[文書名] 繁栄のためのAIに関するG7首脳声明
繁栄のためのAIに関するG7首脳声明
我々G7首脳は、人工知能(AI)に対する人間中心のアプローチが有する、繁栄を拡大し、社会へ便益をもたらし、喫緊の世界的課題へ対処する潜在力を認識する。この潜在力を実現するため、我々は、人々に恩恵をもたらし、外部不経済を低減させ、国家安全保障を推進する、安全で、責任ある、信頼できるAIのイノベーションと導入をより推進しなければならない。我々は、現在及び将来にわたってAIを強化する。そして、我々は、国連グローバル・デジタル・コンパクトに沿って、デジタル格差を解消するために新興市場及び途上国のパートナーと協働する。
我々は、効率性を向上させ、より国民に役立つよう、公共部門においてAIの潜在力を活用しなければならない。我々は、零細企業を含む中小企業が、成長を牽引し雇用を創出する経済の屋台骨であることを認識する。2024年、我々は、幅広い成長を加速させるため、中小企業によるAIを含む新たな技術の導入と開発を支援するために協働することにコミットした。我々はまた、労働市場が直面する課題に対処しつつ、適正な仕事を可能にするために、AIの潜在力を最大限に活用することにコミットした。我々は、信頼できかつ国境を越えたデータの流通を通じて、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の具体化の重要性を改めて表明するとともに、信頼できるAIの開発及び利用を可能にすることの価値を確認する。我々は、ビジネスモデル及び雇用の安定への課題並びにイノベーションを促進する機会を含む文化及びクリエイティブ分野に対するAIの変革的な影響を認識する。
我々は、AI導入の拡大が、より大きな負荷をエネルギー供給網に与え、外部不経済をもたらし、エネルギー安全保障、強靱性及び低廉性に影響することを認識する。同時に、AIはエネルギーに関するイノベーションを促進し、我々のエネルギーシステムの強靱性及び信頼性を強化するために活用できる。
我々は、新興市場国及び途上国のパートナーが、今日の技術革命からの混乱や排除されるリスクを含め、強靱なAIエコシステムの構築における課題に直面しているとの懸念を耳にする。
我々の国民とパートナーが、AIの潜在力を最大限に発揮するため、我々は、以下の取組にコミットする。
人権及びプライバシーを尊重し、透明性、公平性及び説明責任を促進しながら、市民及び企業の双方に対する公共サービスの向上並びに政府の効率化を図り、公共部門におけるAIの導入を加速するため協働する。
・この目的のため、カナダはG7議長国として、G7 GovAI グランド・チャレンジを立ち上げ、公共部門におけるAIの導入に際して直面する障壁に対して革新的で拡張可能な解決策を講じるため、一連の「ラピッド・ソリューション・ラボ」を開催する。
・我々は、グランド・チャレンジを推進するため、政府の既存のAI専門知識を活用し、G7 AIネットワーク(GAIN)を設立する。また、成功したAIプロジェクトの拡大に向けたロードマップを策定し、メンバーに向けてオープンソースで共有可能なAIによる解決策のカタログを作成する。GAINは、政府におけるAIによる解決策が地域社会にとって測定可能で現実的な便益をもたらすことを確保するために協働する。
・ 我々は、関係閣僚に対し、大規模言語モデル及びデジタルインフラを含む、公共部門におけるAIの導入を変革的な方法で加速するための戦略的投資を検討するよう指示する。
中小企業が、個人データ及び知的財産権を尊重するAIを導入し及び開発することを支援し、対応、効率性、生産性及び競争力を強化することで、経済的繁栄を促進する。
・ 我々は、企業がAIを導入し、事業を拡大するための明確で実行可能な道筋を提供する「G7・AI導入ロードマップ」を立ち上げる。このロードマップを通じて、我々は以下にコミットする。
− 計算資源及びデジタルインフラへのアクセスへの支援を含む中小企業のためのAI導入プログラムへの投資を継続する。
− G7における実証済みの事例に裏打ちされた、中小企業によるAI導入のための共通ブループリントを公表する。
− 拡大を目指す企業におけるAIスキルの統合に向けた人材交流に関する我々の協力を深める。
