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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7産業・デジタル・技術大臣会合閣僚宣言

[場所] モントリオール,カナダ
[年月日] 2025年12月9日
[出典] 総務省
[備考] 
[全文] 

我々、G7産業・デジタル・技術(IDT: INDUSTRY, DIGITALAND TECHNOLOGY)担当大臣は、カナダ議長国の下、経済競争力と繁栄に関する共同の優先事項を推進するために会合を開催した。韓国を招待国として、また経済協力開発機構(OECD)をナレッジパートナーとして歓迎した。

過去50年間、G7は協力と連携を通じて世界的な課題に取り組み、世界のリーダーシップの灯台としての役割を果たしてきた。この協力の精神を継続し、私たちG7産業・デジタル・技術大臣は、我々や我々のパートナーの人工知能(AI)や重要な新興技術の商業エコシステムの成長、市場競争とデジタル経済におけるスキルの向上、サプライチェーンと産業の強靭性の強化などを目的として、我々の集団的な経済的繁栄と安全保障のさらなる向上に向けた複数のイニシアティブを推進した。これらは、新たな機会と課題が生まれる状況下で、強固で適応力のある経済を支えることを目的とする。

成長のための人工知能

AIは、効率性と生産性の向上を通じて繁栄をもたらし、産業や経済を変革している。この技術の恩恵を最大限に享受するためには、人間中心のアプローチを促進し、安全で、責任ある、信頼できるAIの広範な普及を可能にする環境を整えることが重要である。我々はイノベーションや成長を推進し、人々に利益をもたらし、負の外部性を軽減し、経済・国家安全保障を促進し、人権を含む適用される法的枠組みを尊重し、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)を通じて実現される、AIの促進に努める。

G7首脳による「繁栄のためのAIに関するG7首脳声明」のコミットメントを踏まえ、我々はG7・AI導入ロードマップのいくつかの側面の実現に向けてそれぞれの努力を集中させた。これには、カナダ議長国による、産業全体の生産性と成長の促進を加速させる可能性を持つ、各分野でのAI導入の実践的な応用例や事例を明らかにする「中小企業におけるAI導入のためのブループリント」の発表が含まれる。我々の「中小企業におけるAI導入のためのブループリントに係る閣僚声明」は、政府や企業のAI導入のためのエコシステム構築を支援可能なリソースを強調している。これらの取組により、特に小規模企業を含む中小企業がAIを業務に組み込むための実用的なノウハウにアクセスできる環境が育まれることを期待する。

我々は、その開発や導入方法を含め、業界に特化した、そしてリスクベースのアプローチを通じて、AIシステムの信頼性を向上させること、そして信頼できるAIの推進に向けた国際協力の深化

の促進の必要性を認識する。今年は、日本の2023年議長国下で開催された「広島AIプロセス」の成果を基に、信頼できるAIの導入における課題やギャップの特定に向けたマルチステークホルダーの取り組みを主導し、特に中小企業に焦点を当てて、あらゆる規模の企業・組織が責任を持ってAIを展開するためのガイダンスを与える「中小企業向けのAI導入のためのツールキット」を発表した。イタリアの2024年議長国下で策定された「行動規範の報告枠組み」のAI提供者による自主的な行動を通じて高度なAIシステムの説明責任を強化し、透明性を確保することでユーザーの信頼を促進する役割及びその継続的な普及への関心を認識する。OECDには、ユーザーや関係者が公表された報告書を容易に理解できるようガイダンスを提供することにより、報告枠組みへの参加を促進する機会を模索することを奨励する。

G7各国の組織のAI導入の過程への支援には、AI特有の人材不足やスキルギャップなど、彼らが直面する障壁への対応も含まれる。さらに、経済成長と繁栄を加速するためには、進化する経済状況に対応するために必要な高度なデジタルスキル、専門知識、技術を備えた強靭な労働力の育成が不可欠である。AIを経済全体に広く開発・展開するために必要とされる幅広い人材プールを認識する。この目的のために、我々は女児及びグローバル化によって取り残されたコミュニティの住民のSTEM(科学・技術・工学・数学)教育追求を促し、あらゆるレベルのAI人材プールにおける女性の割合を高めることにより、機会均等を確保する。G7首脳の国境を越えた人材交流強化のコミットメントを実現するため、G7各国の学生がAIスキル・専門知識を中小企業を含む企業と結びつけることができるようなAIに特化した機会の支援を計画し、これによりAI導入を加速させ、産業や役割を超えてAIを責任を持って効率的に活用できる未来に備えた労働力の育成を目指す。この文脈で、我々は中小企業がAI技術を構築・活用するための研修やリソース提供を重視する。また、中小企業におけるAI活用事例の利点について意識を高め、同時に特に中小企業が

