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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD平和の定着会議における塩崎副大臣基調演説

[場所] アディスアベバ
[年月日] 2006年2月16日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

閣下、

代表団の皆様、

ご列席の皆様、

 TICAD平和の定着会議を開会します。日本政府、TICAD共催者である国連、GCA、UNDP、世銀を代表し、皆様を心から歓迎致します。300万年前に世界初の人類が息づいたこのアフリカの青い空の下で、各大臣閣下やご列席の皆様にお会いできることを嬉しく思っております。また、個人的にも、初のアフリカ訪問において、71カ国、28機関及び18市民社会/NGOが参加するこの重要な会議の議長を務めることができることを嬉しく思っております。

 この会議は、2003年11月に開催された第3回アフリカ開発会議(TICADIII)を受けた日本の継続的な取り組みの一貫であります。本日、国会開会中につきここに出席できなかった小泉総理及び麻生外務大臣からも、この会議の成功を祈っている旨メッセージを受け取ってきております。

閣下、

 何年もの人々の嘆きと苦しみを乗り越え、アフリカ大陸の地域及び国々では、持続可能な平和に向けた前向きな流れが見られます。これこそがアフリカの自助努力、即ち「オーナーシップ」と、これに対する国際社会からの「パートナーシップ」の成果であります。モザンビーク、アンゴラそしてルワンダは、過去10年間で着実に平和を定着させ、まだ不十分ではありますが、大湖地域及び西アフリカも、地域の安定に向けて前進しています。その流れの中のできごととして、アフリカ初の民選女性大統領であるリベリアのエレン・ジョンソン=サーリーフ大統領の就任をお祝い申し上げたいと思います。

 この会議の目的は、アフリカ及びアジアの経験と教訓を参考にしつつ、紛争後の国家の復興と開発に不可欠な持続可能な平和をどのように達成することができるかを議論することにあります。我々は皆、平和の定着が多面的なアプローチを必要とする複雑な道のりであることを知っています。

 過去数日間、私は南部スーダンのUNICEFの活動現場を視察する機会を得ました。そこで私は、巧みに調整された国連機関、その他機関及び世界中からの多数のNGOの努力の下で、難民や国内避難民が来るべき新たな時代への希望を胸一杯に抱き帰還してくる実情を見ました。彼らは、徐々にではありますが、力強い地域市民社会を形成しており、私は、こうしたことこそが平和の定着に貢献するのだと信じています。

 言うまでもなく、南部スーダンの例に見られるように、我々は、各地域及び各国独自の必要性を考慮した国別アプローチの重要性につき認識しています。

 そこで、私は、平和の定着に関連した以下の三つの主要分野、即ち、(a)治安確保、(b)政治ガバナンス・体制移行及び(c)コミュニティ復興・社会経済開発に関し、提言を行うことができるよう、全ての出席者の皆様がそれぞれの経験と知見を共有されるよう希望しています。

閣下、

 ここで、私は、アフリカにおける平和の定着支援に係る日本の政策につき、簡単に触れたいと思います。TICADプロセスを通じたアフリカの開発に対する日本のコミットメントにおいて、「平和の定着」は、「人間中心の開発」及び「経済開発を通じた貧困削減」と並び、三本柱の一つとなっています。これら3点の優先事項を実現させるにあたり、日本は「人間の安全保障」概念を特に強調してきました。小泉総理が昨年発表した、2007年までの日本の対アフリカODA倍増を含む、アフリカに対する支援強化のコミットメントの一環として、日本政府は、アフリカにおける平和の定着に関する具体的行動を取ります。

 2003年以降、日本政府は、緊急人道支援、DDR(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰)、コミュニティ復興を含む、アフリカにおける平和の定着支援のために3億5千万ドル以上を供与してきました。また、多国間の枠組においても、日本は国連の全世界での平和維持活動経費の約20%を負担し、アフリカにおける平和維持活動においても同様の負担を行っています。

ご列席の皆様、

 アフリカにおける持続可能な平和に向けた前向きな兆しが見られる中で、私は、この機会に、日本の新たなイニシアティブを発表したいと思います。

 この新イニシアティブを通じて、日本は、平和の定着に関する以下の3つの分野において、支援を行っていきます。

 第一に、治安確保の分野において、我々は、さらなる開発の土台ともなる治安環境の向上支援を強化します。我々は、DDRや、例えば「開発のための武器回収」プログラムを通じた小型武器の管理、削減に向けた支援を優先分野とします。

 第二に、政治ガバナンス・移行体制の分野において、我々は、民主的選挙、司法及び行政機関のキャパシティ・ビルディング、さらには和解のプロセスにおける協力を行います。

 第三に、コミュニティ復興・社会経済開発の分野においては、我々は、コミュニティの自立を支援するためのアフリカン・ビレッジ・イニシアティブ(AVI)の促進を継続します。

 この新イニシアティブにおける当面の対応として、我々は、2006年3月末までに、約6千万ドルの支援を供与します。我々の支援は、平和の定着プロセスが重要な局面を迎えている地域及び国に特に重点を置いています。

 私は、この機に国連平和構築委員会の設立を歓迎し、我々の平和構築分野における経験を踏まえて、我々が同委員会の活動において包括的かつ積極的な役割を果たす決意を再確認したいと考えます。

 さらに、日本政府は、アジアにおける平和の定着に関する経験を共有しつつ、南南協力を促進するために協力する準備があります。例えば、我々は、カンボジアにおける小型武器の管理、削減及び地雷除去に関する経験を提供するセミナーの開催を計画しています。

閣下、

 我々が常に強調してきたように、「アフリカ問題の解決なくして、21世紀の安定と繁栄はありません」。日本は、平和の定着を基盤の一つとし、アフリカの開発に強固にコミットしています。

 我々の、コミットメントは、強化されたアフリカのオーナーシップと、国際社会及び市民社会からのパートナーシップと共に行われるべきと考えます。我々は、アフリカのオーナーシップの発露の好例であるNEPADの考え方及び活動を強く支援します。

 TICADプロセスにおける我々共通の努力は、2015年までのミレニアム開発目標(MDGs)の達成も促進するものと確信しています。

 私は、この会議が、継続的なアフリカの努力と国際的な努力に貢献し、2008年に開かれるTICADIVに向けて我々を導いてくれることを希望します。

 ご静聴ありがとうございました。