[文書名] 第三回TICAD閣僚級フォローアップ会合コミュニケ(仮訳)
O.前文
アフリカ諸国の閣僚,代表団並びにTICAD共催者たる日本国政府,国際連合,国連開発計画,世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)の代表は,他のパートナー諸国,国際・地域機関,民間セクター及び市民団体の代表とともに,2011年5月1日及び2日,第三回TICAD閣僚級フォローアップ会合のため,セネガルのダカールにおいて一堂に会した。本会合の目的は,第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)において発出された「横浜行動計画」の進捗状況を検討すること並びにTICADプロセスの将来及び相互に連関する下記I〜IVの議題につき議論を行うことである。
本会合は,セネガルのンジャイ首相によって正式に開会され,松本剛明日本外務大臣及びニョン・セネガル外務大臣が共同議長を務めた。
日本側は,2011年3月11日の東日本大震災に際してアフリカ諸国及び国際社会から示された支援及び連帯に対し深甚なる謝意を表明した。参加者は,復興及び引き続き国際社会の主要な一員として役割を果たすことに向けた日本の決意表明を歓迎した。また,参加者は,震災からの復旧及び復興に取り組む日本政府及び日本国民に対し,同情,連帯の気持ち及び支持を改めて表明した。
参加者は,新たなTICAD共催者として本会合に参加したAUCを温かく歓迎するとともに,これによりTICADプロセスにおいてアフリカの「オーナーシップ」及び「パートナーシップ」に一層の弾みがつくことを歓迎した。
参加者は,本会合と密接に関連する議題に関するいくつかの重要な国際会議が2011年及び2012年初めに予定されていることを踏まえ,これらの会議に対し,アフリカ諸国及びその開発パートナーの視点を反映したインプットを行うために,本コミュニケを発出した。
参加者は,会合開催期間を通じて,セネガル共和国政府及び国民によって温かい歓待並びにすばらしい便宜及びサービスが提供されたことにつき,深い感謝の意を表明した。
I.横浜行動計画の進捗状況及び今後のTICADプロセス
1. 参加者は,日本政府が,引き続きTICAD IVの包括的なコミットメントを誠実に実現していくとの決意を表明したことを高く評価した。
2. 参加者は,2008年のTICAD IVで採択された「横浜行動計画」及び2010年にアルーシャで行われた第2回TICAD閣僚級フォローアップ会合において日本政府が行った追加公約の進捗が順調であることを歓迎した。
3. 参加者は,TICADフォローアップ・メカニズムが約束履行の説明責任及び透明性向上のモデルであるとの認識を再確認した。
4. 参加者は,今回の東北地方太平洋沖地震で得た経験を国際社会と共有し,自然災害リスク管理能力及び原子力発電所の安全性の向上に向けた国際的な取り組みに更なる貢献を行うとの日本の決意を歓迎した。これに関連して,参加者は,2011年中にアフリカ各国政府の危機管理関係者を日本に招待して,「強靭な経済・社会作り」をテーマとしたセミナーを開催するとの日本政府の提案を歓迎した。
5. 今後のTICADプロセスに関し,参加者は,本会合において有用な見解が提示されたことを歓迎するとともに,今後,TICADプロセスがアジア・アフリカ間協力関係者,民間セクター,市民社会等の多様なプレイヤーと協調し,相乗効果を発揮しつつ,アフリカ各国における,より包括的,持続可能かつ経済的・社会的・環境的にバランスのとれた成長の加速に一層の焦点を当てるべきとの提案に留意した。
II.アフリカ経済の活力ある包括的かつ持続的な成長に向けて
6. 参加者は,近年におけるアフリカの前向きかつ着実な経済成長及び世界的経済危機からの相当程度の回復を賞賛した。また,社会的・政治的安定は持続可能な経済成長の基盤であるとの認識の下,アフリカ各国政府が,包括性(inclusiveness)をキー・コンセプトとしつつ,脆弱層,疎外された人々及び若年層に焦点を当て,雇用創出を通じたグッドガバナンス,人材育成,ジェンダー間の平等,貧困削減等に向け一層努力する旨のコミットメントを歓迎した。
7. 参加者は,TICADアプローチが力強く,包括的かつ公正なアフリカの成長を実現するために重要であることを認識した。TICADアプローチには,地域統合の深化及び広域インフラ開発に重点を置くことによるアフリカ域内のモノ,サービス及び人の自由な移動の促進並びにアフリカ各国及び開発パートナー双方による農業開発投資に基づく食料安全保障の強化が含まれる。参加者は,これらの分野における協力強化の重要性を認識するとともに,TICADプロセス及び新AU/NEPAD行動計画2010-2015との間に一層のコーディネーションが必要であることを確認した。
