島の平和と安定を促進するために対話に復帰するよう求めた。G7メンバーは、全ての国連加盟国に対し、全ての関連する国連安保理決議を完全に履行するよう強く求めた。G7メンバーは、国連安保理北朝鮮制裁委員会(1718委員会)のマンデート更新に対する本年3月のロシアの拒否権行使への深い失望を改めて表明した。

G7メンバーは、関連する国連安保理決議に直接違反する北朝鮮による弾道ミサイルや弾薬の輸出及びロシアによるこれらの調達や、ロシアによる北朝鮮製ミサイルや弾薬のウクライナに対する使用を含め、拡大する北朝鮮とロシアの間の軍事協力を可能な限り最も強い言葉で非難した。G7メンバーはまた、関連する国連安保理決議に違反する北朝鮮への核・弾道ミサイル関連技術のいかなる移転の可能性も深く懸念している。G7メンバーはロシア及び北朝鮮に対し、全てのそのような活動を直ちに停止し、関連する国連安保理決議を遵守するよう強く求めた。G7メンバーは北朝鮮に対し、人権を尊重し、国際人道機関によるアクセスを容易にし、拉致問題を即時に解決するよう強く求めた。

G7メンバーは、中国に対し、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性を損なうことを目指した行為を実施又は容認しないよう、また、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に厳格に従って行動するよう求めた。

7. 地域の課題

ベネズエラ

G7メンバーは、7月28日の投票後の、ベネズエラ情勢について深い懸念を改めて表明した。

G7メンバーは、国連専門家パネル及び独立した国際オブザーバーの報告書、並びに野党が公表したデータが示すように、発表されたマドゥーロの勝利は信頼性及び民主的正統性を欠いていると強調した。G7メンバーは、ベネズエラ国民の意思の尊重を確保するためには、選挙結果が完全かつ独立して検証可能であることが不可欠であると強調した。

G7メンバーは、スペインに避難することを決意したエドゥムンド・ゴンサレス・ウルティアへの逮捕状及び彼の安全に対する継続的な脅威に憤りを表明した。前述した独立した報告書によると、エドゥムンド・ゴンサレス・ウルティアが最多得票を獲得した模様である。

G7メンバーは、ベネズエラ代表に対し、特に野党、人権擁護者、独立系メディアや市民社会の代表者らに影響を及ぼしている、全ての人権侵害、恣意的拘禁、基本的な自由に対する広範な制限を止めるよう求めた。G7メンバーは、全ての政治犯の釈放と、ベネズエラ国民のための自由と民主主義への道を求めた。

G7メンバーは国際社会に対して、ベネズエラを外交上の重要議題として取り扱うよう求め、ベネズエラ国民が選挙で明確に選択したベネズエラ国民主導の民主的かつ平和的な移行を促進するための地域パートナーの取組に対する支持を表明した。

ハイチ

G7メンバーは、2026年2月までに自由で公正な選挙を実施するために必要な一般治安及び安定の条件を整えるという、暫定大統領評議会(CPT)及びコニーユ首相の政府を含むハイチの機関によるコミットメントを引き続き支援していくという決意を表明した。国民の意思の表明は、ハイチにおける、民主主義及び法の支配の完全な回復のための土台となる。

またG7メンバーは、違法取引に従事し、国民に対し残忍な暴力を振るっている武装集団と対抗するハイチ国家警察に重要な支援を提供している多国籍治安支援(MSS)ミッションへの全面的な支援を表明した。

G7メンバーは、国連信託基金への資金拠出や現物支援を通じ、MSSミッションに対し支援を継続することの重要性を強調した。G7メンバーは、既に380人の人員を現地に派遣しているケニア政府による、ハイチ国家警察の平和と安全の回復を支援するとのコミットメントに強い感謝の意を表した。

G7メンバーは、MSSミッション及びハイチにおけるMSSミッションの基本的な役割を強化するために、MSSミッションへの派遣にコミットしている全ての国々に対し、できるだけ早く派遣を行うよう呼びかけた。G7メンバーは、ハイチのパートナー諸国に対し、ハイチの人々への人道支援を継続するとともに、ミッションの成功のために必要な資源が確保されるよう、MSSミッションへの資金援助と現物支援を急ぐことを呼びかけた。