直面するであろう特定の障壁の克服に向けて開かれた透明性のある対話を促進することの重要性

を認識する。

我々はイノベーションを支える科学・技術知識の広範な普及により成長のためのAIを促進するオープンソースソリューションの持つ可能性を、認識する。

また、我々は、公共部門におけるAI導入促進のための協力の重要性も認識する。今年はG7AIネットワークを立ち上げ、各国の公共部門AIリーダーを結集した。共に、ラピッド・ソリューション・ラボを開催し、イノベーションの促進、AIエコシステム間の連携強化、直面する共通の課題への対応を図った。我々は今後も、政府におけるAI活用拡大のためのツール開発及び、オープンソースで共有可能なAIソリューションのカタログの作成による重複作業の削減、政府全体でのAIソリューション拡大のためのロードマップの策定、コミュニティへのAIの影響測定に関する議論を開始する。

量子技術

量子技術は、莫大な経済成長と繁栄をもたらす潜在力を有する。2024年にイタリア議長国が量子技術をG7のアジェンダに取り上げたことを踏まえ、G7首脳は「量子の未来のためのカナナスキス共通ビジョン」を発表した。

このビジョンに示された優先事項を推進するため、カナダ議長国下で「G7量子技術合同作業部会」を試験的に設立した。これにより、関心のあるメンバー間でプロジェクトの自主的な共同呼びかけ等を通じて、研究、開発、商業化に関する協力についての情報を提供し、イノベーションと導入への取組方法に関する政策対話を前進

させ、商業及び防衛応用に向け進展するこれらの技術の潜在的な社会的影響を評価する。また、関心のある一部メンバーによる自主的な共同呼びかけの可能性の探求を歓迎した。

こうした取り組みは、量子技術開発におけるG7協力の強化、科学研究・人材育成・学術界と産業界の連携・投資・商業化・導入の進展を促進することを認識する。

量子技術の経済成長への潜在力を最大限に活用するため、女性及びグローバル化に取り残された

コミュニティを含む全ての人々に向けた、量子分野における雇用に、必要なスキルを個人に身に

つけさせるための人材育成政策を推進することを奨励する。

強靭で競争力のあるデジタル経済

世界のデジタル経済は相互に深く結びついており、政府、企業、ユーザーは国境を越えたデジタルプラットフォーム、データそして技術に依存している。この相互の結びつきは、貿易と成長に不可欠である一方で、市民に便益をもたらすようなオープンで、強靭性があり、競争の確保されたデジタル経済を促進するために、G7において現在行われている協力の必要性を強調している。この認識のもと、我々は信頼性のある越境データ流通を促進し、デジタルトランスフォーメーションによって急速に変容する市場における競争、公正さ、競争可能性を保護し促進する取組を進めた。そのために我々は、プライバシー強化技術(PETs)の推進を通じてDFFTを進展させた。我々は、中小企業がPETsのような技術を採用する際に、実装コストの削減や効果の評価を含めて、支援が必要な場合があることを認める。2025年のカナダ・日本・OECD専門家ワークショップ及びPETs・AIに関するハイレベルラウンドテーブルにおいて検討されたように、我々は、OECDのPETsグローバルリポジトリのようなPETsの理解を深める取組が必要であることを認識する。PETsの採用と開発を進展させるために、我々は、規制の明確さを向上させること、また、相互運用可能で技術的なPETsソリューションに向けたより広範な政策調整を促進することに取り組み続けるべきである。

我々はデジタル時代における繁栄、安定、安全の基盤として、市場に基づく経済と国際協力を支持することを確認する。この取組の一環として、我々はアルゴリズム価格設定が競争に与える潜在的な影響を検討した2025年のG7競争サミット、特にロックイン効果やデジタル市場における競争可能性の欠如などのデジタル競争問題に焦点を当てている更新されたデジタル市場における競争改善のためのアプローチに係る要約を歓迎する。我々は、消費者に利益をもたらし、新規参入を促し、イノベーションを促進する、競争可能なデジタルエコシステムを促進するために、国際協力を強化し、効果的なツールを活用することを支持する。

G7は、特にデジタルサービス、自動化及びAIが急速に進展する中、強固で信頼性が高く、予測可能な知的財産の法的枠組みが、強靭で競争力のあるデジタル経済を確保するために不可欠であることを認識する。イノベーションを支援し、新しいデジタル環境における知的財産権の尊重に関連する課題に対処するアプローチを特定するためのベストプラクティスを促進し、関連する利害関係者との協力を促進することへの我々のコミットメントを再確認する。これらの問題は、2025年12月12日に開催されるG7知財産庁長官級会談の議題の主要部分を占めており、会議では、知財庁は、法定の権限内で、進化する世界的な動向を探求し、具体的なベストプラクティスを交換することが期待されている。