8. 参加者は,堅実なマクロ経済運営及び強化された政府能力が経済成長にとって重要であることを再確認した。また,アフリカ経済のより力強く,持続可能な成長を実現する民間セクターの活動及び投資を誘致する環境を整備するため,改革を継続する必要があることを認識した。この文脈において,参加者は横浜宣言のパラグラフ3.6を想起した。また,日本の民間セクターによるアフリカへの貿易・投資を促進するためのTICADプロセスにおける官民協力強化等の取り組みが前向きな成果をあげていることを歓迎した。
III.ミレニアム開発目標(MDGs)の達成
9. 参加者は,一部のアフリカ諸国においてミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた進捗が見られることを歓迎しつつも,目標達成は引き続き重大な課題であり,大きな格差が残存していることを認識した。また,最も脆弱なコミュニティに手を差し伸べ不平等を是正することが,肯定的な効果をMDGs達成に直接与えるとの考えを共有した。この関連で,参加者はアフリカの開発パートナーに対し,各々が行ったコミットメントを達成するよう求めた。
10. 参加者は,日本が2010年に表明した保健及び教育の分野における日本の支援方針を掲げる菅コミットメントを評価した。また,人間の安全保障を実現するため,インフラ,農業等を含むより幅広い分野において努力を続けることの重要性を確認した。
11. 参加者は,MDGsフォローアップ会合を2011年6月2日及び3日に東京において開催するとの日本の発表を評価,歓迎するとともに,高い費用対効果を有し得る,エクイティに焦点を当てたアプローチ等,達成期限までの残り5年間で追求すべき真に効果的な方法について踏み込んだ議論をすることの重要性を確認した。更に,参加者は,持続的,包括的かつ公正な経済成長等の開発アジェンダに係る国際的コンセンサスを維持することが重要であることを認識し,同会合を重要な足がかりとしてポストMDGsに係る議論が開始されることへの期待を表明した。
IV.グローバルな課題への対応に向けたアフリカとの協力
12. 参加者は,安定,紛争予防,平和の定着,人道支援,民主主義及びグッドガバナンスの促進がアフリカ及びその他の国の開発にとって決定的に重要であることを確認するとともに,これらの促進,保護及び定着に関する国連,AUC,地域経済共同体(RECs),アフリカ各国政府等のTICADパートナーによる努力を賞賛した。
13. 参加者は,民主主義,グッドガバナンス及びより包括的かつ公正な開発モデルに対するアフリカの熱意を歓迎するとともに,TICADパートナーが人間の安全保障及び脆弱性への取り組みに特段の注意を払いつつ,上記の分野・問題に関するアフリカ自身の努力を引き続き支持することを確認した。
14. 参加者は,TICADパートナーの間,特に日本とアフリカの間において,双方が関心及び懸念を有するグローバルな課題について,定期的な対話が強化されていることを認識するとともに,かかる対話を如何にTICADプロセスに組み込んでいくべきかについて検討を要するとの見解を共有。
15. 参加者は,安全保障理事会を含む国連の主要機関が21世紀の国際環境により合致したものとなるよう早期に改革することの重要性を強調した。参加者は,今次国連総会会期中,国連加盟国が安保理改革に関して最大限努力すべきであることを改めて強調した。
16. 参加者は,気候変動がアフリカに深刻な悪影響を与えることについての懸念を共有するとともに,アフリカが,低炭素成長における大きな潜在性を有していることを確認した。この関連で,参加者は,カンクン合意をオペレーショナルなものとすることに共に取り組むことを決意するとともに,2011年末に南アフリカのダーバンにおいて開催されるCOP17の成功に向け,最大限の努力を払うことの重要性を再確認した。
17. 参加者は,グリーン・テクノロジーによってアフリカ経済を上昇軌道に乗せるため,気候変動に関連する官民の協力イニシアティブを通じて,日本の優れた技術及び知見を活用することの価値を認識した。参加者は,気候変動に係る日本の短期支援(Fast-Start Financing)が迅速かつ着実に実施されていることを歓迎した。参加者は更に,気候変動に関するアフリカ各国との政策対話を強化する旨の日本による意図表明を歓迎するとともに,アフリカの開発パートナーに対し,2013年以降においてもアフリカ諸国のニーズに応じた支援を継続又は拡充することを要請した。
18. 参加者は,アフリカにおける持続可能な低炭素成長を促進するための中長期的な共通ビジョンを構築する価値を認識するとともに,「アフリカ低炭素成長・持続可能な開発戦略」の策定に向けた作業を開始することを決意した。参加者は更に,同戦略が,様々な開発段階にあるが故に緩和・適応のニーズも多様であるアフリカ各国のニーズ及び優先事項に応じたものとなるべきであることを認識した。この作業を促進するため,参加者は,2011年中にアフリカ諸国をはじめとする関係者による会合を開催し,2012年のTICADフォローアップ会合において中間報告を,2012年中を目処に最終報告をそれぞれ策定するとの見解を共有した。