また、G7メンバーは、国連安全保障理事会に対し、自由で公正な選挙の実施に向け、ハイチ国家警察とMSSミッションによって得られた治安を維持するため、国連平和活動を検討するよう求め、国連事務総長に対ししかるべく支援を行うよう求めた。

G7メンバーは、同国の安定化及び完全な民主的統治の回復を支援するとの観点から、ハイチの制度、政治、社会及び治安の動向をモニタリングする上での、ハイチに関するG7作業部会の取組を歓迎した。

リビア

G7メンバーは、リビアの安定、主権、独立及び統一への揺るぎないコミットメントを改めて表明した。G7メンバーは、特にリビア中央銀行と国家高等評議会のリーダーシップをめぐる、現状の脆弱性と持続不可能性を示している最近の同国における動向について深い懸念を表明した。G7メンバーはリビアの関係者に対し、リビア中央銀行の制度的一体性及び国際金融界における地位の回復を開始するために必要な妥協に速やかに到達するよう促した。G7メンバーは、リビアの政治的アクターに対して、更なる政治的緊張及び分裂を生み出し、有害な外国の干渉に対して同国を脆弱にするような有害な一方的な行動を控えるよう呼びかけた。

G7メンバーは、地方選挙の組織化における進展に留意し、全てのリビア国民の自由、公平かつ包括的な参加を呼びかけた。国連の支援の下、リビア国民主導かつリビア国民がオーナーシップを有する政治プロセスを再始動させ、自由かつ公正な大統領及び議会選挙を実施することが、今こそ急務である。

G7メンバーは、リビアの安定化の支援におけるステファニー・コウリーUNSMIL(国連リビア支援ミッション)担当官の取組への支持及び称賛を表明した。

G7メンバーは、事務総長に対し、新たな特別代表を遅滞なく任命するよう要請した。

スーダン

G7メンバーは、スーダンで進行中の戦闘、大量の退去及び飢饉に対する深刻な懸念を改めて表明した。

G7メンバーは、広範な性的暴力やジェンダーに基づく暴力を含む、民間人に対する深刻な人権侵害、及び紛争の両当事者による国際人道法違反を非難した。G7メンバーは、更なる退去を生み出している、深刻化する暴力を即時停止するよう呼びかけ、紛争当事者に対し、民間人の保護を確保するよう要請した。G7メンバーは、スーダンにおける国際法違反に責任を負う全ての者の責任を追及するというコミットメントを改めて表明した。

G7メンバーは、スーダンで飢饉が発生したことは、人道支援関係者のアクセスを制限する取組による直接の結果だと非難した。G7メンバーは、パリ会議及びジュネーブ協議を受けた、チャド・スーダン間のアドレ国境検問所の再開に関する最近の進展に留意した。G7メンバーは、支援を必要とする全ての人々へ支援が届くよう、スーダンへの及び紛争地域を越えた、完全、迅速、安全かつ妨害されない人道アクセスを呼びかけた。

G7メンバーは、全ての当事者に対して、即時に敵対行為を停止し、前提条件なしに継続的な停戦、人道アクセス及び民間人の保護を実現するための真剣な交渉を行うよう要請した。

G7メンバーは外部の関係者に対して、紛争を煽るような行動を控え、ダルフールに対する国連による武器禁輸措置を尊重し、危機の解決に向けて責任ある役割を果たすよう呼びかけた。

G7メンバーは、スーダンに持続的な平和をもたらすための、地域および国際的なアクター並びに組織による調停努力を歓迎した。

紛争終結後に民主主義を回復し、文民および代表機関を再設置及び強化することを目的とした包摂的な国民対話は、継続的な平和の前提条件である。G7メンバーは、スーダンの政治的未来を考えるにあたり、女性を含むスーダン市民社会の代表者が完全に参画する必要性を強調した。