− 広島AIプロセスの成果の活用を含め、AIの導入に関する企業と消費者との間の信用及び信頼を強化するためのツールを開発する。我々は、この取組を推進するために、AIに関するグローバル・パートナーシップのような国際的なパートナーと協力する。
・ 我々は、AIの活用が進む環境に向けて労働者を育成することにより、強靭な未来の労働力を構築する。そのために、我々は、自主的なベストプラクティス大綱の策定を含め、仕事の世界における安全、安心で信頼できるAIの人間中心の導入のための2024年G7行動計画の実施を推進する。
・ 我々は、女児及びグローバル化によって取り残されたコミュニティの住民のSTEM教育追求を促し、あらゆるレベルのAI人材プールにおける女性の割合を高めることにより、経済成長を促進し、人材不足に対処し、機会均等を確保する。
AIがもたらすエネルギー課題に対応し、エネルギー効率性の向上及びイノベーションの推進のためにAIの潜在力を活用する。
・ 我々は、AI及びデータセンターに対するものを含め、我々の経済全体におけるエネルギー課題に対処しつつ、それぞれの国内及び国際的なコミットメントを支援する革新的な解決策について協働する。我々はまた、AIモデルのエネルギー効率性及び資源効率性を改善し、データセンター運用を最適化するイノベーションを支援する。我々は、エネルギー利用の最適化を含むエネルギーに関するイノベーション及び画期的な発見を引き出すためのAIによる解決策を推進し、安全で強靭かつ低廉なエネルギーシステムとサプライチェーンの構築に資するためにAIを導入する。我々は外部不経済を軽減し、人々に恩恵をもたらし、天然資源を保全する解決策を特定することを追求する。我々は、信頼できる国際的なパートナーと知識の構築及び共有において協力し、エネルギー分野におけるAIに関するスキル及び人材の育成を推進する。
・ 我々は、関係閣僚に対し、年内に継続的なデータ分析の提供のための国際的な及び産業界のパートナーとの協力を含むAI及びエネルギーに関する作業計画を策定し、これらのコミットメントを推進するよう指示する。
全ての人に対するAIへのアクセスを拡大するため、新興市場及び途上国のパートナーとの互恵的なパートナーシップを拡大する。
・ 我々は、成長を促進し、パートナーが直面する特有の課題に対応できるようにするため、信頼でき、かつ、安全なAI技術を活用する。このため、我々は、結集した専門知識、資源及びネットワークを活用してAIインフラと能力の格差を埋め、地域主導のAIによるイノベーションへ投資し、相互に合意される条件に基づき知識とAIへのアクセスを共有するため、地域の大学と自主的に協力する。
・ 我々は、開発のためのAI、持続可能な開発のためのAIハブ、カレントAI、フェア・フォワード、広島AIプロセス・フレンズグループ、公共の利益のためのAI等を含むイニシアティブを通じて取組を連携させ、これを実現する。関心のあるG7メンバーは、開発資金提供者連携のためのAIの強化を計画する。
添付:G7・AI導入ロードマップ
我々G7首脳は、急速に発展する人工知能(AI)技術が、AIを事業プロセスに組み込む企業、団体及び国々の競争力を引き出し、前例のない繁栄をもたらすという期待を認識する。我々は、人々に恩恵をもたらし、外部不経済を低減させ、国家安全保障を推進する、安全で、責任ある、信頼できるAIの更なる促進を目指す。我々は、高度なAI研究、世界最高水準の商業的実装並びにビジネス及び政策に係る深い専門知識を通じて、これに取り組む。我々は経済の原動力である零細企業を含む中小企業が、価値と生産性を向上させる方法でAIにアクセスし、それを理解し、導入する条件を整えることを計画する。
このロードマップは、中小企業が不確実性から機会へ移行(AIを認識する段階からAIにより強化される段階への移行)することを支援するため、我々の共通のビジョンと現実的な措置を概説する。2024年の議長国イタリアが作成した、企業、特に零細及び小規模企業におけるAIの導入及び開発の推進要因及び課題に関する報告書に基づき、我々は以下にコミットする。
AI対応及び競争力を加速させる