サプライチェーンセキュリティ

我々の集団的な経済競争力と経済安全保障を確保するために、物資・サービス・技術の流通を可

能にする強靭で安全なサプライチェーンを構築・維持し、同時に国内の能力を促進することが極

めて重要である。我々は、安定した政策環境を創出し、グローバルサプライチェーンを混乱させ

る、サプライヤーや国々による非市場的な慣行及び反競争的な行動の影響力拡大に対抗するために、サプライチェーンの透明性の向上、基準の策定や投資の拡大など、協働を通じた解決策が必要である。G7プーリア首脳コミュニケで合意されたように、経済的強靭性には、多様化や、過剰生産に起因するものを含む深刻な依存の低減を通じたリスク低減も必要である。戦略的物資のサプライチェーン強靭化に向けて、供給面と需要面の両面で官民連携を奨励する。我々は、共通の課題に対応するとともに、強靱なサプライチェーンの確保に向けたG7での協力を促進するためのG7経済的強靱性・経済安全保障担当高級実務者による議論を賞賛する。

G7での継続的な協力における重要分野は、半導体のサプライチェーンセキュリティと強靭性である。我々はG7半導体コンタクト(PoC)グループの継続的な活動を支持した。業界の視点を踏まえ、PoCグループは、非市場的な政策や市場歪曲的な慣行等によって生じる現在のサプライチェーンの脆弱性に対処するために必要な補完的な行動の必要性について合意した。これには、信頼性のあるサプライチェーンに関する技術的・非技術的な考慮事項の双方に対するガイダンスの策定の検討、需要側の介入の検討、投資枠組みや資本流動性の向上を通じた資本の利用可能性拡大などが含まれる。さらに、PoCグループは、基礎的な半導体研究への継続的支援や、G7メンバー国間の競争前の産業研究開発段階の協力を推進するためにG7メンバー国間の研究・技術組織による国境を越えた連携の強化の重要性を確認した。

サプライチェーンセキュリティと強靭性を確保するためには、ルーターやネットワークカメラ、産業用制御機器、家庭用電化製品など、インターネットに直接または間接的に接続する製品の安全性の確保も重要である。このため、2025年G7サイバーセキュリティ作業部会によるIoTセキュリティに関する継続的な取組を支持する。

変化する地政学的状況の中で、研究セキュリティとサプライチェーンセキュリティの根本的な関連性はこれまでにないほど重要である。基礎研究は、特に機微な研究分野において経済成長や産業・技術の進展を促進する特に重要な要因である。そのため、G7各国政府・資金提供者・研究実施機関からなる「G7グローバルな研究エコシステムにおけるセキュリティとインテグリティ(SIGRE)ワーキンググループ」を再結集し、各国の研究のセキュリティ・インテグリティへのアプローチをより一致させるべく協力を行った。SIGREは、G7加盟国間の自主的な国際共同研究協力を支える研究の安全保障・完全性の枠組の策定を目指している。この反復的な枠組は、プロセスの一貫性を確保しつつ、研究者や資金提供者の事務負担を必要最小限に抑え、公的資金による研究・発見の保護へのコミットメントを守るものである。

G7は、強靭なグローバルサプライチェーンの支援、新興先端技術の商業化、研究者間の協力の促進を通じて、保健安全保障と保健上の緊急事態の備えの強化に引き続きコミットする。革新的な医療技術の開発を促進するための強靭な医療対策サプライチェーンの価値と、緊急時にこれらの製品にアクセスすることの重要性を認識する。今年、我々は、それぞれの医療対策(MCM: medical countermeasures)組織間で協力を開始し、パンデミックへの備えと対応についてグローバルリーダーシップを提供した。また、我々は将来の保健緊急事態への備えに関する保健安全保障・サプライチェーン強靭性について指針を提供した、G7医療対策技術サイド会合や第5回感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)MCM研究開発資金提供者フォーラムで得られた教訓を認識した。

最後に、投資の安全保障に関するG7の協力と対話を主導しているG7投資審査専門家グループ(ISEG)の活動を称賛する。我々は、この重要なテーマに関するさらなる協力に向けたISEGの継続的な活動を期待する。

今後の展望

カナダ議長国下で、我々、G7産業・デジタル・技術(IDT)大臣は、G7全体の経済成長と繁栄

の向上を目指すアジェンダの推進に向けて大きな進展を成し遂げた。

我々は、すべての国が、AIや量子技術の責任ある開発と導入、経済的な強靱性を広く促進するためのサプライチェーン強化に向けた協調の強化、公正な市場慣行と政策の実施によって、企業がデジタル変革の中で成長できるようにし、産業分野全体で経済的繁栄と機会創出を追求することを奨励する。

我々は、2026年のフランスのG7議長国と、我々の継続的な協力を楽しみにしている。