データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 共同議長によるプレス・ステートメント(第2回アフリカ開発会議(TICAD II))

[場所] 東京
[年月日] 1998年10月21日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 アフリカは、行動指向型の「東京行動計画」で明るい未来を築くことができる。「東京行動計画」は、1998年19日から21日まで東京で開催された第2回アフリカ開発会議(TICAD II)において採択された行動指向的指針である。同会議は、日本、国連及び「アフリカのためのグルーバル連合」の共催によって行われた。「東京行動計画」は21世紀に向けたアフリカ開発のため、アフリカ諸国とそのパートナーの具体的な政策に指針を与えることを目的としている。会議冒頭に、日本の小渕恵三総理大臣が基調演説を行い、アフリカ大陸の平和を強く希求した上で、人的資源開発の重要性を強調した。さらに小渕総理は、こうしたことに基づいて、また、最近アフリカ諸国が達成した経済的・政治的進展に鑑み、アフリカの将来については楽観主義(アフロ・オプティミズム)で望むべきことを指摘した。会議全体を通じて、人々の生活を向上させるためにアフリカ人の持つ潜在力を最大限具現化する必要があり、また平等なパートナーとして国際社会にアフリカを参画させなければならないと認識された。

 会議には、80ヶ国(アフリカ51ヶ国、アジア11ヶ国、北米及び欧州18ヶ国)、アフリカ及び北のNGO22団体、及び40に及ぶアフリカに拠点を置く地域機関及び国際開発機関からの参加を得た。15名のアフリカ及びアジアの元首・首脳、及び国際機関の長が積極的参加、議論をリードし、建設的な貢献をした。アナン国連事務総長は、「東京行動計画」の採択時に演説を行い、平和、民主的な政府、環境保全、人権の尊重及び法の支配を確立することにより、人間の安全保障を確保する必要性を強調した。さらにTICAD II参加者はアフリカのための新たな、そして力強い関係を築くプロセスに参画したのだと述べつつ、アフリカには希望がある旨強調した。また、事務総長は閉会式の議長を務めた。

 アフリカにおける貧困を削減するため、また急激にグローバル化している世界経済にアフリカ経済が一層参画できるようになるために、今やるべき緊急課題について、アフリカの指導者とそのカウンターパートが真剣に話し合った。これまで一年間かけて、アフリカ諸国とその開発パートナーは、「東京行動計画」の作成準備に携ってきた。「東京行動計画」は、次の分野で具体的目標を定め、優先的政策行動につき合意した。(1)社会開発:教育、保健と人口、貧困層を支援する施策、(2)経済開発:民間セクター開発、工業開発、農業開発、対外債務、及び(3)開発の前提:良い統治、紛争予防と紛争後の開発。

 人造りは国造りの鍵である。このことは実際に、30年前にはアジア諸国はアフリカ諸国より一人あたりGDPが同じレベル又はそれより低かったが、その後生活水準が非常に上昇したことによって証明されている。アジアとアフリカの活発な交流は約500年前に消滅してしまったが、今日アジア諸国がその経験とノウハウをアフリカに移転しようと強くコミットしていることは、両大陸間の交流を力強く復活させるものである。

 以上の共通の日標と目的を達成する方法として、会議では、市民社会の役割の強化、アフリカ内の地域協力、及び南南協力を含む、アフリカ開発に携る全ての関係者間の協調を強化することに焦点があてられた。最近のアジアの金融危機は、それ自体アフリカにとっても教訓となるものだが、こうした危機にもかかわらず、特にアジア・アフリカ協力を一層進める方途について熱心な議論が行われた。会議の最終日に、アフリカとの貿易・投資を増大し、アジアの経験を共有する機会を与えるために、アフリカの政策決定者と日本の民間企業関係者との対話セッションが開かれた。アジアと米の民間セクターの代表もこのセッションに参加した。

 参加者は、TICAD IIでの合意事項を、国、地域、国際レベルにおいて具体的にフォローアップし、TICAD IIによって生まれた勢いを維持する旨ことに合意した。実体のある結果を確保するため、各政策遂行がモニターされることとなる。

 会議では、「東京行動計画」の目標、行動に即した、350以上の開発プログラムとプロジェクトを記載した「例示リスト」が作成された。この資料は、会議の参加者がフォローアップ活動を計画・形成する際のよい索引となることが期待されている。