我々は、研究と実用的なアプリケーションを結びつけるAI導入への取組を強化し、企業、特に中小企業が、生産性、成長及び競争力の向上を促進するAI技術を統合することを支援する。我々は、これらの取組を推進するにあたり、知的財産権を尊重する必要性を認識する。我々は、既にAI導入の促進に向けた措置を講じてきたが、AIの実験段階から実効性のある段階へ移行するため、計算資源へのアクセス、専門知識及びパートナーシップを含め、これらの取組を拡大することは引き続き不可欠である。我々は、特に以下に焦点を当てたAI導入プログラムの推進を目指す。
・ 高度なコンピューティングインフラ連結性及び計算資源へのアクセス、オープンソース及びクローズドソースのAIモデルの効果的な利用の促進、ビジネスメンターシップ並びにAI対応製品やサービスを市場に投入するための学術的な革新と産業への応用の間のギャップを埋めるための的を絞った支援を含む、中小企業及びスタートアップに対する商業化支援。
・ 経済全体におけるAIの展開を加速するための企業とAIソリューションプロバイダー、国内のAI研究機関、学術界、イノベーションハブ及びクラスターとを結びつける、AIの導入促進のための分野横断的な協働。
・ 投資収益を実証し、より幅広い産業の需要を促進するために、分野横断的及び中小企業におけるAIの成功事例を示しつつ、実装が容易かつ既存の解決策を含む実践的なユースケースを開発すること。
・ 企業、特に中小企業が、AIを自信を持ってかつ効果的に導入するために必要なツールとスキルを備えた労働力にアクセスすることを確保するための、AIリテラシーと技術開発の促進。
AI導入ブループリントを策定する
我々は、中小企業によるAIの導入を加速するために、政府や企業に対し、現実的なツール、証拠に基づく政策オプション及び実例を提供するAI導入ブループリントを策定する意図を有する。これは、実証的なG7のAIに関する動向、導入のイニシアティブ及び最前線の中小企業の経験に基づき、経済協力開発機構(OECD)との協力の下、専門家主導の共同研究活動やワークショップから得られた知見を反映した解決策に焦点を当てたリソースとなる。このブループリントは、以下を定める。
・ 中小企業のAI導入のため、障壁を低減し、可能とするエコシステムを構築するために政府が選択できる実施可能な政策提言を提示する。
・ AIの導入に成功したケーススタディを用意し、あらゆる分野の企業や国が参考にするために選択できる具体例を提供する。
G7人材交流を拡大する
我々は、AIに関する専門知識と中小企業を含む企業とを結びつけるため、将来に対応できる労働力の導入を加速し及び育成し、G7の国境を越えた人材交流を拡大することを意図する。我々は、各分野の専門知識と、インパクトのある導入に必要なAI能力とを結びつける取組に重点を置くよう奨励することを期待する。我々は、世界レベルの人材プールによる新興AI研究と商業化の専門知識を現実のビジネスニーズと結びつけるため、人材交流に関して更に協力することを目指す。その実現のため、我々は以下を行うことを計画する。
・ 研究と実用的なアプリケーションを結びつけ、重要な分野における高度な専門知識を育成するために、特にAI導入プロジェクトに焦点を当て、G7メンバーの学生を含む、AIに特化した人材交流を支援する。
・ 中小企業とAIスキルを持つ人材とを結びつけることにより、彼らがAIの機能及びツールにアクセスできるようにし、業務効率及び競争力を高める。
信頼醸成を通じて、AIの機会を引き出す
我々は、日本及びイタリアの議長国下に達成された進展を基礎として、信頼を醸成するため、広島AIプロセスの成果を活用することを計画する。AIの導入が加速する中、特に強力な技術を導入する小規模企業にとって、顧客への安心感を提供するために、信頼が不可欠である。我々は、消費者の信頼を醸成し、市場の機会を引き出す形で、全ての分野と企業規模において責任あるAIの導入を可能にすることを目指しつつ、共有された原則を中小企業向けの具体的なツールに転換する。我々は、以下を実施する。
・ AIの導入における機会及び課題の特定のために、広島AIプロセスに沿って、中小企業、AI開発者、国際標準化機関及びAIに関するグローバル・パートナーシップのメンバーと協力し、マルチステークホルダーによる取組を主導する。
・ AI導入者向けに、関連するリソースを特定し説明するツールキットを公表する。
・ OECDが実施している広島AIプロセス国際行動規範の報告枠組みに関する認識を高める。
(了)