[文書名] G7重要鉱物行動計画
我々G7首脳は、重要鉱物が将来のデジタル経済とエネルギー安全保 障経済の土台であることを認識する。我々は、引き続き、強靱な重要鉱 物サプライチェーンの不可欠な原則としての透明性、多様性、安全性、持 続可能な鉱山開発及び信頼性にコミットし、我々と我々のパートナーの経 済的繁栄への貢献の観点から、トレーサビリティ、貿易及び適正な労働 の重要性を認識する。
我々は、市場原理に基づき管理される強靭な重要鉱物サプライチェー ンへのアクセスに依っている国家安全保障と経済安全保障上の共通の 利益を有している。我々は、重要鉱物分野における非市場的政策及び慣 行が、産業生産に不可欠な磁石用レアアースを含む多くの重要鉱物の 我々の調達能力を脅かしていることを認識する。我々は、我々の経済に 対するこの脅威及び重要鉱物サプライチェーンの強靭性に対する様々な リスクを認識し、我々の経済及び国家安全保障を迅速に守るためにG7 を超えたパートナーと協働する。これには、重要鉱物の不足を予測すると ともに、意図的な市場の混乱への対応を調整し、可能な範囲で採掘、加 工、製品化、リサイクルを多角化、国内化することが含まれる。
我々は、2023年の日本のG7議長国期間中に策定され、2024年に イタリアにより推進された「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラ ン」を基礎に、G7重要鉱物行動計画を策定する。この行動計画は、重要 鉱物の責任ある生産及び供給源の多角化、重要鉱物プロジェクト及び現 地での価値創造への投資の奨励並びにイノベーションの促進に焦点を 当てる。
我々は、以下の分野での行動にコミットしている。
基準に基づく市場の構築
我々は、重要鉱物市場は、労働基準、地域住民との協議、贈賄・腐敗 防止措置を確保し、汚染や土地の劣化を含む負の外部性に対処しつつ、
重要鉱物の責任ある採掘、加工、貿易の実際のコストを反映すべきであ ることを認識する。
我々は、産業界、国際機関、資源産出国、先住民族、地域社会、労働 組合及び市民社会と協力し、重要鉱物の基準に基づく市場を促進するた めのロードマップを策定する。このロードマップは、基準に基づく市場にお ける最低基準を定める一連のクライテリアを確立し、必要な措置としてト レーサビリティを強化する。これらの取組の一環として、市場への潜在的 な影響を評価する。
我々は、関係閣僚に、このコミットメントの達成に向けたマイルストーン を明記したロードマップを、年内に策定するよう指示する。
資本の動員とパートナーシップへの投資
我々は、G7及び世界中で責任ある重要鉱物プロジェクトへの投資拡 大のための協力の必要性を認識する。将来のサプライチェーンを確保し、 有望な鉱山開発・加工プロジェクトが、許認可手続きの遅延、市場操作 及び価格変動等の障壁を克服できるようにするには、即時かつ大規模な 投資が不可欠である。
重要鉱物は、相互に利益をもたらすパートナーシップを構築し、経済発 展、イノベーション、共有された繁栄を推進する機会である。我々は、経 済回廊等における質の高いインフラを整備するために、新興市場及び途 上国のパートナーと引き続き協働する。我々は、投資障壁に対処し、パ ートナー国の投資環境を改善し、G20「アフリカとのコンパクト」を通じ、 低・中所得国における起業家に力を与える政策及び規制改革を支援す る。我々のアプローチは、地域経済の成長を支援し、地域社会の信頼を 築き、投資リスクを軽減し、責任ある民間資本を誘致するための必要な 条件を整えるものである。
我々は、相互の直接的なパートナーシップを通じ、また、民間部門の投 資を促進することにより、責任ある重要鉱物プロジェクトの開発を引き続き支援する。我々は、輸出信用機関及び開発金融機関(DFIs)に対し、 更なる連携の機会を特定するよう奨励する。我々はまた、G7のDFIsが 重要な一歩として重要鉱物プロジェクトにおける調整を強化する取組を 歓迎する。
この勢いをさらに推進するため、我々は、国際開発金融機関及び民間 貸付機関に対して、革新的な資金調達を含め、基準に基づく重要鉱物プ ロジェクトへの投資のために更なる資本を提供するよう奨励する。我々は また、これら機関に対し、既存の資金調達メカニズムを活用し、プロジェク トのリスク軽減、民間資本の最大化及び動員並びに世界的な重要鉱物 サプライチェーンの強靱性と安全保障を強化するよう、奨励する。
我々は、鉱物資源が豊富な新興市場及び途上国のパートナーとの協 力を深めることにコミットしている。我々は、これらのパートナーの能力構 築を支援し、現地での価値創造を促進し、全ての人々に機会を創出し、 責任ある鉱山開発を推進し、鉱業におけるジェンダーに基づく暴力と闘い、 小規模採掘の改善を支援し、世界の重要鉱物のバリューチェーンの多角 化を図る。
この精神に基づき、新興鉱業国における責任ある鉱業関連活動を促 進するため、我々は、世界銀行主導の「強靱で包摂的なサプライチェーン の強化(RISE)に向けたパートナーシップ」の強化へのG7財務大臣によ るコミットメントを歓迎する。関心のあるG7メンバーはまた、鉱物安全保 障パートナーシップ(MSP)とMSPフォーラム及び採掘鉱物金属及び持 続可能な開発に関する政府間フォーラムといったイニシアティブを支援す る。
債務持続可能性と透明性の促進に関する我々のコミットメントを想起し、 我々は、インフラの資金調達を含む、債務水準の増大を抱える途上国が 直面する課題を認識する。我々は、透明で公正な開発金融を通じた債務 持続可能性を促進し、短期的な流動性の問題を含む債務課題に直面す る国々を支援する。我々は、全ての国際的な資金提供者に対し、同様の取組を求める。これには、共通枠組の実施を改善するために、G20内で の取り組むことを含む。
イノベーションの促進
我々は、重要鉱物を市場に供給する上で不可欠な戦略的な技術と加 工のギャップに対処するための、未開拓の潜在性を秘めた豊富な官民 のイノベーション・エコシステムを有する。
我々は、重要鉱物の研究開発における特定分野のイノベーション格差 を埋めるための連携を強化する。特に、加工、ライセンス供与、リサイク ル、代替、再設計及び循環経済に焦点を当てる。我々は、パートナー組 織と協働し、新たな技術と生産プロセスを披露する。
我々は、この取組を推進するため、2025年9月にシカゴで開催される、 米国が議長国を務める次回のクリティカルマテリアル・ミネラル会合に期 待する。
我々は、豪州、インド、韓国の首脳によるG7重要鉱物行動計画への 賛同を歓迎する。
(了)