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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国境を越えた抑圧に関するG7首脳声明

[場所] カナナスキス・アルバータ
[年月日] 2025年6月17日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々G7首脳は、国境を越えた抑圧(TNR)に関する報告の増加を深く懸念している。TNRは、国家又はその代理勢力が、自国の国境外にある個人又はコミュニティに対して脅迫し、嫌がらせをし、危害を加え、又は威圧することを試みる、外国からの干渉の攻撃的な形態である。

 TNRは、国家の安全、国家主権、被害者の安全及び人権並びに国際法の原則を損なう。それは、我々の国家における萎縮効果をもたらす。TNRはしばしば、反体制派、ジャーナリスト、人権擁護者、宗教的少数派及び海外在住者コミュニティの一員とみなされる者に影響を及ぼす。

 我々は、以下を含む、ただし以下に限定されないTNRのあらゆる行為を非難する。

・ハラスメント、暴行、拉致又は暗殺のような身体的な暴力の脅迫及び行為

・標的を拘束、強制送還又は抑圧するため、法の域外適用、テロ対策及び捜査の手段を利用することなど、他の外国、国際機関及び政府間組織との協力の悪用

・旅券の没収、書類の無効化又は領事サービスの拒否による強制送還

・服従、沈黙、脅迫、信用失墜又は報復を引き起こすため、ドキシング(個人情報の公開)及び女性を特に標的とした性的中傷キャンペーンといった国境を越えたデジタル抑圧

・監視を行うための、また、実際の標的化及び追跡、ハッキング又はサイバー・ハラスメントを可能にするためのスパイウェア及びサイバーツールの悪用

・家族に対する直接的又は間接的な脅迫

 我々はまた、恣意的拘束といった外国の国家及びその代理勢力による、自国の国境外にいる我々の市民に対する脅威について引き続き取り組む。

 我々は、市民社会、学術界及び民間部門を含む全てのパートナーが、この脅威に対抗する上で果たす役割の重要性を認識する。我々は、標的とされた人々を保護するための具体的な戦略を策定するため、2025年2月にオタワで開催された国境を越えた抑圧に関するG7の多角的なステークホルダー間の対話において発出された行動のための勧告を歓迎する。

 我々G7首脳は、2018年の外国の脅威からの民主主義擁護に関するシャルルボワ・コミットメント及びこれらの勧告を基礎として、TNRの活動に関与する者に対してコストを増大させるため、TNRに関する共通の理解を促進し、意識を高め、説明責任を促進することにコミットする。我々は、これらの取組の一環として以下の措置を講じる意図を有する。

 TNRの脅威並びにそれが人権及び民主主義等に及ぼす破壊的影響について世界的な理解を深める。これには、G7即応メカニズム(RRM)の公開報告書において、TNRを外国からの干渉の重大な媒介手段として報告すること、志を同じくするパートナーとの関与を強化すること及び関連する多国間フォーラムにより広く関与することが含まれる。

 サイバー侵入能力に関するパル・マル・プロセス等のより広範な取組も活用しつつ、TNRに対抗するためのG7の協力を強化するための措置、実施・外交・政策・立法・コミュニティの取組に関するベストプラクティス集並びに世界中で見られたTNRの最新の手法、動向及び方向性に関する情報共有を含む、TNR強靱性及び対応枠組みを策定する。

 G7RRMを通じて、オンラインでのTNRを検出するための集団的能力を構築するためのデジタルTNR検出アカデミーを設立し、G7及びパートナーに、最新技術を活用した脅威を特定し対応するための技術及びツールを提供する。

 英加コモン・グッド・サイバー基金の取組及びTNRの影響を受けている他国と連帯して行動すること等を通じ、TNRの標的となり得る個人及びTNRの脅威に対抗するために積極的に活動している市民社会のメンバーを支援する。

 我々は、コミュニティの安全を確保し、オンライン及びオフラインでの表現の自由を含む人権を擁護し、主権を守るための我々の取組を倍加する。

(了)